色々なIF集   作:超人類DX

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目障りが居なくなってからはウキウキの筈だったが……


去った後で

 

 

 

 忌々しい連中を追い出せたという事でリアスはとても機嫌が良かった。

 生理的嫌悪する存在が近くに居ないだけでもこんなに清々しい気持ちになれるものかという程に気分も良いし、彼等が消えてくれた事で親友のソーナや眷属である小猫が誑かされる心配もない。

 

 大方二人もあの連中の詐欺まがいな言葉かなにかに騙されていたに決まっているのだから……。

 

 そんな事を独り思いながら、気分も新たに眷属達と共に登校をするリアスだが、何やら正門前に生徒達が集っており、何時もなら自分達を見るなり騒ぐ事もない。

 

 

「なにかあったのかしら?」

 

「なにやら揉めているような声が聞こえますわ」

 

 

 女王の姫島朱乃が正門に集まる生徒達の声から揉めているようだと言う。

 一体何が? そう思いながらリアスは眷属達と近付いてみると……。

 

 

「学園規則に乗っ取り、学園への持ち込みを禁止している私物は放課後まで預かりますので」

 

 

 『風紀』と『会長』の腕章を付けたソーナが正門前で登校する生徒達全員に対する持ち物検査を行っていたのだ。

 

 

「あ、あの生徒会長さん……。まさかこれも……?」

 

「没収です。

先代となる彼もそうしたでしょう?」

 

「い、いや……霧島の時は全員で無視してたので」

 

「でしょうね。

彼が学園を退学する事になった時、殆どの生徒達は清々したと宣っていましたし? ああ、そういえばどこかで見た顔と思ったら、確か貴女達はその霧島君を覗き犯呼ばわりしてましたね?」

 

「そ、それは……」

 

「……。まあ、そんな話を今ここでした所でなんの意味もありません。

とにかく、貴女達が退学してくれて清々した相手――つまり霧島君は貴女達を『話の通じない連中』と早々に見切りをつけていたから好き勝手できましたが、私が継いだ以上は一切の勝手は許しません」

 

『…………』

 

 

 風紀委員長の霧島一誠に反発して好き勝手していた殆どの生徒は、嫌味混じりに嗤うソーナの言葉に言葉を詰まらせてしまう。

 そんなソーナの姿に見ていたリアスはなんとも言えない顔だった。

 

 

「なにをしているのよソーナは……」

 

「聞いている限りでは風紀委員であった霧島さんとフェニックスさんのお仕事の肩代わりをしているようですが……」

 

「なんでソーナが連中のやってた事をしなければならないのよ?」

 

「恐らくは、彼女が生徒会長であるから……でしょうか。

風紀委員は彼と彼女の二人だけでしたので……」

 

 

 朱乃の推察を聞いたリアスは思いきり顔を歪めつつ、揉めている生徒達の後ろを通りすぎて正門をくぐったのだが……。

 

 

「そこの生徒達。

持ち物検査は済んでいない筈ですが?」

 

 

 通りすぎようとしたリアス達をソーナが呼び止めた。

 それにより強制的な持ち物検査で多くの私物の没収をされた生徒達もオカルト研究部の人達が居た事に気が付くのだが、妙に怖い生徒会長のせいでいつものミーハー騒ぎができず、逆に緊張の面持ちで固唾を飲まされる。

 

 

「………。私たちは校則違反になるような物は持ち込まないわ。知っているでしょう?」

 

 

 目が怖いソーナにリアスは遠回しに友達だから見逃せ的なニュアンスで話す。

 

 

「知りませんね、貴女達の事は? 例外等一切認めませんのでさっさと並んでください」

 

「……………」

 

 

 そんなリアスに対してソーナは呆気なく一蹴すると、他の生徒達のようにちゃんと並べと命じる。

 

 

「………。怒ってるの? 霧島君達の件を――」

 

 

 その言い方にリアスはフェニックス一派を追い出したから怒っているのだと解釈をするのだが、ソーナにとってその名は地雷だったのだろう。

 

 淡々としていたソーナの目がギラリと赤く縁取られた黄色の目へと変色すると、嫉妬・憎悪・怒りといった負の精神が凝縮されたかのような雰囲気が放たれる。

 

 

「いいえ? アナタ達のせいで余計な仕事が増えちゃったなんて思っていませんけど? 寧ろ感謝してるくらいですし? そんな事よりもさっさと並んで頂けるかしら? アナタ個人の話に付き合える程私も暇ではございませんから」

 

『…………』

 

 

 明らかに根に持ちまくってる言い方に、なにも知らない殆どの生徒達はオロオロとなる。

 結局今のソーナにはなにを言っても落ち着いて聞いてはくれないと思ったリアスは、とことん余計な事しかしなかったフェニックス一派――特に皮だけで中身は兵藤一誠と比べるまでもなく最低な霧島一誠に対する怒りを感じながら大人しく並ぶのだった。

 

 ちなみに、オカルト研究部は部室の方に私物を置いてあるせいか没収等はされなかったのだが……

 

 

「アナタはお菓子の持ち込み過ぎです……太りますよ?」

 

「ちゃんとその分のカロリーは消費してます……」

 

「……でしょうね? とにかく放課後まで預かりますので、放課後になったら取りに来てください」

 

「…………はい」

 

 

 小猫だけはお菓子ばっか持ってたせいで没収された。

 

 こうして生徒の殆どは居なくなってから初めて気付くのだ。

 先代――霧島一誠にある意味見逃されていたのだと。

 

 

「ぐ、一誠の時は見逃してくれてたのに……!」

 

「一誠の時だったら人妻系の動画で買収できたのに……! レイヴェルちゃんの時だって一誠の体操着姿の写真で買収できたのに……!」

 

「!? すいません、その話詳しく」

 

 

 個人的に一誠と仲の良かった元浜と松田もその中に入っていたとか。

 

 

 

 

 

 一誠先輩とレイヴェルが退学となってからの部長や兵藤先輩は確かに少しだけ機嫌も良い。

 けれど部長はどうしてもシトリー様と一誠先輩が仲良くしていたのが許せなかったのと、その尾を確実に引いている現状がとても面白くはないというのは見ていてもわかったし、兵藤先輩は相変わらずなにを考えてるのかがさっぱりわからない。

 

 わからないけど、その兵藤先輩に最近見張られている事が多くなった気もする。

 例えばお昼休みの時なんかわざわざ私の居る教室までやって来て、お昼ご飯を一緒に食べようと、私が良いと返事をする前に連れ出そうとまでする。

 

 以前はレイヴェルが居たせいか近寄りもしなかったのにだ。

 ………正直言って私はあの人が怖い。

 

 何を考えてるのかわからないし、私が一誠先輩やレイヴェルを気にすると、大袈裟な程に殺意を剥き出しにする。

 部長も皆もフェニックスの人達が嫌いなせいか、兵藤先輩の味方になるせいで私は従うしかできない。

 

 姉と再会できたあの日から、私はそれに息苦しさを感じてしまっている。

 

 

「シトリー様は眷属の人達に何か言われませんか? レイヴェルや一誠先輩と仲良くしようとする事に対して……」

 

「言われますよ? でも個人の交遊関係に一々口を出される謂れなんてありませんから、全て無視してます。

仮にこのまま眷属達に愛想を尽かされても知ったことじゃありません」

 

「…………。突き抜けてますね。

少し羨ましいです……」

 

「突き抜けても良いと思える程の人ですからね。

今まで一目惚れなんて概念は都市伝説だと思ってましたけど、体験した以上は……ね?」

 

「……。多分ですけど、先輩にはレイヴェルとか黒歌姉様が居ますよ?」

 

「だから? 女性が居るから諦めろと? 霧島君自体はそのお二人をそうとは認識していないようだし、そこに滑り込める余地はあるでしょう? それとも貴女は私を含めて霧島君がレイヴェルさんやお姉さんとアレコレしちゃうのを黙って見ていられます?」

 

「…………………………それはたしかに嫌です」

 

 

 皮肉にも、今までは単なるイチ眷属だったので多く関わることがなかったソーナ・シトリーとこうして放課後時間を作って二人で会って先輩やレイヴェル達のことを話す時の方が気楽に思えてしまっている。

 

 多分部長にバレたら怒られるじゃ済まされないと思うけど、先輩とレイヴェルが居ない今、この時間しか気楽になれない。

 それをこのシトリー様も察してくれている様で、二人で会う時は決まってこの風紀委員室の中だ。

 

 

「でもどうしてそこまで部長やしシトリー様の眷属の皆さんはフェニックスさん達を嫌うのでしょうか?」

 

「フェニックス家全体が既存の悪魔貴族達にはふざけているように見えるようですね。

確かに一見すると彼等は皆エキセントリックな行動が目立ちますから」

 

「シトリー様はこの学校以外で会ったことはあるのですか?」

 

「二度ほどね。

もっとも、その時は遠くから彼等の姿を見ていただけでしたが……」

 

「が……?」

 

「以前、霧島君が自身の主――ああ、レイヴェルさんに粗相を働こうとしたボンクラ悪魔を八つ裂きにして毒の沼に沈めてる光景なら見ましたね」

 

「あー……」

 

 

 楽しそうに冥界での一誠先輩について話すシトリー様に、私は何となくその時の先輩の姿が浮かんでくる。

 一誠先輩って学校ではレイヴェルと先輩と後輩の関係のようなラフな話し方をするし、きっと公衆の面前以外でもああなんだろうとは思っていた。

 

 でもそんなやり取りの中でもしっかりとレイヴェルを主として扱っている気もしていた。

 だからレイヴェルに少しでもふざけた真似をする輩は誰であろうが報復に出るのは実に想像しやすい。

 

 きっと黒歌姉様に対しても同じなんだろうなぁ……そう思うとちょっぴり悔しい気もする。

 

 

「そちらは大丈夫なの? 私は一応立場的に我を通せるけど、アナタは……」

 

「敢えて私からは触れないようにはしています……」

 

「そう……。

随分前に私に対して偉そうに『私は眷属を縛る真似はしないわ』なんて宣っていたのが、今ではああも縛り付けるなんてね……。

人は変わるとはよく言ったものよ」

 

「………。少し前までの部長だったらいくら嫌いな相手でもきっと追い出すなんて事はしなかったと思います。

兵藤先輩が眷属として入った時から少しずつ変になっていったような気がします」

 

「ああ、皮しか似てない彼ね。

そういえばいつの間にか眷属にしてたみたいだけど……?」

 

「ええ、あの人が神器を持ってた事で堕天使に命を狙われていて、その過程で仲間に……」

 

「へえ? 霧島君とアナタが話をしてただけの場面に割って入った時はてっきりアナタとそんな関係なのかと……」

 

「私が? ありえませんよ。

確かに最初はあまりにも似ていたので兄弟なのかと思ってましたが、育った場所もなにもかも違ってましたし、何より中身というか魂というか人格……精神? がハッキリと違います」

 

「その通りです。

でも案外彼はアナタが気になるんじゃないかしら? だからああも一誠君に……」

 

「…………。そんな事を言われても私に何を言えと……」

 

「ふふ、意地悪な質問だったわね? じゃあストレートに聞くけど一誠君のことはどうなの?」

 

「…………………。レイヴェルや黒歌姉様が居るし、私みたいなちんちくりんなんて興味ないですよきっと」

 

「案外ネガティブですねぇ……」

 

 

 そう。一誠先輩は私の事なんてなんとも思わない筈だ。

 寂しい気もするし悲しい気持ちにもなるけど、それが現実――

 

 

「でもネガティブな割りには、学園を去ったその日の夜に風紀委員室に忍び込み、一誠君が使ってて去る前に綺麗に掃除した机と椅子を早速『汚して』しまうのはどうなのかしら?」

 

「うぇ!? な、な、ななっなんのこと――」

 

「誰も居ない学校って開放的になるのかしらね? あんな切なそうな声で一誠君の名前を呼びながら自分で―――」

 

「あー!! あーあーあー!!! 知りません! そんなの嘘です! 幻ですー!!!」

 

 

 先輩はきっと私なんてなんとも思ってないのが現実だし、シトリー様がニヤニヤと意地の悪い笑みをしながら言ってくる話も無いったら無いのだ。

 

 

「はいはい、これ以上は言いませんよ? ええ、ええ……一誠君がロッカーの中に忘れていった仮眠用のタオルケットに全裸でくるまって悶えてた事も私の胸の中に秘めておきますからね?」

 

「ど、どこまで見てたんですかっ!?」

 

「あの日アナタがここでしていた事ならほぼ全部でしょうか? そのままアナタがそのタオルケットを持ち帰った所まで全部見てましたよ?」

 

「あ、あぅ……! だ、だって本当に寂しくなっちなって、ついここに来たら変な気持ちになって……」

 

 

 こうして私はシトリー様にからかわれながらの時間を過ごすのだった。

 

 

「試しにレイヴェルさんや黒歌さんに内緒に一誠くんにお願いしてみたらどうかしら? 退学した今なら制服も体操着も要らないでしょうし、言えば頂けるのでは?」

 

「も、貰ってどうしろと? 男子の制服なんか貰っても着れないし、体操着だってサイズがちがうし……」

 

「あらそう? それなら私が貰っても良いのね? ちょうど欲しかったから後で連絡して――」

 

「せ、制服はシトリー様に譲ります! だから先輩の体操着は私に譲ってください!!」

 

 

 ある意味素の自分になれる……そんな時間。

 

 

 

 

 

 

 そしてその頃、フェニックス邸の地下では……。

 

 

 

「ROUND2! ギアファイト! セットアップ!!」

 

「800億円のギア(設定)なめんなよ!」

 

「ガ○ダフェニックスの本気を見せてやる!」

 

 

 

 

 

「レディ………ゴー!!!」

 

 

単3電池の本気が見れるらしい玩具で元気にギアファイトしていた。

 

 

「覇王・翔龍擊!(必殺技)」

 

「シャイニング・ソードブレイカー!!(必殺技)」

 

 

 




補足

引き継いだソーたんが一切妥協しなくなったので、寧ろ先代の時の方が良かったのかもしれないという皮肉。

といっても後の祭りですがね。


その2
最近縛りがきつくなって割りと辛い白音たん。
これまた皮肉なもので、暗黒面を出し始めたソーたんとトークしてる時間が一番素になれるという、最高議長と若きアナキンさんのような関係に……。

となると、いずれはダース・ソーたんとダース・キャットという師弟関係に―――――なるのか?

文字通りアレコレしちゃってるのすら見られてるし……。



その3
その頃、退学して実家に戻ったライザー達は元気にギアファイト中だった。

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