色々なIF集   作:超人類DX

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外はパリッと! 中は半熟!!


………いや、特に何の意味もありません。


カチコミ

 早い話が魔王に対する殺人予告をされた。

 それも人間に。

 

 普通なら鼻で笑う話でしかない。

 しかしながら、当時を目の当たりにした冥界の悪魔にとって、霧島一誠という人間は『取るに足らない人間』ではない。

 

 存在そのものがあり得ぬ程に強すぎる人間。

 

 そして目の当たりにした悪魔にしてみれば類を見ないほどの狂暴さと極悪さを持った人間。

 怒りを放ちながら堕天使のバラキエルと共に現れ、手負いの獣のように悪魔領土を破壊し尽くした姿はある意味で目撃した悪魔達にとっては恐怖でしかなかった。

 

 

 だからこそ、サーゼクス・ルシファーは魔王として緊急の会合を行った。

 

 

「二日以内に霧島一誠が現れる」

 

『…………』

 

 

 現政権の重鎮達へと緊急召集を命じたサーゼクスの重々しい声は、出席する悪魔の一部に衝撃を与えた。

 

 

「霧島一誠が……何故?」

 

 

 初老の男性悪魔がサーゼクスに質問をする。

 8年程前に突如として堕天使・バラキエルと共に出現し、悪魔の領土を破壊するだけ破壊した人間の子供にて赤龍帝の極悪さと狂暴さを知っているからこその質問だ。

 

 

「彼はリアス嬢の女王――つまりバラキエルの娘になにかが無い限りは基本的にこちらには関心を持たない筈だが……」

 

 

 その言葉に、他の悪魔達もその通りの筈だと頷くが、サーゼクスは少々疲れた顔をしながら自分の元へとかかってきた電話の内容について話す。

 

 

「彼がセラフォルーの妹を再起不能にしたのは最近の事だ。

理由は彼女が彼の『危険性』を甘く見すぎたから……としか言い様は無いわけだが、問題はその後の事だ。

どうあろうと彼女はセラフォルーの妹だ。そしてセラフォルーはソーナさんをとても可愛がっている。

セラフォルーにしたら、自分の妹を傷つけた癖に私の妹には今のところ何もしていない彼に納得がいかなかったようだ……」

 

「それはわかりましたが、何故それで霧島一誠がこちらに来るのですか?」

 

「霧島一誠への報復を止めさせるために、セラフォルーへの監視を強めたつもりだった。

流石に我々が押さえ込むとわかっているからセラフォルーも直接は動かなかったのだが、どうやら私の妹に対して私怨の交えた手紙を送りつけ続けていたらしい……」

 

『…………』

 

「それだけならまだ彼には関係の無い話―――では無かった様でね。

彼は私に言ったよ……『二日以内にセラフォルーを一族もろとも皆殺しにしてやる』とね……」

 

「馬鹿な……!」

 

「ああ、実に馬鹿馬鹿しい話だ。

だが、8年前の彼を直接見た者にはわかる筈だ――彼は殺ると言ったら殺るという『凄味』があることを」

 

『…………』

 

 

 あの人間という種の歴史が生み出した怪物がやって来る。

 それも魔王の一角を殺しに。

 その瞬間、一人の悪魔が爆発するかのように、ずっと無言で席についていた張本人に声を荒げた。

 

 

「貴様はっ……! 貴様は何て事をしてくれたっ!!!!」

 

「………………」

 

「セラフォルー嬢……妹を傷つけられた貴女の怒りはわかる。

だが、元を辿れば貴女の妹の思慮の足りない行動が招いたことなのだぞ!!?」

 

 

 下手をすれば悪魔を絶滅させにやって来るかもしれない状況を生み出したセラフォルーに怒りを向ける初老の悪魔。

 しかしセラフォルーの顔は反省の色も無ければ心底不思議なものだった。

 

 

「大袈裟じゃないのおじ様達?」

 

「お、大袈裟だと!?」

 

「そうだよ、皆して大袈裟だっての。

ソーナちゃんを傷つけられるだけの力はあるみたいだし、赤龍帝らしいけど……彼一人で私たちを皆殺しになんてできやしないよ。

そりゃあバラキエルちゃんも一緒なら分からなくもないけどね?」

 

『…………』

 

 

 ソーナといい、このセラフォルーといい『直接』見なかった者達は総じて霧島一誠の危険性を疑う。

 そして疑うからこそ過小評価をしてしまう。

 

 

「大丈夫だよ、誰も殺させないし、寧ろちょっと強いからって調子に乗ってる子供に大人として教え込んであげるって☆」

 

 

 そう笑顔を浮かべるセラフォルーに、見た者達は顔を強張らせた。

 しかしここで議論をした所で彼が来ることは決定的なのは変わりないし、それならばシトリー家を守る為の警備を強化しなければならない。

 

 そう判断したサーゼクスが会合を終わらせようとしたその時だった……。

 

 

 悪魔よりも強大で禍々しい殺意を感じたと思うか早いか―……。

 

 

 

 

 

 

 

「よォ……探したぜ虫けらの姉?」

 

 

 

 

 

 

 人間という種が生み出した怪物は返り血を浴びた姿で再臨するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほんの一時間前。

 

 

 

 

 二日以内は二日以内だ。

 

 朱乃があくまでもリアスの事を友達だと認めている以上は、渋々ながらも鬱陶しい柵は消し飛ばすに限る。

 

 そう判断し、リアスの兄である魔王に宣戦布告を済ませた一誠は早速とばかりに風紀委員の本物の腕章を藍華とギャスパーの二人に渡し『二日程留守にしている間、学園の風紀を守れ』と試験を言い渡した。

 

 そして風紀委員長としてではない霧島一誠としてリアスと朱乃の手引きで冥界へと乗り込むか早いか、ソーナの気配を探す。

 

 

「みつけた……。行くぞドライグ」

 

『ずいぶんと大事になってしまったものだな?』

 

「まあ、元々あの虫けら共は鬱陶しかったし、ちょうど良かったよ」

 

 

 リアスから聞いた通り一応は生きているらしく、下僕達も一緒だと察知した一誠は飛翔し、シトリー領へと向かう。

 

 

「これこそ無駄な労力だよ」

 

 

 鬱陶しいものを終わらせる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 完全な引きこもりになってどれくらい経ったのか。

 ソーナ・シトリーは眷属達と共に癒えぬ心の傷の舐め合いのような生活を続けていた。

 もう死ぬまでこうするしかないのだろうかとすら思い始めていたソーナは、久しく感じなかった気配を察知してしまう。

 

 

「…………き、霧島君?」

 

 

 そう、全てを破壊する極悪な気配。

 自分達を破壊した時と同じ気配が、物凄い速度で此方に迫っている。

 

 最初は気のせいだと思った。

 されどシトリー家で働く従者悪魔達が慌てた様子でソーナの部屋に駆け込み、説明をされた事でこれが現実であると知る。

 

 

「き、霧島君が……来るっ……!」

 

 

 正真正銘、霧島一誠がやって来る。

 その瞬間、皮肉な事に破壊された心に火が灯り、瞳にも光が戻る。

 

 

「お逃げください! あの男はソーナ様を……!」

 

 

 使用人達は自分達に逃げろと言う。

 多分それは正しいのだろう。

 

 霧島一誠が穏やかな理由でここに来る理由なんて無いのだから。

 だけどソーナは動かなかった。

 

 自分はリアスや周りの忠告を無視して失敗し続けてきた。

 だからもう、これ以上失敗はしたくなかったのだ。

 

 

 

「き、霧島……くん……」

 

「なんだ、ただの虫けらか。

おい、テメーの姉はどこだ?」

 

 

 そんな覚悟すらも、霧島一誠に粉々に粉砕されることになろうとも。

 

 

 

「あ、姉に何の用があるのですか? 私に用があるのでは……?」

 

「今更虫けらなんぞに用は無いな。

あるのは、くだらねぇ嫌がらせ噛ましてるテメーの姉だ。

ああ、別にしゃべらなくても良いぜ? どうせ纏めて二度と会うこともなくなるんだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強烈な血の香りと共に現れた青年は間違いなく霧島一誠だった。

 その出で立ちに誰しもが絶句する。

 

 

「で、どれが虫けらの姉魔王だ?」

 

 

 しかしそんな悪魔達のリアクションを無視して、血塗れの一誠はソーナの姉は誰かと問う。

 その瞬間………一誠の両手と両足が凍りつく。

 

 

 

「………私がセラフォルー・レヴィアタンよ」

 

 

 その現象の正体は、殺気を放ちながら自ら名乗った女性――セラフォルーの魔力によるものだった。

 思っていたよりも早い登場に面こそ喰らったが、結局の所で来た時点でセラフォルーの行動はひとつだった。

 

 

「………」

 

「っ!? よせセラフォルー! 霧島一誠君! キミもだ! 我々が争う理由は無いだろう!」

 

 

 焦るサーゼクスが止めに入ろうとする。

 ここで戦い始めたら甚大な被害となるのはわかっていたし、8年前と違って肉体的にも成長した一誠を見て一瞬でサーゼクスは悟ったのだ。

 このままでは間違いなくセラフォルーが殺されると。

 

 

「互いに冷静になるんだ! ここで無駄な血を流しても――」

 

「無駄な血ならさっき流してきたぜ?」

 

「っ!?」

 

 

 サーゼクスの訴えを嘲笑うような一誠の言葉に、ぴくりとセラフォルーが反応する。

 

 

「そういえば、随分と血だらけだけ………ど……!?」

 

 

 

 そして気づく、噎せるような血の香りを放つ一誠の言葉の意味を。

 

 

「まさ……か……!」

 

 

 まさか、まさか……その血はと一気に血の気を引かせたセラフォルーに一誠がくつくつと嗤う。

 

 

「次はテメーだ」

 

 

 そう、既に一誠がセラフォルーの実家であるシトリー家を破壊してきた事を。

 その瞬間一誠を拘束していた氷は粉々に砕け散った。

 

 

「心配するなよ、殺すとは言ったが、流石にマジ殺したら怒られるから、九分殺しに抑えてやったよ。

ただ、もう二度と物は食えなくなってるだろうがな……」

 

「ふ、ふざけるなっ!!!」

 

 

 激昂するセラフォルーが魔力を解放し、周辺を一瞬で凍結させた。

 

 

「よせセラフォルー!!」

 

 

 それを見たサーゼクスがなんとしてでも止めようと自身の魔力を解放する。

 だが一誠は動じることもなく全身から赤き雷を迸らせた。

 

 

「ガキみたいな嫌がらせをするくらいなら、最初から直接来るんだったな……」

 

 

 両手を前に突き出し、赤い電撃が迸る黒い球体を生成させ、凶悪な笑みを浮かべる。

 

 

「このまま無視をしてたら、その内朱乃ねーちゃんにまで嫌がらせをすると判断した―――だからここで始末をする」

 

「うっ!? わ、私の魔力が届かない……!?」

 

 

 それに対してセラフォルーはソーナの仇だと全力の魔力をぶつけるが、一誠自身に届いていない事に気づいて戦慄する。

 

 

「や、やめてくれ! キミの言い分もわかった! これ以上我々はキミに干渉はしない! だから――」

 

「そう言ってから何度干渉したのかな? 俺は短気で心配性で臆病者なんだよ。

だから例え1%でも今後の障害になりえると判断すれば、それを破壊する」

 

 

 サーゼクスの懇願を一蹴し、恐怖する他の悪魔達に嗤い続けた一誠は生成した黒い球体を更に巨大化させ……。

 

 

「地獄へ行け……! 雷撃地獄玉っっ!!!!」

 

 

 怨念がふんだんにこもった一撃で冥界の都市を焼き尽くしたのだった。

 

 

 




補足

1%でも可能性があると判断した時、彼は実にスピーディーにkillモードになる。

そうでなくても、ソーナさんの件のせいで殺る気度も高かったし。



その2
雷撃地獄玉

てか、電撃地獄玉

一発で都市程度なら焼け野原にできる。

他にもこの世の怨みを集めてぶちかます某リベンジデスボールだの、負のエネルギーをふんだんに込めまくった某マイナスエネルギーパワーボールだのだのと、色々あるらしい。

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