なので、過去ネタの小話をギリギリなんとかぶちこんで誤魔化すしかできねぇ……。
新年過去ネタ
一旦そうなってしまえば、後は加速的に進むだけだ。
隔たれていた最後の壁を前に、それでも乗り越えて踏み込む覚悟を示した時から、ある意味彼女達は彼等三馬鹿に勝ったといえるのだ。
特に……赤き龍を宿した歴代最後の赤龍帝の少年に敗けを認めさせた少女達は。
「悪いなお嬢ちゃん。
もっと早く会えてたら友達になれたかもしれないけど、それ以上に俺はこの子達に大きすぎる借りが出来ちゃったんだよ。
その借りを返す為にもお嬢ちゃんの望みは叶えられないし、この子達を傷つけるってんなら―――俺がさせない」
少しだけこちらを向いてくれた少年と立つ場所への道を……。
「龍拳・爆撃!!!」
歩き始める。
彼等が来たことで、私達は色々と変わった。
今と未来を守る為に強くなった。
別にこの大陸を支配したいなんて思わないし、世の平定を願ったりもしない。
ただ自分達の未来の為に今を生きる。
それが我等孫呉の生き方。
そんな私達が出会った三人の男は、破天荒で無謀で、ちょっとお馬鹿だけど、私達の生き方にとても似ていて……。
三人の男の一人と深く付き合う事になった私は、当初あまりにもいい加減で女にだらしのない彼を嫌っていた。
けれど、どこか律儀で、なにかに隠しながら生きている彼が気になっていって……。
その内私達は彼の生き方に惹かれていき、彼がその内未来へ帰る事を悲しく思うようになって……。
「……おい、今通りを歩いていた女を目で追っていただろう?」
「お、追ってないって!」
「蓮華様や小蓮様がいるというのにお前はまだそうやって……」
「本当に違うってば! もうやだなぁ! あ、あははは……」
彼の歩く道を歩いてみたくなった。
あの日一誠からの言葉を受けた私達は――元からそうだったというのもあってかすんなりと受け入れていた。
ただ、思春の言うとおり、あの日以降一誠が他の女を目で追うのを見ていることにすぐ気づけてしまうようになっている。
「良いか、お前は蓮華様のみならず、贅沢にもこの私だの小蓮様にも手を出したのだ。
それだと言うのに他の女にだらしなく鼻の下なんぞ今後伸ばすようなら……」
「わ、わかってるってば! 流石の俺も改める気はちゃんとあるさ!」
「ふん、どうだかな。
私は別にお前なんか今でもどうでも良いが、蓮華様を泣かせたら……」
特に気づくのが、今一誠に小言を言っている思春だったりする。
本人はあくまでも仕方なくといった態度なのだけど、多分ある意味一番一誠から言われた言葉を受け止められているのだと思う。
「ああは言ってるけど、一誠に対して一番過敏になってるのって思春だよね?」
小蓮もそれには気付いている。
なにせ、一誠の戦う技術を教えられたのは思春が一番多いもの。
「ちぇ、最初の頃みたいに蓮華姉様と思春が一誠を嫌っててくれていたら、シャオだけの一誠だったのになー」
そう不満そうに頬を膨らませる小蓮は確かに最初から一誠を好いていた。
本当、最初はあんないい加減な男なんてって思ってたのになぁ。
天ではなく未来から来たと言った三人組の男を雪蓮様が受け入れ、その内の一人にて女に滅法だらしなくて、常に気の緩んだ態度をしていた男をよりにもよって蓮華様に付けられた時から、蓮華様はよくも悪くも変わられた。
アイツが来る前の蓮華様は、炎蓮様が亡くられた事もあってお一人で抱え込むようになってしまった。
だが、アイツが――一誠が蓮華様の護衛の仕事をするようになってからは、そのあまりのいい加減さと女へのだらしなさによって色々と感情を見せてくださるようになった。
そんな思惑が一誠にあったからなんて事は勿論ない。
なんならあの馬鹿は蓮華様の護衛の仕事を辞めたいが為にふざけた態度をし続けていたと自分で言っていたし、護衛の必要が無いようにする為に、私を強くしようとすらしていた。
当たり前だが、あんな頓珍漢な行動ばかりをする一誠に物を教わるなぞ、当初の蓮華様以上に一誠が気にくわなかった私にとって屈辱以外の何物でもないと思っていた。
けれど、アイツはそんな私に対しても軽薄な顔で笑いながら、恐らく教わらなければ一生知ることの無かった、自分自身の可能性についてを私に教えた。
戦いに関してのアイツは私の遥か先の領域に立っているし、腹が立つことにアイツは例え私の覚えが悪くても一切投げ出す事無く親身にすらなって教えてくれた。
お陰で今の私は、自惚れる訳ではないがアイツと出会う前よりは格段に力をつけることができた。
そしてその技術は私だけでなく蓮華様にも教えた事で、蓮華様は元から持っていた、雪蓮様に勝るとも劣らぬ才能を見事に開花なされた。
「剣?」
「ああ、お前が武器を持って戦う所を見たことがないからな」
「そりゃ近づいてぶん殴るかドラゴン波しかしないしな俺は」
「だからだ。
お前に施しばかりを与えられるのも癪だし、今後も蓮華様の護衛を続けるというのなら、剣術を嗜んでみろ」
「うーん……じゃあ後で神牙に教えて貰うよ」
悔しいが、全てはコイツが来てからだ。
本来ならば私が蓮華様の部下として導くべきだったが、私にはそれが出来なかった。
軽薄で、軽率で、だらしなくて、アホで、馬鹿で、スケベな男なのは間違いない。
現に今でもこの馬鹿は他所の女を目で追う。
「神牙は雪蓮様の相手で忙しいだろう。
だから私が教えてやる、精々感謝しろ」
「え? ……あ、うん」
「……。何だその顔は?」
「言うと怒るから言わない」
「なんだと? だったら今言わんと怒るから言え」
「……。思春さんって律儀で可愛いよなホント」
「……………………………………蹴るぞ貴様!」
「だ、だから言いたくなかったのに……」
この私にか、可愛いなんて宣うし。
絶対にコイツが他所の女に鼻の下を伸ばさせないようにしっかり教育しないといけない。
必ずな……!
結局そうなっちゃったか……。
本当ならシャオだけの一誠にできると思ってたのに。
「お前、そこら辺に落ちている枯れ枝だけで大木を破壊できる癖に、何故普通の剣の扱いが下手なんだ……?」
「勝手が違うんだよ。
俺の場合、切るよりブッ叩くって感覚だしよ。
そもそもまともに剣なんて持って戦わないし……」
「まさか思春にあそこまで押されるなんて思わなかったわ」
「うっかりすると持ってる模擬刀を壊しちゃうから、壊さないようにって意識しまくりで思うように動けなくなってよ……」
でもこれはこれで悪くはないかな……?
確かにシャオだけの一誠にはなれなかったけど、それでも一誠は何時も通りにしてくれるし。
「何時も通りの一誠で良いと思うよ? 少しだけ力を取り戻せたのだし」
それにこの位置はシャオだけのものだもん。
後ろから優しく抱いてくれるこの場所は……。
「嗜みだし、折角思春さんが教えてくれるんだし、もう少し頑張ってみるぜ」
「ぶー……一誠って結構思春の言いなりだよねー?」
「確かに……」
「え、そうか?」
「わ、私は別にコイツに命令なんてしてませんよ……」
ずっとずっと……この先も永遠に。
そう思ってしまった以上。
そしてその思いを言ってしまった以上は、今までのような真似は確かにできないし、不思議な事に思うようになってからは年上女性に対する魅力をあまり感じなくなっていた一誠。
結局、自分もヴァーリも神牙も当初決めていた思いを絆されてしまった時点で彼女達に負けていたのだ。
その証拠に、この世界に迷い混んだ事で大半を失っていた――――否、封じられていた本来の力はこれを境に戻り始めているのだ。
「…………」
軽く握った拳に、それまで無くしていたパワーがみなぎっていることがわかる。
試しに目の前に突き出す拳は空を裂き、拳圧の作る風が遠く離れた大岩を砕く。
「凄い……」
宿す龍との繋がりを取り戻した事で戻り始めた本来の力の一部を見た蓮華が呟くように一誠に対して言った。
それは言葉にはしなかったが、思春と小蓮も同じ感想を抱かせており、改めて一誠達の立つ領域の途方の無さを知る。
「まだ完全ではないが、ドライグの言うとおり少しだけ力を取り戻せたっぽいぜ。多分ヴァーリと神牙の二人もな」
数十メートル先の岩を風圧だけで破壊してみせても尚、完全には取り戻せては居ないと言う一誠に、蓮華達は自分達の目指す先の長さを改めて知るが、諦める気は無かった。
それぞれの『精神』がある限り。
「でもまだだ」
知ることの無かった可能性を知り、触れてしまった事で。
「完全なフルパワーを……。
そしてそこからもっと先に進化しなければな」
追い付き、共に歩く為に。
ほんの一瞬、暴風のような赤き闘気から穏やかな川のせせらぎを思わせる輝きを纏う一誠のまだ遠い背中を見つめて……。
終了
おまけ
見事なまでに袁家達との小競り合いを制してひとつの国として独立することになった呉の者達。
後は三馬鹿達が如何にして未来へと帰還するかという話なのだが、ここ最近その目的が軽く忘れられてる感は否めない。
というのも、探しようにも探せないし、キーマンである北郷一刀一派からは完全な化け物と見なされて近寄られることも無いし、曹操勢力からも完全に目を付けられてしまったからだし、何よりその呉の面々が三馬鹿とお別れするつもりが見事なまでの満場一致で皆無なのだ。
「暴れすぎたな」
「ああ、暴れすぎたな」
「まさかキーマンの北郷が曹操と手を組むとはな……。
完全に歴史がおかしくなってまった」
しかもその危険視されていた状況が最悪の結果となってしまった。
これにより、簡単には帰れる状況ではなくなったのだ。
「別に天の使いと曹操が同盟組んでも良いじゃない? 別に私達は大陸全土を支配する気なんて無いし」
「こちらにその気が無くても、向こうは俺達を危険生物と見なして排除しようと考えている。
……それにお前達を巻き込んでしまったんだ」
「そうなるかもしれない上でお前達を引き入れたのは我等だ。
お前達を消すつもりで向かってくるのなら、返り討ちにするまでだ」
しかしそれでも雪蓮達孫呉の者達は神牙、ヴァーリ、一誠の三人を離そうとはしなかった。
三人と関わると危険だから手放す等という考えを持つには、あまりにも三人と共に過ごしすぎた。
「神牙のいう男だった歴史ってやつの私達がどうなったかなんて関係ないわ。
私達の生き方は私達が決める。上から見てるだけの誰かが決めた『正しさ』等に興味はないわ」
この世界が、自分達以外の全てが三人の存在を否定したとしても、自分達が今度は守る。
それが間違いであろうとも、最早彼女達には関係なかった。
「私達は私達の故郷であるこの地で、アナタ達とこれからも生きていければそれで良い。
それ以外は望まないし、それが『間違い』と神ですら宣うなら、神とだって戦ってやるわ。
そうでしょう皆?」
『異義なし!』
その覚悟のあり方は、元の世界で三馬鹿が抱いた覚悟と同じ。
「まいった、こりゃあ負けるね」
「頑固な女達め……」
「今に始まったことではないがな……くくくっ!」
その覚悟と言葉が、悔しいことに三馬鹿達は嬉しいと思ってしまう。
「なら、俺達も抗うしかないじゃないか」
龍の白翼をその背に。
「俺達もアンタ達を失いたくはないからな……!」
最古の英雄の槍をその手に。
「こうなりゃやってやんよ……!」
龍の籠手をその腕に……。
三馬鹿達もまた炎を灯すのだ。
「………。ごめん、こんなんされたら眠れんのだけど」
「一緒に寝ては駄目?」
「寧ろありがく思え」
「えへへ、一誠は暖かいなー?」
「だ、だからこのままだと俺はまた三人に……!」
「今更だと思うけど……」
「酒がなくても何度かあっただろう?」
「ねー?」
「あぷっ!? や、やめれ! だ、大と中と小に挟まれたら――ひょえー!?」
ちょいちょい押し切られまくりながら。
終わり
補足
多分、数多のこのネタの中でも、魏√と同等に安定しているかも。
魏√は逆に華琳様とずーっと痴話喧嘩ばっかするけど……。
その2
次はその魏√ネタ……かな。
てのも、途中書きしてる奴を消化させるくらいしか今できないくらい忙しくて……