色々なIF集   作:超人類DX

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板挟みのリーアたんにしてみれば、自分の為なら何でもやらかす程の行動力のある彼に好かれてるあけのんが羨ましくて仕方ない。

……と、思うのだった。


羨ましい部長

 血に染まりながら敵を屠るその姿が。

 

 自分の知らない眼をしながら相手を蹂躙するその姿が。

 

 全てが違っていて、全てが掛け離れている。

 

 その理由が何であるかの自覚があるからこそ、転生者は何も言うことも出来ないし、下手に口を挟む事もできない。

 

 わかっている事は、全てが変わってしまった彼は徹底的な区別をしていて、彼にとって大切に想う者の前だけでは本来に少し近い彼になるということだけ。

 

 そのカテゴリーに入る者は限られていて、少なくとも自分は入らないという事。

 

 そして、一度『破壊すべき対象』と認識した相手は徹底的に破滅させる。

 それが、兵藤ではなくなった霧島一誠という少年……。

 

 

『この世に生きる全てに存在する生物達よ。

お前達の持つ『怨み』の力をこの俺に送れィっ!!!』

 

『こ、これは……!?』

 

『な、なんと禍々しい……。

これがこの人間の持つ力なのか……!?』

 

『地獄へ行け! グラッジ・デスボールッッッ!!!』

 

 

 数年前、悪魔達にすら悪夢と云わしめた人間の突然変異。

 

 

 

 

 

 殺害寸前まで破壊されたソーナ・シトリーは、当然の事ながらリアスによる連絡によって実家のある冥界へと眷属達と共に搬送されることになった。

 

 当然の事ながら、いったいどうしてそうなったのかというソーナの両親達からの問い合わせがあった訳だが、リアスは正直に言うしか無いと、経緯の全てを説明する。

 

 ソーナがあの赤龍帝の怒りに触れた結果、そうなったのだと。

 怒りに触れる理由のその全てを説明した。

 

 その結果、向こうからの反応が無くなってしまった。

 

 恐らく、自分の娘が婚約をしたくないばかりに、よりにもよって赤龍帝の名前を使ってしまったからなのか。

 それとも娘を壊された事への報復を考えての事なのか……。

 

 どちらにせよ、今のところシトリー家から彼に対する反応は無く、代わりに同族であり友人であるリアスが責められる事になった。

 

 何故助けなかったのかと……。

 

 

「友人を助けようとしなかったのか……か。

中々刺さるわね」

 

「部長……」

 

「確かにそうね。私はソーナを助けようとはしなかったわ。

だって死にたくはなかったもの……」

 

 

 怒りを向ける矛先をリアスに向けられた。

 それは悪魔としてという意味ではリアスとしても堪えるものがあってしまう。

 しかし種族としての誇り以前にリアスはまだ死にたくはなかった。

 

 もしあのままソーナの側についてしまえば、彼は間違いなく、それが例え朱乃の主であろうが関係なくまとめて殺しに来るのはわかりきっていたから。

 

 それを考えてしまえば、生きたいという生存本能が勝ってしまったからこそ、リアスはソーナに関しては何もしないし言わなかったのだ。

 

 そんな本音を向こう側は理解こそすれど納得はしないとわかっていたとしても。

 

 

「私は……部長の判断を間違いだとは思いません」

 

「…………」

 

 

 そんな本音を聞いた凛はリアスにそう言った。

 自身の本音としても、一誠がたとえ自分に『無関心』だったとしても、『殺す対象』にはなりたくなかったから。

 

 

「ただ、問題はレヴィアタン様よ。

あの方は間違いなくソーナが傷つけられた怒りを本人にぶつけると思うわ……。そうなれば」

 

「だ、大丈夫なのでしょうか?」

 

「わからないわ。

ただ、彼は本当の意味で『異常』よ。

赤龍帝であるとか関係なしに、彼は人の範疇を超えている。

少なくとも、数年前の時点からそうだった」

 

 

 どちらにせよ、リアスは今完全な意味での板挟みであった。

 朱乃の主である以上、ある意味で彼という異質な後ろ楯を持っているが、その彼が悪魔と敵対関係になろうが関係ないと思っている。

 

 これぞまさに自由に対する代償なのかもしれない。

 

 リアスは思うのだった。

 

 

 

 

 そんな元凶である霧島一誠はといえば、ソーナ・シトリー達を実質的な再起不能に追い込んでからも何時も通りに風紀委員としての業務を、最近候補して加入したギャスパーと藍華の二人とでこなしつつ、更なる壁を乗り越える鍛練をしている。

 

 

「フー……」

 

 

 それは休日であろうとも変わらず。

 リアス達の警告通り、あの虫けら共(ソーナ達)を八つ裂きにした以上、その後ろに控える連中共が報復に動くであることは予想できる事である。

 特にソーナの姉は四大魔王の一角。

 

 正直四大魔王についてはリアスの兄くらいしか顔と名前を記憶していなかったので、ソーナの姉とやらと戦ったかどうかはわからない。

 けれど魔王なんて名乗る以上は並の存在ではない――という事は、数年前に一度リアスの兄とやりあった時に感じていたので、油断はしない。

 そうでなくとも、朱乃を守る為にもっと先の領域へと進化し続けるつもりである一誠にとって、今回の件等、己の壁を越えるための餌でしかないのだ。

 

 

『向こうが怖じ気づく可能性もあるが……』

 

「人間のガキ一人に虚仮にされたんだから、それは無いだろ。

曰く、姉とやらはあの虫けらをえらく可愛がってたようだしな」

 

 

 最早ソーナを完全に虫けら呼ばわりする様になってしまった一誠の言葉に、ドライグは内心『まあ、それもそうか』と、幼い頃に朱乃への誓い以降からずっと見てきた一誠の鍛練を見守る。

 

 

『選択肢を間違えただけで転落とは、哀れな悪魔だったな。

しかし、あんな呼吸するだけの物体になったと知った例の婚約者とやらはどう思うのやら……』

 

「どうでもいいが、好きなら結婚するに決まってるだろう? 俺はもし朱乃ねーちゃんがそうなってでも変わらねぇし」

 

『互いが互いをただの肉片になっても好き合うと言い切れるのはお前と朱乃くらいだろう……』

 

「じゃあそれは似非だ。所詮ソイツの皮しか見てねぇだけさ」

 

 

 そう真面目な顔で言い切る一誠。

 その一切揺れぬ精神力が一誠を異常なまでの進化を促せているのだ。

 

 

 

 

 

 ただ先の領域が知りたい。

 ただ、強くなりたい。

 

 挫折と敗北を知った事で至ったその精神はただの堕天使であった男の可能性を解放するに至った。

 

 挑戦者にて探求者。

 

 それが今の男の精神の要であり、そんな生き方を知った事で彼の同志となった者も現れた。

 

 

「バラキエルが前に拾った人間の小僧がセラフォルーの妹を半殺しにしたか。

なるほど、セラフォルーと戦うつもりでそうしたのかは定かではないが、つくづく面白い事を仕出かしてくれるようだ」

 

 

 そんな堕天使の男……コカビエルがかつての同僚から知った一人の少年は実に好ましい存在だった。

 ちっぽけな人間の子供が、絶望と挫折を糧に覚悟をしたことで人の領域を越えた。

 

 それはまるで己のようであり、バラキエルはとんだ人間を拾ったものだと笑みが溢れてしまう。

 

 

「アナタはその人間の子とは会ったことが無いのでしょう?」

 

 

 そんなコカビエルに対し、金髪の美女が訊ねる。

 

 

「ああ、向こうも俺の事は知らんだろう。だから興味深い。

聞けばその小僧はバラキエルの娘の為に壁を乗り越えようとし続けているという意味でもな」

 

「それはつまり、彼女への愛が原動力ということかしら?」

 

「そうだ。

そしてそこが俺と小僧の違いだ。

恐らく小僧は強さを求めるのはバラキエルの娘を守る為だけの『手段』でしかない」

 

「あくまでも彼女の為……」

 

「俺には無い覚悟だからな。

直接見てみたいとすら思うぞ……ふっふっふっ」

 

「………」

 

 

 不敵に嗤うコカビエルに、金髪の美女ことガブリエルは苦笑いだ。

 

 

「アナタらしいですねコカビエル」

 

「そんな俺に付こうとするお前も相当変わってると思うぞガブリエル」

 

 

 堕ちた天使と変わらぬ天使のコンビの間に流れる時間は穏やかで緩やかなのだ。

 

 

 

 板挟み状態になってしまったという意味では辛いリアス。

 そんなリアスは実の所、結構な頻度で姫島家にお世話になっていて、よく泊まったりもする。

 

 その事自体は、自身に関する相談なんかを朱乃に聞いて貰えたりするのでプラスになるとは考えてはいるのだけど、別の意味での辛さがあるにはあるのだ。

 

 

「レヴィアタン様の事はあまり知らないの?」

 

「アンタの兄ぐらいしか印象なかったもんでね。

まあ、襲撃を想定しているし、油断なんて一切するつもりもありませんがね。

ただ参ったね……」

 

「? 何が?」

 

「下手したら死ぬかもしれないと思うと、さっきからねーちゃんにアレコレしたくてヤバイんですよね」

 

「は……?」

 

 

 何を言っとるのだ彼は? と目が丸くなってしまうリアスだったが、直後に意味を理解してしまう。

 

 

「いやほら、命の危険を感じるとアレに対する欲求がどうのこうのって説あるじゃないですか? 俺今めっちゃ命の危険感じてるせいで、普段の100倍増しで朱乃ねーちゃんが魅力的に見えてしゃーないというか」

 

「……」

 

「もうイッセーくんったら! そんなこと微塵も感じてない癖にエッチなんだから……!」

 

 

 なんて言いつつ寧ろ喜んでいる朱乃を見てリアスは軽くイラッとする。

 学園では他人行儀で通しているせいなのか、家だとそのタガが外れたように、アホなカップルみたいに飽きもせずイチャつく。

 

 

「でも、そんなイッセーくんが大好きっ!」

 

「………」

 

 

 現在独り身であるリアスにしてみれば、自分の為に文字通り命を張り、地獄の底まで一緒に居てくれて、文字通り決して裏切らない相手が居る朱乃が羨ましくて仕方ない。

 

 

「えへへ……イッセーくん♪」

 

「よしよし……あー、もうねーちゃんは可愛いなぁ」

 

「………」

 

 

 こうなると大体朱乃は素になるし、大体これが合図となるのでリアスはそっと退出し、隣の客間に戻って敗北感に浸りながら眠るしかない。

 

 

 

 

 あぅ……もっとちょーだいイッセーくん……!

 

 

 

 

「い、一体どんな事をしてるのかしら……? うぅ、眠れないわ……!」

 

 

 聞こえてしまうその声のせいでほぼ眠れない夜を……。

 




補足

きっと別世界の自分と彼の関係を知ったら凄まじく羨ましがるだろうね。

んで、多分その別世界の彼とこの風紀委員長はある意味馬は合うのかなと。


その2
学園の外でだと本気でアホなカップル化します。
し過ぎてリーアたんをムラムラばっかさせてます。



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