色々なIF集   作:超人類DX

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後日談



終わりと始まり

 

 

 色々と想定外ばかりではあったし、依然として身内以外にバレる訳にはいかないままではあるものの、黒歌が長年近いようで遠かった妹さんと直接再会できたのは良かったのかもしれない。

 

 ただ正直言うと俺はてっきり前に黒歌が話してた通り、彼女は黒歌を今でも憎んでると思っていた。

 確かに本人も当初は相当複雑な感情があったみたいなんだけど、どうも僅かに俺やレイヴェルから感じ取れた、彼女にとっては懐かしい黒歌の匂いがあったお陰で少しずつその負の感情を削り取って行けたらしい。

 

 つまり、元々は人間から転生悪魔へとなってフェニックス家に住むようになった俺を経験の意味で人間界の学校に通う事になったという話も偶然ではあったとはいえ全くの無意味では無かった訳だ。

 

 

「頼む。まだ黒歌は悪魔社会の中を堂々とは歩けない。

だからそれまでは決して誰にも黒歌の事は秘密にしてくれ。

必ず黒歌の過去を清算させるから」

 

「我等の名に懸けて約束しましょう」

 

「はい……」

 

 それだけでも人間界に戻って来て良かったのかもしれない。

 仲間であり友人でもある黒歌の止まっていた時が再び動き始めてくれたと思いながら、再びの暫しの別れの挨拶を済ませる。

 

 

「姉を、よろしくお願いします……」

 

「今までと変わりませんわ。

ですが、任されました」

 

 

 レイヴェルとそう会話を交わす妹さんが俺を見る。

 

 

「先輩もお気をつけて……。

これはただの独り言ですけど、あの一件から兵藤先輩が異常にも思えるくらい先輩を憎んでます」

 

「なんとなくそれは感じてた」

 

「あの人は部長が惚れ込む程に強い力を持ってます」

 

「だろうね。

そんな気もしてる」

 

 

 わざわざ俺にも忠告をする妹さんに、俺は内心『恐いくらいに昔思い知ったから嫌でも知ってるぜ』と思いながら彼女の話を聞きつつ、ふと疑問が沸き上がる。

 

 そういえばレイヴェルと黒歌が言ってたし、俺はそんな馬鹿なと信じちゃいなかったのだけど、何でこの子とシトリー先輩さんはこんな親切というか、友好的なんだろう。

 自慢にもなりゃあしないが、俺とライザーの兄貴は基本的に初対面の相手にはほぼ間違いなくいい印象を持たれない。

 

 レイヴェルは例外として、黒歌ですら最初はかなりツンケンされたくらいだ―――――って、ありゃあ小遣い欲しさに俺が襲撃かけたから嫌われるのは当たり前なんだけど。

 

 

「……? えっと、私の顔になにか?

そ、その……そんなに見つめられると緊張してしまいまいますよ」

 

 

 

 つまり俺はほぼ嫌われやすい星の下に生まれたというか、そんな運命をねじ込まれた体質だったりする。

 それなのにどうしてシトリー先輩や黒歌の妹さん――てか塔城さんは少し違う感じなのかがわからん。

 

 

「しかし今後はそう簡単に会えなくなるのは寂しいですね。

ふむ、携帯はお持ちですか? お持ちでしたら是非交換をしたいのですが……。

もし交換して頂けたら――――給食センターで働く主婦的なコスプレをした写真とか撮って送れますし?」

 

「これ以上ウチの一誠の性癖を歪めないで欲しいのですが……」

 

「ただでさえ根はヘタレなのに、性癖まで完全に拗れたら難易度が跳ねあがるにゃん」

 

 

 元々俺はグレモリーさんの眷属というのもあって殆どこの子とは関わりを持たなかったし、シトリー先輩の場合は単に委員としての仕事上で多少の関わりがあった程度なんだ。

 

 それなのに、黒歌とレイヴェルの話がマジならばこの二人は寧ろ好意的に接してくれる。

 なんだろうな、最低なんだろうけどどうしても裏がなかろうかと疑ってしまう――――と思ってたのだけど、俺は黒歌と話をしてる塔城さんを見ていてふと気付いた。

 

 そういや俺とレイヴェルから微かに黒歌の匂いがしていたって言ってたな。

 それってつまり俺から黒歌を察知していたから気になってたって訳で、俺自体は割りとどうでも良いのかもしれないって事に。

 

 そう考えると辻褄も合うし、納得もできたし同時にモヤモヤしていた気分が一気に晴れた。

 普通に考えりゃあ当たり前だわな。

 

 うんうん。

 

 そしてシトリー先輩は多分趣味が合う相手とやっと会えたって意味でテンションが上がってただけに違いない。

 ………さっき俺の手を掴んで、レイヴェルと黒歌に比べたら慎ましい胸を押し付けてきたのもきっとテンションが上がってる故の一時的なノリに違いない。

 

 そうでなければ俺のような端から見たらワケわからん『消え損ない』になんか興味なんて持つわけもない。

 

 

 はー……なんだかスッキリしたよ。

 

 

「ふっふっふっ……」

 

「? 一誠君……?」

 

「どうしたのですか突然?」

 

「いや、今までの疑問が一気に解けたせいか、ちょっと気分爽快なだけだぜ……!」

 

「「疑問……?」」

 

 

 ………。若干むなしい気分なのはきっと気のせいだよ。

 わかりきってた事だしな。

 

 

「……。多分、今一誠は盛大に的外れな結論に至ってるわ」

 

「ライザーといい、自己評価が低すぎて他人からの好意や親切を疑ってかかるもんね。

………ホント、拗らせまくってるにゃん」

 

 

 寧ろグレモリーさんとかシトリー先輩の眷属さん達の態度が正常だもんな! なっはっはっ~!! ………ちくしょう。

 

 

 

 

 勝手にネガティブ解釈で無理矢理自己解決した一誠は、白音とソーナにお願いされる形で連絡先を交換することに。

 

 

「俺達と連絡先を交換したなんてバレたら面倒なんじゃ……」

 

「そんな事にまで口を挟まれる謂れなんてないと思ってますので」

 

「接触は禁止でも連絡を交わすのは禁止とは言われてませんから」

 

「それで納得してくれるとも思えないけど……」

 

 

 白音は自分から黒歌の気配があったから気になってたに過ぎない。

 ソーナは趣味がど真ん中ストレートで合ってテンションが上がったから……と他からの好意をとことん疑う一誠がそんな結論になってるとは知らない二人は、周りからの目なんて気にしないからと一誠とレイヴェルの二人と無理矢理連絡先を交換するのだが、黒歌はそもそも携帯を持たなかなったので、黒歌との連絡は基本的に一誠かレイヴェルを介するという形となった。

 

 

「あ、そうだ。

この風紀委員長と副委員長の腕章、生徒会長の先輩に渡しておきます」

 

「こんな形で風紀委員会を崩壊させてしまって申し訳ありませんでした」

 

「そこまで責任を感じる必要はありません。

大丈夫です、後任が決まるまではお二人の代わりを私がやりますから」

 

 

 改めて最後の挨拶を交わした際、一誠とレイヴェルが其々持っていた風紀委員の腕章を各委員会の上の位置に属する生徒会の会長であるソーナに返却する。

 

 どうやら後任が決まるまではソーナが風紀委員会の運営を維持させるつもりらしい。

 

 

「心配しなくても大丈夫です。

ええ、お二人を退学にさせた以上、今後リアス・グレモリー達が違反をした瞬間――クックックックッ!」

 

『……』

 

 

 それどころか妙に張り切っている始末であり、薄気味悪く嗤うこの時のソーナの瞳が赤く縁取られた黄色に変色したような気がしたという。

 

 

「短かったなぁ……風紀委員」

 

「後継者を見つけられなかったのが少し心残りだったわね」

 

「そこはシトリーに任せるしかないでしょ。さ、帰ろう!」

 

 

 こうして短かった人間界での生活は終わりを迎え、霧島一誠は風紀委員を引退する。

 そして彼は戻るのだ……。

 

 

「堅苦しい格好は苦手なつもりだったけど、燕尾服(コレ)を着るのも慣れちまったぜ」

 

 

 レイヴェルを守る眷属。そして執事へと。

 

 

第一章 風紀委員長と鳥猫さん――終

 

 

 

 

 

 

 

 見捨てられし元シスターを連れて実家へと帰還せし時、待っていたのはフェニックスの家族達だった。

 グレモリーとの関係性を悪化させただけではなく、退学となった事に対するお叱り――――

 

 

「よくぞ帰って来た我が息子&娘達よ!」

 

 

 なんてものは無く、帰って来たライザー達を家族総出で出迎えた。

 ライザーの実家の規模に少々圧されてしまうアーシアもフェニックス家の面々は熱烈大歓迎だった。

 

 

「話は聞いていた。

やっとライザーが信頼できる相手を見つけたと!」

 

「今夜はごちそうです! どんちゃん騒ぎですよ!」

 

 

 特にライザーが眷属を持った事が――というよりは眷属にしようと思えた相手と出会えた事が余程嬉しかったのか、現当主夫婦と上の兄二人は変なコスプレまでして大騒ぎをしていた。

 

 具体的には何故か野菜の着ぐるみを着て……。

 

 

「ほ、本当にユニークな方々ですね……?」

 

 

 そのあまりのファンキーさ加減に、ライザーとの出会いによって抱いていた悪魔のイメージが更に変わってしまうアーシア。

 そればかりか……。

 

 

「と、いう訳で帰還記念レースを行うぜ!!」

 

 

 その当主であるおっさんが、赤と青の派手なレーシングスーツみたいな衣装と変な肩パッドという貴族のダンディズムをそこら辺に投げ捨てた出で立ちとなった時は、アーシアは『ほかの悪魔の方もこうなのでしょうか?』とおかしな偏見を持つようになったとか。

 

 

「実況はこのシュラウド・フェニックス改め、ミ○四ファイターだ!

さて、早速第一レースを行うが今回のコースは基礎のコース――つまり純粋に速さを競う!」

 

 

 つまる所、フェニックス家の者達の趣味もまたそっち側に染まっているのだ。

 

 

「第一レースの注目はこの度ライザー君の眷属となったアーシアちゃんだ!

そして対するはライザー君と一誠君と黒歌ちゃんだぜ!」

 

「あ、あの……この車の玩具を走らせたら良いんですよね?」

 

「そうだ。

取り敢えず俺達も初心者のアーシアちゃんに合わせたカスタマイズにするから、気楽にやってみなさい。

というわけで頼んだぜ――俺のフレイム・フェニックス!!」

 

「行くぜ、俺のソニック・ドラゴン!!」

 

「駆け抜けろ、私のサイクロン・キャット!」

 

「あ、え……!?」

 

 

 しかもよくわからないまま参加させれているアーシアの目の前で、取り出したマシンを前に見せつけるように掲げ、無駄にポーズを決めながら其々がマシンにつけた名を言うものだから、取り敢えずアーシアも即興で名前をつけて真似をすることに。

 

 

「お、お願い……! 私のマグナムセイバー!!」

 

 

 とポーズも決めたアーシアだけど、とても恥ずかしかったとか。

 

 

「はぁ、皆して子供ね」

 

 

 そんな様子をレイヴェルだけは冷静にちょっと呆れながら見ていたのであったとか。

 

 

第二章・執事君と鳥猫さん




補足

拗らせてるせいで、自分に向けられ親切心や好意をどうしても疑ってしまう。


その2
マジギレすると、目がダークサイドになるとかならんとか。


その3

帰還してまずやったのがなんとレースだったらしい。

当主さんはミニ四ファイターのコスプレをしてノリノリで実況をするらしい。

……わからない方はポケサーファイターのあのノリだと思ってほちぃ

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