色々なIF集   作:超人類DX

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折角自由になれたのに、数日後には胃が痛いという不憫なリーアたん。




胃が痛い部長

 他人に存在否定をされた経験が無いが故に、同族でもなければ年も一つしたの人間に散々言われた結果、相当な迷走をしてしまった幼馴染みのせいで、リアスは現在経験したことの無い胃痛に苛まれる事になってしまっていた。

 

 

「お、お腹が……」

 

「き、効くかどうかはわかりませんが、胃薬を買ってきました……」

 

「あ、ありがとう……」

 

 

 なんて事をしてくれたのだという気持ちだけが今のリアスの頭の中ではループし続けている。

 只でさえ踏めば全身が粉々になりかねないレベルの威力を誇る『地雷』そのものを相手に、しかもその本人からは存在そのものを嫌悪されているというのに、どうして自分の幼馴染みはそんな選択をしてしまったのか。

 

 

「副部長も何とか落ち着きましたけど、暫くはかなり機嫌が悪いでしょうね……」

 

「現にシトリー様をバラバラにしかねませんでしたし」

 

「勘違いしがちだけど、朱乃も朱乃でかなり彼に対しての独占欲が強いのよ。

例え彼がソーナに対してなんの関心も持ってないにせよ、いい気分にはならないわ」

 

「それなのにどうしてシトリー先輩は一誠の名前を……?」

 

「それだけの牽制力があるからだわ。私達悪魔にとっては」

 

 

 凛から渡された胃薬を白湯で飲みながら大きく肩を落とすようにため息を吐くリアス。

 

 

「何故凛さんの弟さんがそれ程に……。

あの方は人間ですよね……?」

 

「数年前にちょっとあったのよ……ちょっとだけね」

 

 

 妙な影響力に違和感を覚えるアーシアの質問にリアスは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 詳しいことはあまり言いたくはないのだが、その数年前に年端も行かない人間の少年一人が、チンピラ丸出しな形相と態度で乗り込んできた事件はある種のトラウマなのだ。

 その恐怖を知っている筈だというのに、ソーナは何故そんな真似をしてしまったのか。

 

 

「ねぇ朱乃、やっぱり彼に言うの……? ソーナの件を……」

 

「言って欲しいのであれば今すぐにでも言って差し上げますわよ?」

 

「い、いえ……言っては欲しくないかも。

けれど、言わないままにして先延ばしにすればするほど、本人が知った時の反応が怖いし……どうすれば良いのかしら」

 

「私は霧島先輩の事は凛先輩の弟さんということしか知りませんが、多分間違いなくブチギレて生徒会室が殺人現場と化すような気はします……」

 

「以前は堕天使を躊躇いも無く殴り殺していた事を考えたら、僕も同意ですね。

彼に教えつつなんとかシトリー様達へは穏便に済ませて貰えるように言えませんかね……?」

 

「代わりに私が彼女を八つ裂きにして良いと仰るのであるのなら、一向に構わないですが?」

 

『……』

 

 

 朱乃自体も相当に怒っているし、祐斗の言う通り、朱乃が一誠に頼めばソーナ達が八つ裂きにされる心配はかなりなくなる。

 けれど朱乃も朱乃でかなり頭に来ている時点でどっちにしろ八つ裂きは避けられない――という『行くも地獄戻るも地獄』状態だった。

 

 

 

 

 

 

 意外な事に、風紀委員長としての恐怖を学園全体に与えている霧島一誠と学園二大お姉様等と呼ばれる姫島朱乃が親しいを通り越した関係である事を一般の生徒達の殆どが知らない。

 

 それは風紀委員を継いだ時から『公私』はなるべる分けると決めていた一誠の方針もさる事ながら、朱乃自体の学園での人気があまりにも高いので、関係性が知られたら五月蝿いことになるだろうと思っての事である。

 

 なので一般生徒達からの霧島一誠のイメージは、誰彼構わず暴力で人の言うことを聞かす友達もいない野蛮人といった認識をされている。

 

 

「………………」

 

 

 そんな霧島一誠は学生としての態度も普通に良く、授業態度も普通に良い。

 そのお陰で一誠と同じクラスの生徒達も強制的に大人しくせざるを得えない。

 

 というより、先代達が卒業したと同時に校則違反を繰り返してきた輩を軒並み一誠が先代達と変わらないやり方で『執行』したせいで黙る他が無くなったと云うべきなのか。

 

 お陰でクラスメートの大半は息が詰まると一誠と同クラスである事に少なからず不満を持つ者も多く、自然と敬遠している。

 

 早い話が『居ない人』として扱っているというべきか。

 もっとも、そう思われたりされたりした所で、本人は全く気にも止めないわけだが。

 

 

「や、霧島」

 

 

 が、そんな状況の一誠に対してギャスパーにも似た態度で接してこようとする勇気者が居る。

 それが、淡々とした顔で次の授業の準備をしている一誠の背中を軽く叩きながら話しかけてきた彼女がそうだ。

 

 一誠に近い色の髪をおさげにまとめ、眼鏡をかけた女子生徒。

 

 

「何の用だ?」

 

「用は無いけど、相変わらずボッチやってると思ったのとトーク相手が欲しかったから話しかけただけよん」

 

「…………」

 

 

 名を桐生藍華。

 この恐怖で強制的に統制されきったクラスの中で唯一恐れる事無く一年生の頃から絡んでくるある意味での強者女子だ。

 

 

「………………」

 

「ツレないわねぇ~? 一年生の頃、一緒に風紀委員会加入の最終試験までやって来た仲じゃないの?」

 

 

 その理由は、彼女は先代の時代に風紀委員会に入る為の試験を一誠や他の希望者と共に受け、最終試験段階まで到達していたという理由だ。

 察しの通り、桐生藍華はその最終試験に落ちた事で風紀委員会に入ることは出来なかったのだが、唯一一人だけ合格して風紀委員へと入った一誠にはその後こうして話しかけてきたりする。

 

 

「君は落ちただろう。

それに仲良しこよしになった覚えもねぇ」

 

「見事にツンツンしちゃってるわ。

そんなんだから友達もできないのよ?」

 

「大きなお世話だ。それにお前だって人の事は言えないだろうが?」

 

「言われてみればそうだけど、別に困らないわ」

 

 

 ヘラヘラしながら一誠の辛辣な返しを受け流せるだけの度胸は持ち合わせているらしい。

 

 

「それよりも、先代の専用制服を着た女子が最近、アンタの傍に居るのを何度か見たことがあるのだけど。アレはどういうこと?」

 

「あ?」

 

「私は確かに先代の試験に落ちて風紀委員会には入れなかったわ。

一度落ちた者は次の委員長の代まで再試験はできないって知決まりだったから、アンタの代になるまで準備をしてきたの」

 

「………」

 

「それなのにここ最近になってアンタが連れ歩いているともなれば、気にならないわけが無いでしょう?」

 

 

 そんな桐生藍華は、ここ最近先代の風紀委員会専用の制服を着てちょこちょこと一誠の後ろを歩いている女子………つまりはギャスパーについて不満があるらしい。

 先代の試験に落第して風紀委員会に入れなかったというのにという意味で。

 

 

「アイツは別に入れた訳じゃない」

 

「じゃあ何で先代の制服を着せてるのよ?」

 

「着たいって言うのと、本人は試験を受ける気があるって言うから貸してるだけだ。

落ちれば即刻取り上げる」

 

「ふーん……?」

 

 

 シャープペンシルの芯が入ってるかの確認しながら淡々と返す一誠に藍華は理解はしたが納得はできないといった顔をしている。

 そもそも彼女が何故風紀委員会に入りたがっているのかというと、彼女がまだ中学時代にまで遡る事になるのだけど、今回は省略する。

 

 現状言えることは、桐生藍華は風紀委員になりたいということである。

 

 

「それだったらアンタが試験を行うまでの間はその子みたいに風紀委員の仕事の手伝いは出きるって訳?」

 

「あ?」

 

「私はまだ風紀委員になることを諦めた訳じゃあない。

アンタが行う試験にも挑戦するつもりだし、これが最後のチャンスだとも思っている。

だからこそ、少しでも入れる可能性が上がるのならば、なんでもするつもり」

 

 

 中学の時にひょんな事から初めて知った駒王学園の風紀委員。

 

 憧れ、風紀委員会を知る『理由となったある出来事』である者が、『例外的』に風紀委員の雑用をしている同い年の男子だった事を知り。

 

 正式に入学し、その男子が先々代と先代の行った試験の両方に唯一合格し、自分は先代の試験に落ちて挫折を経験し。

 

 ただ一人の風紀委員となっても歴代と全く変わらない規模での運営を成立させている彼の『律儀』さを知り。

 

 

「構わないでしょう? いくらアンタが一人で先代達と変わらない規模でやれているといっても、人手不足は否定できないでしょうし」

 

「……………」

 

「勿論、その子と同じく、アンタの試験に合格できなかったから、その時点ですっぱり諦める」

 

 

 運命が変わり、霧島一誠となった彼の覚悟した道によって運命が変わった朱乃のように。

 彼自身にその自覚は無くとも、彼の姿を早くに見た事でその運命を変えることになった少女。

 

 それが、アーシアや、本来の一誠を含めた変態三人組と揶揄される元浜・松田とは一誠共々別のクラスに在籍し、そして最全期の風紀委員を知った桐生藍華。

 

 

「人をボッチ呼ばわりするが、お前も大概人の事は言えないだろ」

 

「アンタに対して平気で絡むせいで、変人扱いされている自覚はあるわよー」

 

「………」

 

 

 本音を言えば、一誠は歴代の委員長が自ら考える試験を行う予定は無かった。

 後を託さなければならないという意味では失格の考え方だが、元々他人と身内を完全に線引きしてしまっているが故だし、そうでなくても今の在校生の中で後を託せる者は居ないと思っているからだ。

 

 確かに桐生藍華は去年の試験において最終試験まで残りはしたし、ギャスパーは引きこもりを限定的に止める程度のやる気を見せてはいる。

 

 だがそれでも……。

 

 しかし現状人手が圧倒的に不足している事についての否定はできないし、何より他に自ら風紀委員に入りたがる者なぞ存在しないも同義。

 

 無論妥協する気は全くないし、こうなれば歴代の委員長が行った『試験』を考えなければならない。

 それでもし落ちれば例外無く切るにせよ、まだ委員長となって日が浅い今は開催できない。

 

 ともなれば仕方ない。

 紛いなりにも先代委員長の試験の最終段階まで残っただけの度量に免じて、ギャスパーと同じ立ち位置として暫くやらせてみる。

 

 そう考えた一誠は、桐生藍華に『自称・見習い』でならばと委員の仕事に加わる事を了承し、放課後彼女を風紀委員室へと連れていく事にした。

 

 

「おお……! これが委員所属のみが入る事を許される風紀委員室……!

学園長室より内装が豪華だって噂は本当だったわ……!」

 

 

 藍華にとってすれば眩く見えるほどに追い求めた風紀委員会の委員室に生まれて始めて入室できた事は、それだけで感動ものだったらしい。

 普段は飄々とした彼女とは思えない程、キラキラとした眼差しだった。

 

 

「これが制服だ。

先代達が何着かここに残してあるから、自分のサイズに合ったやつを選べ。

で、隣の部屋が更衣室」

 

「こ、これがあのスノーホワイト……!」

 

 

 そして風紀委員専用制服を前に感極まる。

 憧れてやまず、そして落ちて絶望した彼女はやっとその制服に袖を通す時がやって来たのだ。

 

 

「こんにち……はっ!? だ、誰ですか!?」

 

「たった今からお前と同じく『見習い』として手伝いをして貰う事になった」

 

「桐生藍華。

霧島とは同じクラスで、去年加入試験に落ちた者よ。よろしくね?」

 

「は、はぁ……」

 

 

 そして同じ候補者となるギャスパーとの挨拶を済ませた所で、桐生藍華の風紀委員生活は幕を開けるのであった。

 

 

「そ、それよりイッセー先輩。

さっきここに来る途中に部室に寄ろうした時に、部長達が妙な事話していたのを聞いたのですけど」

 

「妙……?」

 

「はい……あ、えっと……」

 

「? 私が聞いてたらまずいの?」

 

「そ、その……」

 

「良い、構わないから話してみろギャスパー」

 

「は、はぁ……では話しますね?

その妙な事というとは、生徒会長の事でして……」

 

「?」

 

 

 そして桐生藍華は知るのだ。

 

 ボッチ仲間と思っていた霧島一誠が然程ボッチではないことと……。

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………はっはっはっはっ」

 

「や、僕も流石にただの冗談かとは思っていましたけど、生徒会長にそういう話があるのは事実のようで……」

 

「あの会長さんにそんな話が? やっぱり良いとこのお嬢様なのかしらね? けどそれが本当だとしたら、何故霧島? 正直見てても明らかに霧島ってあの人をそこら辺に落ちた消ゴムのようにしか見なしてないのに。まさかマゾなの?」

 

「さ、さぁ……。(流石にこの人の前では悪魔については言えないよね)」

 

 

 

 そして桐生藍華にとっての初の『執行』は……。

 

 

 

「アーッハハハハハハッ! クハハハハハハハッ!! ヒーッヒヒヒヒッ!!」

 

「あ……」

 

「これ、生徒会が物理な意味で解体されるんじゃないかしら?」

 

「も、もしかしなくてもそうかもしれません。

先輩って今の生徒会の事を居ても居なくても影響ゼロと見なしてますし……」

 

「まー……人気先行型というか、そもそもあの生徒会選挙には違和感あったのよね。

95%の支持率だったみたいで、周りも何故かあの人達に目の色変えて投票してたし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぉ~もぉ~ そこいらのチンケな風紀委員長でぇ~す」

 

「こ、これはこれは霧島君? な、な、なな、な、何の用でしょうか?」

 

『………』

 

「何の用? 決まってんだろ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――喧嘩の話の時間だゴラァ!!!!

 

 

 

 生徒会だった。

 

 

終わり……色々な意味で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の名を勝手に使われたばかりか、虫酸すら走る関係だとフカシこかれた。

 その時点で殺戮モードにスイッチが入ってしまう一誠だったが……キレすぎて逆に冷静になってしまうとはまさにこの事だろうか。

 

 流石に幼馴染みが肉塊にされるのを黙って見ていられなかったリアスが止めに行こうと駆けつけた時に目にした光景は――怖いであった。

 

 

「ギャスパー、桐生。よーくコイツ等を見てみろ。

コイツ等は如何にも申し訳ございませんなツラして俺に対して床に額を擦り付けているが、内心は――『どうしてここまで頭を下げているのに、コイツは許してくれないのだろう』と、心中は俺を非難して冷血漢呼ばわりしている」

 

「「ふむふむ」」

 

「そ、そんな事はありえません! 本当に申し訳ないと思っています! で、でも私はそれだけ好きでも無い相手とは結婚したくないんです! だからついアナタの事を――」

 

「そんな連中に誠意なんてあるわけも無い。

その証拠に、土下座に対してちょっとした負荷を加えてやるだけで、殆どの連中は満足に謝る事ができなくなる……」

 

 

 ひたすら土下座するソーナに対して一切取り合わず、ギャスパーと……見知らぬ女子生徒に何やら教えている一誠。

 そして一誠は言うのだ。

 

 

「本来、出来る筈なんだ。

本当に、心からすまないと思っているのならどこででも土下座ができる。

それが例え………肉焦がし、骨をも焼き尽くす鉄板の上でもっっ!!」

 

 

 

 冷静に見えるけど、恐らく過去最高レベルにキレてしまっているからこそ滲み出る狂気を。

 

 

「なぁ、だから出来るよなァ生徒会長殿? 本当に悪いと思うならこの鉄板の上で1分以上はできるよな? 土下座を…っ!! クククキキキッ!!」

 

「」

 

 

 ソーナ・シトリー……ピンチ!

 

 

 嘘です




補足

ここまで来ると転生者は『ひょっとして自分って相当マシなのでは?』と思い始めているらしい。

……ある意味生徒会面子とそう変わらない事に気づいてないまま。


その2
転生者ならびに変態コンビやアーシアとは別クラスである一誠。
そして彼女もまた別クラスであり………そして……。


その3
ある意味でギャー子の好敵手――それが彼女。




その4
スタートだ、焼き土下座☆ (嘘)

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