色々なIF集   作:超人類DX

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極限状態となった時、執事は再臨する。


日之影一誠

 

 

 その目には誰も映らない。

 

 

 その心は決して開いてはくれない。

 

 

「何があろうと、どんな手を使おうとも俺は必ずやってやる」

 

 

 本当の彼の中に存在を許されるのは、私達の知らない者達だけ。

 本当の彼にとって私達やこの世界なんてただのまやかしにしかならない。

 

 

「その邪魔をするっていうのなら、迷いなく貴様等を殺し、この世界をぶっ壊して――俺達は、俺達が生きた場所に帰る」

 

 

 私以上に他を拒絶し続ける本当の彼の中に私達が入る事は決して許されない。

 それはきっと私が初めて抱いた絶望と挫折。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昔からそうだ。

 本当の親の記憶もなく、物心がついた時には今の母さんに育てられていた俺は時折自分でも抑えられない衝動に駆られることがある。

 

 誰かと喧嘩をしている時、自分より格上との喧嘩の時、どうしようもない程に心が燃え上がる。

 燃えて燃えて――やがて自分の心を焼き尽くす程の熱を帯びた時、俺はその直後の記憶がなくなる。

 

 そして意識が戻った時、何時も俺の友達や知り合いは俺に寂しそうな目をする。

 

 それが何なのかはわからない。

 どうしてそんな顔をするのかと聞くのが怖くて聞けない。

 

 一夏にも、鈴にも、千冬さんや束さんにも―――そしてヴェネラナ母さんにも。

 

 俺がオレじゃなくなる時の事は―――

 

 

 

 

 何事に置いても『タイミング』というものはあると俺は常日頃から思っていた。

 けれど、これ程までに間が悪いと思った事は後にも先にも無いのかもしれない。

 

 

「…………………………………」

 

 

 最悪だ。

 荒れ果てたアリーナの中心で、スクラップになったそれを『虫けら』を見るような冷めた目で見下ろしながら踏みつけている『親友』であり『兄弟』とも言うべき男の姿を見た時、俺は最悪の展開に歯噛みする。

 

「これで二度目になるけど、本当に一瞬で終わらせたわね……」

 

 

 ただの試合から一変し、どこからともなく現れたISの無人機相手に一緒に戦ってくれた鈴が寂しそうに言うその言葉が俺の耳から離れない。

 

 

「………………」

 

 

 其れほどまでに、本来のアイツは次元が違いすぎた。

 

 

「………………………」

 

 

 ヴェネラナさんが言っていた、悪魔という嘘みたいな存在の執事をしていたアイツの強さは。

 

 

「あの無人機が避難しなかった箒に襲い掛かって、それを咄嗟に一誠が庇って気を失ったせいで一誠が戻ってしまった……」

 

 

 そう、これはある意味で突然侵入してきて暴れまわった無人機をどうこうするよりも、俺達にとって敗ける訳にはいかない戦いの幕開けなのかもしれない。

 

 

 

 

 事の発端はクラス代表の対抗戦にて二組の鈴音と一組の一夏が試合をしている最中に突如として発生したものであった。

 

 ISに関しては一日の長がある鈴音が追い込み始め、決着がつこうとしたその瞬間、乱入してきた一機のISにより大騒ぎとなって試合どころではなくなってしまった。

 そればかりかアリーナを覆うシールドのせいで一夏と鈴音は避難することができず、逃げ切れることも出来ないと判断し、教員達がやって来るまで共闘して時間を稼ぐ事となった。

 

 侵入したISはISとしてはかなり特殊な形をしており、戦闘の最中その機械的な動作を見抜いた一夏が搭乗者は居ないと発覚したりとある中、どういう訳か避難命令が出ていたにも関わらず避難をせず、アリーナの観客席から一夏に檄を飛ばしてきた箒。

 

 ここまでならば、このまま檄を飛ばす箒に触発された箒が鈴音と同じくサポートの為に無断でその場に残っていたセシリアのアシストを加えた事で白式の単一仕様能力を発揮して無人機を撃破するのだが、問題はここからであった。

 

 その檄を飛ばした箒に反応した無人機が生身の箒に向かって襲い掛かったのだ。

 マズイと直ぐ様箒を助けようと動く一夏と鈴音とセシリア。

 

 だがその奮闘空しく、全身から放たれるレーザー兵器の一撃が反応できなかった箒に迫った。

 

 その瞬間だったのだ……ここから歴史が変わったのは。

 

 

 

「ギエピー!!!?」

 

 

 当初千冬の居る制御室から真面目に二人の試合を観戦し、無人機の襲来によって千冬に教室待機を命じられていた筈の一誠が、箒と迫り来るレーザーの間に割り込むと、どこぞの顔がデカすぎるピンク色の悪魔みたいな断末魔と共に箒を庇ったのだ。

 

 

「い、一誠……?」

 

 

 砂煙が晴れた先に丸焦げとなっている、あの姉が例外的に心を開いている二人目の幼馴染みに目を見開く。

 

 

「あ、あぢぃ!? 熱いし死ぬほど痛いッピ!!!」

 

「ぴ……?」

 

 

 変なギャグ補正のように丸焦げになったその場を転げ回る一誠に、箒はどうして良いのかわからずオロオロとしてしまう。

 

 

「い、一誠か……た、助かった」

 

「な、なんて無茶してるのよ……!」

 

「というか、あのレーザー兵器をまともに受けて熱いだけな訳が……」

 

 

 来ない筈が無いとわかっていたものの、友人の盾になってくれた親友であり兄弟分である一誠に一夏はほっとするが、現実はセシリアの言うとおり大怪我をしている。

 

 

「箒!! ここは俺達でなんとかするから一誠を早く医務室に……!!」

 

「あ、ああ……!」

 

 

 のたうち回る辺りは大丈夫に見えなくもないが、全身は焦げいるし、特に右肩付近は重度の火傷をしているのが見てわかる。

 

 

「ヤバイ、流石に死ぬかも……うへへ」

 

「な、なんで私を庇う真似を……!?」

 

「そ、その方が格好いいし、後で母さんに褒めて貰えると思って……」

 

「死んだら意味がないだろう!?」

 

「お、おぉ……元気そうって事は怪我しなかったんだな? 良かった良かった……」

 

「お前のお陰でな……!! 歩けるか……!?」

 

「多分……でも、なんか頭がぼーっとしてきたかも……」

 

「くっ、私のせいで……!」

 

 

 

 このままではヴェネラナに合わす顔が無いと一夏は箒に一誠を頼むと、庇われた事への罪悪感もあって箒は直ぐ様頷き……。

 

 

「…………」

 

「っ!? ま、まずい……!」

 

 

 死にかけた魚のようにピクピクと痙攣し始めた一誠を慌てて抱き抱えようと手を伸ばしたその瞬間だった。

 

「………………………」

 

「うっ!?」

 

 

 触れたその手を突然今さっきまでヘラヘラとしていた一誠自身に弾かれた。

 突然のことで呆然とする箒は力尽きる寸前の様に項垂れていた一誠の表情を伺うことはできずにいると。

 

 

「……………」

 

 

 一誠が自力で立ち上がった。

 大怪我をしているとは思えぬ程にゆっくりと……。

 再び無人機ISと相対している一夏達は気づいていない。

 

 

「……………………」

 

「そ、その目……」

 

 

 たった一度だけ……。

 トラウマになる程の怪物になった時と同じ目を今一誠がしていることを。

 

 そればかりではない、暗い目をしながら立ち上がった一誠の焼き焦げたその身体は、息を飲む箒の前でありえぬ速度で修復をし始めたのだ。

 

 

「き、傷が……」

 

 

 まさか……と箒は察してしまったまま一誠から後退してしまう。

 姉である束や千冬をもトラウマにさせた『あの一誠』に『戻って』しまっているのだと。

 

 そして自分を庇った傷が完全に無くなると、暗い目をした一誠が半壊しているアリーナを見渡し、ISで戦っている鈴音、セシリア、一夏……そして無人機を捉え―――

 

 

「…………………………………」

 

「ぅ……」

 

 

 その見えない圧倒的な重圧に呑まれていた箒を一瞥した。

 何度か姉や一誠の義母に聞いたことのある、自分達がよく知る一誠とは違う一誠。

 かつてあったとある大事故により分離した裏側の人格であり本当の人格のする無の瞳に箒は怯えてしまう。

 

 

「……………………」

 

 

 兵藤一誠から日之影一誠と戻り、そして再臨したのだ。

 

 

「………………………いつぞや見た覚えのある、リアスの声に似たガキか」

 

「え……?」

 

 

 日之影一誠は今の状況を前に……そして動揺する箒を見て、彼女の声がヴェネラナの娘であり、日之影一誠としては幼馴染みと言えるであろうリアス・グレモリーの声に酷似していると呟く。

 

 その言葉に、日之影一誠としては初めて会話した箒は驚愕に目を見開く。

 何故ならこの状態の一誠は口を開けば『ヴェネラナのババァをどこにやった?』か『セラフォルーはどこだ?』としか言わず、全く会話が成立しなかったのだ。

 

 

「お、お前……」

 

「…………………。チッ、どうやら『あの後』記憶も力も人格も長いこと消えてた訳か。

そんな役立たずの俺をババァが人間に混ざって……ったく、力も無くした役立たずの俺なんぞ見捨ててテメーだけで帰ればいいものを」

 

「お、お前まさかさっきまでの記憶が……?」

 

「…………冥界が存在しない世界。

どうやらセラフォルーは居ない――が、ババァは居るか。

ババァの気配は離れた所から感じるが、誰かと居るのか? ………これは、確か例のよくわからん女の気配か? 確かタバネ――だったか」

 

 

 バーサーカーのイメージしかなかった本来の一誠の思いの外理知的な態度に、これまでの『回帰』とは違うと直ぐ様理解してしまった箒は一夏達にこの事を話すべきだと考える。

 

 

「い、一誠……! そ、その……今とても大変な状況なんだ」

 

「あ?」

 

「もし今のお前が私達の事を覚えているのなら、どうか助けて欲しい……」

 

「……………」

 

 

 もし今の一誠が『話の通じる状態』であるなら、この状況を即座に終わらせられると箒は恐る恐る懇願してみた。

 すると一誠は呑み込まれる程に暗い瞳で箒を一瞥してから無人機と戦う一夏達を見ると……。

 

 

「チッ、あのガキ共には見覚えがある。

クソが、俺も落ちぶれたもんだな……ババァのためとはいえ、あんなガキ共に借りを作ることになるとは……」

 

「で、では……!」

 

 

 思わず表情を明るくする箒。

 やはり今の一誠はある程度話が通用するし、どうやら前後の記憶もあるらしい。

 しかし……。

 

 

「あまり『俺で要られる』時間も無い。

ババァに関する借りがある以上、面倒だがやってやる……そこのガラクタをぶち壊せば良いのか?」

 

「あ、ああ! やってくれるのか?」

 

「仕方なくな……。

ただし……!」

 

「え……?」

 

 

 

 加勢はしてくれるらしいとホッとしたのも束の間、吸い込まれそうになる暗い瞳で見据えられた箒は、小さく囁くように口を開いた日之影一誠のその言葉に30秒程固まる事になるのであった。

 

 

 

 

 

 教師の避難を終えた私は、直ぐ様侵入してきたISを鎮圧する為にアリーナへと戻った。

 正直嫌な予感がしたというのもあった。

 

 そしてその予感は当たっていた。

 

 

「…………………………」

 

 

 生身のアイツが、オルコットや篠ノ之、それから凰と一夏が唖然とする顔を背に、侵入してきたISをアリーナごと『凍結』させていたのだから。

 

 

「これは……。

ヴェネラナ先生の言っていた『魔力』という力か……!」

 

 アイツの足下を中心に凍結されたアリーナはこの季節とは思えぬ程に寒く、冷たい。

 間違いなくアイツは戻ってしまっている。そう思った私は急いで一夏達のもとへと駆けて状況を聞く。

 

 

「ち、千冬姉……一誠が一瞬であのISを」

 

「見ればわかる。

まるでお伽噺だな……アリーナ全土を凍結させるなど」

 

「あ、あの織斑先生? 彼はいったい……」

 

「少しばかり特殊な男というだけだ……他言は無用だ」

 

 

 もっとも、言った所でアイツの所業など誰も信じはしないと思う私は、凍結させた無人機に手を翳し、跡形もなく『消滅』させたアイツを見つめる。

 

 

「………………」

 

 

 孤高のオーラを纏うその背は何者も立ち入る事を許さないというものを感じ取れてしまう。

 ヴェネラナ先生にとっては本来のアイツ。

 

 だが私達にとっては裏のアイツ。

 

 

「……………」

 

 

 アメジストを思わせる紫色に輝く眼をした日之影一誠という男がこちらを振り向くが言葉は発することはなかった。

 代わりに警戒するように私達を一人一人目を動かして見据える。

 

 

「戻ったのか……」

 

 

 正直、この状況を前にすれば例の侵入者なぞ児戯にも等しい。

 この状態のアイツは一切会話にならない。

 

 前後の記憶が消えているせいか、私達を敵と認定してしまっているからな。

 なので口を開けばヴェネラナ先生かセラフォルーなる女の行方の事ばかり。

 

 そして満足のいかない答えを出せば日之影一誠は私達を容赦なく殺しにかかる。

 

 再び一誠に戻る気配がまだ感じられない今、言葉選びは慎重に――

 

 

「おい、携帯出せ」

 

「は?」

 

 

 そう思っていた私達を裏切るかのように、いつの間にか紫色から元の暗い眼へと戻っていた日之影一誠は、今までにないほどに理知的な態度と共に私に携帯を出せと言い出した。

 

 

「持ってないのか? チッ、じゃあそこの小僧は?」

 

 

 またしても予想外の展開に面を喰らっている私が反応できないで居ると、舌打ちをした日之影一誠が今度は一夏に問う。

 

 

「も、もってない……」

 

 

 一夏もまさか日之影一誠としてのアイツとまともに話せるとは思わなかったのか、絞り出すような声で首を横に振ると、今度は凰に……。

 

 

「そこのツインテのガキは?」

 

「し、試合やってたのに携帯なんて持ち込んでるわけないわよ……」

 

「……じゃあそこの――うっ、金髪のガキは?」

 

 

 何故かオルコットに問う時に一瞬嫌そうな顔をしたのは疑問だが、全員携帯は無いと知るとまた舌打ちをした。

 ………聞いてた通り、まるでチンピラだな。

 とても先生のご実家で執事をしているようには見えん。

 

 というかお前とまともに会話ができるとは思わなくて反応が遅れただけで携帯はあるぞ私は……。

 

 

「待て、私は持ってるぞ……」

 

「あ? ……………お前確かポンコツ化してる俺にアレコレしてるなめ腐ってる女か?」

「…………」

 

 

 な、なめ腐ってる。

 た、確かに私はつい一誠に色々としてしまうが……。

 

「……まあ良い、時間がねぇんだ。さっさと出せ」

 

「なにに使う気だ……?」

 

「お前には関係ないだろう、それとも半殺しにしてひんむかれて奪われてぇのか? あ?」

 

「………」

 

 

 ギロリと睨む日之影一誠の言葉に嘘がない。

 半殺しはともかく、間違いなく今のコイツなら私をひんむくことなど造作もないだろう。

 ……………何故かワクワクしてしまうけど、流石にこの場でひんむかれるのは恥ずかしいので黙って携帯を渡すと、日之影一誠は眠たげな眼をしながら操作をする。

 

 

「………この先生ってのがババァの今の番号で間違いないな?」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 なるほど、電話を寄越せと言ったのは先生に連絡を取るつもりだったらしい。

 聞けば先程篠ノ之を庇った時に携帯を壊してしまったらしいからな……それならそうともっと優しく聞いてくれれば良いのに。

 

 そんな事を思いつつ頷くと、日之影一誠は携帯を耳に当てる。

 

 

「………俺だババァ。

大体声と魔力で察しただろう? あぁ、意図せず作り上げたバックアップの人格から主導権を一時的に取り戻した。

だが時間がねぇ……既に魔力が練れなくなってるし、身体の右半分の言うことが利かなくなってる。

多分だが、再びバックアップに主導権が戻る……。

だがその前にアンタの無事を確認したかった――――あぁっ!? ちげぇわ! アンタに死なれたらサーゼクス達に借りが返せねぇってだけ――だ、だから違うってんだろうが! テメェの歳考えろやババァが!!」

 

 

 …………まるでヤクザのような口調だが、基本的に日之影一誠でもヴェネラナ先生には頭が上がらないのだというのが話し方でわかるので少しホッとした。

 

 

「ば、ババァってヴェネラナさんの事だよな? 母さんって言ってるのに……」

 

「や、呼び方が変わってるだけで基本的に変わらないんじゃないかしら?」

 

 

 一夏と凰もババァと先生を呼ぶ一誠に違和感しかないらしい。

 そりゃあな……あんなわかりやすいマザコンっぷりだものな。

 

 ただ、今でも風呂に一緒に入るだの、膝枕して貰うだの一緒に添い寝するのはどうなんだとは思うというか、ムカッとするが。

 

 

「チッ! 良いかババァ、あの俺は所詮は偶発的なバックアップでしかねぇ。

だからいくらそっちの俺がアンタを母さんなんぞと呼ぼうが、俺にとっちゃあアンタはヴェネラナのババァだし、セラフォルーはアホ女なんだよ! ―――って、なに笑ってんだゴラァ……!」

 

 

 いや、どれだけ繕っても根は同じにしか思えんぞ日之影一誠? と、なんだか途端に日之影一誠への恐怖が霧散していく中、日之影一誠は電話の向こう側の先生に言う。

 

 

「で、今アンタと行動してる人間の女――確かタバネだったか? その女は今傍にいるのか?」

 

 

 ………………いや待て、私達には女だのガキだの小僧と言って名前すら呼ばないのに、なぜ束は束と呼ぶんだ?

 

 

「居るなら代われ……俺に戻れてる今の内に言うことがある……ああ」

 

 

 なに? 言うことだと?

 

 

「………………お前がタバネだったか? 正直お前ごときの力量じゃ何一つ信用はできやしねぇが―――――聞けやコラ!? つーかテメェ! 誰が『いーちゃん』だボケ!!」

 

 どうやら電話の向こうの束は繕ってなんとか何時もの自分として対抗しようとしているらしい。

 

 

「テメーはセラフォルーのアホか……!? くっ……まあ良い。

とにかく! もう暫くババァの事は頼んでやる……! それでもしテメーのイザコザにババァ巻き込んでやらかしたら、俺が直接ぶち殺しに―――だぁぁぁっ!! 誰がテメーみてーな勉強できるだけのバカそうな女なんぞに好きだなんだって思うか!! クソ! 覚えてろクソアマ!! ふんっ!!」

 

 

 ………………随分応戦したんだな束も。

 鼻息荒く電話を切ってしまった日之影一誠はそのままの勢いで私の携帯を握り潰しかねなかったので、さりげなく近づいて回収する。

 

 

「先生が無事であることを確認したかったのなら始めから言えば良かったものを……」

 

「けっ!」

 

「聞いてた通りに素直じゃないなお前は?」

 

「知ったような事を抜かすな…………っ!?」

 

「どうした……!?」

 

「…………どうやら時間切れだ。

こんなバックアップに主導権を奪われるのは癪だが、その方がアンタ等にとって都合が良いんだろう? だったら完全に取り戻すまで精々大人しくしててやるよ」

 

「別にお前自身も……」

「へん、もし俺ならお前を逆にいじめ倒してやってるよ」

 

「ふ、お前にいじめられる、か。

たまにはそれも悪くないぞ?」

 

「………………………。言った俺がバカだった。

ったく、ババァといいグレイフィアといいセラフォルーといい、ソーナといいリアスといい――女って奴は訳がわからねぇ」

 

 

 日之影一誠として知っている悪魔の女達の名を苦々しく呼びながらそのまま目を閉じて倒れ込む。

 こうして一誠と日之影一誠の人格は以前より解りやすく分離することになったのだった。




補足

日之影一誠が悪魔の家族達への借りを返す為に、己の全てを投げ捨てて『神』への相討ちをした時、肉体は退行し、偶発的に精神と人格のバックアップが作られ、傍に居たヴェネラナのママンと共にIS世界に流れ着いた。

しかしほんの一握り以下ながらも本来の人格は残っており、長い年月をかけてバックアップとなる今現在の一誠の精神の中で再生していった……というのが真相。


そしてこの日を持って本来の人格に戻っても前後の記憶は保持されるようになったらしい――逆の場合は前後の記憶はないらしいけど。


その2
何度か戻った時はバーサーカー状態でしたが、今回の回帰により一夏達に関する記憶は保持されてる為――――シリアスは回避された。

そして女性に振り回されるのはどちらも変わらない。


その3
執事が進化によって体得した魔力は、魔王少女の氷属性とソーたんの水属性とグレモリー兄妹……つまりバアル家の消滅系統が主でありそれらの魔力で戦うことを無意識に好んでいるとのこと。

 消滅魔力に関しては人間の分際でとバアル本家に相当妬まれてるようですが、本人の力量が当代最強のサーゼクスと真正面からやりあえる為、特に手出しはできなかったらしい。


その4
逆に娘二人の魔力を体得したことでシトリー家ではお祭り騒ぎになったらしい。

加えてシトリー家の使用人長まで成り上がってる実績もあって、いっそ二人とも貰って貰おうと夫婦で画策してるらしい。




 この時点で執事の中では無意識に魔王少女とヴェネラナのママンを最優先にして行動していたようで……。



その5
周りが周りな為、密かに大きさにコンプレックスがあったりするちふゆん……。

多分ソーたんが聞いた喧嘩勃発だろうね……。

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