色々なIF集   作:超人類DX

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続きどす。




極端だぜな風紀委員長

 好きとか嫌いではない。ただ普通に干渉されたくないし、干渉したくもない。

 

 そもそもあの『平等主義者』を自称している女が言っている事が本当だとするのなら、俺という存在は最早俺ではなくなっている。

 

 それはつまり、外の世界から転生したあの女の頭の中にある知識とやらも何の意味もなさなくなっている。

 奴の知識や記憶の中では『物語の主人公』らしい俺の周りを一々彷徨いている理由も恐らくはそこにある。

 

 何を目的にしているのかは別にしても、奴の知識通りの俺ではなくなっている時点でその考えは破綻していると気づかないものなのか。

 一々俺の周りをうろつく理由も、奴の知識の中の物語通りにするためで、それを安全な場所から眺めたいだけなのか。

 

 どちらにせよだ――あの時から俺の運命とやらが変わったんだ。

 それが良いのか悪いのかなんてどうでも良いし、ある意味奴の出現に関しても、力を持たないガキの頃は『恐怖』でしかなかったけど、その恐怖から逃げ出した先の繋がりを得られたのだから、皮肉でもなんでもなく感謝の念はある。

 

 そしてそれだけだ。

 

 それ以上の事はもう何も思わない。

 

 俺にとって、奴は毒にも薬にもならない存在。

 

 確かに悪魔としての朱乃ねーちゃんの、一応は主であるグレモリーさんの下僕になったと聞いた時は多少驚きはしたけど、それだけでしかない。

 

 そうなった理由なんて知る気もないし、好きにしてくれ。

 

 ―――俺の邪魔さえしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朱乃を最初の眷属にしようと決めた時、リアスは霧島一誠という少年を知った。

 そして知ったと同時に思い知ったのは人間でも悪魔でも類を見ない『異常性』だった。

 

 その異常さを言葉にして上手く表現するのは難しいけれど、リアスは確かに一誠に対する異常さを――そして朱乃にも感じた。

 

 だからこそ、リアスは同い年の友人であり、自身の女王でもある朱乃の主として相応しい存在になろうと努力はした。

 けれど一誠はそんなリアスに対して何の期待もしていない。

 

 そう……何の興味も無いと言うべきか。

 

 唯一過去に朱乃の身にほんの少しの危険があった際、血に飢えた猛獣のごとく激怒した一誠に殺されかけたぐらいか。

 つまりリアスはもしも自分が行動する際、朱乃にも何かしらの影響がある際は必ず一誠に報告するようにする。

 事後報告をして、それが一誠の中の線に触れて切ってしまえば、彼は間違いなく自分を八つ裂きにすると、その時点で恐怖したから。

 

 

「つ、つまり……その……」

 

「……」

 

 

 だからリアスは、ここ数日に起きた個人的な問題についてを若干震えながら、無機質で無関心の極みのような目をして黙って聞いている一誠に説明したのだ。

 

 

「もしかしたら朱乃から既に聞いているのかもしれないけど……」

 

 

 下手に隠してごまかして、それが後に朱乃の身に直結する事になったら、間違いなく殺しに来ると思うからこそ、眷属ではないし悪魔でもない一誠に正直に話すリアス。

 が、意外な事に一誠の反応はリアスの思っていたよりも千倍は普通だった。

 

 

「あー、結婚するんですって? えーっと、おめでとうございます?」

 

「………」

 

 

 いや、普通というよりはリアスの意思やどう思っているのかという事そのものがどうでも良いといった態度だ。

 

 舞い込んでいた婚約の話が嫌で嫌で仕方ないというリアスの気持ち対しても察しておらず、ただただ中身の伴っていない言葉を送っている。

 

 

「こういう時って祝いの金とか包むべきですかね? あ、でも悪魔の結婚式ってどんなのか俺知らないや」

 

「あの、もう少し私の話を聞いて欲しいのだけど……」

 

「相手は同じ悪魔ですよね? うーん、やっぱりお金持ちの人同士かな?」

 

「………」

 

 

 しかも心なしか『そんな感じの事を待っていました』という本音が聞こえてくるような気がしする程度に、無意味に爽やかな笑顔だ。

 

 

「流石に人間の俺はその結婚式に出席できないし、別にしたいとも思いませんが、めでたい話なのは本当の事ですからね。

心からおめでとうございます!」

 

「………」

 

 

 本来の自分であったならどう思っていたのかは別にして、霧島一誠としての今はただただ何も思わない。

 それが無意味に爽やかな笑顔を浮かべている最大の理由だ。

 

 

「ね、ねぇ一誠?」

 

「? なんだい兵藤さん?」

 

 

 これもまた原作とは真逆過ぎる反応と態度をしている一誠を暫く眺めていた凛は、思わずといった様子で一誠に説明しようと声をかければ、一誠は完全に凛を他人そのものな呼び方と共に返事をする。

 そのあまりにも『無関心』な態度に心が折れそうになる凛だが、今は折れてる場合ではないと、リアスの考えを教えてあげる。

 

 

「部長はまだ結婚しないし、結婚したいとも思っていないんだよ」

 

「え……?」

 

 

 凛の言葉に目が丸くなる一誠。

 

 

「え、ええ……凛の言う通りよ」

 

 

 すかさず頷くリアス。

 

 

「元々好きでも無い相手と結婚する気なんて無いし、相手の男の評判もあまり良くないから……」

 

 

 漸く話を聞いてもらえると間髪入れずに結婚の意思が無いと話すリアスに一誠は一応納得をしたらしく、関心の薄い反応をしている。

 

 

「そういや昨日の夜、ねーちゃんが言ってたよーな……。

しかしアナタがそういう考えだというのは理解しましたけど、そんな話を何故俺に?」

 

「この話がもしかしたら最悪の場合、朱乃の今後に左右するのかもしれないと判断して……」

 

「は? 貴女が結婚するしないの話に何故朱乃ねーちゃんが関係するのでしょうかね?」

 

 

 心底不思議だという顔の一誠。

 そんな一誠に対して言葉を選びながら説明しないとまずいとリアスは口ごもる中、凛が言ってしまう。

 

 

「その……部長の婚約者ってことになっているライザー・フェニックスさんは、眷属を全て女性のみで構成していて、こう、ハーレムのような状態にしているというか、結構な女好きなんだよ……」

 

 

 既にこの件の詳細を聞いていた体になっている凛の説明に、凛の傍に居た木場祐斗や塔城小猫も小さく頷いている。

 唯一まだそこら辺の事を知らないアーシア・アルジェントは頷いてはおらず、そして肝心の朱乃は現在もう一人の悪魔が居る生徒会室に出払っている。

 

 そんな状況の中凛から説明を受けた一誠はといえば、『へー?』と興味なさそうな反応だ。

 

 

「随分と詳しいじゃあないか兵藤さん? 一体どこで知ったのやら―――まあそんな事はどうでも良いか。

つまり、グレモリー先輩さんの婚約者が色々とだらしないから結婚なんてしたくないけど、向こうはそうじゃないって状況な訳だな?」

 

「うん……」

 

「で? グレモリー先輩さんの問題がどうして朱乃ねーちゃんに関係があるのか知りたいんだけど?」

 

 

 そんな結婚するしないの話はどうでも良い一誠は、この話に朱乃が巻き込まれる可能性があるという理由だけが知りたいので、目が泳ぐリアスをじっと見据える。

 

 

「もし私がその相手と本当に結婚した場合、相手のライザーの性格を考えたら、私だけではなくて私の眷属達に――祐斗ともう一人以外に手を出すかもしれないからと思って……」

 

「手? それが朱乃ねーちゃんに?」

 

「え、ええ……」

 

 

 段々と声が低くなっていく一誠に殆どびくつきながらも頷くリアス。

 何故ここまで悪魔であるリアスが、自身の女王の幼馴染みとはいえ、ただの人間の少年である一誠に対して下手に出ているのか?

 

 

「その悪魔を直で見ていないからなんとも言えないが、朱乃ねーちゃんがそんなのに触れさせてやる訳も無いし、ねーちゃんはそこまで弱くねぇ。

そもそもイザとなったら悪魔なんて見捨てて即帰ってこいってバラキエルのおっちゃんも言ってたし」

 

「……………」

 

 

 簡単な話。

 彼は異常だ。

 

 この年齢では考えられない程の異常な力を持っている。

 それは彼が赤龍帝の籠手を宿す神滅具使いだからというだけでは到底説明できない程の領域。

 

 当初は当時の自分を下回っていた朱乃ですらも、朱乃の父親である純堕天使や彼を間近で見て生きたせいか、あっという間に追い抜かれ、正直手の届かない領域にまで進んでいる。

 

 朱乃本人はそれでも、『上手く制御できていない時点でまだスタートラインにすら立てていない』と言うが、それでも同世代の転生悪魔達の中では異常なまでに抜きん出た存在だ。

 それ故に、そんな朱乃と朱乃の為だけに居る彼とのパイプは『悪魔』としては魅力的だ。

 

 何故なら、朱乃が居れば必然的に彼という後ろ楯が手に入るのだから。

 故にリアスは朱乃を失うことを何としてでも阻止しようと必死なのだ。

 

 

(副部長は家族がバラバラになっていないし、母親も死んでいない。

もっと早くに一誠と出会えたからなのかな……)

 

 

 そして凛は自身の知識とは真逆の姫島家の状況に複雑な思いを抱く。

 彼が……霧島と名乗る一誠が朱乃の過去を変えたのだと。

 そして一誠の持つ愛情のほぼ全てを独り占めしていることを。

 

 

「その話から推察するに、朱乃ねーちゃんが――まあ、ぜってーあり得ねぇし、そうなりゃ朱乃ねーちゃんがそいつに地獄を見せるに決まってるが、仮にそれがねーちゃんに粗相を働くかもしれないから、それが嫌なら何の立場も無い俺にそいつを裏からぶち殺せって事ですかね? 参ったな、俺は何時から殺し屋になったんだか」

 

「違うわ! 私はただ……!!」

 

「ええ、ええ。

これは俺の勝手な想像でしかありませんよ? でもアンタには嫌だと突っぱねられるだけの力もなければ立場も無いんでしょう?」

 

「う……」

 

「だから俺にわざわざアンタのどうでも良い話を聞かせてきた。

なるほどね、確かに朱乃ねーちゃんに少しでも何かが起こるかもしれないと俺にチラつかせれば、俺は確かにその元をぶち壊そうと考えるよ。

はっはっはっ、良く考えているじゃあないですか?」

 

「………」

 

 

 くつくつと嗤う一誠の言葉に否定ができず黙ってしまうリアス。

 

 

「事後報告でアナタに伝えたら、殺されると思ったからよ……」

 

「まあ、実際そうなっていたら、俺はアンタを呼吸するだけの物体かなにかにしてしまっていたのかもしれませんね。

まあ、でも心配しなくても良いですよ。今の所、アナタにそんな気分は無い。

どちらにせよ、朱乃ねーちゃんはアナタを良い友達と思ってますからねぇ?」

 

「……………」

 

「良いでしょう。

その話引き受けてあげますよ。

顔がわかる写真でもくれれば、そのライザー某を始末しましょう」

 

「違う! 私は殺せなんて言っていないわ!」

 

「でもそいつが居るとアンタ的に邪魔なんだろ? じゃあもう消すしかないでしょうに?」

 

「そうならなように私は努めるつもりよ!」

 

「………………アンタがねぇ?」

 

「う……!」

 

 

 上手く婚約話をなかったことにするように努めると宣言するリアスを、一誠は全く宛にも期待もしちゃいない目で見据える。

 

 

「……ま、朱乃ねーちゃんのお友達ですしね。

俺も別に好き好んで他人をぶっ殺したいなんて精神は持っちゃいませんから、平和になんとかできるのならこれに越した事はない」

 

「必ず約束は守るわ。グレモリーの名にかけて……」

 

「おたくの実家の名にかけられてもね……」

 

「……」

 

 

 本来の性格のとはあらゆる点で違う展開を前に凛は胸の奥が締め付けられる。

 転生さえ上手くいってさえいれば、自分もきっと……。

 

 

 

 こうして暗殺行動をなんとか防いだリアスは、ヘラヘラとしながら一誠が部室を出ていった後、疲れた様に肩を落とした。

 

 

「本当に、全てが極端すぎるわ……」

 

「もしあのまま彼を止めなかったら、本当にライザー・フェニックスを殺していたのでしょうか?」

 

「……恐らくね。

彼は殺ると決めた相手を消すまではとことん行くわ。

前に目の前でその様を見せられた事があってね――一ヶ月は夢に魘されたわ」

 

「ど、どうしてそこまで人の命を奪えるのですか?」

 

「彼の行動原理の全部が朱乃にあるのよ。

これも近くで見てきたからわかるけど、正直私は朱乃が羨ましいわ。

自分の為に命すら平然とかけられる者はそうは居ない」

 

 

 そう吐露するリアスにとって、朱乃は正直羨ましいとすら思う。

 そしてあのある意味の一途さが自分に向けられていると思うと――幸福な気持ちになる。

 

 

「ふふ、私も大分歪んでいるのかしらね? どちらにしても、この件だけは私たちだけでなんとかしないといけないわ。

私だけではなく、小猫やアーシア、凛にまで被害を被るかもしれないのだし」

 

「何か考えでもあるんですか……?」

 

「ひとつだけ、ね。

明日、そのライザーかここに来て話し合いをするから、そこまで持ち込むわ」

 

 

 自由を奪い返す為にリアスは奮起するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そんなリアス達とは逆に、先程部室を出た一誠はといえば……。

 

 

(まったくアテにもなりゃしねぇ。

やっぱそのライザー某をぶち殺すか? てかあのシスコンの魔王がこの件に了承してるのが意味わかんねーんだけど)

 

『確かにアレにしては大人しくし過ぎな気はする。

何か他に考えがあってのことなのか……』

 

(まあ、どちらにせよ失敗した瞬間皆殺しにしてねーちゃんを眷属から外させる)

 

 

 既にリアスの言葉を信用していないので、失敗することを前提に殺害計画を立て始めていた。

 もっとも、そのライザー某がリアスにだけ何をするというのなら関係ないのだが、朱乃にもある可能性があるともなれば話は別だ。

 

 例え朱乃がそんな悪魔程度に触れさせてやる程弱くなんてないにせよ、生理的に受け付けない話なのだ。

 

 

『本当の所がどうなのかはまだわからんが、本当だとしたらバラキエルが直で動いてしまうぞ』

 

(そうなりゃあ悪魔の大半はこの世からさようならだな)

 

 

 しかもそこにバラキエルも加われば悪魔という種族が歴史から消える可能性もある。

 自分の種族の繁栄よりも家族を大事にするのがバラキエルという堕天使なのだから。

 

 

『ん? おいイッセー、向こうから歩いてくるのは生徒会連中ではないか?』

 

「あ?」

 

 

 あくまでも霧島一誠の原動力は朱乃とその家族のみという事を再確認させる会話をドライグとしながら旧校舎を抜けて新校舎に入って廊下を歩いていると、向こうから数人の団体が歩いてくる事に気づく。

 

 そしてドライグの言う通り、その団体は伝統的に風紀委員会と仲の悪い生徒会の者達だった。

 

 

(歩いてるって事は朱乃ねーちゃんとの話は終わったのか?)

 

『だろうな』

 

 

 先代や先々代の風紀委員会時代に対抗していた歴代の生徒会達と比べて、一誠が風紀委員長となった今の生徒会達は、具体的な事を殆どしないお飾り状態だった。

 

 というか、ただの人気か何かで生徒会になっただけの集団だし、もっといえば連中は現会長を筆頭にした悪魔集団だった。

 

 

「…………」

 

「っ、会長、霧島が……」

 

「わかっています……」

 

 

 恐らく悪魔としての業務に比重を傾けているが故に、先代や先々代の風紀委員と唯一真っ向から対抗しようとしてきた生徒会達を知っている一誠としては、張り合いもなければ存在する意味もわからない頓珍漢集団という認識しかない。

 

 何せ、風紀委員としてのやり方に一々難色を示す割には代案すら出さない。

 そこまで言うならと暫く黙ってやれば、風紀が一気に乱れてしまい、それに対しても彼女らは何もしようとしない。

 やっていることといえば全校集会の際の挨拶だけ。

 

 先代や先々代生徒会だったら『噛み殺す正義』や『やり過ぎな正義』に対してちゃんとした対抗をしていたというのに、今まさにすれ違おうとする連中はそれすらせず『一般人の事は知らん』とばかりに放置するだけという事なかれ主義。

 

 ……と、少なくとも一誠は思うので、リアス以上になんの期待もしちゃいなかった。

 

 

「………」

 

『せめて張り合い甲斐のある者が生徒会だったら良かったのだがな』

 

 

 全くだとドライグの呟きに同意しながら、こちらを警戒するように見ている会長以外の役員達を無視して通りすぎようとした時だったか。

 

 

「霧島くん」

 

 

 突然その中の一人……というか、現会長の眼鏡をかけた黒髪の少女が一誠を呼び止めたのだ。

 

 

「あ?」

 

 

 それに対して、一応現会長が朱乃と同学年の先輩だというのに、不躾な反応をして立ち止まる一誠。

 その瞬間、今の面子の中で唯一の男子である役員が一誠に何かを言いかけようとしたが、とっさに他の役員達に止められている状況を背に、どういう訳か会長である支取蒼那は人の良さそうな笑みを浮かべる。

 

 

『この悪魔のガキ、今まで散々イッセーにこき下ろされた癖に、何故未だにヘラヘラできるのかがわからん……』

 

 

 どうやらドライグの言った通り、伝統的に仲が悪く、出会せば互いにピリつくのが基本な筈なのに、どういう訳かこの支取蒼那が会長になってからは、少なくとも彼女だけはその伝統のギスギス感を出すことなく、妙に柔い態度で話しかけてくるらしい。

 

 もっとも、一誠は反対にこの事なかれ主義の現会長である彼女に対しては期待しないを通り越したなにかといった認識しかしないようだが。

 

 

「先程まで姫島さんと少しお話をしていました。本当はアナタと直接お話がしたかったのですが、お忙しいと思ったので」

 

「………」

 

「この後は何を? 生徒達の完全下校時刻まであと少しだし、それまで見回りでしょうか?」

 

「……………………………………………」

 

『ベラベラとよく喋るな……』

 

 

 妙に人当たりの良さに、ドライグは呆れた声だし、自分の眷属兼役員がハラハラした様子なのに気付いていない。

 

 

「でしたら我々も同行しても良いですか?」

 

「か、会長!!? ふ、風紀委員長ですよソイツは!? それに俺達に向かってなんて言ったのか忘れたんですか!?」

 

「忘れてなんていないわよ。

けれど、彼が言う通り、私たちは先代の生徒会を引き継いでからまだなにも出来ていないわ。

彼のやり方に口を挟んだせいで、学園の風紀が乱れ、それを私たちたけでは止められなかったのは事実。

 そんな私たちに彼が『お飾り』呼ばわりするのは仕方ないことなのよ」

 

「だからってどうして――」

 

 

 当たり前過ぎる役員達の疑問。

 そんな疑問に対して支取蒼那は突然、声を張り上げた。

 

 

「この支取蒼那……いえ、ソーナ・シトリーには夢がるわ!

歴代の誰もができなかった――生徒会と風紀委員会の和解と連携! それが私が生徒会長になった理由よ!」

 

 

 ギャングスターに憧れるスタンド使いの少年みたいな事を言い出す支取蒼那――ではなくソーナ・シトリーに役員達は頭を抱え、一誠は……既にソーナに塵でも見るような目を向けていた。

 

 

「今風紀委員は彼一人で人手が圧倒的に足りない。

そして我々生徒会は彼の言う通り、執行するという『覚悟』が足りない。

ならば、その足りない部分をお互いに補い合い、歴代の風紀委員会と生徒会の誰もが成し遂げられなかった領域へと到達するのよ!」

 

『……』

「……」

 

「だから霧島君! 是非――」

 

 

 鼻息荒めに言うソーナはそのままの勢いで一誠の両手を取ろうとするのだが、ソーナの手は空を切った。

 

 

「あ……」

 

 

 他人の異性に無意味に触れられたくないからこそ避けた一誠は、何故か微妙に残念そうな顔をするソーナに対してただ一言。

 

 

「そうやって勝手に一人で騒いでろ能無しが」

 

「」

 

 

 それはもう、数多の世界の誰かさんが、もしもの一誠に対する『ファーストコンタクト』を完全にミスった場合に起こるそれのような返しだった。

 

 

「ほんと、アンタ等も大変だな?」

 

『…………』

 

 

 つまるところ、霧島一誠はこのソーナ・シトリーという存在に対して、生徒会としても悪魔としても『虫以下』の認識だった。

 寧ろ、こんな悪魔の下僕になっている眷属達に対しての方が同情的な意味で優しいぐらいだし、期待なんてしちゃいないけどリアスの方が悪魔らしいとすら思っていた。

 

 

「グレモリー先輩の方が悪魔としては実に悪魔らしいぜ」

 

「」

 

 

 というか、普通に真正面から言ってやりながら一誠は去っていった。

 

 

「か、会長……?」

 

 

 結局欠片も相手にすらされていない。

 歴代の生徒会とは違って敵対という土俵にすら上がれていないという現実を改めて突きつけられてしまった生徒会役員達は、俯いてしまった自分の主に心配そうに声をかけるのだが……。

 

 

「り、リアスより……だ、だめって言われたぁ……!」

 

 

 ソーナは泣いていた。

 それはもう、マジ泣きだった。

 

 

「ひ、ひめじましゃんに、は、はなしを聞いて、どうやって彼とお話できるかって聞いたのにぃ……! き、嫌いって言われた……! うー……うぅぅ……!」

 

「き、嫌いとは言ってませんでしたよ? ………………最早それ以下の認識しかされていないかと」

 

「あの人、一人ですけど委員会の運営自体はかなり真面目ですからね。

やり方云々はさておいても」

 

「で、でもリアスよりだめって……ぐすん……」

 

「か、会長はダメなんかじゃないっすよ! あの野郎の目が節穴なだけです!」

 

 

 泣きじゃくるソーナを全員がフォローしようとする。

 そう、歴代の両団体の中でも恐らく今が過去一番最悪の関係性なのかもしれない。

 

 

「あの眼鏡悪魔に何を言ったのさ?」

 

「へ? 何の事?」

 

「なんか急に生徒会と風紀委員は連携すべきだと抜かしてきたから、ねーちゃんが何か言ったのかなって」

 

「なによそれ? 私はただ悪魔としての話をリアスの代理で伝えに行っただけよ?

あ、でも妙にイッセーくんについて然り気無く聞いてきたかも……」

 

「ったく、悪魔としてはどうだか知らんけど、歴代の中じゃ間違いなくただのお飾りになってる生徒会連中となんざなんもしたかねーってんだ」

 

 

終了




補足

朱乃ねーちゃんが単体で既にやばいので、ある意味で平和に終わる可能性もある。

ただ、終わった後に秘密裏に誰かさんが行方不明になる可能性も高いけど。


その2

ソーたんはその……例の『モモさん』みたいに全て失敗しています。
お陰でこんな感じに……。

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