色々なIF集   作:超人類DX

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焼き土下座ファンの皆様、申し訳ございませんが焼き土下座ではありません。

理由……帝愛グループから装置をレンタルしてない為


執行でなく報復

 これは最早風紀委員としてではなく、霧島一誠としての報復だ。

 

 軽はずみな行動が身を滅ぼす事を『徹底的に』叩き込む。

 

 だから一誠はこの時だけは風紀委員の腕章を外し、破壊すべき対象へと乗り込んだ。

 一度ならず何度もムカつかせた連中を破滅させるために。

 

 そこに慈悲等ありはしない。

 止める者が居るのならその止める者もろとも壊し尽くしてやる。

 

「ま、待って……!! ど、どうか話だけでも、理由だけでも聞いてくださ――」

 

「話にならないクズが……」

 

「っ……!」

 

「待ってくださいだ? テメーはその台詞を生まれてから――そして何度これからも吐き続けるつもりだ? 前にテメーの下僕共にも言った事だが、世間はテメーの母親じゃあない。クズの言い訳を一々聞かない。

そして、テメーの両親や肉親が教えなかったのなら、俺が代わりに言ってやろう。

『侮辱』に対する誠意は『死』以外は無い」

 

 命乞い等聞かぬ。

 必死に頭を地面に叩きつけてようが知らない。

 霧島一誠にとって最も嫌悪することは、自分や朱乃が嘗められる事。

 

 それは即ち侮辱であり、その侮辱に対する報復に手は抜かず徹底的に破滅させる。

 

「この時点でテメーに最早猶予なんざありはしねーんだよ。

今から迅速に『噛み殺して』やるから、黙って殺戮されてろや?」

 

 

 赤き龍の籠手を纏い、その全身から赤雷を迸らせる霧島一誠の死刑宣告は無慈悲に執行されるのだった。

 

 

 

 

 

 なるほど、実に風紀委員長らしいものだ。

 

 歴代の風紀委員長に劣らぬ執行力を目の当たりにした桐生藍華は、不思議な程に目の前で展開されているハードグロテスクな光景を前にしても冷静でいれた。

 

 

「ううっ……」

 

「辛いなら出ていった方が良いわよ?」

 

 

 左腕に不思議なものを身に付け、何故か全身からビリビリとしたものを迸らせていても、藍華は特に驚くこと無く生徒会長の支取蒼那を殴り飛ばす一誠を見つめている。

 逆に同じように見ていたギャスパーは耐性が低いのか、少々顔色が悪い。

 

 なので藍華は見ない方が良いと提案するが、ギャスパーは決してその場から離れることも目を逸らそうとはしなかった。

 

 

「き、綺麗事だけじゃないってわかっていますから。

時にはこういう事もしなくちゃあいけない事も……だから目は決して逸らしません……!」

 

「……………」

 

 

 そう宣言するギャスパーに、藍華は何で一誠が傍に居ることを許可したのかを分かった気がしたのと同時に、負けてられないと改めてギャスパーを好敵手と認める。

 

 

(どちらにしろ、この生徒会はこれで終わったわね)

 

 

 そして反対に、支取蒼那率いる生徒会は終わったと……他の役員達もろとも一誠に壊されている光景を前に思う。

 

 

「ガファ!?」

 

 

 ……と、会長の眼鏡が消し飛ぶと同時に顎の骨が砕ける音を耳にしながら、桐生藍華は後継者である霧島一誠を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員長が鬼の様な形相で生徒会室へと向かっていくのが目撃されたという話を聞いてしまったリアスは

この時点でソーナのやらかしをどこかで知ったのだと察したのと同時に、思っていたより悲惨過ぎる状況に、改めて霧島一誠に『この手の冗談は通用しない』と恐怖と共に理解させられた。

 

 

「誰からソーナの事を……?」

 

「誰でも良いでしょう? どっちにしろそこのボロクズは侮辱をした。

だからこれは風紀委員の執行ではなく、俺個人の報復です」

 

 

 風紀委員としてではなく、ただ個人的な『報復』でしかないと言ってのける通り、今の一誠は腕章もしていないしただの一般生徒と同じ制服だ。

 

 

 

「……。ソーナの代わりに謝らせて貰うわ」

 

 

 うつ伏せに倒れ伏し、かろうじて何かを掴もうと手を上げようとしているソーナの手を無表情で踏み潰す一誠に対してリアスはそれしか言えなかった。

 

 

「要りませんよ。

借りなら今全部返しましたので」

 

「そう、みたいだわ」

 

 

 話を聞き付けたリアス達が生徒会室へと来た時には全てが終わっていた。

 殆ど顔の判別ができなくなる程に殴られ続けて虫の息であったソーナ達という屍同然のものに囲まれていた、返り血まみれの一誠と、そんな一誠を震えながらもしっかり見ていたギャスパー……そして見覚えの無い女子生徒。

 

 

「大丈夫?」

 

 

 そんな光景にリアスや凛は絶句し、耐性の低いアーシアは気絶し……朱乃はといえば、一誠に駆け寄ってタオルを渡す。

 

 

「わりーわりー、クソ堕天使共以外でこんな頭に来たのって久しぶりで、つい返り血拭く物の用意を忘れてたぜ」

 

 タオルを受け取った一誠が、今の状況にはまるで似つかわしくない声色と共に顔を拭く。

 

 

「まったく、ダメだな俺って奴は? 頭に血が昇るとつい忘れちまうぜ」

 

「その様子だと、シトリーさんの件を聞いたのね?」

 

「まぁな。

何を考えてのことなんて知りたくもないけど、完璧に俺を嘗めきっていたのだけはわかったからね。

いやホント、俺を出汁に使おうとか嘗めてるわ」

 

 

 返り血を拭き取りながらくつくつと嗤う一誠の暴力性にリアス達は完全に呑み込まれてる。

 早い話が恐怖を抱いている訳だが、朱乃にしてみれば好都合でしかない。

 

 それよりも気になるのは、風紀委員の制服を着ている見知らぬ女子生徒の存在だ。

 

 

「彼女は?」

 

 

 一般的な感性を持つ者ならば、卒倒する光景を前にしても平然としていて、そればかりかジッと一誠を見ている一見すると地味にも思える女子生徒。

 

 白い制服を着ていて、『見習い』描かれた腕章を着けている所を推察するに、ギャスパーと同じ立ち位置になっている者なのだろうが、それでも朱乃にとっては一誠の近くに『異性』が存在するという意味では心配なのだ。

 

 無論、一誠とこの者がそういう関係ではないと解りきっているとしても。

 

 

「去年、冥ちゃん先輩の試験に最後まで残った者だよ。

最近ギャスパーを俺が連れ歩いているのを知って、志願してきた。

どうやら本人は風紀委員に入ることを諦めたくはないらしい」

 

「ふーん……?」

 

 

 その割りにはずーっと一誠を見ているのは何故かしら……と、一誠自身に欠片もそんな感情が無いことは解っていてもムッとした気分になる朱乃だが、今は取り敢えずその感情は押し殺す。

 

 こうして生徒会は『解体』されるのだった。

 

 

 

 

 意識を戻したアーシアや、絶句したまま言葉も話せなかった凛に協力を仰ぎ見事に粉砕されたソーナ達の回復作業を行う事になったリアス。

 

 

「お小遣いをはたいて『フェニックスの涙』を手に入れないと完全には戻せないかもしれないわね……」

 

「特にシトリー様の傷が酷いです。

顔判別が困難な程に破壊されています……」

 

 

 歯は無くなり、顔の骨のほぼ全てがぶち壊され、最早ソーナだったのかさえ判らなくなっている状況に震えながらも話すアーシアと凛は、全快させるのは難しいと言っている。

 

 

「キミの怒りはわかった。

しかし、わかっているのか? 彼女の後ろには姉であり、魔王様が居られるのだぞ? しかもその方は彼女を心底大切にしている。

つまり――」

 

「おーおーおー、そいつは怖いなぁ? 怖すぎてチビってしまいそうだぜ」

 

 

 そんな状況に対して祐斗が警告をするのだが、本人はどこ吹く風という態度を一切崩さないでヘラヘラしている。

 

 

「そこの虫けらに最早話しかけられるだけでも虫酸が走るってのに、俺はいつの間にかその虫けらと将来とやらを誓い合ってたんだから驚き桃の木山椒の木って奴だ」

 

「…………。私達もさっき聞いたばかりだったわ」

 

「へぇ? アンタの幼馴染みがこうされたってのに怒らないのかい?」

 

人間界(こっち)の学校に通うという事になる前、私とソーナは私の兄にアナタについて散々警告されていたわ。

その警告を軽く考えていたソーナにも責任はある。

もし重く受け止めていたのなら今回のような軽はずみな事は言わなかった筈だもの。

それはきっと数年前のアナタを『直』で見た私と見なかったソーナの差よ」

 

 

 そう呻き声だけしか出せない幼馴染みを治療しながらリアスは言う。

 そう、ソーナはきっと心の何処かで霧島一誠を侮っていた。

 

 いや、侮っていたというよりは容量を測り違えたというべきだろう。

 

 

(ソーナ、アナタはきっと人間の男の子だから女子に対して少しは甘くなると考えていたのでしょうね?)

 

 

 異性相手にはきっと加減をする。

 自分ならきっと彼と『恐怖』の関係ではない関係になることが出来る。

 直で見なかったからこそ考え方が出てきてしまった末路が今。

 きっと婚約者候補に思わず一誠の名前を出したのは、数年前彼がもたらした悪夢による抑止力が働くと考えての事で、きっと何だかんだ彼は『異性』である自分を助けてくれると思いたかったのだろう。

 

 

(普通の人間の男ならそうなる可能性はあったわ。

けれど彼は違う。彼に女子供だからという言い訳は一切通用しない。

彼にとって朱乃と朱乃のご両親以外は全て同じなのよ……)

 

 

 哀しいほどに、悔しいほどに。

 霧島一誠にとって優先する事は朱乃だけ。

 

 その考えを甘く見すぎていた事が今のソーナの末路なのだ。

 

 

 

「ソーナ達の傷が戻った所で精神的には間違いなく再起不能。

このまま生徒会――いいえ、学園生活なんて到底無理になったと思うし、きっと冥界の実家に帰ると思う。

そうなれば、きっとシトリー家はその『理由』を知る筈だわ。

そして祐斗の言うとおり、ソーナの姉であるセラフォルー様は間違いなくアナタを許さないわよ?」

 

「許さないねぇ? 何をされるんだ? 毒の沼か何かに沈められるとかか?」

 

「茶化さないでちょうだい。

要らぬお世話なのは百も承知だけど、これは冗談ではないわ」

 

 

 だからこそ、今回のこの件で不安定ながらも続いていた平行線な関係性が破綻する可能性がある。

 もしそうなれば……

 

 

「ど、どうするの一誠?」

 

「は? ああ、これの姉とやらが報復に出てきたらって話か? んなもん速攻で朱乃ねーちゃんを眷属から外させてバラキエルのおっちゃんに完全ガードさせてから………まあ、死ぬほど抵抗してやるわな」

 

「そうなったら私達も殺すのですか……?」

 

「時と場合によるかな。

困ったことに、キミ達の王様の事をそれなりに朱乃ねーちゃんは気に入ってるしね」

 

「軽く言ってくれるなキミは……」

 

「一々重々しく言ってもかわんねーだろ?」

 

「そ、そうなったら僕は……」

 

「そりゃあこの人達に付けと俺は言うぞ。

あー、それと先に帰らせた桐生も巻き込まないように謝らねーとな……」

 

 

 彼の事だ。全力で悪魔を殺しに来る。

 数年前と同じように――いや、数年前よりも確実に進化した力と徹底さで。

 

 

(本当に異常だわ。たった一人の人間に対して悪魔全体が悪夢を感じるなんて……)

 

 

 そうなった時、リアスは選択をしなければならない。

 生きる為の選択を……。

 

 

終わり

 

 

 

オマケ・知ってしまった桐生藍華。

 

 

『後処理するからお前はさっさと帰れ』

 

 

 そう言われ、半ば追い出されるように帰らされた桐生藍華は自宅に帰ってからもずっと考えていた。

 

 

「オカルト研究部の人達と割りと親しそうだった……」

 

 

 常に一人で陰口なんて叩かれながらも風紀委員長をしてきた一誠の事を、友達の居ないボッチ人間と思い込んでいた藍華は、今日だけで色々と知り得なかった霧島一誠についてを知ってしまった。

 

 

「姫島先輩の事を朱乃ねーちゃんって……」

 

 

 特に驚いたのは、これまで一切の接点なんてあり得ないと思っていた姫島朱乃の事を朱乃ねーちゃんと呼び、そして見たこともない穏やかな表情を向けていた事だった。

 てっきり女っ気の欠片も無い男だと思っていただけに、ある意味ショックでもあった藍華はベッドの上にあるマイ枕に顔を埋めながらひたすらに考えている。

 

 

「あんな顔もできるんだ……」

 

 

 他人に対して無関心で無愛想。

 そう思っていた相手の見せた『人らしい』姿に藍華は自分でもわからないが、変に裏切られた気分でモヤモヤとしていた。

 無論、一誠に対して恋愛感情があったからではない。

 

 無いのだが、何故か納得ができない。

 

 

「もー……なんなのよ……」

 

 

 見習い、候補者とはいえやっと念願の風紀委員の枠に入ることができた。

 それなのに、悲願の欠片を掴めたのに掴んだ事を後悔しているようなこの複雑な気持ちの意味がわからず、藍華は自室のベッドの上でただただ悶々としていた。

 

 

「アイツ、まだ私に何か隠しているから私だけ帰らせたし……ボッチ仲間だと思ってたら違うし。私が馬鹿みたいじゃない……」

 

 

 

 

『はー、すんませーん恭ちゃんセンパイ。

今アホなチンピラが女の子カツアゲしてたんでちょっと遅れるっす。

え? 群れてたって? えーっと、四人って群れてるって判定ですかね? ――あ、はいはい問題なく噛み殺せと……』

 

 

 

 

『あ? なんだ、まだ居たのか? こんな所を一人で歩いてないで家に帰るんだな。お前にも家族がいるだろう………と』

 

 

 

 去年の試験で、常に自分の先を行っていた頃から。

 いや、中学生の頃チンピラに絡まれた時に『見習い』として既に風紀委員になっていた彼に助けられた頃から。

 

 

「――って、違う違う。

これは常に私の上を行くアイツにムカつくってだけだわ。

断じてそうじゃないし、第一なんなのよ悪魔って? 意味わかんないし、決してヴラディさんみたいな子を見習いにして私には一切そんな話を持ちかけてこなかった事に腹立ててる訳じゃないし」

 

 

 必死に否定をする藍華。

 しかし今日生徒会室で見た一誠の暴力性が……一切の慈悲も無く、『徹底的な破壊による正義』を目の当たりにした光景が……。

 残虐に嗤うその顔が……。

 

 そして駆け付けてきた姫島朱乃にだけ見せたあの優しげな表情が頭から離れない。

 

「……………」

 

 

 きっとどちらの側面も姫島朱乃は知っている。

 そして知った上で100%受け入れている関係性なのだろう。

 それは一誠が普段ほかの者には見せない表情を朱乃にだけは向けているのを見れば解ってしまう。

 

 だからこそ……もしもほんの少しだけそんな側面が自分に向いたとするのなら。

 

 

「………んっ」

 

 

 違う。そうではない。

 そう頭では否定したい桐生藍華はもぞもぞと身体を揺らしながら小さく声を洩らす。

 

 頭の中にボーッとさせ、下腹部に感じる熱に触れながら……。

 

 

「……………。私って変態なのかも」

 

 

 暫くしてから自分の身に起きたそれにちょっぴりだけ自己嫌悪しながら。

 

 

 桐生藍華は知っていくのだ。

 

終了




補足

『侮辱』に対しては殺人も許されると思っている。

というどこかのギャングの幹部みたいな感じに侮辱された場合は徹底的に壊し尽くす。


その2
焼き土下座は多分ソーたんに対する報復にやって来た連中にさせるんじゃあないかな(惚け)


その3
この件で完全に板挟み確定になってもっとお腹が痛いリーアたんなのだった。


その4
そしてとことん皮肉な事に、無関心だからこそ普通に会話が成立が成り立つ転生者こと兵藤凛なのだった。







その5
あけのんの『勘』は当たってた模様。

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