アイツの強さの根元。
アイツの異常性の根元。
それは己自身を含めた『憎悪』である。
守る事ができなかった自分の弱さへの憎悪。
大切な人を虫けらの様に殺した者への憎悪。
奪った者への憎しみと、弱い自分への嫌悪こそがアイツを怪物たらしめる元だ。
その事がポジティブかネガティブかなんて事は正直俺はどうでも良い。
事実なのは、歴代の宿主の誰しもが為し獲なかった領域にアイツは到達している事。
そして貪欲なまでに更なる次元へと進もうとしている事。
そして間違いなく俺にとっての最後の宿主であること。
アイツは自分にとって守るべき者と決めた相手の為なら一切躊躇わない。
それが例え殺人であろうともアイツは止まらない。
それがアイツなのだから。
前にしたり顔であの女が話していた事も含めて、もうアイツにとって本来の自分の人生がどうであったとか、どこかの世界から転生した人間がどうとかなんて関係無い。
アイツはただ、アイツが好きだと思える者達を守る為に――人ではない化け物と成り果てても強くなるだけ。
それがアイツの生きる意味なのだから。
そんなアイツの決して楽ではない生き様を近くで――時には共に戦いながら見続けるというのも悪くはない。
本来ならば生徒会が主導となるべき学園の催し物は、各委員会の委員長達が協力し合う形で行う事で穴は塞がり、先日行われた球技大会も目立ったトラブル等も無く無事に終わることができた。
その直後に学園へと無断で侵入した二人の女子に関しても、即座に風紀委員長が対応することで、この件もそれで終わりのはずだった。
「つまり、先日の侵入者二人組は天使の下部組織の人間で、連中の保管していた物が盗まれ、その盗んだ者がこの町に隠れたからやって来たと」
「ええ、紛いなりにもこの町は悪魔である私が管理している事になっているから……」
しかしどうやら排除しただけでは終わりではなかったらしく、後日話の場を設けたいとしていたリアス・グレモリーから例の二人組の正体についてを教えられていた。
「理由はわかりましたが、だからといって部外者である連中が無断で学園に侵入した事には変わりありませんよね?」
「それはそうね……」
「生憎その連中も動けなくなる程度に破壊してから下水道に流してしまいましたからね。
少なくともその盗まれた物とやらを取り返す為の行動は不可能じゃあありませんか?」
「…………」
ソーナ・シトリーとその眷属達を学園から排除し、それによって生じた彼女の身内からの嫌がらせに対しても、直接乗り込んで破壊し尽くした青年こと霧島一誠は、つい先日天界側から派遣された悪魔祓いの二人組の女子を容赦無く八つ裂きにした。
「ちなみにだけど、あの悪魔祓いの二人組の一人が凛の幼馴染みだったらしいのだけど……」
「へぇ、そうなのかい兵藤さん?」
「あ、う、うん……えと、イッセーも一回くらいは会わなかったっけ? イリナちゃんって子なんだけど……」
「さてね、全くもって記憶にございませんね。
ガキの頃の記憶なんて朱乃ねーちゃんと両親によくしてもらった記憶しかないし」
「………」
その片割れが凛の幼馴染み……つまりひょっとすれば霧島一誠にとっての知り合いの可能性があった訳だが、この言葉の通り、霧島一誠は全く知らなかったし、知っていたところで手加減もしていなかっただろうというのがわかっただけであった。
「それで、お話ってのはそれだけですか?」
「…………」
とにかく悪魔祓いが始まる前から使い物にならなくなったのだけは間違いない。
だが今回の件に関しては『それで終わり』という訳にはいかない。
何故ならこの騒動は野放しにできるものではないのだから。
「ギャー君、いつの間にか『見習い』って書かれた腕章じゃなくなってたの?」
「えへへ、この前イッセー先輩が留守にする間にきっちり学園の風紀を守ったという事で桐生先輩と同じく見習いから正式に風紀委員になれました!」
一誠が命じた試験を合格した事で、正式に風紀委員会へと加入したギャスパーが、小猫達に対して嬉しそうに見習いとは書かれちゃいない腕章を見せびらかすのを見ると、悪魔としての王である自分よりも確実に一誠に懐いている気がして凹みそうになるリアス。
「ここからが本題なのだけど、その聖剣を誰が盗んだかよ」
「?」
朱乃に入れて貰ったお茶に口を付ける一誠に、リアスは緊張をする。
そう、ここから話す内容は高確率で危険区域なのだから。
「……………堕天使・コカビエル。彼が聖剣を盗み出した者達の背後に居るようなの」
「………」
霧島一誠は堕天使に対して尋常ではない殺意を持っている。
以前のレイナーレ達にしても、彼は単独で乗り込み皆殺しにした。
「堕天使……ね。くくく……」
「ぅ……」
案の定、堕天使が背後に居ると聞いた途端、一誠は不気味に嗤い始め、どす黒い殺意を放ち始めていた。
彼は堕天使―――正確にはバラキエルとその血を引く朱乃以外の堕天使が嫌いだ。
その理由は、かつて堕天使の一部が人間の女性と一緒になったバラキエルに納得せず、バラキエルの妻とその娘である朱乃に手を出したからだ。
その過去をトラウマとして持つ一誠は以後、異常なまでの速度で成長を続けたことで今のような異質なパワーを持つまでに至ったとなれば、彼が相当に堕天使への憎悪を抱き続けていることは想像できてしまう。
「一誠くん」
「っ……あ、ああ、悪い」
恐らくすぐ傍にストッパーとなれる朱乃が居なければ、この話を聞いた次の瞬間にはその堕天使を探して殺そうと行動するだろう。
それは、聖剣に対する復讐心を持つ祐斗よりも黒く、深い報復心を。
「コカビエルという堕天使は並の堕天使ではないわ。
……聞いたことは?」
「多分バラキエルのおっちゃんに教えられた事はあるでしょうが、覚えたくもなかったのであまりよくは……」
「彼は今堕天使を纏めているアザゼルに近しい地位にかつて居た堕天使の大物よ。
恐らく立場だけで言えばバラキエルと同等の……」
「そんな奴が何故こんなせこい盗みのような真似を?」
「それはわからないわ。
大分前には堕天使の組織から抜けていたようだし……。
ただ、当時の評判を聞くに、あまり良い話は無いみたいよ。
戦争好きだったとか……」
「………」
少しまともに話を聞こうとする辺り、それだけ自分の近くに朱乃とバラキエル以外の堕天使が近寄られる事を嫌悪しているのだというのがリアスにはわかった。
ただでさえ、既に祐斗が制御不能となって単独で行動しようとしているのに、彼まで暴走されては町自体が消えてなくなってしまう。
それだけはリアスとしても防ぎたいのだ。天界側との関係悪化を防ぐという意味でも。
………既にその天界側が派遣した遣いが行方不明になってしまっているので、そこら辺についてをつつかれそうだが。
「何でよりにもよってこの町で騒ぎを起こそうとするのかとか色々と疑問は尽きないけど、野放しにはどうしてもできないのよ。
昨日の遣い二人は私達に干渉することを拒んできたけど、アナタが使い物にならなくしてしまったし……」
「つまり、そいつ等を使い物に出来なくした代わりにケジメをつけろって事ですかい?」
「…………」
色々と言いにくそうに頷くリアスに対して一誠はふんと鼻を鳴らす。
その時点でお腹がキリキリと痛いリアスは、ストレスで白髪になりそうな気分であることなど露にも察することなく。
不審者丸出しな侵入者を排除したかと思えば、果てしなくハッピーでクソッタレな事案を抱えていたと知った霧島一誠は、ひょこひょことついてくるギャスパーと共に風紀委員室へと戻る。
「…………クソが!!」
そして戻るや否や、それまでクールを装っていた態度を崩壊させ、委員長専用席に座って乱暴に頭を抱えた。
「せ、先輩……?」
直前まで一緒に居たギャスパーは、急に豹変する一誠に驚き、あくまで一般人の為に書類整理をしながら留守番をしていた藍華もギャスパー程では無いが驚いていた。
「いきなりどうしたのよ?」
「なんでも……ない……」
思わず尋ねる藍華に一誠は務めて冷静に変えそうとするが、珍しいまでに焦燥している顔を見ればなんでもない訳がないと思う。
「ギャスパーさん、またオカルト研究部でなにかあったの?」
「あるといえばありますけど……」
話が聞けそうもないと判断し、同行していたギャスパーに説明を求めるも、ギャスパー自身も言って良いものか迷っているらしく、言葉を濁している。
「例の『裏絡み』の話って訳? もしかして昨日委員長が追い出した無断侵入者となにか関係でも?」
「…………」
「無言は肯定と受けとるわよ? なるほどね……私は触りも触りの部分しか裏とやらの事は知らないけど、その様子じゃ今までよりかは厄介そうじゃない?」
割りと察しの良い藍華にギャスパーは『うー』だの『あー』だのと言葉が出せないでいると、頭を抱えていた一誠が忌々しそうに顔を歪めながら身体を起こす。
「風紀を乱すレベルじゃないクソッタレがこの町に来るかもしれねぇんだとよ」
「ふーん……? これは穏やかじゃあないみたいね」
「えっと、もうこの際なので話しますけど、かなり厄介な者がもしかしたらこの町に危害を加えるかもしれないんです……」
「それは委員長の戦闘力では押さえ込めないの?」
「ど、どうなんでしょう? 先輩ってこの前に四大魔王の一人を完全に再起不能にしましたし……僕は大丈夫かなとは思うのですが……」
裏の事情のある程度だけは知っていた藍華は、その相手の危険性をいまいち把握できていないが、それでも一誠の態度を見れば楽観視できるとは思ってはない。
「その相手の種族が堕天使なんですよ。
先輩は堕天使を酷く嫌ってますから……」
「堕天使ねぇ……?」
「クソが……!
あのクソボケ鴉のリーダー野郎……今度会ったらぶっ殺してやる」
かつてたった一度だけ会った事のあるリーダー野郎――つまりアザゼルという堕天使に対して殺意を剥き出しに唸る一誠。
「アンタがその堕天使ってのに凄まじい殺意を持っているのはわかったけど、とにかく落ち着きなさいよ」
「わかってる……クソが」
セラフォルーを消した時とは逆の冷静ではないその姿は、かつてのトラウマ故なのか。
とにもかくにも霧島一誠は全力で堕天使の進攻を阻止しなければならないのだった。
朱乃は己が弱かった事を恥続けていた。
自分が弱かったから、一誠に要らぬ覚悟を持たせてしまった。
自分が弱いから彼は無理をしようとし続けている。
自分が弱かったから、一誠にトラウマを植え付けてしまった。
一誠は堕天使を前にすると、常に攻撃性が増す。
それはかつて自分と母が堕天使によって命を落としたから。
そしてその様を彼が目の前で無力感と共に見せつけられたから。
その無力感と、その現実を認めたくないという絶大なる負の感情によって結果的には自分と母は死という現実から復帰した。
だけどそれ以降、一誠は狂った様に強さを求め続けた。
そして甘さの全てを排除し、敵となる存在は徹底的に破壊するようになった。
その攻撃性の根底は失う事への恐怖からだというのは彼に宿るドライグに次いで近くに居た朱乃にはよくわかっていた。
そして案の定、リアスからの話で堕天使がこの町に現れるやもしれないと聞いたその瞬間から、一誠はその神経を過敏にしていた。
「ぜぇ……ぜぇ……」
人々に忘れ去られた町外れの廃墟同然の神社。
風化した社や木々に囲まれた僅かなこの空間は幼少期からの一誠のトレーニング場所であり、朱乃もまた己を磨く場所だ。
「やっぱりここに居たのね?」
小さな頃はよくこの場所で遊んでいた。
いや、まだ人間不信であった頃の一誠を無理矢理連れ回した時によく訪れた場所。
気づけば単なる遊び場からトレーニングをする場所へと変わったこの場所はある意味一誠と朱乃の『リスタート』の原点。
「父からコカビエルについて色々と聞いたわ。
この前のレイナーレ達とは次元と違う存在ということも……」
「そう、か……。へへ……だったら余計気なんて抜けないよ俺は」
一誠は失うことを恐れている。
いや、一度失っているからこそ余計にそう思う。
そんな一誠の覚悟を止める権利が自分にはないと朱乃は思う。
思うからこそ、朱乃は守られるだけではなくて共に抗う事を決めた。
「ええ、でも酷いわ。
私だって強くならないといけないのに、一誠くんは何時も私を置いて自分だけ先に行こうとする……」
「そ、そんなつもりは無いんだけど……」
それが、全てを敵に回してでも自分を守ると覚悟してくれた男の子の想いへの返答。
どんな姿になってでも変わらないと誓った少女の覚悟。
「少し休んだら、今度は私と少し組み手をしましょう?
私もちゃんと対策をしないといけないもの」
「………おう」
その為には大嫌いだった父に頭を下げてでも教えを乞うた。
人の道から外れようともその先の領域に進み続けた。
「父は言っていたわ。コカビエルは半端な堕天使ではないって。
だから今度は私も一誠くんと戦うわ」
「悪い……オレが弱いせいで」
「そうじゃない。私は一誠くんと同じ場所からずっと歩いていたいだけ。
支えられるだけじゃなくて、支えるようになりたい……アナタが大好きだから」
「へっ、ホントつくづくねーちゃんには負けるよ」
それは今でも変わらないし、これからも変えない。
「行くわよ……!」
「ふっ……こっち手加減は要らねぇよねーちゃん。
殺す気でかかって来いやァァァッ!!!」
それが姫島朱乃の覚悟なのだから。
終わり
オマケ・思い出の場所での思い出。
互いに切磋琢磨した後は、疲労を癒す為に古ぼけたベンチに腰掛け、昔から変わらぬこの寂れた神社と思い出話となる。
「はぁ、この場所は本当に変わらないわ……」
「確かにな。色々あったよ、ここでは」
「うん……一番の思い出は誰かがここに捨てていったエッチな本を読んだ事かしら? 確かまだ7歳とか8歳くらいの時に……」
「はは、あったなー……。
なーんかねーちゃんが隅っこの方で丸くなってるなーとか思ってたら顔真っ赤にしながら読んでてな?」
「その後二人して読み始めちゃって……。
気付いたら真似してお互いに触りっことかしたりキスとかしてたり……」
「この事だけは朱璃さんとバラキエルのおっちゃんには言えないぜ」
そう恥ずかしそうに苦笑する一誠に朱乃が甘えるように寄りかかり、一誠もまたそんな朱乃を抱き返す。
「何があっても私は一誠くんの傍に居る。
だから、一人で無理はしないで? 頼りないかもしれないけど、私も一誠くんの役に立てるように頑張るから……」
「うん……」
やがて二人は互いの手を絡ませ、互いの額をくっつける。
そのやり取りは誰であろうとも干渉はできないほどに熱く……痺れるように。
「ね、ね、最近また胸が大きくなっちゃったみたいなの……わかる?」
「わ、わかるようん……。
で、でもねーちゃん? ここ外だし――」
「………………だめ?」
そのまま『おねだり』をし始めた朱乃に、外ではちょっとと言いかけた一誠だったが、素となっていた朱乃の甘えた言い方に一瞬で敗北を認めてしまう。
「ダメじゃないぜ……!」
「ん……♪」
どれだけ血に染まろうとも、この繋がりだけは切り離せない。
それがこの二人なのだ。
その2
後継者修行(指輪争奪戦編)
マフィアのボス候補である同年代の少年・少女と知り合い、なんやかんやと関わる内に、彼等が次期ボスとなる為の戦いを行うと聞くことに。
正味自分には全く無関係な話だし、適当に聞き流す程度の反応しかしなかったのだが……その対戦相手とされる独立暗殺部隊の者を名乗る連中に何故か襲われ、それを返り討ちにした事で、全くの無関係ではなくなってまった。
ましてや、その争奪戦にはわんぱく小僧で割りと仲は良いランボや親のネグレクトを受けていた所をつい助けてしまった少女こと凪やら、自分を風紀委員の後継者と言う雲雀やら―――そして性格からなにから自分とはまるで正反対だけど何故か気が合う綱吉が戦うともなれば完全なる無視はできなくなっていた。
「なぁ、聞いても良いかおチビ?」
「いい加減ユニと呼んで欲しいのですが……なんでしょうか?」
「あの黒ずくめの――ヴァリアーだっけ? 暗殺部隊を名乗ってるあの連中って本当に暗殺部隊なの?」
「間違いありませんけど、何故そんな事を?」
「いやだって、晴の守護者とやらの戦いで、その暗殺部隊の一人にボクシング部の人が勝ってんじゃん」
「それは笹川さんがトレーニングを積んだから勝てたのでして……」
「いやいや、その笹川先輩さんはマフィア云々の事を全然把握しとらんみたいだし、突貫工事的なトレーニングしただけだぞ? それなのに暗殺専門でやってきた相手が負けたってさ――」
ひょっとしてあの暗殺部隊連中って雑魚じゃね?
そう、同じ観戦席に居たユニ相手にヴァリアーの面々を指差しながらぶちまけてしまう一誠。
当然普通に聞こえてしまっていたせいでヴァリアーの面々が凄まじい顔で観戦席に座って呑気やってる一誠にガンを飛ばす訳だが……。
「や、でも実際は笹川さんも結構ギリギリでしたし……」
「だからそれがおかしくねぇ? 普通もっと楽に向こうが勝つなら『ああ、修羅場くぐってんだなぁ』なんて思うけど、負けてんじゃん。
しかも膝砕かれて……いや、それでよく暗殺部隊名乗って『自分等はヤバイです』みたいな顔できるなと思うだろ? 俺ならほぼ素人に負けた時点で引退考えるわ」
『……………』
本人は単なる疑問でしかないが、ヴァリアー達にしてみればナチュラルに煽られてるだけだったし、それまでフォローしようとしたユニも微妙に言い返せない。
「あ、あの霧島くん? あ、あまり煽るのは……」
変に怒らせたくはない綱吉は必死に宥めようとする。
ましてや次は子供のランボが戦わないといけないので、この煽りのせいで向こうがマジになりでもしたら、ランボが余計危険な事になるのだ。
「煽ってないぜ? ただの疑問だもの。
つーかこれでキレて次のランボの坊主でマジになったとしたら俺は逆に軽蔑しかしねぇわ。
『あぁ、コイツ等って確実に勝てる相手には――しかもガキ相手にしかイキがれない虫けら集団なんだ』ってな」
そう言いながら、静かなる殺意を剥き出しにするヴァリアー連中を鼻で笑う一誠。
特に雷の守護者として戦うランボの対戦相手――皮肉にも名前がレヴィアタンっぽい名前の老け顔の男性は、既にランボよりも一誠を殺したくて仕方ない形相だったとか。
しかしそんな一誠を煽りのせいで余計殺気立った争奪戦は思わぬ展開に。
「我が名はクローム。クローム髑髏」
「…………………………………………」
「な、凪……ど、どうしちゃったの?」
「えと、骸様に名付けて貰ったというか……」
「アイツなにしてんの!? ふ、普通に凪でいいのに!? それに霧島くんがショックのあまり気絶白目剥いて気絶しちゃったよ!?」
余計変な事になってしまっている少女だったり。
「うーん……うーん……」
「そ、相当ショックだったんだね……」
「そんなに変なの……今の私?」
「まあその、出会った頃の凪を知ってる身からすると、まるでグレちゃったみたいに思えてしまうというか……」
気絶した一誠を見て微妙にショックな凪ことクロームさんだったり。
「あ、ど、どうしましょう……気を失った霧島さんが私に……」
「む……」
「こ、この小僧……! 姫になんて真似を……!」
「だ、大丈夫です! た、たまには良いです……ホントに」
気絶した一誠がちょうど隣に居た少女の膝を枕にしていたり。
「へへ……朱乃ねーちゃん………」
「…………」
「やっぱりたたき起こした方がいいんじゃないか?」
「良いのですリボーンおじさま……わかってますから」
寝言でやっぱり朱乃の名前を呼んで微妙に傷ついたり……。
「はれ? 朱乃ねーちゃん………胸しぼんだ?」
「……………………………………」
「こ、殺す! このガキは殺すっ!!!」
「ああ、さすがにちょっと俺もイラっとしたぞ」
更なる寝言で今度こそ傷ついたりと……場外の方が寧ろ大盛り上がりだったとか。
「な、なんだ? 何故か全身が痛いし頬も痛い……?」
「霧島さんなんか知りません……!」
「あ? なにキレてんだこのおチビは?」
「どうせ私はちんちくりんですよっ!! おチビだし、胸だってないですよーだ!!」
「あ、あぁ? なんのこっちゃ?」
そして……。
「まあその……なんだ、ここが10年後で沢田君のところのマフィアと敵対してるマフィアで、おっさん達がその片割れだってのはなんとなくわかったが……」
「……………………」
「10年後もおチビのまんまだし、なんでこんな無表情なんだよ?」
「それは順を追って話す。
だからお前は暫く姫の傍に……」
「えぇ……? 普通に戻りたいんですけど」
「頼む! 白蘭達から姫を取り返す為には炎の力とは別の力を持つお前が必要なんだ! そもそもお前が4年以上も姫をほったらかしにしてたせいでもあるんだ!」
「はぁ? なんだそのこじつけみたいな理由は? はぁ……仕方ねぇ、10年後の朱乃ねーちゃんに会いたいが、そうは言ってらんねぇみたいだし……」
不可思議な繋がりの果てに後継者は更なる騒動に巻き込まれていく。
「き、貴様はブラックスペル!? 何故クローム髑髏の味方をする!?」
「あぁ? 味方? ちげーわ、俺は今日大変な一日でな……頗る機嫌が悪いんだ」
「は、はぁ? なにを――」
「つまりよ………運が悪かったんだよ、テメーは」
「い、イッセー……?」
とはいえ、相当に自分勝手に動きまくるのだけど。
「お前が襲われてるの見てイラついたからついおかっぱ眼鏡はぐちゃぐちゃにしてやったが……」
「イッセー……!」
「やっぱお前、10年前の凪だよな? お前も俺みたいにこの時代に飛ばされたのか……」
「え、それじゃあアナタも?」
「まぁね……。
ちょっと色々あって……えーっと、シルバニアファミリーっつーマフィアの黒側に居るんだけど……」
「シルバニアファミリー? それってうさぎのお人形セットの事じゃ……」
「あれ? ……まあ名前なんてどうでもいいべ?」
ちょいと変態入った同業者の白側の構成員を八つ裂きにして10年前から飛ばされてしまった知り合いを助けたり。
「霧島君!? どうして霧島君がミルフィオーレファミリーに!?」
「あ、そうそう! そんな名前だわ! ごめんごめん沢田くんのお陰で思い出せたわ!」
「………あ、あれ?」
「10代目、アイツ多分俺たちと同じく10年前から来てますよ」
取り敢えずボンゴレ側である凪を保護させる為に並盛の町をうろついていたら、10年前から飛ばされた綱吉達と再会できたり。
「え、ユニが!?」
「ああ、俺も10年前から飛ばされたクチなんだけどよ、飛ばされた先があのおチビの傍でな? んで、ガンマのおっさんが言うにはえーっと白蘭だっけ? ソイツが現れてなんかおチビに仕出かしたっぽいんだよ。
マジで無表情決め込んででおチビらしくねぇもんだから、こんなダサい制服着て暫くおチビの傍に居ようかなと……」
「そんな……じゃあブラックスペルの人達は基本的に敵じゃないんだね?」
「ガンマのおっさんとか、10年前から知ってる面子は大丈夫だけど、その他については微妙だな。
幻騎士とか言う奴は寧ろ白側らしいし……まあ、イチャモンつけてきたから取り敢えず半殺しにしてやったけど」
互いに割りと重要な情報交換ができたり。
「10年後の恭ちゃん先輩……」
「少し懐かしい顔だね。もっとも、お前は10年後もあまり変わらないけどね」
10年後の先輩と再会したり。
「…………」
「ったく、少しは喋ろうとしろよつまんねーな」
「………………………」
「布団がふっとんだ」
「…………………………………フッ」
「あ、笑った」
「!!?」
「いや取り繕う必要ねーだろ……」
色々あったが、炎を持たぬ少年は心を壊された少女の為に奔走するのであった。
そして……。
「オーケーオーケー、やっと何時ものおチビに戻れてなによりだぜ。ったく、手間の掛かるおチビだぜ」
「ご、ごめんなさい。
でもお陰で精神を元に戻せました」
「そりゃあ良かったな。
んで、例の大空のアルコバレーノとやらの力が復帰してるとわかった途端あそこの白髪ロリコン野郎が目の色変えてガン見してるんだが……」
「私は……」
炎を持たぬ龍の帝王は……。
「……ったく、相変わらずだなおチビは? 良いよわかったわかった。心配しなくてもここまで首を突っ込んだんだ。
途中で放り出したりはしねぇし、ガンマのおっさん達は沢田君達に保護させた。
だから後はお前を連れ出すさ……何があってもね」
「い、イッセーさん……」
「へぇ、4年くらい前まで繋がりがあったらしいし、俺を名前で呼ぶようになってたわけか。
なぁ、朱乃ねーちゃんとは会った事あるのか?」
「はい……凪さんと一緒に。
正直その……色々と負けてるので悔しいですけど、あの方はそんな私たちによくして頂けて……」
「はっ! なら決まりだな。
オーケー、だったらお前を助けるよ。
だから……今だけで良いから俺を信じろ」
「! は、はい!」
「つー訳で聞いてたろロリコン共!! 俺は今からこのおチビを全力で守る。
それを邪魔するってんなら、手加減はしねぇ。
死にてぇ奴だけ―――――掛かって来い!!!」
唯一孤高の伝説となる。
嘘だよ
補足
とにかくバラキエルさんと朱乃ねーちゃん以外の堕天使は性格関係なくデストロイするくらい殺意丸出しです。
その2
そんなあけのんもまた守られるだけではダメだと幼少期の時点で覚悟したからこそ今のあけのんとなります。
その3
まあ、所詮単なる冗談ですが、このままマフィアさん達と関わっていく場合はこうなるかなって。
特に10年後からは暴れ倒すことになりかねませんね。
なんやかんやおチビちゃんことユニちゃまに対しては借りがありますので。