色々なIF集   作:超人類DX

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スイッチオンした場合銀色の虐殺王さんみたいになる。


血に染まる者達

 人と魔の狭間を生きてきた少年の半生は、筆舌に尽くしがたいものであったが、本人は己の生まれを受け入れた上で、昇華していく道を選んだ。

 

 即ち、強くなること。

 

 誰にも文句を言わせない……己という個を完全に確立させた時こそ、本当の意味での『人生』が始まる。

 

 その想いを抱き続けてきた少年は、その生まれこと壮絶であったが、出会いというものには恵まれていた。

 

 偽悪者のような振る舞いをするけど、誰よりも情に熱い堕天使の義父。

 

 生きる意味を口だけではなくその生き様と共に示してくれた、『強くなること』をただ求める堕天使の師。

 

 そして、そんな堕天使の師を天使でありながら想いを寄せ続ける天使の師。

 

 

 種族こそ違えど、そしてちょっとだけ気恥ずかしいので口には出さないけど、少年にとって彼等は頼れる大人。

 

 だからこそ、己の『知識』という不確定な理由だけで師である堕天使を殺害された時、少年は師の『精神』を継承し、義父の堕天使と立場も何もすべてを捨てて仇を討つ覚悟の炎を灯した天使と共に世界への反逆を決意した。

 

 そして、自分達と同じように『世界』に奪い取られた悪魔の少女と、両親の仇と悪魔の少女を守る為に進化をし続ける、少年にとっては宿敵となる筈であった少年と、世界に妻――もしくは母を奪われた悪魔の少女の兄であり魔王と、その娘………………そして世界によって閉じ込められ、京を誇る個性の壊された人外と共に死を覚悟した反逆を企てた。

 

 何度も死にかけた。

 けれど、どれ程に途方もない力を前にしようと、誰も心を折ることはなく、決して弱音も吐かなかった。

 自由を取り戻す為に……。

 

 それが、殺された師の堕天使が復活する事で結成されたチーム――D×G

 

 

 唯一無二。

 血の繋がりや同族という繋がりを越えた強固な結束と繋がり。

 

 それは、半人半魔であるヴァーリにとって何よりも大切なものであり宝物。

 そして、そんな生き方をした彼はほんの少しだけ素直でお人好しで、天然な部分がある。

 

 本来ならば快活でスケベでハーレム王を夢見る筈であった彼よりも……。

 

 いや、逆に彼――イッセーはそのねじ曲げられた人生を歩んできたからこそなのである。

 イッセーにとっての全てはこの修羅場を共に潜り抜けた繋がりと――リアス。

 

 ハーレム王など望まない。

 他の異性に靡くなどあり得ない。

 それがベリーハードな世界から自由を勝ち取れたイッセーの心の本音なのだ。

 

 そういう意味ではある意味でイッセーはブレが無い。

 悪く言うと頑固だ。

 

 逆にヴァーリは『誰かを本気で好きになる』という経験が無いせいか、誰に対しても一定の距離感で接する事ができる。

 

 

 色々と長くなったが、つまる所シア・ハウリアという兎族の少女最大最悪の大ミスをやらかしつつもギリギリの瀬戸際で踏ん張れている状況なのである。

 

 怒りの感情が完全に無くなり、代わりにシア・ハウリアという存在そのものをそこら辺に居るその他大勢とひとつとしか認識しなくなったイッセーと、間違いなくイッセーの肩を持つものの、天然なせいか普通に接してくれるヴァーリのお陰で……。

 

 

 

 

 

「隠し部屋に文字通りの『へんじがない ただの しかばねのようだ』がひとつと、変な石ころ。

それと記録書のようなものがあったから読んでみた結果、この世界は神にとっての将棋盤みたいなもので、この世界で生きる者は神の駒のようなものなんだとよ」

 

「つ、つまり僕達がこの世界に召喚されたのは――」

 

「神の『駒』として呼ばれたって所だろうな、この本に書いてあることがマジなら」

 

「そんな……」

 

「が、問題は俺とヴァーリだ。

この話をマジと仮定した場合、その神ってのは何故俺とヴァーリをよりにもよってここに呼び出したのかって話だ」

 

「……どういうこと?」

 

「俺達の世界にも『神』は居た。

だけど、俺達はその『神』そのものに反逆して殺した。

それをこの世界の神が知っていたとしたら――俺達を呼ぶなどあり得ないだろう?」

 

「下手をしたら呼び出した本人を殺そうと――いや、寧ろ話がマジなら意地でも探し当て、殺してくれと言うまで八つ裂きにしてやりたいくらいだ。

そんな考えが基本な俺達を、『駒』として呼び出すなんて真似を神がすると思うか?」

 

「……普通ならしようとは思わない。だけど神の考えは私達にもわからないし、別の思惑があってのことなのかもしれない。

もしくは――その神に対抗する誰かがヴァーリ達の事を知って呼び出したかもしれない」

 

 

 八重樫雫と共にヴァーリ達と合流したイッセーは早速オルクスの迷宮の土産を見せながら、それこそシアに携帯を壊された時以上の嫌悪の表情を浮かべながらこの世界の意義について話す。

 

 

「毒を以て毒を制す……ということ?」

 

「多分」

 

「なるほど、そういう考え方もあるのか。

ま、どっちにしろ俺達の場合は全部仮定の話でしかないけどね。

ただ、ハジメや香織さん達は間違いなく神が絡んでいるとは思うぜ?」

 

「荒唐無稽に思えるのかもしれないけど、彼とオスカー・オルクスの隠し部屋で色々なものを見たし、何より普通の人間だった私たちがこの世界に来た時点であり得ないこの世界の人達よりも強い力を持っているのは、神の力が働いているからだと思う」

 

「神か……」

 

 

 雫もオスカー・オルクスの隠し部屋の中に残されたものを目撃した者が故に、荒唐無稽とは思えないと言う。

 

 

「この世界にはまだ他にも迷宮があるんだろう? もしかしたら色々な情報が手に入るかもな……」

 

『………』

 

「ガブリエルさん、アザゼル先生、コカビエルさん、サーゼクスさん、ミリキャス、リアスちゃん。

皆は生粋の天使、堕天使、悪魔だから呼び出せず、人間である俺、ハーフであるヴァーリは呼べたと考えるとしっくり来る」

 

「なじみは? アイツも一応人間だろう?」

 

「あの人は元は更に違う世界の人だったから……とか?」

 

「なるほど……俺達がちょうどよかった訳か」

 

「これも単なる憶測だけどな。

どちらにせよ、他の迷宮の隠し部屋を探してみるのはアリだと思わねぇか?」

 

「だな……ハジメと香織とアリスも自立可能なレベルに鍛えるにちょうど良い。

ああ、そこの彼女もか……?」

 

「いや、彼女は後で帰らせる。

向こうのお仲間さん達は彼女が無事なのをまだ知らないしな……」

 

「…………」

 

 

 こうして徐々に帰還への糸口を掴み始めていく。

 その為に先ずは、彼等の話を完全に外様状態で聞いていたシアとその一族に対する貸しを作るという意味で、イッセーもシア自身には一瞥すらくれる事無く、一族の護衛に香織の治癒魔法で動けるようになった雫と参加する。

 

 相手は人間なのだが……基本的にリアスやヴァーリといった繋がりを持った者以外が目の前でぐちゃぐちゃに惨殺されていようが、平気な顔してハンバーグを食えるイッセーに躊躇いはまるでなかった。

 

 

「た、たた、頼む! 殺さないでくれ!」

 

「殺さないでくれェ? テメーに殺された連中が聞いたら何て言うかなァ?」

 

「め、命令だったんだ! や、やめてくれ! 上に報告もしないし、なんでも言うこと聞くから殺さないで――」

 

 

 

 

 

 

しかしガッカリだなァ!!!!

 

「っ!?」

 

「……………さっきまで嬉々として他の連中と兎狩りしてた癖に、そうやって途端に命乞いしちゃうんだ?」

 

「や、やめ……ひっ―――」

 

「じゃあね」

 

 

 人間であろうが、命乞いをしようが……無関係に捻り潰す。

 それはいっそ残虐で冷酷で――暴虐にも見えてしまう。

 

 付き合いの浅い雫や、争いごとが苦手な兎族の者達には――

 

 

「こんなもんだべ?」

 

「ああ、後は兎族達にもっと隠れ場所が多い所を探して住んで貰えれば良いな」

 

「えー? そこまで面倒みる必要あるか?」

 

「一応、対価として迷宮があるとされる樹海奥地に案内してもらえる。

それに半端なやり方では同じ事が繰り返される――違うか?」

 

「違いねぇ。

てかアリス、吸血し放題じゃねーの?」

 

「好みもあるし。

前にヴァーリの血を貰ったせいでヴァーリの血以外が受け付けなくなった」

 

「あれま……懐かれてんなぁヴァーリ?」

 

「懐かれてると言われてもな、俺達よりかなり年上だろうに」

 

 

 スイッチの切り替わり方が極端な二人が最早『死んだ方が幸せな程に全身を破壊された国の兵士達』の屍の山の横で、ニヘラニヘラと話をしている。

 

 

『………』

 

「……」

 

「………」

 

 

 その姿を目撃したシア、雫、他の兎族の者達はこのショッキングな光景に言葉が出てこない。

 特に雫は、ハジメと香織もこの一方的な残虐ファイトに参加していたことである。

 

 

「香織ちゃん、大丈夫? ごめんね? あの連中が香織ちゃんに向かって最低な事を言ったから……」

 

「大丈夫よ。

私だってあの人達がハジメくんを見てバカにしたからついやってしまったし」

 

 

 しかも二人揃って返り血まみれで、笑い合っていて、普通に互いの存在を確かめ合うように抱き合っている。

 

 それはまさに異常な者達が見せる異常な光景。

 

 

(元の世界に居た時なら――いえ、彼という存在を知らなかったままならこの光景に吐き気を覚えいたはず……)

 

 

 既にシアとシアの一族達の顔色が大変な事になっている中、雫も同じショックを受けたのだが、少しずつある感情が芽生え始めた。

 

 嫌悪すべき筈――いや、イッセーが普通の人間ではない異常者である事を知れば知るほど。

 そしてその異常者によって異質な力を目覚めさせている香織とハジメの姿が――血に染まる彼等に『綺麗』という感情を抱いてしまっていた。

 

 何時から? ハジメと香織が彼等との出会いによって『遠く』へと進んで行くのを感じた時から?

 そして、その理由の一人であるイッセーとのまだ短いながらも濃い時間を過ごしたから? そしてそのイッセーを知れば自分もハジメと香織の領域を知ることができるかもしれないと、限界を越えて追いかけた時から?

 

 どちらにせよ、八重樫雫は限界を一度は越えた事で、感じ取る事もできなあった彼等の領域の一部に触れられた事で、彼等の持つ奇妙な繋がりを羨むのだ。

 

 そしてその感情を自覚したその時から、雫の中にあったこの残酷な光景への『嫌悪』が消えていくのであった。

 

 

(か、顔色も変えず、何の躊躇いも無く、同族である人間をあの人は……。

ヴァーリさんも同じように……)

 

 

 そして逆にシアは父と同じように彼等の――人間の兵士達の屍の山の横で呑気に、そして仲良く話し合っているイッセー、ヴァーリ、アリス、ハジメ、香織の異常性に……そこまで『観ることができなかった』が故に恐怖した。

 

 

「なんとかして奴等がそう簡単に入って来られないような場所を探してそこに住む事を薦める」

 

「は、はい……そ、その、ありがとうございます。

我等を救っていただいて」

 

 

 シアの父が声を詰まらせながらも代表と頭を下げるのをシア自身は黙って見ているだけしかできない。

 

 

「どんどん香織と南雲君が遠くに行ってしまうわ……。

私も早く追い付かないといけないわね」

 

「そうか、精々向こうに戻ったら頑張るんだね」

 

「ええ……アナタの言うとおりちゃんと戻って皆に謝るわ。

けれど、『その後不幸な事故が発生して私が謎の失踪を遂げた』としても、私は悪くない」

 

「おい」

 

「だって事故よ? 不慮の事故なんて防ぎようがないと思わない? ふふふ……♪」

 

 

 こうして『未来視に従い、助けを求めた相手は洒落にならない異常性を持つ者達』だったシア達は、急にハジメと香織とイッセーを見ながらニコニコし始める雫も交え、混沌へと突入するのであった。

 

 




補足

これでもまだ有情。

過去にリーアたんが元眷属に拐われた際のイッセーのガチギレ虐殺タイムを見たら、兎達はショック死するかもです。


具体的には、リーアたんを裏切った連中は徹底的にぐちゃぐちゃにして、呼吸するだけの肉塊にしたりと……。








そんな虐殺タイムを前に当初はショックだった雫さんは、ハジメ君と香織さんの姿を見たことで……。



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