なのでかなりいい加減な文です――つまりいつものクオリティ
この立場でなければ、きっと俺は単独で殺しに行こうとしていたのかもしれない。
それほどまでに俺は堕天使という存在がどうしても好きになれない――――バラキエルのおっちゃんと朱乃ねーちゃん以外の全てがな。
それはこれまでも、そしてこれからも変わらないと思う。
例え相手が格上であろうとも、俺は俺のテリトリーに入ってきた堕天使は例外無く破壊してやる。
絶対に……何があろうとも。
長年燻らせていた復讐の念が、此度の件によって一気に吹き返した木場祐斗にとって聖剣という物とそれに与する存在は憎い。
出来ることならば、例え主や仲間を裏切る事になっても復讐を果たしたいと思っている。
だがそれ以上にこの町で勝手な真似をすることを阻む者が居る。
名を霧島一誠。
学園並びに町全体の治安維持活動をする風紀委員会の長であり、大事な仲間である兵藤凛の肉親らしき同い年の青年。
彼自身は一応かつて兵藤という苗字であったことや凛の弟であることは否定こそしないものの、肉親としての感情は皆無であるような振る舞いだ。
その証拠に彼は決して凛を姉とは呼ぶことせず、他人行儀のような話し方をするし、彼がねーちゃんと呼ぶ相手は仲間の一人にて女王の姫島朱乃に向けてであり、彼女の事に関しては一切の妥協を許さない。
いったい全体凛とその両親達との間に何があったのかはわからないし、現に凛の実家に何度かお邪魔した時も彼女の両親は一誠の存在を一切語らないし、寧ろ初めから存在していないかのように振る舞うし、過去を証明するアルバムにも彼の写真は一枚も無い。
つまるところ、木場祐斗は復讐の為に行動を起こしたいのだが、霧島一誠がその最大の障害となると見なして下手な行動が打てないのだ。
何せ、手続き無しで学園に入り込んだ教会側からの聖剣使い二人を再起不能にしてしまうのだから。
だからこそ例の二人の二の舞だけは避けたい木場祐斗は考えた結果、直接の交渉に打って出るしかないのだ。
「この町に潜伏している者達を探し出して復讐する事を許可して貰いたい」
「…………」
下手に動けば、何が彼の線に触れてしまうかわからない。
もし触れてしまえば、ソーナ・シトリー一派と同じ轍を踏んでしまう。
それだけは何とか避けたい木場祐斗はリアス達には黙って霧島一誠が居る風紀委員室を訪れ、直接の交渉に臨んだ。
「なんだったら僕を使いパシリに使ってくれても良い。
今の風紀委員会は去年までと違って、人が足りていないのはわかる」
どんな事をしてもこの復讐だけは果たさなければならないと考える木場祐斗からの交渉に、霧島一誠は委員長席に腰掛けながら無表情で聞いており、その傍に立つ悪魔としても仲間であるギャスパーは少し複雑そうな顔をし、一般側である桐生藍華は『あのイケメン君もこんな顔するのね……』と木場祐斗の持つ黒い復讐心を感じ取っていた。
「一般の人達に迷惑を掛けなければ勝手にすれば良いさ。
が、聞けば例の連中の一人は前にも下級の堕天使のもとで一般人相手に色々とやってたようだが……」
「フリード・セルゼンの事かい? 確かに彼は以前アーシアさんの件で一般人を傷つけたりはした。
キミが堕天使・レイナーレ一派を壊滅させた後は行方不明となっていたけど……この前僕の前に現れた」
「そいつの顔はわかるか?」
「……一応」
そんな木場祐斗の個人的な復讐については割りとどうでもよかったりする一誠は、聖剣云々よりも堕天使コカビエル自体を町から消すべきだと考えており、最近再び現れた通り魔がそのコカビエルの下についていると踏んでいた。
直接見たことは無かったが、どうやら木場祐斗はその通り魔の特徴を知っているようだった。
「じゃあそのフリードなんとかという奴の特徴を知っている限りで構わないから教えてくれ。
そうすりゃあキミが誰に復讐しようが干渉はしないと約束する―――まあ、堅気の皆さんにご迷惑をかけないという条件は付けさせてもらうがね」
「…………!」
意外にも霧島一誠は己の復讐心を否定せず、勝手にしろと言ったことに祐斗は驚いた。
「副部長の迷惑になるからとてっきり僕をこの場で半殺しにしてから部長に引き渡すと思っていたのだけど……」
「どうしてもぶっ殺してやりたい存在が居るってキミの気持ちはなんとなくわかるからね。
まあ『復讐した所で失ったものは戻らない』だのなんだのって綺麗事を抜かす奴は居るだろうが、オレからしたらそれをほざいてる奴等を寧ろ半殺しにしてやりたくなる」
堕天使への嫌悪と憎悪を持つからこその一誠の言葉に祐斗は今まで募らせてきたこの復讐心が初めて誰かに肯定して貰えたような気がした。
きっと仲間達や凛ですらわかってはくれないであろうこの報復心が、複雑な気分を何度も抱かせたこの相手にわかって貰えたのだから。
「わかった……それじゃあフリード・セルゼンの写真を」
「…………」
こうして木場祐斗は復讐の為の行動を起こせる土台を作り上げたのだった。
ゼノヴィアとイリナが一誠によって再起不能となり、ますます先の展開がわからなくなっていた凛は、祐斗が風紀委員室から出てくる所を偶然目撃してしまった。
「……この町に隠されているであろう聖剣を探すには、彼に先に話を通さないといけないと思ったまでさ」
「い、イッセーはなんて……?」
「『好きにしたら良い』とフリード・セルゼンの情報と引き換えに許可を貰った。
だから僕は聖剣を今から探しに行くつもりだ」
「………」
意外にも一誠との交渉が上手く行った事に内心驚いた凛だが、同時にチャンスであるとも感じた。
今のところ祐斗は暴走していないし、自分の復讐を打ち明けてくれてもくれているし、なにより一誠が許可をした。
つまり、イリナとゼノヴィアが脱落しているとはいえ、上手くすれば知識に近い展開に軌道修正が可能かもしれない。
そう思った凛は祐斗にお願いをしてみた。
「その、木場君が良ければ私もその聖剣探しを手伝いたいなって……」
「え……」
「その……木場君を一人にしちゃダメだって思うし、こんな時だからこそお手伝いしたいなって――お友だちだし」
「……」
そう話ながら祐斗の目をまっすぐ見る凛。
すると突然風紀委員室の扉が開き、一誠、藍華、ギャスパーが出てくる。
「? まだ居たのか」
「あ、ごめん……いや、凛さんに見られてたみたいで」
「こ、こんにちは……!」
一誠を前に緊張する凛はアタフタとするが、一誠は特に気にも止めずに木場祐斗に向かって話す。
「まあちょうど良いか。
さっきの話だけど、キミは要するに今のところは聖剣をぶっ壊せれば良いんだろう?」
「え? あ、ま、まあ今はそうなるかな……?」
「今ギャスパーからキミに関して色々と聞いたんだが……ちょっとした提案があるんだが乗る気はないか?」
「……提案?」
(木場君に対して何時もよりなんだか優しい気がする……)
何故か妙に祐斗に対して軟化していると、普段からほぼ相手にされていないからこそ感じ取れた凛は祐斗と話をしている一誠をじーっと見る。
「取り敢えず今日の夜19時に委員室にまた来てくれ。
詳しくはそこで話すから」
「あ、う、うん……」
(19時? なんだろう……)
それだけ言って去っていく一誠と、自分達に軽い挨拶をしてから一誠を追うギャスパーと藍華。
いったいなんなのだろうか? そんな不安も半分入った気持ちを抱いたまま、祐斗は言われた通り19時になってから再び風紀委員室を訪ねる事になる。
「………。キミ達を巻き込むつもりはないんだけど……」
「で、でも心配だし。ね?」
「私たちも祐斗先輩の仲間ですから」
「わ、私もです……!」
「でも霧島君にはキミ達まで連れてくるとは言ってないんだぞ……」
凛や小猫、アーシアといった者達も同行して……。
勿論帰れと言うも、三人は一向に退こうとはしない。
仕方なく、一誠には後で謝ろうと思いながら約束した時間となり、風紀委員室の戸を叩き、中へと入ると……。
「風紀委員会へようこそ」
委員長の霧島一誠と委員所属である藍華とギャスパー―――だけではなく、見慣れない少年や少女達が椅子に座っていた。
(だ、誰この人達?)
当然知識にはない顔ぶれを前に凛は困惑するし、生徒ではないであろう面々に祐斗達も同じように訝しげな顔だ。
しかしそんな彼等の疑問に答える事なく一誠は空いている席を指して祐斗達に座るように促す。
「さてと、色々とキミ達は疑問だらけだろうが、簡単に言えば彼等は今回の件の協力者みたいなものだ」
「協力者だって……?」
「ああ、オレが中学の時知り合った者達さ」
「………。一般人じゃないのかい?」
「まあ、一般人……ではないな。ある程度こちら側についても把握してるし」
怪しむ祐斗に一誠は自分達が呼び寄せた協力者達を見渡しながら苦笑いをする。
「彼等にはキミが渡してくれたこの男の捜索を手伝って貰う。
そしてついでに聖剣を発見したらキミに連絡をするようにも伝えてある。
キミは聖剣を破壊できたらそれで良いのだろう? 見ての通り、俺達風紀委員会も去年とは違って三人しか居なくてね……人手不足であることは否定もできやしない」
「このことを部長と副部長は……?」
「一応さっき話してキミの行動に対する許可は取り付けさせたよ。
まあ、元を辿れば俺が教会側とやらの遣いを文字通り使い物にならなくしてしまったからね。
そのけじめをつけると言ったら割りと簡単に許可してくれたぜ?」
「………」
「それって単に部長がアナタを怖がっているからでは……?」
ぼそっと呟いた小猫の言葉に誰もが頷いた。
だがどうであれ、王のリアスが許可を下ろしたのだからこそこそとする必要はなくなった――それだけは確かだった。
「桐生、ギャスパー」
「「はい」」
「この写真をコピーして町全体にばら蒔け――取り敢えず500枚だ」
「わかったわ」
フリード・セルゼンの写真を受け取ったギャスパーと藍華がうなずくと、一誠は席に座る『協力者』達に向かって口を開く。
「まずは協力してくれてありがとう。
彼等が来る前にも話した通り、ここ二週間で4件もこの写真の男は町の住人に危害を加えた。
ハッキリ言ってこの変態ちゃんはちょっと調子乗り過ぎだと思うわけ」
「……」
(ちょっと一誠が悪っぽく見えるけど、なんかいいかも……)
事情を説明する一誠を見て凛が関係ない事を思う中、まだ名も知らぬ協力者の一人が手を上げる。
「質問しても良いでしょうか?」
「ん」
よく見てみれば大分小柄で、左頬の五弁花のマークの入った少女だった。
そんな少女に対して一誠はどうぞという意味で頷いた。
「我々の『ファミリー』は霧島さんのご要望に全面的な協力をします。
勿論、聖剣という存在についても発見したらこちらの方々に報告をするということもわかりました。
ただその……この件が解決できた後、なにかして頂けたりはしないのでしょうか?」
「報酬なら出すつもりだ。
と言っても微々たるものにしかならんが……」
「いえ、金品は要求はしません。
ただそのぅ……」
「あ?」
段々と上目遣いとなる少女に、協力者何人かの表情がムッとなり、凛も少女の態度に内心ムッとなる。
「ど、どこか遊びに連れて貰えたらなぁ……なんて」
『………』
少女のいじらしい声に微妙な空気が流れる。
「私も……」
「#》★★**!」
加えて少女の一言に便乗するかのように他の少女がな乗り出す。
その時点で祐斗や小猫達はこの協力者の少女達があの冷酷無比な霧島一誠に対して懐いているのだと理解してギョッとするのだが……。
「………まあ、別に構わないけど」
「「「!」」」
本人は深く考えてないのか、はたまた朱乃馬鹿なのか普通に頷いた。
その瞬間、少女達の表情が文字通り『花が咲いた』ような笑顔となってしまい。
「や、約束ですからね!? それならば我々『ジッリョネロファミリー』は全面的に協力しますっ!」
「ボス、早く言って」
「え、あ、ああ、うん……。
えっと霧島くん……俺達ボンゴレ・ファミリーも守護者限定になるけど協力させて貰うよ」
少女の傍に居るダンディなイケメン男が今にも一誠を射殺しかねない顔をしているとか、気の弱そうな少年が圧されるように言わされてるとか色々とアクの強そうな協力者な気がしてならない。
「霧島、お前後で面貸せ。
姫を暫くほったらかしにした事も含めて一発殴らせろ……!」
「…………。だから前にも言っただろうが。
俺は俺で忙しくてそんな頻繁に顔なんぞ見せられねぇって……」
「それでも無理して見せるのが男だろうが!?」
「知らねーよ……。朱乃ねーちゃんだったら意地でもそうするけど、なんで俺がちんちくりんなおチビ共にそこまでしなけりゃならねーんだよ……」
こうして木場祐斗は強烈なバックアップを知らず知らずの内に得た。
このアクの強そうな一誠の協力者が、イタリアかどこかのドデカイマフィアだと……。
「言われた通り雲雀さんには内緒にしてきたけど、本当によかったの?」
「流石にこの町の事で何度も恭ちゃん先輩の手を煩わせるわけにはいかないしね。
先代にも黙ってるし……」
「あ、ああ……何度か雲雀さんと喧嘩する雲雀さんの後輩の小柄な女の子だよね? 俺達より先輩だけど」
「まぁね……」
「ちんちくりんじゃありませんよ! 背だって前より伸びました!」
「私も伸びた……」
「わかったから引っ付くな! まったく……だからガキだっつーに」
「ひ、姫島さんだって同じことするじゃないですか!」
「朱乃ねーちゃんは良いの」
「差別反対」
「差別じゃねぇ区別だ」
風紀委員会+イタリアンマフィア……始動。
補足
復讐に関してはまったく否定しない派。
寧ろ本人が堕天使へのつきぬ報復心を拗らせてるぐらいだし。
なので、木場君自体は別にどうでも良いけど、彼の報復心にはある程度の共感がある。
その2
結果、転生者は一誠の持つ『謎の人脈』に余計混乱することに。
その3
こうしてイタリアのマフィアが参戦しちゃうのでしたとさ!