色々なIF集   作:超人類DX

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過去を経て今となってる為に、甘さがまるでなく、敵は敵と容赦無し。

ただし、仲良くさえなれればお人好しモードばっかり。

それがフェニックス達





男女平等なフェニックス

 

 

 

 妹を――そして自分自身の命と自由を守る為に一線を越えた日から追われる身となった。

 自分の選んだ道に後悔は勿論なかったけど、逃げ続ける事に少しだけ疲れ始めたある日。

 

 久々に悪魔側の追っ手が私の前に現れた。

 

 

「ビンゴォ……! 手配の写真通りの女はっけ~ん」

 

 

 幾度となく返り討ちにしてきた連中と同じような台詞を言いながら現れたその追っ手に私は少し驚いた。

 何故なら追っ手の連中は殆ど大人だったのに、私の前に現れたそれは私とそう変わらないのかもしれない子供だった。

 

 とはいえ、ニヤニヤと見つかった私を見ているそんな少年を当初を他の連中と変わらないと思ったし、手心なんて加えていたらとてもじゃないが生き残れない。

 既に一線を越えすぎた事で色々と荒れていた私は、例え相手が子供であろうともいう気持ちでその少年を排除する事を選んだ。

 

 

「ぐっ……! マジか……!

小遣い稼ぎのつもりで高い賞金掛かってたのを選んだけど、思ってたより強いぞ……!」

 

『だから慎重に選べと言っただろうが。

金に目をくらませるからだぞ』

 

「仕方ないだろ!『で◯じゃら◯じーさん・怒りのおしおきブルース』がどうしても欲しかったんだからよ!」

 

『それなら下級ランクのはぐれにしておけば良いだろう。

わざわざSS級なんぞ選ばんでも買えるというに。しかも値崩れした中古品で』

 

「お釣りでゲームボーイ◯ドバンスSPもほしかったからな! 充電式の電池要らず! しかも暗いところでも遊べるライト付きだぜ!? 欲しいに決まってんだろ!」

 

『…………。微妙に古いしそれも中古で―――まあ良い、わかったからとにかく目の前のはぐれに集中しろ。

今のお前の力量では気を抜くと死ぬぞ?』

 

「わかってらぁ! 絶対勝つ!!」

 

 

 その男の子は神器使いだったわけだけど、その神器の意識と会話なんてできている辺り、相当に鍛え込んでいるのがわかった。

 その時は今までの追っ手と比べても思っていたより『強い』と焦りを感じたので気づかなかったけど、その男の子は二天龍の片割れを宿していた。

 

 

「うごっ!? に、にゃろ……流石SS級のはぐれ悪魔……中々やるじゃんよ?」

 

「はぁはぁ……しつっこいなぁ……! さっさと倒れてよ!」

 

「嫌だね、キミを取っ捕まえたら小遣いが手に入るから、その金でじーさんのゲームとゲームボーイアド◯ンスSPを買うんだ……! だからお前こそさっさと捕まれ!」

 

 

 当時の実力差は僅かに私が勝っていた。

 けれど何度張り倒しても立ち上がってくるゾンビみたいなタフネフさに私は少しずつ体力を消費させられてしまい、段々と焦りと恐怖を感じ始めた。

 もし捕まったら私の人生はそこで終わると。

 

 罪がさらに重くなるかもしれないけど、ここで捕まる訳にはいかないと、私はこの男の子を『殺す』事にした。

 

「悪いけど今アナタに捕まる訳にはいかない。

だから――――殺す!」

 

 

 生き別れた妹が別の悪魔に拾われたという情報を手に入れた私は、その主がどんな人物なのかを見定めるまでは死んでも死にきれない。

 もし私達を道具以下に扱った奴等の様だったら、なんとしてでもあの子を助けなければならない。

 

 だから死ぬわけにも捕まるわけにもいかなった私は全力を以てこの男の子を殺す為の力を練り上げる。

 

 

「お、おいおいマジか……まだあんなパワーを隠してたのかよ? これはちょっとヤバイ展開じゃんか」

 

『間抜けめ。

チッ、今ここでお前に死なれても困るし、切り札を使え』

 

「え、でもアレはかなり集中しないと――」

 

『補助は俺がしてやる、さっさとしろ!!』

 

「わ、わかったよ……」

 

 

 

 神器の意識に怒鳴られていて隙を見せている間に私はフルパワーとなり、勝負を終わらせる為力を溜めようとしていた彼の首を落とさんと一気に接近する。

 

 だけど全てが止まって見える程の薄く細い時間の中、男の子はこう言ったのだ。

 

 

 『――――裏禁手化・融合(フュージョン)モード」

 

 

 その瞬間、彼の身体から閃光のような光が放たれる。

 その光に私は一瞬だけたじろいだし、何をしたのだと驚きもした。

 けれどその前に確実に私が首を落とす方が速い――そう思って私は思いきり彼の首を落とそうと腕を刃のように一閃させた。

 

 でも……私の手は彼の首を落とせなかった。

 

 

『……………』

 

「なっ……だ、誰よアナタ?」

 

 

 光が晴れた先に立っていた先ほどの男の子の面影を僅かに感じる男の子の首の力に押し返された事で。

 まずい! と私は即座に距離を置こうと飛び退き、別人となった男の子を見て――圧倒される。

 

 

(さ、さっきまでとは別物レベルに力の波動が跳ね上がってる……!?)

 

 

 

 全身から迸る黄金の闘気を纏い、焦げ茶色であった頭髪は朱色に染まり、私や妹とは別質の――獲物を破壊する黄金の瞳。

 これまで戦った相手では見たことのなかった力に私は練り上げた力が抜けていく中、さっきまで聞こえた男の子の声と、神器の意思の声が二重となった声で彼は言った。

 

 

『俺は一誠でも赤い龍でもない。

俺は貴様を――捕縛する者だ』

 

 

 その瞬間、彼の姿がブレると同時に私の目の前まで急接近するとそのまま私の身体をすり抜けるように通りすぎたかと思えば、強烈な痛みと衝撃が私の全身を叩いた。

 

 

「ぐはっ!?」

 

 

 衝撃と音が後から伝わる程の速度で私を叩いた――という結論に達する暇もなく私の背後に立った彼は間髪入れずに振り返ると、本当に容赦なく私の後頭部に膝蹴りを二度叩き……。

 

 

『ハッ!!』

 

「かはっ!?」

 

 

 トドメとばかりに空中で一回転しながら私を蹴り飛ばした。

 

 

「がふっ……!」

 

 

 

 立っていられるのが我ながら奇跡なのかもしれないと思わされる程のダメージをたった数発で負わされた。

 そしてその場に着地した彼は膝も足も――というか全身が震えて動けなかった私の目の前で赤い籠手が纏われている左腕を高々と掲げながらゆっくりと私の方へと向き、虹色に輝く球体を生成した。

 

 

『……………』

 

「こ、の……!」

 

 

 死ぬ。

 その虹色の球体を見た瞬間私の本能はそう告げた。

 この時もしも逃げていたら私の運命は違っていたのかもしれない。

 けれどこの時の私は逃走を試みた所で追われて殺されるだけだと思った。

 

 だから私は最後の力を練り上げながら、せめて一太刀浴びせてやろうと片手を掲げて生成した虹色の球体を握りつぶすように掴んだ彼へと走った。

 

 

「う……あぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 必死だった。

 死にたくはなかった。

 でも負けたくもなかった。

 

 

『フンッ!』

 

 

 そんな気持ちがぐちゃぐちゃに混ぜられた私は無謀にも突っ込んで行ったのだけど、その手に輝く虹色の光が私に向かって投げられた瞬間……私の意識はそこで無くなった。

 

 

『………』

 

 

 これが彼との――一誠との出会い。

 まあ、その後はお察しの通り、どうも私が意識を失っている間にずっと譫言で白音の名前を呼んでいたのが気掛かりで一誠の主――つまりレイヴェルとライザーに連絡をして連れ帰り、フェニックスの涙で回復して意識を取り戻した私に色々と聞いた事で突き出すのは止めてそのまま解放されたんだにゃん。

 

 で、まあ紆余曲折あって異端のフェニックスと呼ばれるこの人達なら大丈夫なのかもとか思って最初はレイヴェルのボディガード的なアルバイトをするようになって、その内一誠と同じくレイヴェルの眷属になったわ。

 

 そこからは一誠がなんでああも異質に強かった理由がわかったり、主のレイヴェルも異質に強くて伸されたり、その異質さを獲る為にライザーの訓練に参加したりしたお陰で今の私になれた訳で……。

 

 

「うーん、仙術を扱える者は結構レアなんだけど、リアス・グレモリーさんじゃあ教えられないだろうし、今の白音の実力は妥当だと思うにゃん」

 

「どうにかして教えてあげられたら良いのだけど……」

 

「自衛の手段という意味でもちゃんと体得はして欲しい―――って、あれ? レイヴェルが白音について考えてくれるなんて珍しいにゃん?」

 

「………へ? あ、いや別に彼女がどうとかではないですわ! そういった心配の要素をなるべく無くした方が黒歌さん的にも宜しいのではと思っただけで……」

 

「ぎゅってして良い?」

 

「ちょ!? 聞きながらしないでください! ま、まったくもう……!」

 

 

 生きることは逃げないことと教えてくれたフェニックスの皆と一誠が私は大好きだ。

 

 

 

 

 

 悪魔。

 アーシアにとってその存在は自分の生き方をねじ曲げる理由となった種族である。

 そして神を信じる身としては深く関わるべきではない存在だ。

 

 一度目は知らずに神器を使って傷を癒してしまう事で異端と揶揄され。

 

 二度目は親切にしくれた人の正体が悪魔で。

 

 自分は悪魔との関わる運命があるのか、それとも悪魔と関わる事が主からの試練なのか。

 それはいくら祈っていてもアーシアにはわからない。

 

 

 わからないが、ただひとつ学んだ真実は悪魔であろうと人間であろうと、そして堕天使であろうと、親切な悪魔もいれば不親切な人間も居るし、残酷な堕天使も居る。

 

 その真実に辿り着いたアーシアは、自身の神器が自身を迎え入れてくれたと思っていた筈の堕天使によって引き抜かれ、その命の火が尽きる寸前であった。

 

 

(結局あの後、ライザーさんと一誠さんとは会えなかったなぁ……。

会って……もう少しだけで良いからお話がしたかったなぁ)

 

 

 酷い悪魔も居れば、お人好しな悪魔も居る。

 そしてそんなお人好しな悪魔ともう一度だけでも良いから……。

 それが命が尽きるアーシアの最後の『自分自身の願い』だった。

 

 

 

 

 

 

 堕天使がついに自身の領土で『ルール違反』を犯した。

 その報告を受けたリアスは当然今回の件に堕天使の上層部が絡んでいるのかを調べ上げ、なんなら当人に問い合わせた所『その連中が勝手にやった』という保証の言葉を取った。

 

 この時点でリアスの行動はひとつ――その堕天使を町から排除する。

 故に何故かその報告と同時に一人勝手に堕天使の巣窟へと乗り込もうとした兵藤イッセーを宥めながら町外れの教会へと乗り込んだリアスだったが……。

 

 

「……これは」

 

 

 中を開けたその瞬間鼻腔を刺激する血の臭い。

 そしてはぐれ者であろう無数の悪魔祓いの死体にリアス達は顔を歪めた。

 

 

「殆どが悪魔祓いと思われる死体です。

中には二体程堕天使の死体もあります……」

 

「誰がこんな事を……?」

 

「わかりませんが、相当な手練れの者と見て間違いはありません」

 

 

 全身が破壊された死体。

 首の無い死体。

 顔が潰されている死体。

 中には身体のパーツが殆どない死体もあった。

 

 そういう趣味があるのか、はたまたそれほどまでの怒りを向けていた故なのか。

 リアス達は堕天使達よりも大きな脅威の予感を感じながら中へと進んでいくと、最後尾をついていていた小猫が突然口を開く。

 

 

「あの人の匂いがします……」

 

「あの人?」

 

「はい……」

 

 

 あの人とは誰の事だと聞き直そうとするリアスだったが、前への出てきた小猫がズンズンと時には横たわる死体を踏み越えながら祭壇の部屋の扉を開け放つ。

 そしてリアス達は目を見開いて驚愕した。

 

 それは祭壇に横たわる少女の亡骸の前で、媚びるような命乞いを二人の青年にしている排除対象の堕天使のリーダー格であるレイナーレ。

 

 そしてそんな命乞いを冷めた目で見下ろす二人の青年――ライザー・フェニックスと何故か燕尾服を着た霧島一誠だったのだから。

 

 

「お、お願い! 命だけは! 命だけは助けて! この町からも消えるし、なんならアナタ達の下僕にだってなるから!」

 

「話にならんな堕天使? 俺達は悪魔風情じゃあなかったのか?」

 

「それにテメーはそんな命乞いすらさせずにあの子をだまくらかして神器抜いて殺したんだろ?」

 

「そ、それは……! 私はどうしても至高の堕天使となってアザゼル様の寵愛が欲しかったの! でもそれも諦める! 強い貴方達の為に――ぎゃっ!?」

 

「男相手に媚びた台詞でも宣えば助けて貰えるとでも思ったか? 笑わせるなボケが」

 

 

 命乞いをするレイナーレを冷めた目で見下ろすライザーと、そんなレイナーレの顔面をサッカーボールでも蹴るかのように蹴り飛ばした一誠。

 情けない声を出しながら吹っ飛ばされたレイナーレが入り口で見ていたリアス達の足元に転がる。

 

 

「!? り、リアス・グレモリー!?」

 

「これは……どういう状況なのかしら?」

 

「た、助けて! グリゴリに関する情報を提供するから、私を殺さないようにあの悪魔二人に言って!!」

 

 

 ライザーと一誠に話が通じないと理解し、リアス達が居るとわかった途端今度はリアス達に助けを求めるレイナーレ。

 しかしそんな命乞いを無視するリアスは寧ろ先日の話を反故にしてここまで『勝手』をやっているライザーと一誠に怒りを向けていた。

 

 

「アナタ達、何故勝手な事をしたの……!?」

 

 

 リアスから殺気が放たれると同時に、兵藤イッセーからも殺意が向けられる。

 そんなリアス達に対してライザーと一誠は其々ゴキリと首の関節やら手首の関節を鳴らしながら答えた。

 

 

「ここに堕天使が住み着いていた件は俺も把握していた。

別にそれで何もしなければキミ達の手前もあるし俺もスルーはするつもりではあった」

 

「しかし困った事に、そこで震えてる堕天使の女と一派である悪魔祓いが私とライザー様を滅しようと襲い掛かって来ましたので、抵抗をさせて頂きました」

 

 

 あれだけの死体を量産させておきながら反り血の一滴も浴びていない二人は尚続ける。

 

 

「加えて今日は色々と大変な一日で頗る機嫌が悪くてな」

 

「つまりこの連中は単に運が悪かった―――それだけの事です」

 

 

 そう反省の色無しで理由を話したライザーと続いて一誠は祭壇に祭り上げられているように横たわる少女――アーシアの亡骸に近づくと、その亡骸を慈悲深げに抱える。

 

 

「だが俺達は行動が遅すぎた。

お陰でこの子が死んだ」

 

「仰りたい事はわかります。アナタ方は立場もあるから迂闊に動くことができない。

だからこそ立場が軽い我々がもっと早くに動くべきであった……」

 

『………』

 

 

 その一連に動作はひとつの失った命への敬意すら感じてしまう程に優しかった。

 しかしリアスはどうしても認めたくはなかった。

 

 認めてしまえば自分の中の何かが崩れてしまう気がしたから。

 

 

「だから退いてくれ、その堕天使はここで終わらせる」

 

「ひっ!?」

 

 

 放たれる強烈な威圧感も。

 自分よりも上であることを認めてしまう事になるから――

 

 

「た、助け――――――」

 

 

 だからリアスはバアル家である母の家系から受け継いだ消滅の力で二人より先にレイナーレをこの世から消し飛ばした。

 

 

「後日アナタ達に話があるわ」

 

「………まぁ、そうだろうな」

 

「覚悟はしております」

 

「………私を恐れないって訳ね。

そういう所が気にくわないのよ」

 

 

 当初の目的であるレイナーレの始末は自分の手で済ませたリアスは、毅然としている一誠とライザーにハッキリと嫌いだと言い放つ。

 この場には居ない、ライザーの妹のレイヴェルも含めて。

 

 しかしそれよりも気になるのは、神器を一度は抜かれて死んでしまったあのシスターだ。

 聞けばあのシスターは悪魔すら治療可能な、レイナーレが欲するだけの神器を保持している。

 

 

「その子はどうするの? 神器を抜かれたようだけど」

 

「キミが始末を付けた堕天使から奪い返してこの子に戻したが、やはり命までは戻らなかった」

 

 

 そうなんとも言えない顔で話すライザーにリアスは内心しめたと思う。

 つまり今蘇生させる手段を講じれば、ひょっとして回復の神器を持つ者をこちら側に引き込めるかもしれないのだから。

 

 

「部長、まだ悪魔の駒は残ってますよね?」

 

「ええ、僧侶と騎士と戦車がひとつずつね」

 

 

 どうやら傍で聞いていた兵藤イッセーもその結論に至ったらしく、訊ねられたのでリアスは頷いた。

 

 

「ライザー、そのシスターをこちらに渡して貰えないかしら? 今ならまだ――」

 

 

 兵藤イッセー自身が向こうに悟られない様に配慮してか小声だったので二人には聞こえていない。

 ならば気付く前にあのシスターを自分の――そう考えると同時にライザーに話をしようとした瞬間。

 

 

「あ、そうだよ悪魔の駒使えば良いじゃんか兄貴?」

 

 

 声も容姿も似てるが中身が根本的に違ってて寧ろライザー並に気にくわない霧島一誠が思い出したようにライザーに言ってしまった。

 

 

「…………チッ!」

 

「は?」

 

 

 その瞬間反射的にリアスは大きな舌打ちをしてしまい、一誠にキョトンとされてしまった。

 親友で幼馴染みのソーナと仲が良いのがとにかく気に入らない理由だったりするリアスからしたら、自分の道の邪魔をするお邪魔虫にしか思えないのだ。

 

 

「兄貴は駒をフルで持ってるだろ?」

 

「一応な……しかしこの子は神を信仰していたんだぞ? 悪魔に転生させてしまったら祈る事なんてできなくなる。

そうまでして彼女が生きたいと彼女が思うとは……」

 

「いやでもたい焼きだってまだ食べてないだろうしさ……。

レイヴェルと黒――とは同性同士で仲良くなれそうじゃん」

 

「………」

 

 

 グチグチ言ってないでとっととそのシスターを置いて帰れ……と内心毒づくも帰る気配が無い二人を睨み倒していたリアスだが、ふと横を見ると兵藤イッセーが霧島一誠を今にも殺しかねない形相で睨んでいるし、反対の横を見れば小猫が複雑な顔でアーシアの遺体を見ている事に気がつく。

 

 

「それによ、悪魔になって信仰ができないってんなら、俺が『なんとか』するって約束するよ。

それにこの子だって死ぬ覚悟すらできずに殺されたんだから……」

 

「…………」

 

 

 なんとかするの意味はリアス達にはわからなかったが、その言葉を聞いたライザーが漸く『わかった……』と言ってしまう。

 その時点でリアスはお邪魔虫の一誠を蹴り飛ばしたくなるのだが、それ以上に何故か兵藤イッセーが一誠に低い声で言う。

 

 

「お前らみたいな奴等にアーシアが眷属になったら不幸になるだけだ。

その子は部長が眷属にするから渡せ」

 

「あ?」

 

 

 そう言って一歩一歩近づきながら要求する兵藤イッセーにリアス達は訝しげな顔となり、言われたライザーと一誠は『何を言ってるんだお前は?』といった顔になる。

 

 

「ごめん、キミが何をそんなイライラしてるのか知らないけど、何でキミ等の眷属にする為に渡さないといけないのかがわからんのよ。

そんなに接点あったかキミ?」

 

「うるさい黙れ、その惚けた態度を今すぐやめろ」

 

「惚けてないし、ただの疑問だっての。

それにこの子がお祈りしても大丈夫だって保証できるのか? 俺達転生悪魔ですらその手の系統は頭痛と吐き気が凄いってのに」

 

「できるからさっさと渡せ!!」

 

「………………めんどくせーな。

おい兄貴、この話通じない奴は俺が止めるから早いとこアーシアを戻してやりな」

 

 

 胸ぐらを掴んできた兵藤イッセーのガン決まりしている目に『会話不成立』という結論を出した一誠が、気だるげにライザーにそう言うと、掴んでいた兵藤イッセーの手首を掴んで引き剥がす。

 

 

(こ、こいつ……!)

 

 

 その腕力に兵藤イッセーはギリギリと歯を食い縛りながら更に力を込めようとするも、掴まれた手を引き剥がせない。

 

 

「な、嘗めるな!!」

 

 

 そのどこか自分を見下して見透かしているような目も気にくわなかったが故に空いていた腕で思いきり一誠の顔面を叩く。

 

 

「アザになったらウチのじゃじゃ馬姫に怒られるし、困るんだけど……」

 

 

 けれど一誠は微動だにせず、反撃もせず腕を掴みあげたままめんどくさそうに言う。

 

 

「こ、の……!」

 

 

 焦った兵藤イッセーはそのまま何度も顔面を殴った。

 けれど結局一誠は動く事なく、ちょっと口を切って出血するか鼻血を出すだけでダメージを感じられない。

 

 

「あのさ、流石に痛いものは痛いんだけど……」

 

「………!」

 

 

 流石にここまで微動だにしないとちょっとした恐怖心が出てくる兵藤イッセー。

 生存していた時から焦りを感じていたのだが、その理由を直接理解させられた……そんな気がして。

 

 

「あ、あれ……わたし……?」

 

 

 結局そんなやり取りによってチャンスを奪われたリアス達は目の前でライザー・フェニックスの駒によってアーシアが蘇る様を見せられる事に。

 

 

「…………すまん、借りがあった身分だったのに結局キミを死なせてしまった」

 

「ら、ライザー……さん?」

 

「その責任は絶対に取る。

キミを眷属として扱うこと等決してしない事を我が名にかけて誓お――」

 

「ライザーさんに会えた……! 私の願いが叶いました……! ライザーさん!」

 

「………………キミは変な子だな。

俺は悪魔なんだぜ……? それにキミの人生の支柱も奪った……」

 

「でも会いに来てくれました! それだけで嬉しいんです……!」

 

 

 そう言いながら本当に嬉しそうに戸惑うライザーの両手を握るアーシア。

 

 

「ってて……絶対に明日もアザ残るわ。

バカスカ殴ってくれちゃって……まああんな戸惑ってる兄貴の顔見れたし、今日は許してやんよ兵藤君よ?」

 

「ぅ……」

 

「…………………このお邪魔虫」

 

「お邪魔虫ね……。

おたくの狙い通りにならなかったって意味でしょうけど ―――――それでも俺は悪くない。」

 

 

 そんなプチハッピーエンド的な空気の傍で不穏な殺気を飛ばすリアスは今回の件で霧島一誠が余計嫌いになるのであった。

 

 

「あの……大丈夫ですか先輩? その、血が出てます」

 

「へ? ああ、痛いけど大丈夫だ。

別に歯とかも折れてないし……」

 

「こ、これ……良かったら使ってください」

 

「ハンカチか……? でもそのハンカチ白いし、俺の血なんかついたら二度と使えねーじゃん」

 

「そ、そんなの気にしませんから……! そ、それに寧ろ血がついてた方が……」

 

「は? ………そこは姉妹だな」

 

「え……今なんて――」

 

「小猫! そんな男に近寄っちゃダメだと言ったでしょう!? さっさと帰るわよ!!」

 

「っ……。ごめんなさい、部長の命令が。

あ、あの……とにかく使ってください! それじゃあ!」

 

 

 自分の眷属の一人がその彼に対して好意的なのも含めてその全てが。

 

 

 

 

 

 

 そしてアーシアを連れて帰って事情説明をした時、レイヴェルに凄く怒られたのだった。

 

終わり

 

 




補足

初見で大分ボコボコにされた出会いだった黒歌さん。

ちなみに現段階だと大体力量は拮抗してる噂。



その2
なんもかんも例のクルクルパーな神父のせいだった。



その3

金髪比率が増えたとさ。


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