色々なIF集   作:超人類DX

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繋がる関係もあれば、その繋がりによって変に拗れる関係もまたあるのかも


タイミング悪し

 

 

 

 レイヴェルが家族以外の冥界の同族達には秘密にして匿っているSS級のはぐれ悪魔である黒歌と共に壮絶なる『女の修行』をすることで女としての磨きを上げた明くる日、どういう訳か兄のライザーと一誠がこれまで殆ど関わりが無かったリアス・グレモリーに直接呼び出されてしまった。

 

 ライザーの妹として、そして悪魔としては一誠の主として当然レイヴェルも呼び出された兄と未来の伴侶(レイヴェルが勝手に決めた)と共に学園の旧校舎にあるリアスの活動拠点であるオカルト研究部の部室に行って話を聞いてみると、確かに『悪魔として』という意味でライザーと一誠はやらかしている話であった。

 

 

「ライザー・フェニックス。

アナタがどういう人物であるのかは大体把握しているし、アナタの行動にもある程度許容はしていたわ。

けれど教会所属の人間にちょっかいを掛けるのは許容できないわ」

 

「………」

 

 

 ライザーは基本的に冥界貴族の間ではそれなりに名が覚えられている――無論悪い意味で。

 そしてその見た目のせいでとんだボンクラ貴族息子という風評も広がっている。

 

 事実ライザーは悪魔としてなら確かにボンクラと言えるのかもしれない。

 本能の赴くままに行動する様は他の悪魔としての自覚を持とうとする者達にとってはエキセントリックに見えるし、その行動の為には平然とルールを破るアウトローさもリアスが好ましく思わない理由の一つだ。

 

 なのでこの町の管理を実家より命じられている身としてはここで一度ビシッと言うべきだと考え、ライザーとそのライザーに行動からなにから似ている霧島一誠を呼びつけたのだ。

 

 

「ライザーだけではなく霧島君、アナタも転生悪魔として軽はずみな行動は控えていただきたいのだけど?」

 

「はぁ……」

 

 

 ライザーに続いてリアスはこの霧島一誠という転生悪魔を好ましくは思わなかった。

 最初は信じられないと驚いた程に似ていた自身の兵士である兵藤一誠の『お行儀の良さと頼もしさ』を知っている分余計に目に余るのだ。

 

 この男の軽はずみな行動によってただ似ているだけでウチの一誠に迷惑がかかるのは我慢ならないし、何より一番気にくわないのは、この目の前で無遠慮にお茶を飲んでは、自分の女王であり今現在微妙に顔がひきつってる姫島朱乃にお茶のおかわりの催促を図々しく頼んでいる霧島一誠を親友であるソーナが好ましく思っている所だろう。

 

 ソーナの姉であり魔王の一人である彼女がああも軽い反動なのか、小さい頃からソーナは真面目で大人しい少女だった。

 そんなソーナが何故この男と波長が合っているのか――――実はソーナ自身も割りとエキセントリックな性格であることを全く見抜けなかったリアスは、ちょっとした嫉妬心も交えて霧島一誠という男が気にくわないので、つい強めの口調となってしまう。

 

 

「一誠、はしたないですわよ」

 

「へ? あ、いや怒られると緊張して喉がカラカラになるもので……」

 

 

 主であるレイヴェルもレイヴェルで口では眷属である霧島一誠を注意するけど、明らかに口だけでなのは見て取れる。

 つまりレイヴェル・フェニックスは自分に対する敬意を持ち合わせていないという解釈をするリアスは、それを含めてフェニックス家という異端一族が個人的に好きではないのだった。

 

 

「要するに今後は彼女とはなるべく会うのを避けて、もし会っても適当な理由ですぐに離れれば良いのかい?」

 

「ええ、アナタ達が変な真似をしたことで天界側との外交問題になったら責任なんて取れないでしょう?」

 

「確かに。

すまなかった、妹と義弟が人間界の学校に通えるのはキミ達一族のお陰だというのに、その恩に砂をかけてしまったようだ」

 

「…………わかれば良いのよ」

 

 

 ライザー本人は頭を下げながら謝罪するが、それが意味の無い謝罪であることはリアスはわかっていたが、そこをつついた所で今は無意味なのでこの場は取り敢えず矛を収める事にして話を終わらせる。

 自分も含めて眷属達もこのフェニックス一派は苦手なので、無駄に仲良く談笑しながらお茶を飲むなんて無理なのだから。

 

 

「……今まで大人しくしていたかと思えば、厄介な事をしてくれるわねフェニックスは」

 

「彼等は知っているのでしょうか? 例のシスターの背後にいる堕天使達の事を?」

 

「さてね、けれど問題はそこではないわ。

フェニックス一族に私が管理をしている町の中で騒ぎを起こされたくはないの」

 

「フェニックス家で最も異端な三男……ですか」

 

 

 ライザー達が出ていった後の部室にてリアスが愚痴のように溢す。

 せっかくフェニックスの三男を大人しくさせているという点で上の者達からの覚えがめでたかったので、ここで騒ぎを起こされたくはないというのがリアスの本心でもある。

 

 そうでなくても個人的に気にくわない訳で……。

 

 

「? 小猫はどこに?」

 

「さっき出ていきましたけど、トイレでは?」

 

「…………」

 

 

 そんなモヤモヤした気分を抱えてきたせいで見落としていたリアスは、自身の戦車が忽然と姿を消した事に気づくのだが、騎士である木場祐斗の言葉に納得して少し冷めてしまったお茶を静かに飲むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「私達が修行をしていた間にその様な者と遊んでいたとはね……」

 

「や、遊んでた訳じゃないぞレイヴェル。

最初は道に迷ってたところをライザーの兄貴が一緒になって探しただけだし、昨日も向こうから話しかけて来たから応対したってだけだ。

そしたらその子――ああ、アーシアって子が腹空かせてたみたいだからたこ焼きを奢ったってだけで、変な事なんてしちゃいないぜ? なぁ兄貴?」

 

「まぁな。ただ俺達が悪魔である以上は、グレモリーのお嬢さんの言い分もわかる。

今後はなるべく避けるべきだし、その方が彼女にとっても良いことだ。

そもそも自分がたこ焼き奢られた相手が悪魔だってバレたら色々と彼女の周りもうるさくなる」

 

「…………。確かに偶然の出会いなようですわね」

 

 

 改めて説明するライザーと一誠にレイヴェルは取り敢えず納得することにした。

 他人を疑う癖に、他人が本当に困っていて助けを求められたらついお助けしてしまう程度にはお人好しな二人の事だから、きっと流れでそうなってしまったのだろう。

 

 

「まったく、他人を疑う割りには変にお人好しなゆだから」

 

 

 二人の精神性をよく理解しているレイヴェルは『仕方ないわね』と苦笑いを浮かべてあげる事にした。

 

 

「取り敢えず今日は帰るか? 委員会の仕事ってのが残ってるなら先に帰るけど」

 

「生徒も殆ど下校してる時間だし、報告書を生徒会に提出して俺達も帰るわ」

 

「同じく」

 

 

 結局どこまでもマイペースなまま今後は気を付けようで済ませて今日のところは帰る流れに話が向かっていたその時。

 何者かが後ろから『先輩』と呼ぶので振り向いてみると、そこには先ほど部室で会った時は一言も話をしなかったリアスの戦車こと小猫が居るではないか。

 

 

「塔城さんじゃないか、どうした?」

 

 

 黒歌の妹という認識しか今の所ないライザーが対応を一誠かレイヴェルに任せると言わんばかりに一歩下がるを流し目で確認しながら、一誠がどうしたのと尋ねる。

 

 今回改めてリアス・グレモリーとその眷属達には苦手に思われていると察知した手前、唯一そうでもないこの後輩さんに話しかけられている所を見られでもしたら、自分達はどうも思わないにせよ、この少女の立場が微妙に悪くなってしまう気がする。

 

 

「さっきの事ですけど、先輩達は本当に例のシスターとは関わりませんか?」

 

「?」

 

「何が言いたいのかしら?」

 

「……。もしこれ以上部長の意に添わない真似をしたら、最悪部長が実家に掛け合って先輩達を町に滞在させることを禁止にするって……」

 

「おおっと? 思いの外嫌われてたっぽいな」

 

 

 

 どうやらリアスが眷属達に呟いていたせいで心配になったので確認をしに来たらしく、それを聞いた一誠とライザーは『あちゃー』と自分達の嫌われっぷりに変な笑いが込み上げてしまう。

 

 

「禁止になったらなったで大人しく退学して実家に戻るまでですわ。

そもそも人間界の学校に通う理由も元は人間であり、冥界での暮らしの方が長くなってしまっている一誠に人間界の暮らしを経験させる為でしたし」

 

 

 ヘラヘラと危機感0で笑う一誠とライザーに呆れつつレイヴェルがそうなればそれまでだと返すと、小猫は今は見えない猫の耳がしゅんと垂れ下がっているかのように俯いてしまった。

 

 

「そんなの……私は嫌だ。

だってやっと先輩と仲良くなれたし……」

 

「え、俺?」

 

「それなら尚更実家に戻りたくなってきたわね」

 

 

 確かに通信対戦して結構楽しかったけど、それでそこまで仲良くなれたとは思ってもなかったらしい一誠が割りと驚き、同じく聞いていたレイヴェルも内心『そこで姉妹らしさを出してきたか』とムッとしたのだが……。

 

 

「それに同じクラスのフェニックスさんとだって友達になれるかもしれないと思ったから……」

 

「へ?」

 

 

 まさに捨てられた子猫みたいな眼差しを向けられたレイヴェルは一瞬目が点になった。

 

 確かに思い返せば同年代の友人は居なかったりするだけにこの不意討ちは以前黒歌にされた不意討ちと似てるのもあって、思わずアタフタとしてしまう。

 

「いやその、私はあのフェニックスですよ? 兄と一誠と同じようにアナタの主さんは間違いなく私の事も快くは思っていませんのよ?」

 

「身分も立場も違うのは解ってる。

でも……」

 

「お、おぉぅ……」

 

 

 食い下がる小猫に、つい変な声が出てしまったレイヴェルは男共が妙に微笑ましい目をしているのもあって気恥ずかしくてしょうがなかった。

 とはいえ、こういう小細工無しの言い方は好ましくも思うレイヴェルは、内心を悟られないように『おっほん!』とわざとらしく咳払いをする。

 

 

「ま、まあそういう殊勝な態度は悪い気はしませんわ。

どうしてもと言うのであるのなら仕方ありませんので、お友だちになって差し上げない訳でもありません」

 

「ホント……?」

 

「お、おぉう……」

 

 

 ツンデレのテンプレートな事を宣うレイヴェルに、小猫の表情がとても嬉しそうなものになる。

 そのせいで再び変な声が出てしまうレイヴェルは内心『ぐっ、やはり強敵』と小猫に思うのだったとか。

 

 

「じゃ、じゃあ友達の証に親愛のハグを……」

 

「へっ!? な、なんでそんな事を……」

 

「してやればよ?」

 

「ああ」

 

「ふ、二人まで………」

 

 

 こうしてレイヴェルは男二人に勧められるがままに廊下のど真ん中で警戒していた黒歌の妹と何故かハグをすることになってしまったのだった。

 

 

「………」

 

「い、いつまでこうしてなければならないのかしら?」

 

「もう少しだけ……。

うん、先輩もそうだったけど、アナタの匂いも優しくて好きかもしれない」

 

「んがっ!? や、やめなさい! 一誠にも言われた事がある分恥ずかしいのよ!」

 

 

「………この光景を写真に撮ったら学校の男連中に高値で売れそうな気がした」

 

「お前、それだけはやるなよ?」

 

「いややらんよ。

逆にレイヴェルに同年代の友達ができたと思うと嬉しい気分でしかないからな」

 

 

 妹分の成長していく姿をライザー共々兄貴気分で見守る一誠は満足そうな顔だった。

 やがて二人は離れる訳だが、今度は小猫が一誠をじーっと見てくる。

 

 

「あ、あの……先輩とも親愛のハグを」

 

「は? 俺?? いや俺がしちゃったらキミのファン達にぶち殺されるんだが……」

 

「ファンなんて迷惑なだけです。

あの、良いかなフェニックスさん?」

 

「む……ま、まあ一度だけならいいでしょう」

 

「お、おいおいレイヴェル……? あんだけ目くじら立ててたのにそれじゃあチョロすぎやしねぇか?」

 

「お黙りなさい! 一誠も恥ずかしくなれば良いのよ!!」

 

 そう言いながら後ろから小猫を押して一誠に近付けさせるレイヴェルと抵抗せず近寄る小猫にどうしたものかと思う。

 別にやましい気持ち0なのは事実だし、黒歌の妹という点で考えたらあまり蔑ろにもできない。

 かと言って仮にこの子の言うとおりにした所を誰かに見られたらそれこそ下駄箱に大量のカッターナイフの刃が仕込まれてしまいそうな気しかしない。

 

 とはいえ別にその程度の嫌がらせなんて屁とも思わないのも事実だし、折角珍しいまでに慕ってくる子なので一誠はそのまま小猫を少し抱き上げるようにしながらハグをしてあげた。

 

 

「やっぱり優しい匂いですね先輩は……。

この匂いだから兵藤先輩と違うってわかります」

 

「あ、うん……」

 

 

 

「…………完全に戸惑ってるなぁ一誠も」

 

「私より長い気がするのですけど」

 

 

 凄く冷静に考えれば、一体何をしてるんだと思いつつどうか誰にも見られませんように―――そう思っていた矢先だったか。

 

 

「おい、小猫ちゃんから離れろ!!」

 

 

 フラグというものは突然発生してしまうわけで……。

 

 

「げっ!? 兵藤! ちょ待て! 違うぞ! 話せば長いようで短いから餅つけ―――じゃなくて落ち着け!」

 

「黙れ! 今すぐ小猫ちゃんを離せ!!」

 

 

 見られたら一番厄介そうな存在の出現に一誠はパッと小猫を離しながら取り敢えず弁解しようとするが、相当に怒っている兵藤一誠は聞く耳持たぬといった様子だった。

 

 

「ぁ……」

 

「ほ、ほらお仲間の先輩来たんだから……」

 

「うー……」

 

「いや『うー』じゃないんだよ……! 袖離してくれっての!」

 

「でもまだ先輩が欲しいです……」

 

「なにを!?」

 

 

 更に困った事に、小猫を兵藤一誠に引き渡そうとしても当の本人が一誠の制服の袖にしがみついて離れようとしないし、表情も含めて台詞が先ほどから妙に艶かしく、その光景が余計兵藤一誠を煽る事になり……。

 

 

「さっさと退けぇぇぇっ!!」

 

 

 あろうことか兵藤イッセーが霧島一誠に殴りかかったのだ。

 小猫を説得していたせいで少し反応が遅れてしまった一誠はそのまま兵藤イッセーの拳を顔面に貰う――

 

 

「我が眷属に手出しをする気か、リアス・グレモリーの下僕よ?」

 

「退き下がれ。

さもなくば我がフェニックス家への宣戦布告と見なす」

 

「っ!?」

 

 

 ―――事は無く、兵藤イッセーは瞬時に戦闘モードへと変わったフェニックスの兄妹によって両腕の関節を取られながら地に伏せていた。

 

 

(な、に……!? ライザー・フェニックスごときに俺が……!?)

 

 

 地に組伏せられた兵藤イッセーは当然無理矢理引き剥がそうとするが、どれだけ力を込めてもびくとせず、あのボンクラのライザーにそうされている現実に驚愕とショックを受けていた。

 

 

「慌てなくても解放する。

だが再び我が妹の眷属に手を出すようなら、今度はこの程度ではすまさん」

 

「ぐっ……」

 

 

 そればかりかライザー・フェニックスの放つ重圧とありえぬ気質に『力だけは強い』兵藤イッセーは完全に圧されてしまった。

 

 

「………」

 

「わかってくれて何よりだ……」

 

「一誠」

 

「はっ……。

塔城様これ以上はご勘弁願います」

 

「ぅ……はい、ごめんなさい」

 

 

 そして鋭い重圧をレイヴェルをも放ちながら一誠の名を呼べば、つい先程までおちゃらけていた一誠の雰囲気と口調までもが変化し、離れようとしなかった小猫に対して毅然とした態度で離れるよう願う。

 これにはこれ以上の我が儘は許されないと悟った小猫も名残惜しさ全開ではあるものの離れる他なかった。

 

 

 

「ごめんなさい兵藤先輩……今戻りますから」

 

「………」

 

「兵藤先輩……?」

 

「何故ソイツと……?」

 

「え……」

 

「だから、何故ソイツと会っていたんだ? 部長を裏切るのか……!?」

 

「え、そ、そんなつもりは……」

 

 

 内心見下していたライザー・フェニックスにしてやられた事へのやり場のない怒りがそうさせたのか、八つ当たりのように小猫に詰め寄ろうとする兵藤イッセーに、小猫は少し怯えてしまう。

 

 

「おいよしな。

気にくわない俺がその子と……まあなんだ、誤解される真似しちまったのは落ち度MAXだが、だからってその子に八つ当たりはするなよ? 仲間だろう?」

 

「その仲間を騙して最低な真似をしていたのはお前だろうが!!」

 

「ち、違います! 私が一方的に……」

 

「そうじゃない! キミはそう思うようにコイツが仕向けたに違いない!」

 

 

 そう一誠を指差しながら殺意丸出しの兵藤イッセーに、ライザー、レイヴェル、一誠は『めんどくせぇ』と毒づいていると、悪いタイミングは続くようで今度は騒ぎに気づいたであろうリアス達――そして反対側の廊下からはソーナ達がやって来てしまった。

 

 

「何の騒ぎでしょうか?」

 

「イッセー、小猫! ここで何をしているの?」

 

「ぶ、部長……」

 

「「「…………」」」

 

 

 あれ? これ詰んだんじゃないか? あの状況だけを考えたらリアスの眷属に粗相をしでかした一誠達三人は、いよいよ退学も覚悟しながら敢えて黙っていると、案の定兵藤イッセーが霧島一誠を親の仇のような目で睨みながら指を差す。

 

 

「コイツが小猫ちゃんにセクハラしてました。

だから俺が止めようとしたらライザー・フェニックスが……!」

 

 

 いや私も普通にライザーお兄様と一緒になってやったのだけど……と、何故か自分の名前は呼ばれなかったレイヴェルは訝しげな顔をしていると、状況だけを聞いていたリアスが一誠とライザーを睨む。

 

 

「今の話は本当なの?」

 

「いや……セクハラなんてしてないというか」

 

「色々と誤解をした彼が妹の眷属に殴りかかったのを止めたに過ぎん。

現に怪我はさけていない」

 

「ほ、本当です! 私が一方的に霧島先輩にお願いしただけなんです!」

 

 

 小猫も自分の我が儘のせいでこんな騒動になってしまったので必死になってリアスに誤解であることを訴えるも、元から一誠とライザーを嫌っていたリアスは小猫に手を出されたという解釈が勝ってしまっている様子だ。

 

 

「ストップ、どちらも落ち着いてください」

 

 

 このままでは埒があかないと思った時、同じく駆けつけた生徒会達の長であるソーナが場を落ち着かせようと声を出す。

 

 

「霧島君が塔城さんにセクハラを……という兵藤君の話ですが、具体的にはなにを?」

 

「ソーナ、今はセクハラの内容の問題じゃあ……」

 

「ただ手を繋いでいただけなら、彼女の様子からしてもセクハラにはならないかもしれないでしょう? それで? 塔城さんとなにを?」

 

 

 じーっと一誠を見ながら『嘘は許さない』と言わんばかりの雰囲気を放つソーナに、一誠は小猫を見つつも渋々答えた。

 

 

「その……流れでちょっとハグしただけで……」

 

『……………………………』

 

 

 そうとしか言えなかったので正直に答えた瞬間、聞いていたソーナとリアスの眷属達の目がかなり冷たいものへと変わっていった。

 というのも普段から悪名ばかりの変態二人こと元浜と松田とつるんでいるので自然と霧島一誠も女子にセクハラする変態という認識を持たれてしまっているのだ。

 

 

「ち、違います! 私が頼んだんです! ずっとフェニックスさんと霧島先輩と仲良くなりたかったから……!」

 

「へぇ? それで何故ハグを?」

 

「う、だ、だってフェニックスさんも先輩も優しくて好きな匂いがしていたから……」

 

「「…………」」

 

 

 自分で言ってて恥ずかしくなったのか、後半は俯きながらもじもじと吐露する小猫を見てレイヴェルと一誠はお互いの顔を見合わせながら軽く照れていた。

 

 

「こ、小猫……アナタ本当に自分から?」

 

 

 ここまで聞くと流石にリアスも冷静になれはしたものの逆にショックを受けた様子で問うと、小猫は微妙に居心地悪そうに身体を揺らしていたレイヴェルと一誠をチラチラみながらコクンと頷いた。

 

 

(ふふ……白音ったら)

 

 

 その瞬間、リアスやソーナ達は全く気付かなかったし聞こえもしなかったのだが、レイヴェルや一誠のすぐ近くに居たりする黒歌が『あははっ♪ 特殊な生まれだけど白音とはやっぱり姉妹だわ』と妹と好みが被っている事を普通に喜んでいた。

 

 

 

「………どうやら本当に彼女から頼んでして頂いたみたいよリアス? アナタはそれでもまだ彼等を責めるつもり?」

 

「い、いえ……」

 

「ならばこの話はこれで終わりにすべきよ。

兵藤君が誤解で殴りかかったのは事実だし、ライザーさんとレイヴェルさんが止めに入るのも正当な理由だとも思う。

それともこのまま矛を収めず、フェニックス家との関係を悪化させたいのなら止めやしないわ。

となればフェニックス家にのみ製造が可能なフェニックスの涙の供給が止められるかもしれないけど、それでも良いならこの場でケリを着けたら良いわ」

 

「う……」

 

 

 途中から妙に機嫌の悪いソーナにそこまで言われてしまってはリアスも引っ込む他なくなってしまう。

 こうして今回の騒動はお互い様ということで水に流す結果になり、リアスは何度も一誠とライザーとレイヴェルに頭を下げる小猫と、結局殺意を引っ込めない兵藤一誠を連れてこの場を去るのであった。

 

 

「さてと、風紀委員長さんともあろう者が今回はとんだ失態でしたね?」

 

「ぐ……」

 

「流石に返す言葉がございませんわ」

 

「この恩は貸しとさせていただく」

 

「別に構いませんよ。

さて、まずアナタ達は先に生徒会室に戻ってちょうだい」

 

 

 揃ってぺこぺこ頭を下げる三人にソーナは軽く笑みを溢すと、何故か連れてきた自身の眷属達に戻る様に命じる。

 殆どの眷属達は先日発覚したソーナのガチ勢な趣味についてなのだろうと、微妙な気分で納得しながら命じられた通りに戻る中、最近眷属になったばかりの兵士の少年は、兵藤イッセーと同じレベルで霧島一誠が気にくわないし、ソーナの近くに居る事も我慢できないせいか中々戻ろうとしない。

 

 

「サジ、私は戻りなさいと言った筈よ?」

 

「……。何でですか? もうソイツに用なんて無いでしょう?」

 

「あるわ」

 

「それなら俺も残ります。会長が心配なので……」

 

「へぇ? ではサジはPアドバンスのドリーム・ソード発生条件は言えるの? ゼータキャノンは? ゼータヨーヨーは? ダークメシアは?」

 

「な、なんすかそれ? その話とは無関係――」

 

「ドラグーン、ドランザーと続いてあと二つは?」

 

「………………」

 

「ドラシエルとドライガー」

 

「と、霧島くんは答えられるわよ?」

 

「ちなみにドリームソードは旧ゼータソードとも呼ばれており、ソード ワイドソード ロングソードの順番でスロットインすれば発動。

キャノンとヨーヨー系はチップコードの特定の組み合わせで発動。

ダークメシアは2だとフォルテV3、ナビスカウト、ゴスペル系のチップ一枚で、6はワラニンギョウ二枚とフォルテ系のチップ一枚」

 

「ね?」

 

「こ、この野郎……! ちょ、ちょっと会長と趣味が合うからって調子こいて―――」

 

「ちなみにダークメシアの派生として4と4.5にはダークメシアネオはダークライン・バグチェーン・フォルテの順番で――」

 

「クソがぁぁぁっ!!!」

 

 

 結局、匙という少年はペラペラと一誠が喋る度に傍に居たソーナが嬉しそうにニコニコするのを目の当たりにしたせいで発狂しながら走り去ってしまった。

 

 

「ウチの兵士が失礼しました。

最近妙に霧島くんを目の敵にするので、注意はしているのですが……」

 

「………。いや、なんとなく理由がわかりますのでお気になさらず。

で、話とは? 今度の再戦の話とか?」

 

「いいえ、先程塔城さんに霧島くんがしていた事の話です」

 

「え? あ、あぁ……その話です」

 

「安心してください。塔城さんの言っている事が本当なのはわかりますから」

 

 

 ふふふと微笑むソーナにライザーと特にレイヴェルが訝しげに見ると、突然ソーナの口調が変貌する。

 

 

「でもねぇ……あんな話をされたら不公平と思っちゃったのよ」

 

「は? は、はぁ……」

 

 

 なんだこの人、急に話し方がラフになった……? と驚く一誠にソーナは相変わらずニコニコとしながらゆっくりと近づく。

 

 

「だから……ね?」

 

「え……」

 

「あ゛っ!?」

 

「あらー……」

 

 

 そして隙を突くかのように一誠の手を取って引き寄せると、そのままバランスを崩してた折れ込もうとする一誠の身体を抱き止めたのだ。

 殺意等には簡単に反応できる癖にこの手のものには鈍かった一誠も完全な不意討ちとなってソーナに抱かれてしまい、それを見たレイヴェルはショックと悔しさの声を出し、ライザーはといえば『癖のある子に好かれるなぁ』と思うのだったとか。

 

 

「ちょ、ちょっとシトリーさん!? うちの一誠になにをしてやがるのでしょうか!?」

 

「落ち着いてくださない、口調がおかしいですよ? だって塔城さんが良くて、塔城よりも先に仲良くなった私が駄目な道理なんてありませんよね?」

 

 

 のほほんと微笑みつつも少し一誠を抱く腕を強めるソーナ。

 

 

「だから私も親愛の証をと思った……それだけよ?」

 

「ぐぬぬ……!」

 

「俺はどうしたら良いのかわからないんですけど……」

 

 

 こうして一分程されるがままになっていた一誠は解放されると、少しは気恥ずかしかったのか、手で顔をパタパタと煽っているソーナは少し顔が赤かった。

 

 

「これで貸し借り無しって事にしてください」

 

 

 しかしとても嬉しそうなその表情に三人はちょっと負けたと思うのだった。

 

 

終わり




補足

白猫さん、突撃かまして騒ぎになる。

そして会長さん、色々聞いて本気出す。


鳥猫さんとシトリーさんだなこりゃあ

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