コンセプト『徹底的に…………』
風紀委員長(ブレ無し・徹底的モード)
弱いからなくした。
弱いから守れなかった。
弱いから前に進むことができなかった。
弱いから――
だから強くなると決めた。
どんな手を使おうと、何が起ころうと、人で無くなろうとも。
それが、弱く何も知らず、何にも抗えなかった俺の誓い。
『風紀を乱した者は噛み殺す』
『やり過ぎでなければ正義じゃない』
そんな……暴君とも言う考えながらも、自分の中の『風紀』に従い続けた歴代風紀委員長は卒業していった。
これにより、恐怖政治ともいうべき学園生活から解放されると多くの生徒達は歓喜した。
しかし歴代の風紀委員長はそんな者達の考えを見透かしていて、後継者を育て上げた。
学園創立史上初の男子の風紀委員長にて、二人の風紀にもっとも近くて――そしてより躊躇という心のブレーキが完全に外れた風紀委員長が……。
「恭ちゃん先輩と冥ちゃん先輩から引き継いだ最初の日に俺は言ったつもりだぜ?
『学園に居る時ぐらいは学園のルールにある程度従え』『先代と先々代とは違って、俺はある程度の事は見逃してやりはするが、限度を越えたら執行する』ってさ」
『……………』
『風紀』の腕章を腕に身に付けた少年。
「だから俺に目を付けられた時点でテメー等は終わってるんだよ。
今から迅速に噛み殺してやるから黙って殺戮されろや?」
先代と先々代の風紀委員長の徹底的な風紀的教育のお陰で生誕したモンスター現風紀委員長。
歴代の委員長達と違い、ある程度の違反は見逃すが、度が過ぎた場合はスイッチが切り替わり、そして歴代の誰よりも過激に執行する。
「先代と先々代が卒業した途端調子にくれ始めたテメー等に何時も俺がヘラヘラと笑って見逃すだけだと思ったら大間違いだぜボケが」
『』
破壊して正させる風紀。それが彼の風紀委員長としてのやり方なのだ。
先代の風紀委員達が委員長を含めて全て卒業したことで、在校生では彼一人が風紀委員であり委員長である。
それ故、先代と先々代の恐怖政治から解放されたと同時に、途端に校則違反を行う生徒が後を立たないし、先代と先々代を知らぬ新入生に至っては中学気分が抜けない。
歴代達と違い、人手が圧倒的に無いのと、あまりルールに縛りすぎるのも可哀想な気もするという考えもあったので、ある程度の校則違反は見逃そうと決めていた。
だが、あまりにも度の越えた違反者が後を絶たず、着衣の乱れから始まり、持ち込み厳禁とされる私物を持ち込む者。
更衣室を覗く男子生徒。
とある部の生徒達に挙って喚く者達。
挙げ句の果てには現委員長は先代と先々代の腰巾着でしかないと宣い、穏やかに警告する度に平然で罵倒して逆らう連中。
その結果、現風紀委員長……霧島一誠は押さえ込んでいた『本質』を解放し、先代と先々代に一切劣らぬ恐怖を生徒達に植え付けた。
成人雑誌を持ち込んだり覗きをする男子生徒を徹底的に八つ裂きにし、三度は警告したのに聞かないどころか嘗めた態度をした女子生徒をズタボロに……平等に風紀を執行した。
その結果、一度は崩壊しかけていた駒王学園の風紀は完全にあり日へと戻った。
後継者にてただ一人となった風紀委員長である霧島一誠によって。
「やれるなら最初からやれよ。
ちょっと脅しくれたら途端に大人しくなりやがって」
『……』
この時点で誰も彼に逆らわない。
徹底的でやり過ぎで……そして妥協なき執行は瞬く間に学園の生徒達に恐怖の象徴として刻まれたのだ。
しかし誰も知らない。
霧島一誠が――いや、兵藤一誠である筈だった彼は、寧ろ風紀を悉く乱しまくる問題児であった筈な事実を。
その事実がある理由によりねじ曲がり、そしてねじ曲がりながらも出会った繋がりによって『徹底的』になった事を。
そして、ハーレム王だなんだと本来は騒ぐ筈の彼が、全くもって異性に対しての興味が『ただ一人』を除いて零になっているという事を。
あまりにも嘗められたせいで、ついうっかり先代と先々代と同じやり方で黙らせた現風紀委員長の霧島一誠は、伝統的に敵対関係である生徒会の者達にやかましく言われかけたところを、
『口だけの象徴擬きのテメー等が何もしないからやっただけの事だろう? 先代と違って、テメー等は口だけで何にも実行しようとしねーで生徒会室に隠ってるだけだからなァ?』
と、身も蓋もない台詞で完璧黙らせてやりながら、風紀委員室で雑用仕事をこなしている。
「やっぱ似合わねーな。俺が風紀委員なんてよ」
どうやら本人は風紀委員である自分が全くもって似合わないと思っているらしい。
しかしそれでも投げ出さずに委員長を受け継いだのは、彼が受けた恩と恨みをよくも悪くも忘れない性格であるからなのかもしれない。
『だが、お前を後継者に指名したあの変わり者の小娘共の見る目はある意味当たっていると思うぞ?』
そんな一誠の独り言に対して、この場に姿の無い声が聞こえる。
「同じ波長でも俺から感じたんじゃないかって俺は思うぜ」
『確かにそれは言える。
まあ、どちらにせよ一般人のガキ共はこれで大人しくなる。
お前が引き継ぎ、先代達が卒業で去った途端、調子に乗り始めていたしな』
「堅苦しいから見逃してやろうと思ってたんだけどねぇ……」
『それに更に調子に乗り始めた結果だから、ガキ共と自業自得だ。
口頭だけで注意していたお前に逆らうばかりか、変態呼ばわりするわ、石を投げつけてくるわ……』
「余程風紀委員が憎かったんだろうぜ」
一誠にしか聞こえない声は友との会話のように気軽なものであった。
「さて、今日のノルマはこれで終わりだ」
『完全下校とやらの時間までまだあるな……。どうする? 少し仮眠でも取った方が良いんじゃないか?』
「んー……そうするかぁ。
悪い、時間になったら起こしてくれよドライグ?」
『ああ、任せろ』
ドライグと一誠は呼ぶ。
一誠の命の一部であり、相棒。
『ちなみに、またあの自称お前の肉親がこの部屋の近くを彷徨いているようだが……』
「どうでも良い。ほっとけよ、心底興味が沸かないし」
赤龍帝……それが一つ目の霧島一誠の秘密だ。
痩せ細り、全てに絶望した目をしながら死にかけていた男の子を偶然見つけた事で、少女の運命は変わったのかもしれない。
保護し、体調を回復させた男の子が家に帰ることに怯えるように拒絶した事で、少女の両親は男の子を家に住まわせてあげることで、ひとつ年下の男の子と仲良くなった少女。
だけど、少女はその後一度……母と共に完全な死を経験した。
人ではない父の同族によって殺された事で。
けれど少女は今を生きている。
その理由は、血に染まりながらも――そしてその心を完全にねじ曲げながらも『覚悟』をした少年のねじ曲がった心によって『死という現実を否定』されたから。
そしてそれ以降、少年は少女に誓った。
『どんな事をしても必ず強くなる。そして守る』
恩を忘れない少年の覚悟は彼の精神に『異常』を与える。
そしてその異常な精神と覚悟によって宿していた龍が目覚め、少年は何れほどに傷つこうが弱音を吐くこと無く強さへの階段を駆け上がり続けた。
小さな男の子から少年へ、そして少年から大人へとなろうとするにつれて……そして何よりも一切ブレる事無く自分を守る約束を果たそうとする姿に惹かれていく。
だから少女も成長していくにつれて『守られるだけではダメ』という気持ちと共に……そして自分を守ろうとしてくれる彼への想いと共に駆け上がる道を選んだ。
その想いを伝え合う事で、少女と少年は互いを支え合うパートナーとなった。
そして現在……。
「イッセーくん、居る……?」
「……………」
少女……姫島朱乃は先んじて前を歩いていた霧島一誠と同じ『景色』を見ている。
「…―…」
「眠っているのね……」
『朱乃か。
委員の仕事を終わらせてもまだ時間が余っていたから、俺が寝るように言ったのだ。
コイツは放っておくと寝ずに鍛練するか、お前の為にしようとする』
学園の二大お姉様等と今では呼ばれるまでの美貌を持つまでの成長を果たした朱乃だが、本人はそんな呼び名に気分を良くすることも無いし、別に呼ばれたいとも思っては居ない。
何故ならその自分は所詮ただの皮でしかないのだから。
『そっちはどうなんだ? 部活中じゃなかったか?』
「この前イッセー君のスイッチが切り替わって以降、ますますイッセーくんが孤立しちゃったから心配で……」
『だったらお前の気にする事ではない。コイツが『敵を作りやすい体質』なのは何時もの事だ』
「うん……」
『それよりお前の今の主の悪魔の小娘はなんと?』
「特には……。
ただ、イッセーくんの肉親を自称する子が兵士として入ったせいで、最近はイッセーくんの事で色々と言われるようになっているの」
『……。なるほど、そう来たのか、あのカス女は。
さぞ「自分が悪いから」と卑下するだけで具体的な事はせず、同情だけを買う立ち位置なんだろうよ。
まったくもって反吐が出る』
ソファーに横になって眠るイッセーの傍に座り、起こさないように膝枕をしてあげる朱乃は、吐き捨てるように言うドライグに同意する。
「ドライグの言った通りの子だったわ。
何でもかんでも自分を卑下するだけで、具体的に何か行動している様子も無い。
そんな彼女にうちの戦車と騎士は同情して仲良くなったけど……」
『じゃあ近い内にその二人は間違いなくイッセーに敵意を持つな』
「考えたくはないけど、そうなると私も思う……」
ややこしい未来を考えるだけで朱乃はため息が洩れる。
しかしどうなろうと朱乃とドライグの意思は変わらない。
「風紀委員室の前をうろうろとしていたから、部室に戻れと言っておいたわ」
『ああ、助かったぞ。
もし勝手に入ってきてきたらと思うと腸が煮え繰り返る。
イッセー自身は奴を他人以下のなにかにしか思わなくなっているとはいえな』
「どうしてもイッセーくんと関わることをやめようとしないし、困ったものよ」
何があろうと、どんな事が起きようと、例え今の仲間達と敵対することになろうとも――自分はイッセーを支え続ける。
「? 朱乃……ねーちゃん……?」
「大丈夫イッセーくん? あまり最近寝ていなかったみたいだから……」
「俺は、大丈夫……。
でも、来てくれたんだ……嬉しいよ……」
世界そのものから排除されようとも。
霧島一誠(旧姓・兵藤)
赤龍帝(破壊スタイル込み)
無神臓――永続進化の異常
幻実逃否――現実と幻想をねじ曲げる過負荷
備考・色々と突き抜けてブレない風紀委員長
姫島朱乃
0で無い限り、必ず自分の意思を実現させる異常(現状自由に行使不可能)
この世の条理やあらゆるものを"貫通"して越えて行く異常。(同上)
備考・別世界の風紀委員長世界と違い、完全なる覚悟が入っている朱乃さん。
「あ、思い出した。
そーいえばこの前堕天使の女にイッセーくんが逆ナンをされたってドライグが言ってたけど……」
「逆ナン? なんだそれ? 確かに堕天使の女が人間に化けて俺に話しかけてきたのは事実だけど、あれは神器使いを狙ってただけの話だし、なによりぐちゃぐちゃにしちまったぜ、あんなカラスの出来損ないなんて。
……てか、俺そんなに信用ない?」
「そうじゃないわ。イッセーくんがそんな人じゃないのなんてわかっているし。
ただ、大丈夫だったのかなって思っただけなのと、堕天使だから無茶したんじゃないかって――したみたいだけど」
「ねーちゃんとバラキエルのおっさん以外の堕天使なんて絶滅してくれとしか思えないしね」
参考関係性・ベリーハード一誠&リアス。
終了
補足
当初なめられがちでしたが、スイッチがONして黙らせたので、これまでの風紀委員長と違って統制がとれる。
ちゅーかドライグ宿してる。
というか、本人がぶっちゃけ朱乃ねーちゃんしか見えてないので女性にまったくだらしなくない。(ベリーハード一誠&リアスのそれ)
朱乃ねーちゃんもすでに覚悟入っているので今までよりも結構心に余裕あり。
この風紀委員長に色仕掛けは無意味だし、多分やったら八つ裂きにされて下水道行き。
朱乃ねーちゃんの身に少しでも何かが起これば即時に漆黒の意思発動。
転生者の件は最早虫以下。
嫌う嫌わない以前に虫以下の認識しかしない(元肉親含めて)
朱乃ねーちゃんのオカンもオトンも二人を安心して見守っているらしい。
続きは――状況次第