色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

……うーん、特にない


白でも黒でもない

 元々、戦争自体には何の興味は無かった。

 

 自身の種族の繁栄というものに疎い彼にとって、戦争というのは己を更なる次元へと到達させる為の手段でしかない。

 

 だからこそ戦争が頻繁に起こっていた時代は自らがひたすらに前線へと赴き、誰よりも戦い続けた。

 

 彼の本心……いや、真の野望を知らぬ者からすれば、彼の事を戦争を好む男であると思うだろう。

 

 現に彼の真の相棒となる天使は血まみれになりながらも笑いながら敵へと一人で戦いを挑み続ける彼を、戦争好きの野蛮男だと思っていた。

 

 戦う事でしか自分を表現できないという意味では確かに彼は多くの者からすれば野蛮に見えるし、本人もそのことを否定はしない。

 

 彼が自分の限界を超えた先を目指し続ける探求者であり、『挑戦者』である事を戦いを通じて知るその時まで……。

 

 

 そして現在……。

 

 

 

「コンビニで弁当を買いに出掛けた時に見かけたのだが、何故お前の部下の写真があちらこちらに貼られている?」

 

 

 萎えぬ探求心を果てに神をも超えた次元へと到達し、それでも尚挑戦し続ける堕天使は、滅多には頼み事をしない相棒の為に動いていた。

 それは下手をすれば『普通の』天界側連中と事を構えてしまう事になりかねない事であったが、それでも彼は構わず行動した。

 

 そんな彼が潜伏するこの町にて、一応は協力者となる人間に対して問いかけていた。

 

 

「……。この町の管理をするリアス・グレモリーの関係者がフリードを探しているらしい」

 

「リアス・グレモリー――サーゼクス・グレモリーの妹だったな」

 

「そうだ。

その関係者がついこの前教会側が寄越した悪魔祓いの使い二人を八つ裂きにした」

 

「……ほう?」

 

「正直驚きはしたものの、私としては好都合だった。

お陰で死にかけていた悪魔祓いが持っていた聖剣二本を簡単に奪えたからな」

 

 

 向こうは自分のケツモチをしてくれると信じているらしい初老の人間が野望に燃えた瞳と共にその奪ったとされる聖剣二本を堕天使コカビエルに見せた。

 

 

「これで聖剣は揃い、後は儀式をするだけだが……」

 

「お前の部下を探し回る人間共が邪魔だと?」

 

「ああ、フリードには大人しくするように命じたから問題はない」

 

「………」

 

 

 旧世代の遺物にも満たないナマクラをひとつにしたところでナマクラのままだという認識しかしていないコカビエルは、文字通り聖剣という概念に取り付かれている人間の老人が哀れに見えたが、口にはしなかった。

 

 

「儀式を行う時が来た時がアナタの出番だコカビエル。

これで私の悲願は達成される……くっくっくっ!」

 

「………」

 

 

 既に勝った気である老人が滑稽に見えるコカビエルは、内心ため息を吐く。

 その野望は多分五分で破壊されるだろうという未来が見えているので。

 

 

 

 

 

 

 

 どこかで見た気がする。されどそれが何なのかを思い出せない。

 フリードの捜索を本日も行う中、一誠と親しげに話をする沢田綱吉達に対する異物感を常に抱き続ける兵藤凛は、どうしてもフリードを発見できない状況の中、ある提案をしてみる。

 

 

「あ? 悪魔祓いのフリ?」

 

「そ、そう……。フリードって悪魔に対して凄まじく攻撃的だけど、同時に正規の悪魔祓いにも攻撃的だって聞いた事があって」

 

「ふーん……?」

 

 

 無視でもされると思いきや、意外にも耳を傾けてくれた一誠は、おどおどする凛の提案に対して腕を組む。

 その一瞬、『誰かさんねぇ?』と含みのある顔をしたことに気づかず。

 

 

 

「具体的にどうやって自分等が悪魔か悪魔祓いだと主張するんだ? 格好か?」

 

「ま、まあ、そうなるかな……?」

 

「ふーむ……」

 

 

 町中に手配写真をばら蒔き始めたとたん、ぱったりと痕跡を消した相手がそんな分かりやすい手に引っ掛かるとは思えないが、このまま闇雲に探すよりはマシなのかもしれない。

 

 そう考えた一誠は本日共に捜索している面子を見渡す。

 

 

「…………」

 

 

 フリードの情報くれた協力者の木場祐斗。

 そんな木場祐斗についてる凛だ小猫だアーシアといった悪魔面子。

 

 そして一誠自ら協力を頼んだ綱吉とその守護者達。

 

 

「……。やってみる価値はあるか」

 

「!」

 

 

 ある程度自分や木場達の顔は割れているので難しいが、綱吉達に関しては恐らく向こうもただの人間だと思っている筈と判断した一誠は、一旦全員で風紀委員室へと戻る。

 

 

「と、いう事でこちらの兵藤さんの提案で、分かりやすい格好をして誘き寄せてみようと思うんだ」

 

「ひょ、兵藤さん……」

 

 

 圧倒的な他人行儀全開な呼ばれかたをされて軽く凹んでいる凛をスルーし、綱吉達に作戦の内容を伝える。

 

 

「そんな古典的な手にソイツが引っ掛かるって保証はあんのかよ?」

 

 

 そんな一誠の声に対して質問をするのは、綱吉に絶対的な忠義を常に示しては軽く空回りすることも多い銀髪の少年だった。

 

 

「確率はかなり低いとは思う。

けどこうも探して見つからんのだし、やってみる価値はあるとは思いたい」

 

 

 そんな嵐の守護者である獄寺隼人に一誠は確率はかなり低いと話すと、今度は黒髪の少年が声を出す。

 

 

「良いんじゃねーの? 確かにこのまま探しててもラチあかねーしよ?」

 

 

 綱吉の雨の守護者である山本武は賛成だと言う。

 

 ちなみに、綱吉が連れてきた守護者はこの二人の他に霧の守護者であり、残りの守護者に関しては並盛町に留守番をしていて、その中の雲の守護者に関しては一誠の直の先輩ということもあって今回の件自体を伝えていない。

 

 

「オレも賛成かな……。

これでも引っ掛からなければ、また他の手を考えればいいし」

 

 

 山本武の声に同調する綱吉も異論はないらしく、自動的に獄寺もまた綱吉が言うのならと同意する。

 

 こうして各々が悪魔だ悪魔祓いに化けて町中をほっつき歩くという作戦は開始されるのだが……。

 

 

「離せクソ共がっ!!!!」

 

「…………。こんな簡単に引っ掛かってくれるなんてね」

 

『…………』

 

 

 呆気ない程に簡単にフリードが釣れてしまったオチに対する藍華の呟きに、全員が内心うなずいたのだった。

 

 

「あぁ~ クッソ気分が悪いですねぇ! クソ悪魔共にみられるなんてよぉ!!」

 

「……………」

 

 

 何はともあれ、フリード・セルゼンを捕獲することに成功した一誠は捉えた際に持っていた聖剣だの何だのといった持ち物を全て没収する。

 

 

「わっかりやすいものばっか持ってるなぁオイ」

 

「これがかの有名なエクスカリバーなのか……!」

 

「下手に触るのはヤバイらしいぜ獄寺?」

 

 

 縛り上げられても尚喚くフリードを他所に、それぞれが話をしている中、フリードから没収した小型とナイフを拾った一誠が両手を後ろで縛られて地面に転がされているフリードを無理矢理起こし、ナイフの切っ先を向ける。

 

 

「お前の背景に居る奴等の事を全員吐け」

 

 

 その瞬間、それまで騒いでいたフリードを含めた全員の声が止む。

 

 

「あぁ? 何の事だ? つーか知ってても言うわけねーだろ? 馬鹿ですかおまえは?」

 

 

 そんな一誠に対して切っ先を向けられているフリードは馬鹿にしたように返す。

 すると一誠は表情を変える事なく違う質問をした。

 

 

「じゃあお前、奇才・アホボンって知ってるか? 日本の漫画なんだけど」

 

「………あ?」

 

 

 いきなり全く違う質問に、フリードは怪訝そうな表情をすると、それまで無表情だった一誠の口許が僅かに歪んだ。

 

 

「そのアホボンって漫画に出てくるお巡りさんってさー? 『鼻の穴』がひとつっきゃ無いんだよな~?」

 

「!」

 

 

 恐らくフリード以上に残虐な笑みを浮かべた一誠がナイフの切っ先を傷付けないようにゆっくりフリードの鼻の入り口にいれた。

 

 

「ホンカンさんにしてやろうか?」

 

「! し、知らねぇよ!」

 

 

 笑っているけど、目が完全にイッているように見えたフリードは、彼がふざけている訳ではないと強制的に理解させられつつシラを切ろうとする。

 

 

「ホンカンになりたいの?」

 

「だから知らねぇって――」

 

「あ、なりたいんだ?」

 

「知ら―――」

 

 

 その瞬間、なにかが切れた音だけが辺りに響き渡る。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁっ!!??」

 

『っ!?』

 

 

 そして遅れて聞こえるフリードの叫び声と共に、鼻から大量の血が流れれば、アーシアやギャスパーは目を覆った。

 

 

「が……ぁぁっ……!!」

 

 

 激痛に顔を血まみれにしながら歪めるフリード。

 しかしそれでも一誠は止まらない。

 

 

「残りの聖剣はどこにある……!」

 

 

 そんな中、やっと掴めた復讐への手掛かりもあってか祐斗だけが苦痛に顔を歪めるフリードに問いただそうとする。

 

 

「し、知らねぇ……! し、知ってても喋るかよ……! テメー等なんぞによぉ……!!」

 

 

 そんな祐斗に対してフリードは鼻から下を血まみれにしながら小バカにした笑みを浮かべた。

 

 

「て、テメー等なんぞコカビエルの旦那が皆殺しにする! それどころかこの町ごと消し飛ばすんだよ! だからオレをここで拷問しようが無駄だァ! ヒャハハハハ!!」

 

「く……!」

 

「そのコカビエルはどこにいる?」

 

「し、知らねぇな? 知ってるのはバルパーの旦那だけだからなぁ!」

 

『………』

 

 

 痛みで冷静さを失っているのか、割りと簡単に誘導尋問に引っ掛かっている事にフリードはきづかない。

 

 

「霧島君、多分だけどこの人の言ってる事は嘘じゃない。

そのバルパーって人に話を聞かないといけないと思う」

 

 

 そんな中、フリードの言葉を聞いていた綱吉が一誠にそう言う。

 中学時代の彼なら、こんな残虐な場面を前に腰を抜かすか、はたまた止めようとしていただろう。

 

 しかし一誠という『本来ならばありえない出会い』と彼の生き方を見た事が、彼の中の甘さをほんの少し払拭したらしく、この光景を前に冷静に一誠と話す。

 

 

「何故そうだとわかるんだい?」

 

 

 そんな綱吉の言葉に怪訝な顔をする祐斗が問う。

 祐斗にしてみれば綱吉が一誠が連れてきたよくわからん連中でしかなく、はっきり言ってあまり信用はしていない。

 だがそんな祐斗を他所に一誠は綱吉の言葉を聞き入れる。

 

 

「いや、沢田君がそう言うのならほぼ間違いないな。

こいつは恐らくただの鉄砲玉だろう」

 

「…………。随分と彼の言うことには耳を傾けるんだな?」

 

「まぁな。彼の勘はよく当たるんだ……まあ、君達か、したら信じられないだろうがな。

けど、一応念の為本当かどうか確かめる必要はある――」

 

 

 そう言いながら携帯を取り出した一誠は電話をする。

 

 

「凪か? 今すぐこっちに来れるか? 少し確かめて欲しい事があるんだが……」

 

 

 

 そう言って電話を切ってから数秒もしない内に、ユニと呼ばれた少女と共にオカルト研究部の部室に居た奇抜な髪型をした少女がやって来た。

 

 

「どうしたのイッセー?」

 

 

 奇抜な髪型が目立つ少女が気安げにイッセーに用件を聞く。

 風紀委員長の霧島一誠しか知らないオカルト研究部の面々達からすればヒヤヒヤする事請け合いなのだが、そんな彼等の視線をスルーする凪と呼ばれた少女に一誠が言う。

 

 

「六道を呼び出せるか?」

 

 

 凪に対して奇抜きわまりない髪型に変えさせた元凶を呼び出して欲しいと頼む一誠。

 祐斗達からしたら何の事だかさっぱりわからないのだが、凪はそれに対して頷くと、静かに目を閉じた。

 するとどういう訳だろうか、うっすらと凪の周りに霧のような何かが展開され、全身を覆い隠すと……。

 

 

「クフフフ……アナタから直接呼ばれるとは意外でしたよ霧島一誠」

 

 

 右目に六という文字が刻まれた、これまた奇抜な髪型をした少年に姿が変わっていた。

 

 

「お、男……?」

 

「な、何がどうなっているんだ?」

 

 

 その光景を前にオカルト研究部達はただただ驚く中、含みがありそうな笑みを絶やさない謎の少年に対して一誠が口を開く。

 

 

「幻術かなにかでそこの奴に関する情報を引き出してくれ。

勿論、ただでとは言わねぇ」

 

 

 そう言いながら鼻から下を血だらけにするフリードを指差す一誠に、六道骸はくつくつと笑う。

 

 

「アナタに貸しを作るのは悪くありません。

あの女の忌々しそうな顔が拝めそうですしね。

良いでしょう、引き受けました」

 

「……………」

 

 

 そう言いながらフリードに近づく六道骸の右目が六から一へと変わる。

 

 

「アナタが先に精神的な揺さぶりを掛けてくれたお陰で、楽にできそうだ……クフフ」

 

 

 それがフリードが意識を失う最後の記憶であった。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 白でも黒でも無い。

 漆黒の意思を知っても、それでも冷徹になりきれない。

 

 それが沢田綱吉であった。

 

 多くの者はそんな彼を半端者だと揶揄するのかもしれない。

 

 だが綱吉は半端者なりの意地を貫き通そうとする強い精神があった。

 だから正反対に位置する一誠は彼に対して一誠なりの敬意を持っていた。

 

 

「驚いたぞ小僧……! まさか俺が完全に動きを見失うとはな……!」

 

「くっ……!」

 

 

 今まで決して頼りにはしてこなかった友人から初めて頼られた事で知ったこの世の裏の裏。

 それはマフィアは関係ない世界。

 

 

「こ、コカビエルを相手にここまで……」

 

 

 そんな世界を一誠は生きてきたのかと痛感させられる。

 しかし知ってしまった以上、そんな世界でもがきなごら生きようとしていると改めて知った以上、沢田綱吉は友の為にその拳を振るう。

 

 

「死ぬ気の到達点……!」

 

 

 先の白龍皇との予期せぬ一騎討ちによる傷により動けない一誠の代わりにこの町を……そして自分達と何ら変わらない悪魔の少女の為に戦う意思を燃やした少年は、かつてはほんの一瞬しか引き出せなかった境地の先の領域へと上り詰めた。

 

 

「……!? 小僧、貴様赤龍帝の力を……!」

 

 

 一人では行けなかった領域に。

 歴代のボス達の誰しもが到達しなかった領域に。

 

 

「オレは散々周りに助けられた。

だから、今度はオレが死ぬ気で守る……! そうでなければ、死んでも死にきれない………!!」

 

 

 Xグローブver.VG & 赤龍帝の籠手

 

 

 覚悟の炎は灼熱と化す。

 

 

 そして……。

 

 

 

「ツナさん! だ、誰ですかその人は!?」

 

「お、落ち着いてってハル! この人は霧島君の学校の先輩さんで……」

 

「ではどうしてその先輩さんがツナさんのお家に居るんですか!?」

 

「な、並盛に来たことが無いって言うから案内をしてあげてただけだってば!」

 

「だからって、京子さんが知ったら悲しみます! 勿論私もです」

 

「な、なんで京子ちゃんが出てくるんだよ!?」

 

「あ、あの……」

 

「な、なんですか!? ちょ、ちょっと美人でスタイルが良いからってツナさんに変な事しないでください!」

 

「し、してないわよ!?」

 

 

 

 沢田綱吉の日常に少しのアクセントが加わるようになるのかは――誰も知らない。

 

 

終わり




補足
奇才・アホボン……元ネタは天才バカボン。



その2
てか、六道骸呼び出しゃ速攻終わる案件だったね。


ちなみに、マフィアじゃないのと宿主にさせて貰ってるクロームさんが懐いてるのもあって割りと一誠にはマイルドな模様。

ただ、やっぱり雲雀さんは不仲らしいのと、凪さんがクローム化した際にショックで気絶した一誠には、初対面の時にシバき回された事はあるらしい。

更に、一誠の意味不明に頑丈な肉体に憑依してやろうと思ったら、その精神の中におっかないドラゴンが居て追い出されたので憑依が不可能な模様。

 ていうか、そのドラゴンに精神的に痛め付けられて軽くトラウマな模様。


その3
リーアたんはその後、帰った綱吉君が気になる毎日になったとさ。

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