色々なIF集   作:超人類DX

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平和がゲシュタルト崩壊する勢いだぜ。

一誠は一切出ません。


その頃の平和

 一誠がストレスで胃をやられそうになっているその頃、とある場所では悪党顔の男がそれなりに平和な日々を過ごしていたりする。

 

 

「え、俺がやるのか?」

 

「おう」

 

「………。一応聞くが、何故?」

 

「サーゼクスの妹とその眷属との関わりが一切無く、そして極悪っぽい風体が実にマッチしているからだな」

 

「……………」

 

 

 その悪党顔のせいで割りを食う仕事を振られてしまう事もあるが、それでも本人は至って平和に生きようと努めていた。

 …………。同盟相手の妹の成長の為に、悪役になってくれと自身の所属する種族組織の現リーダーに頼まれ、その理由にちょっと傷つく事もあるけど、男はめげなかった。

 

 

 

「バラキエルだって俺と変わらん面してるのに……」

 

「アイツは娘が居るからな。しかもサーゼクスの妹の女王。

だからアイツが出張ったらバレるだろ? その点何の接点も無いお前ならバレない」

 

「……。ハァ」

 

 

 難色示して断ろうとする男だったが、結局は顔に似合わず『頼まれたら断れない』という性格が災いし、引き受ける事になってしまった。

 別に悪人に見られる事に抵抗なんて、今までの人生を思えば無かったが、演技までして悪人になりたいとは思わないし、ましてや子供相手に極悪人を演じるのは微妙に嫌だった。

 尖った耳、充血通り越した真っ赤な三白眼ならぬ三赤眼、眉間には皺が常に寄り、真っ白な肌は人ならざる存在を余計に引き立たせる。

 

 そんな漆黒なウェーブヘアーの男……最上級堕天使コカビエルは、自身の所属する組織のリーダーにて同じ釜を食った友人でもある、アザゼルの女受けの宜しい容姿をちょっと羨ましく思いつつも従うのであった。

 

 

「具体的にどうすれば良い? サーゼクスの管理してる人間界の領土に赴いて直接適当に襲撃すれば良いのか?」

 

「あぁ、その事なんだが、ミカエルの奴が協力してくれてな。

演技に色を添えてくれるそうだ」

 

「は? ミカエルがだと?」

 

 

 結局断れずに割りを食う覚悟を決めたコカビエルは、具体的にどうしたら良いのかの話をすると、サーゼクス……つまり悪魔とは別の同盟相手である天使のリーダーミカエルが協力をしてくれるというアザゼルの話に眉を寄せた。

 神、神、神ィィ!! 削除ォォッ!! と煩く、ハッキリ言って何で堕天しないんだとすら疑問に思う変態が協力をしてくれるという時点でコカビエルは嫌な予感しかしなかったのだ。

 だが、そんなコカビエルの内面を見抜いている上で面白がっているのか、アザゼルはヘラヘラ笑いながらコカビエルの肩をポンポンと叩く。

 

 

「詳しい話は人間界にあるお前の家で聞け、ミカエルが使いを送ったらしいからな」

 

「何?」

 

 

 平和に生きるつもりというか、便利だからという理由で密かに人間界で購入した我が家にミカエル側の使いが送られる……。

 その時点で微妙に嫌な予感しかしなかったコカビエルだが、行かない事には解らないのでニヤニヤとウザいアザゼルに見送られながら、人間界のマイホームに帰るのであった。

 

 

 

 そんな訳で人間の女性と添い遂げた仲間、バラキエルに影響されて人間界での生活を気に入っていたコカビエルは、わざわざ真面目に人間界で働いて得たお金で購入した中古のマイホームに帰宅する。

 悪魔の管轄内の領土でちゃっかりと一般的な日本家屋に住み続けているコカビエルは、顔に似合わずご近所付き合いもそつなくこなし、一部のマダムから普通にモテててたりするが、本人は極悪顔を自覚しているせいで自覚がなかった。

 

 

「まあ、やはりお前しか来ないよな……早い事だ」

 

 

 そんなマイホームに帰宅したコカビエルを待っていたのは、既に家主より先にリビングで待ち構えていた天使側の使いであり、使いをミカエルが寄越してくるという時点で誰なのか予想が付いていたコカビエルは、お茶を啜りながら正座して座っているその者に声を掛ける。

 

 

「話はミカエルから聞いているだろう? サーゼクスの所の妹でこの地の管理を任されている小娘の成長を促すために何かしなければならんらしい」

 

「ええ……」

 

「具体的な案は天使側が出すとの事らしくて、俺は実行役らしいが、一体何をすれば良い?」

 

 

 上着を脱ぎ、そのまま座るコカビエルの質問に、ミカエルに命じられてやって来た天使は、フッと笑みを溢す。

 

 

「七本に別れた聖剣の奪い、この地で再び一つに束ねて戦争の引き金を引く……が現実的でしょうか?」

 

「…………。極悪人だなそれ」

 

「ですが、彼女達がそれを演技だとは思わない」

 

「そうだな……。ハァ」

 

 

 ぶっちゃけ闘いは好きだけど、今の生き方に満足しているので戦争目的で悪いことをする演技をするのは微妙に気が引けてしまう。

 だがしかし、引き受けてしまった以上はちゃんとこなさなければならない。

 顔に似合わず律儀で真面目な故に、大きくため息を吐いたコカビエルだったが、そんな彼を優しく微笑みながら見つめていた天使の『女性』は、笑みを見せながら言った。

 

 

「大丈夫、アナタだけに割りを食わせはしない。

私もアナタと一緒に悪い人を演じさせてもらうわ」

 

「は?」

 

「ほら……そ、そうした方が仲良しって感じがしますし?」

 

 

 そう言ってちょっとモジモジし始める女性天使に、コカビエルは微妙に嬉しい気がした。

 天使側でミカエルをも差し置いて一番に関わり合い、気付けば購入したマイホームに殆ど訪れてはのんびりとその日を過ごす様になった相手である金髪の天使。

 

 天界一美人と評される容姿を持つその天使の名前はガブリエル。

 敵同士として出会い、何度も戦い、そして三勢力が同盟を組んでからは敵同士としてでなく好敵手として頻繁に会ってはお互いの実力を高め合っていった結果、コカビエルは堕天使、ガブリエルは天使として文句なく最強となり、今に至るという経緯があった。

 

 同盟が組まれてからは三勢力間での交流がそれなりに盛んとなり、それによって悪魔の管理する人間界の領土にコカビエルがマイホームを購入してからは、ガブリエルの方から足げく通うようになっては、割りと私生活のだらしないコカビエルの世話を甲斐甲斐しく焼く。

 

 ぶっちゃけてしまえば殆ど事実婚にも近い関係とも云うべき所ではあるが、ガブリエルはともかくコカビエルは未だに友という認識から離れてないので、ガブリエルをやきもきさせる事が多い。

 

 

「そうか……はは、最初は殺し合ってた仲だったのに、それだけ世が平和になっている証拠だな」

 

「ええ、三勢力間で同盟が結ばれて以降は、隠れてコソコソ会う必要も無くなりましたからね」

 

 

 近所のマダムに意外にモテる事を知ったら、わざと見せ付けるように通い妻みたいな真似をしてるが、コカビエルはその意図を掴めない……自分がモテないと知ってるから。

 故に周囲の者達をもやきもきさせているこの二名の知らないところで、何時ゴールをするのかと賭けに使われているとは知らず、コカビエルもガブリエルも近い内に実行すべき悪役について、雑談を交えながら話し合うのだった。

 

 

「処で、最近ウチの組織から抜け出して姑息な真似をしていた者が、赤龍帝に敗れたという話は知っているか?」

 

「以前にチラッとだけ……それが?」

 

「いやな……その赤龍帝なんだが、どうやらアザゼルの情報に依ると俺達が相手をするサーゼクスの妹の知り合いらしい。

更覚えているか? 戦争の時に悪魔に――いやグレモリーに味方した人間二人の事を」

 

「……。ハッキリと……まさか……」

 

「あぁ、コッソリと内偵を進めた結果、どうやらこの地にその二人が住んでいて、更にはその二人の子がさっき言った赤龍帝らしい」

 

「…………。一気に難易度が上がった気がしますね……」

 

「あぁ、だがまあ、俺達も常日頃から高めあってるんだ。

そう簡単に殺られはしないし、お前を殺らせはせんさ」

 

「コ、コカビエル……」

 

 

 

 

 何時からだったろう、殺しあっていた相手と普通に話をするようになったのは。

 何時からだろう、野蛮で悪顔で嫌いだった相手と会ってはお互いの力を高め合う仲になったのは。

 

 何時からだろう、そんな彼の姿に惹かれる様になったのは……。

 

 

「結構は夏本番前……という事で取り敢えずこの話は終わりにして、飯でも食うか? 今日は俺が作るぞ」

 

「あ、じゃあお手伝いを……」

 

「大丈夫だ、昨日お前に作らせたからそこで待ってろ」

 

 

 何時から……いや、もう何時からなんてどうでも良い。

 確実に分かるこの一つの答えがある以上、過程なんて些細なものです。

 

 

「あ、また上着をその場に……しょうがない男ですね」

 

 

 彼が――コカビエルが好き。

 その答えさえ私の中にあればそれで良いのです。

 放っておくとだらしない生活をするコカビエルのお世話をする事に生き甲斐すら覚える……天使としてはもしかすれば不正解なのかもしれないけど、それで堕ちるのであれぱ本望だ。

 

 

「……」

 

 

 それほどに私は彼に想いを抱いてしまっている。

 

 

「~♪」

 

「こっちは見て無い……ですね」

 

 

 コカビエル自身が気付いてくれないのはとてもモヤモヤしますが、何時の日か気付いて貰うつもりで毎日暇さえあれば彼を訪ね、こうして家に上がらせて貰っている私は、偶々彼が先程脱ぎ捨てていた上着をハンガーにでも掛けてあげようと手に取った瞬間、頭の中で何かに囁かれ、料理を下手くそな歌を歌いながら作っているコカビエルの様子を伺った私は、此方を見る気配は無いと判断し……。

 

 

「相変わらず大きい……」

 

 

 サッと羽織り、側にあった全身が写る鏡で己の姿を見つめてみた。

 袖はよれよれで、裾も地に付いてしまうという不格好な姿だけど、コカビエルの服だからという理由でそんな事はどうでも良かった。

 

 

「…………」

 

 

 邪な事を考えてたら、または行動に移したら堕天してしまうかもしれないけど、私は高鳴る胸の鼓動を抑えられず、ヨレヨレの袖口に顔を近付け――

 

 

「おい」

 

「はひゃい!?」

 

 

 たその瞬間、何をしてるんだ? という顔をしたコカビエルが私の真後ろから声を掛けてきて、高鳴る胸の鼓動は別の意味で激しくなった。

 

 

「飯、出来たぞとさっきから言ってたんだが」

 

「あ、あわ、あわわ……!」

 

「落ち着け、何時もなら背後に立たれても気付くお前らしくもないぞ」

 

「い、いえ……そ、その……!」

 

 

 見られた。コカビエルの上着を羽織って変な気分になっていた所を見られてしまった。

 羞恥心で呂律も回らず、アタフタする私にコカビエルは首を傾げている辺り鈍いと思うが、今はそれどころさじゃ無かった。

 

 

「ご、ごめんなさい! ごめんなさ――あっ!!」

 

「お、おいガブリエル!」

 

 

 とにかく今はまともに彼の顔が見れず、逃げるように離れようと後ろに下がろうとした私は、足が縺れて後ろにひっくり返りそうになってしまう。

 だけど――

 

 

「っと……こんな狭いところでひっくり返ったら危ないぞ?」

 

「ぁ……コ、コカビエル……?」

 

 

 咄嗟にコカビエルが私の手を掴み、そのまま自分の方へと引き寄せたお陰で盛大にひっくり返る事は何とか回避された。

 ただその代わり……私の身はコカビエルに抱き締められている様な形へとかわっていますが。

 

 

「あ、すまん」

 

「い、いえ……」

 

 

 事故とはいえ、抱き合ってる様な体勢のまま一分程固まっていた後コカビエルは小さく謝りながら私から離れる。

 私としてはもう少しそのままで良かったりしましたけど……と思ったのは内緒です。

 

 

「それ、欲しいのならやるが……サイズは合わんが」

 

「え、良いんですか? そ、それなら喜んで……」

 

 

 上着も貰ったし、もしかしたら今日は一段と良い日で間違いなさそう……ですね。ふふ……♪




補足

シリーズ恒例、このカップルはベリーハードモード世界の『もしコカビーが生きていたら』みたいな関係かもしれない。

そして揃ってまともなやり取りをしてる辺り、変態ではない。

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