色々なIF集   作:超人類DX

824 / 1034
油断しませんと口に出すけど、結局心の底で油断してるってよくある話よね


最初からクライマックス

 

 

 

 あれ程殺してやりたいと思っていたというのに。

 自分を奪って何食わぬ顔をしながら生きていると思うだけで泣くほど悔しかったのに。

 

 

 人間界へと戻って再会した時、俺が抱いたのは殺意でも無ければ憎悪でもない―――ただの憐れみって奴だった。

 本来の自分である事を捨てて、誰かに成り代わる事が果たして楽しいのか。

 自分の本性を隠して生きていく事が本当に幸福なのか。

 

 亡霊となった俺と出会した時に見た奴のひきつった顔を思い返す度に俺はそんな気持ちになる。

 まあ確かに? 本当なら奴が俺となった時点で俺はくたばっていた筈だった訳で、運の良い事に俺は拾われた形で生き延びることが出来てしまったのだからこそこういう心境に至ったのかとしれない訳で、これがもし誰にも拾われることなくゴミを食いながらも生きていたという人生だったら、ぶち殺してやりてぇとか思ってたんだろうけど……。

 

 つまり何が言いたいのかというとだな。

 

 

『外から見下して全能面してる神に頼んでまで俺に成り代わったんだとしたら、別にそんなものはキミにくれてやるよ』

 

 

 本来の『俺』の人生ってやつをそんなに送りたいのだったらくれてやるよ。

 ただし、あの時の仕返しだけは一度きっちりやらせて貰うがな……。

 

 いくら憐れに思っていても、俺はその為だけに今まで生きてきたという事は否定できないからな。

 つまり、『それはそれとして』って奴だな。

 

 あー、あと俺の名前と人生はそっくりそのままくれてやるからよ。

 俺がここまで手にしてきた『日常』はやらねぇからな? もしそこまで奪うつもりなら―――流石に道連れにしてでもぶち殺してしまうぜ?

 

 しっかし、今となってはあらゆる意味で他人となった俺の実の両親ってどうしてるんだろうか? 聞けばグレモリーさんの実家の力で相当デカい家で悠々自適に生きてるみたいだけど……。

 

 まあ、幸せならそれで良いか。

 

 どういう関係なのかは知らんし興味なんて無いけど、見ようによっては息子が金持ちのお嬢さん引っかけてきたって感じだろうしね。

 

 

 

 

 

 

 魔王を輩出させたグレモリー家の娘がレーティングゲームに非公式ではあるが初参戦するという意味もあってなのか、それとも対戦相手が同じくゲーム初参戦のあのフェニックスの三男だからなのか……。

 とにかく下手をしたら公式のレーティングゲームよりも多くの名のある悪魔達が観戦するという軽いお祭り状態となる本日のレーティングゲーム。

 

 そのプレイヤーであるリアスは学園を休んでまで準備をしてきたということもあってか、はたまたその期間で実力的な意味での壁を越えたからなのか、まだ対戦を前にしているというのに妙な全能感を感じていた。

 

 ――早い話が全く負ける気がしない気分に浸っているのだ。

 

 

「わかっているとは思っているけど、このゲームはあくまでも私達のこれからに対する踏み台でしかないわ。

ましてや敵は私達と同じくゲームが初めてだし、正式な眷属すら揃わず無理矢理頭数だけを揃えたフェニックス。

勝つのは当たり前だけど油断は決してしないように」

 

『はい……!』

 

 

 

 ゲーム会場の控え室となる学園の部室にて、自らの眷属達にそう言葉を投げ掛けるリアスは自信に満ちていた。

 それはこの修行をする前の自分よりも更に力を増した感覚が全身に伝わるからである。

 

 

「小猫も、相手がフェニックスだとしても妙な手心は駄目よ……?」

 

「はい……わかっています」

 

 

 それもこれもこの兵藤一誠という者が眷属になってくれたお陰だ。

 彼が入ってくれた事でリアスのみならず仲間達も強くなることができた。

 そういう意味ではこの兵藤一誠はリアスにとって幸運を運んだ者だろう。

 

 

「………」

 

(一応小猫も表面上は澄ました顔だけど、本当の所はどうなのかしらね……。

イッセーの言うとおり、ソーナと小猫は相当誑かされているわ――あの顔だけ同じの紛い物男に)

 

 

 お陰で我を通せるだけの説得力を手に入れる事ができた。

 ここ暫くはフェニックスの連中に自分のテリトリーを引っ掻き回されてイライラすることが多かったが、それも今日で終わりにする。

 

 

「駒の数だけなら向こうと同じ。

だからまずは霧島――あの男を叩き潰せば向こうは受けに回る他なくなるわ」

 

「つまり、彼を重点的に狙えと……?」

 

「そうよ……」

 

 

 このゲームで完全に潰してやれば、きっと誑かされてる小猫とソーナも目を覚ます筈だ。

 ちょうどウチの兵士も同じ顔をした存在を鬱陶しがっているのだから……。

 

 

 

 ポーンという立ち位置……しかもたった一人という意味もあってか、完全に狙い撃ちされている事を知らない霧島一誠はといえば、ゲーム会場となっている駒王学園のレプリカ空間の本陣――生徒会室にて王となるライザーから作戦を言い渡される。

 

 

「俺はチェスよりベイバトルとかミニ四駆レースとかギアファイトの方が好きだし割りと得意だ。

つまり何が言いたいかと言うと……まずは向こう出方をうかがいつつカウンターを狙う。

兵士の一誠と僧侶のレイヴェルは本陣手前で防衛ラインを張ってくれ。

アーシアは――俺の側で護衛だ」

 

「クロ――じゃなくてフォルテは?」

 

「向こうの出方次第では派手に防衛をかます一誠とレイヴェルの隙を突いて回り込むように攻め込められれば理想だが……」

 

「ん、そういうのは得意だから任せて」

 

 

 ディフェンスで様子を見つつ、隙を突いて一気にオフェンスへと切り替えるという基本的な作戦を言い渡すライザーに全員が頷いた。

 

 

「わかっているとは思うが、最優先で脱落させるのは兵藤一誠だ。

奴だけはどうにかしてゲーム盤から引きずり落とす」

 

「わかってる、イザとなりゃあ道連れにしてでもぶち落としてやるさ」

 

 

 一番に警戒すべき存在についても話すライザーに、フェニックスの紋章が胸元に金の糸で刺繍されている燕尾服を着ている一誠が頷く。

 

 

「情報じゃあ兵藤一誠が眷属として入った辺りから異様な速度でリアス・グレモリー達が力を付けたらしい。

ソーナ・シトリーさんからの情報だし、信憑性は多分あるだろう」

 

「という事は奴だけではないと……?」

 

「まぁな……。だが心配するな。

俺は決して堕とされんし、負けるつもりもねぇ。

黒歌の自由を約束させられるチャンスだ―――本気でやらせて貰う」

 

 

 そう呟くと同時に碧眼の瞳の色が赤く染まり、全身からは尋常ではない覇気が放たれる。

 

 世間ではフェニックス家のボンクラ三男と揶揄されてきた青年とは思えぬ覇気を……。

 

 こうして魔王をも観ている非公式のゲームは、その魔王の嫁の『ゲーム開始』のアナウンスと共に始まるのだ。

 

 

 

 

 

 開始から約10経過するが、一向にライザーが攻めて来ない。

 

 

「………。向こうもディフェンスの様ね」

 

「その様です、向こう側の本陣の前から先に侵入する気配がありませんわね」

 

「………」

 

 

 リアスは考える。

 ライザーもどうやら眷属の数の関係でオフェンスに回る気がないらしい。

 あのボンクラ男と同じ考えであることは気に食わないが、それならそれで此方が有利に運ぶまでである。

 そう考えたリアスは通信機のスイッチを入れる。

 

 

「イッセー、小猫は盤のセンターとなる体育館まで進んでちょうだい。

祐斗は本陣の罠を張り終え次第、生徒会室にできるだけ近づいて様子を探って」

 

『『はい』』

 

『了解しました』

 

 

 籠城する気ならそれならそれで盤上を完全に支配してしまえば良いだけの事だとリアスは指示を送り終えると、静かに自身の女王である姫島朱乃の淹れたお茶を飲む。

 

 

「少し慎重過ぎるかしら?」

 

「いえ、恐らくはこれで良いのかと。

思えばライザー・フェニックス達がどれだけの実力であるのかは微妙にわかりかねてましたからね」

 

「唯一わかったのは、中級・下級の堕天使程度なら問題なく排除できる程度……だったわ

まあ、もしもその程度なのなら勝ちなのだけど……」

 

「ええ、イッセー君がこちらには居ますからね」

 

 

 

 そこから更に20分が経過しようとした時だった。

 密かに敵本陣の近くまで駒を進めさせた祐斗から連絡が入る。

 

 

『部長、敵本陣の近くまで到着しましたが……』

 

「? 何かあったの?」

 

『本陣の前に霧島一誠が居るのですが……』

 

「が?」

 

「…………………。レイヴェル・フェニックスとゲームをして遊んでいます」

 

「……………………あ?」

 

 

 すさまじく言いにくそうに報告をする祐斗に、リアスは思わず変な声が出た。

 

 

「ゲーム……ですって?」

 

『は、はい……あの、ゲームボーイというかなり古い携帯ゲーム機を使って対戦のようなものをしているみたいです―――なんか『狂牛病ケンタロスズルすぎるだろ!?』とかなんとか……』

 

「……」

 

 

 思わず通信機を握り潰してしまいそうになるリアス。

 こっちは紛いなりにもボンクラ相手にレーティングゲームをやっているつもりなのに、奴等はゲーム機で遊んでる?

 

 

「イッセーと小猫を合流させるわ。相手は霧島一誠とレイヴェル・フェニックスでしょう? 他には?」

 

『あ、いえ、その二人だけですね……』

 

「わかったわ……3対1なら勝てる筈だから、合流出来次第再起不能にしなさい。

その後、一気に詰みをかける」

 

『は、はい』

 

 

 馬鹿馬鹿しい。

 そうだ、あんな遊んでるだけのボンクラ共に本気になるのが間違いだったし、警戒なんぞ要らなかった。

 もう良い、こんな茶番なんぞさっさと終わらせてやる

 

 そう思いながら静かに立ち上がるリアスの目は黒く濁っていた。

 

 

 

 

 

 ライザーの読み通り、数の問題で相手もディフェンスに徹していた為に本陣周辺の警備をしていた一誠とレイヴェルは暇になったので持ち込んでいたゲームボーイカラー(IPS液晶に改造済み)と通信ケーブルを使って、ポ◯モン金銀の対戦をしていた。

 基本的にホビー趣味のフェニックス家の中では比較的一歩引いた様子であったレイヴェルなのだが、ただひとつ、レイヴェルもガチなものがあった。

 

 つまりそれはポケ◯ンだったわけで……。

 

 

「狂牛病ケンタロスが強すぎて俺の手持ちが6タテされたの巻……」

 

「対抗策はちゃんとあるのよ? といっても、イッセーの手持ちは所謂旅パだから仕方ないのでしょうけど」

 

「ぐっ、今度は対戦用でやるからもう一戦やろうぜ?」

 

「ええ、どちらにせよ勝つのは私でしょうから構いませんよ?」

 

「言ってろ、次は勝つ!」

 

「ふっ……では万が一にも一誠が勝てたら、ひとつだけ何でも言うことを聞いてあげましょう」

 

「え!? よ、よーし……マジで勝つ……!」

 

 

 ガチ過ぎてフェニックス家の中で最強だったりするのがレイヴェル。

 そんなレイヴェルからの余裕めいた一言に対して一気に目がマジになった一誠は対狂牛病ケンタロスのメタパを厳選しようとしたのだが……。

 

 

「一誠」

 

「わかってるよ。2時方向から観てるんだろ?」

 

「ええ……」

 

 

 ポチポチとゲームをしながらも気配を察知した一誠とレイヴェルが小声で話をするが……それでもゲームやる手は止めない。

 

 

「警戒をしているのか仕掛けては来ないわね……」

 

「ならこのままだな」

 

 

 様子を伺うだけで仕掛けては来ないと察知する二人だが、一応作戦通りだったりする。

 

 

「てか、こっちの目論見通り過ぎて却って怪しいんだが……」

 

「向こうが私達をバカだと思ってくれているんでしょう? そうでなくてもリアス・グレモリーはどうしてもお兄様を見下したいようだし」

 

「なんだかなぁ……」

 

 

 見下す相手が悪すぎるだろうとしか思えない一誠はレイヴェルの手持ちのカビゴンが倒せず、逆に自分の手持ちの◯ケモンがどんどん沈められていく。

 やがて最後の一匹である『ミュ◯ツー』でなんとかカビゴンを倒したのだが、レイヴェルが厳選に厳選を重ねたバ◯ギラスによって倒されてしまう。

 

 

「ちくしょー!!!」

 

「ふふん、一誠もまだまだね」

 

「ぐ、ぐぬぬ……! もし勝てたら恥ずかしいことさせてやろうと思ったんだが……」

 

「それは残念だったわね? ちなみにどんな事をさせるつもりだったのよ?」

 

「え? メイドのコスプレさせてから昔みたいに俺の事を『一誠様』と呼ばせてご奉仕させてやろうかなって……」

 

「はぁ? そんな程度なら別にいつでも良いわよ? アナタにこういう話し方になったのは一応アナタと私は主従って関係になっているからってだけの事ですし」

 

「そりゃあ知ってるが……」

 

「んっん……! ほら一誠様、ネクタイが曲がっていますよ?」

 

「………………………」

 

「…………………。なによ?」

 

「お前、なんで俺より年上じゃねーんだよ……。

ちょっと20年くらい老けてよ?」

 

「無茶言わないでだし、嫌よ。

そもそも仮にそれが可能で20年くらい老けたらどうしてくれるのかしら?」

 

「そりゃあアレだよ……」

 

「アレって?」

 

「だからアレだよ」

 

「もう、ハッキリ言いなさいよこのヘタレ」

 

「………」

 

 

 負けて悔しがっている内に、何故かその場でイチャ付き始める。

 基本的に一誠とレイヴェルは実はこんなやり取りばっかりだったりするのだが、知らない者からしたらレーティングゲームの最中なのにイチャ付く間抜けにしか見えないし煽られてるようにしか思えない訳で……。

 

 イチャ付き始めた辺りから苛立っていたリアス眷属が、何か手まで繋ぎ始めた一誠とレイヴェル目掛けて飛び掛かった。

 

 

「「……」」

 

 

 もっとも、既に接近に気づいていた二人はひょいとその場から跳んで避け、二人が立っていた地面に大きめのクレーターが出来上がっただけなのだが。

 

 

 

 

 多少は力を持っているというのは認めるし、認めるからこそ完全に潰さなければ今後また余計な真似をして場を引っ掻き回される――そう思うからこそ当初は警戒しながら事を運ぼうと思ったのだが、所詮はフェニックスだし所詮はただの女好きかと兵藤一誠は落胆の気分のまま先行させた祐斗の攻撃を避けてこちらを間抜けな顔をしながら見ている死に損ないと、死に損ないさえ居なければ引き込んでやろうと思っていたレイヴェルの前に小猫と共に立つ。

 

 

「ごめんイッセー君、避けられてしまった」

 

「大丈夫だ木場。

奴等もそこまで弱いという訳じゃあないからな……やっている事は最低だが」

 

「……………」

 

 

 謝る祐斗に気にするなと返す兵藤一誠が霧島一誠を鋭い目付きで見据える。

 長いこと直接ぶちのめせる機会を逃してきたが、その悪運もここまでだと、兵藤一誠はこのゲームを利用して彼を死んだ方がマシな目に逢わせるつもりだった。

 

 

「霧島は俺がやる。

木場と小猫ちゃんはフェニックスさんを」

 

「うん」

 

「はい……」

 

 

 コイツをここで完全に再起不能にすれば、狂った全てが戻せるし軌道修正もできる。

 なんなら事故を装って殺した後に、周りの者のコイツに関する記憶すべてを消してしまえば良い。

 

 そうん思うが早いか、兵藤一誠は神によって手にした力を――

 

 

「がばっ!?」

 

 

 ―――解放しようとしたそのコンマ0.2秒前に殴り飛ばされた。

 

 

「さて、一誠には悪いが、貴様は一度直接このオレの手で殴り飛ばしてやりたかった」

 

 

 一誠ではない声を出す霧島一誠によって。

 

 

「な……んだ……!?」

 

 

 不意を突かれた形で顔を殴られ、鼻の骨を折られた兵藤一誠が鼻を押さえながら身体を起こせば、彼の目に映るのは先程とは雰囲気も声も違う霧島一誠の見下すような目。

 

 

「一誠を殺し損ねたということは、コイツに宿る俺も殺し損ねたという事になる。

どうせ貴様の事だから今のオレが誰なのかくらいはわかるのだろう? え?」

 

「………」

 

 

 そう威圧感のある言い方をするその声に聞き覚えがある兵藤一誠は、折られた鼻を即座に修復しながら立ち上がると、その名を口にする。

 

 

「赤い龍……か」

 

 

 同じく死に損なった赤い龍の意思がどういう訳か一時的に霧島一誠の精神と入れ替わっていると判断する兵藤一誠は舌打ちをする。

 どうやら自分は相当に赤い龍から恨まれているのだと。

 

 

「そうか、まだソイツに宿っていたのか」

 

 

 しかし同じ事だ。

 今の不意打ちは少し驚きはしたが、次は絶対に食らわないし、何より今からは何もさせずに一方的に潰す。

 

 

「二人がかりなら私を倒せると思っているのなら勘違いも甚だしい。

………フェニックスを嘗めるな」

 

「ぐっ!?」

 

「ゆ、祐斗先輩……! くっ……!」

 

 

 どうやら祐斗と小猫の二人がかりでもレイヴェルは押さえ込めないらしく、彼女は原作よりも相当に強い。

 それはきっと自分を恨んでいるであろう目の前の死に損ないも同じだろう。

 

 だがそれでも負ける気はしない。

 何故なら自分はチート転生者なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………と、この時点で兵藤一誠は既に手遅れであった。

 チート能力という自信のせいなのかどうかは本人にもわからない。

 だけど彼は一々行動に移るまでは遅すぎたのだ。

 

 ほんの一瞬霧島一誠に宿る赤い龍が表面化して殴られた時点で既に仕込みは終わってしまっている事にも気づいてない。

 今から潰すと能力のお披露目をしようとしてる時点で遅すぎている事にも気づいていない。

 

 気づいたのはそう……。

 

 霧島一誠の身体から閃光のような光を放たれた時。

 

 そして太陽の輝きのような光に照らされたゲーム会場が再びの静寂へと還った事で目に飛び込むその姿に。

 

 

「……………」

 

「………は?」

 

 

 朱色の頭髪も。

 不遜なその笑みも。

 瞳孔が縦長に開いた金色の瞳も。

 

 

「な、なんだ……お前は……?」

 

「オレか? オレは霧島一誠でもドライグでもない。

オレは―――貴様を終わらせる者だ……!」

 

 

 不遜な態度と声と共に大きくその目が見開かれた瞬間、目に見えない強烈な衝撃によって全身を砕かれた時点で、兵藤一誠は霧島一誠の挑発に乗り過ぎたのだ。

 

 

「がっ!?」

 

「ほう……? それも例の力のひとつか? さっき鼻をへし折ってやった時もそうやって即座に修復したみたいだが……」

 

 

 恐らく最初から隙を与えずに殺しに行けば兵藤一誠の思う通りの未来となったのかもしれない。

 だが結局の所、所詮ライザー・フェニックスだとか、所詮死に損ないだとかと見下し、心のどこかで侮ってしまった。

 

 それが付け入る隙を与えてしまい。

 

 

「がふっ!?」

 

「悪いが時間も勿体ないし、貴様のような存在の厄介さは身に染みてるつもりでもあるし、ライザーからも散々聞いているからな……。

だから貴様には何もさせん……!」

 

 

 その力も、それによって付けてきた自信も、全てが『無』へと『作り替えられる』のだ。

 

 




補足

フェニックス家らしい煽り方で挑発して引っ張り出す。

そしてその手薄となった所にフォルテのコスプレした暗殺猫ねーちゃんが襲撃する的な。

しかもこのフォルテクロス黒歌さんは本気出したら『認識されない程のステルス』が可能なので、不意を突くことに関しては右に出るものが居ないのだぜ。


その2
レイヴェルたんはポケモンガチ勢。

ちなみに、狂牛病ケンタロスってのは第二世代のみのアイテム『はかいのいでんし』をケンタロスに持たせた状態での名称。

永続混乱を条件にこうげきを2倍にするアイテムであり、ここからの『はかいこうせん』がやばすぎて、狂牛病なんて呼ばれるように……。


その3
『油断せず殺す』だとか『なにもさせずに終わらせる』だとか言いつつも、どうしても見下し癖のせいで隙だらけだった。

結果、全力モードで押し潰されるという……。









その4
関係が一応主従関係なのでレイヴェルたんの口調が現在こうなってますけど、ちょっと前まではツン一切無しのデレで一誠に引っ付いてたらしい。

なんなら頑張って年上っぽい包容力を身につけてあれこれしようとしてたとかなんとか。

つまり根っこは相当健気な子なんです。
……黒歌おねーちゃんもだけど。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。