色々なIF集   作:超人類DX

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事故った時、イッセーは拗ねた


拗ねたイッセーくんの単独プチ冒険

 軽くてチャラチャラしていて、常にヘラヘラしているように見えても、運命がねじ曲げられた事がイッセーという少年の価値観を変えている。

 

 その証拠に、イッセーはハーレムにも他人の女性の胸にも興味はなく、その全ては元の世界で待っているであろうリアス・グレモリーただ一人に向けられている。

 

 そしてリアスもまた、自由を奪われかけていた時に助けてくれたイッセーを信じ、そして愛している。

 

 つまるところ、転生者という異物によって人生や運命こそねじ曲げられた事が、転生者にとって皮肉にも、二人はより強く誰であろうとも切ることのできない繋がりとなったのだ。

 

 だから……そんなイッセーがこの世界に飛ばされてリアスと触れ合えなくなっても割りとまだ余裕な理由であった、合計80GBにも及ぶリアスとの写真やら合計300GBにも及ぶ生声動画を、例え己の不注意で落としてしまい、それをうっかり悪気も一切無く壊された場合……。

 

 

「自分の故郷を助けろォ!? そんなもの知るか! 他を当たれバーカ!!」

 

 

 イッセーは死ぬほど不機嫌になり、余計他人のために動こうとはしなくなる男になってしまうのだ。

 それもかなり大人気なくもなって………。

 

 

「そ、そこをなんとか! 壊してしまったアナタの持ち物はきちんと弁償――」

 

「できるもんならやって見ろボケが!! リアスちゃんの写真と動画データ全て返してみやがれ…………このド畜生がァ!!」

 

「あぎゃん!?」

 

 

 リアスもそうなのだが、イッセーはリアス成分が足りなくなると大変な事になる。

 現に今が大変だった。

 

 

「落ち着けイッセー、俺の端末の中にいくつかリアスの写真がある。それで我慢しろ」

 

「くっ……! だけどリアスちゃんの動画は? リアスちゃんの声は……?」

 

「それは無い。

そもそもリアスの写真やら動画やらを携帯に収めているのは、お前かリアスの兄のサーゼクスくらいだろうに……」

 

「じゃあ駄目だ!! やはりこのボケ兎は千兵殲滅落としの刑に処してやらないと……!!」

 

「ひっ!? か、勘弁してください! な、なんでもしますから……!!」

 

「じゃあ今すぐ俺の携帯をデータごと寸分違わず修復しろォォォッ!!!」

 

「む、無理ですぅぅ~!!! け、蹴らないでぇぇ……!」

 

 

 後ろからヴァーリ、アリス、ハジメ、香織に羽交い絞めにされながらも、小さく蹲っている兎娘ことシアをゲシゲシと蹴っている。

 結局これのお陰で半日は立ち往生してしまうことになるのだった。

 

 

「それで? こそこそと俺達を付け回していた様だが、何か理由があるんだろう?」

 

「やっと見つけた――と言っていたようだけど?」

 

「…………」

 

 

 ヴァーリの言った通り、完全にへそを曲げてしまったイッセーだけが背を向けている中、シア・ハウリアと名乗る兎族なる少女に話だけは聞こうと訊ねるヴァーリとハジメ。

 治癒師の香織になんとか外傷を治療して貰いながらシアは半べそで口を開く。

 

 聞けば、樹海奥地の亜人の国で一族と普通に生きていたのだが、シア自身が本来亜人が持つことが無かった魔力を覚醒させてしまい、一族ごと追われてしまった。

 なので安住の地を求めていると、今度は人間の帝国兵に襲われ、一族の大半が捕まってしまう。

 

 その全滅を避ける為に――『未来視』という固有スキルを持ったシアはそのヴィジョンに映った者達と酷似していた彼等を発見し、追っていたとの事。

 

 

「お、お願いです! 私たちを助けてください!」

 

「そんな事があったなんて……」

 

「大変だったんだね……?」

 

「…………ヴァーリ、どうする?」

 

「物の次いでという意味では別に構わないのだが……」

 

 

 シアの訴えに対して、ほぼ全員に拒否感情は少なかったのだが、問題はそのシアの大ポカで完全にヘソを曲げて、先ほどからまるで会話に参加せずにいるイッセーであり、シアを含めた全員がイッセーを見る。

 

 

「好きにすりゃあいいだろ。

それの一族っての助けたきゃそうすりゃあいい。

だけど、それに全員が向かうのは非効率だろう? だから、お前達はそれを助けろよ。俺はその間にあの迷宮ってのを確認してくるからよ」

 

『……』

 

 

 全員で行動するには効率が悪いと、効率なんてこれまで一切考慮しなかった癖に言い出し、言外に個人的にシアは助けませんと言っている。

 

 

「イッセーお前、携帯壊されたからってそこまで彼女を毛嫌いしなくても良いだろう?」

 

「そうじゃねーよ……。

流石に頭も冷えたし、わざと壊した訳じゃねーってのもわかってるさ。

まあ、だからと言ってこの兎に好印象なんざねーけど」

 

「う゛っ……」

 

「じゃあどうして……?」

 

「言ったろ? 俺はヴァーリ程他人に対して優しくなんてできねーよ。

俺の目的はあくまでも元の世界に早く戻って、リアスちゃんに会いたいんだ。

その可能性を探る方が、俺にとっては優先されることなんだ」

 

 

 珍しく冷えた物言いをするイッセーに、ハジメ、香織、アリスは押し黙り、シアは『リアスちゃん?』と未来視では観ていない名に首を傾げる。

 

 

「おい兎」

 

「う、うさぎ……」

 

 

 そんなシアを兎呼ばわりするイッセー

 

 

「キミの事情ってのはわかったから、コイツ等に助けて貰うんだな」

 

「ぅ……あ、アナタは……?」

 

「俺はやることがあるんで無理だ」

 

「………」

 

 

 そう冷たく言い放つイッセーはヴァーリ達に背を向ける。

 

 

「もし見つけたら一旦戻る。じゃあな」

 

 

 そう言ってイッセーは一旦ヴァーリ達から離れる事になるのであった。

 

 

 

 

 

 予定外にオルクスの迷宮へと一人戻ったイッセーの機嫌は、頭が冷えて冷静になっているとはいえ、やはり物凄く悪かった。

 

 悪すぎて迷宮の低階層のモンスターは近寄りもしなかった。

 

 

「………………………」

 

『少し大人気ないんじゃあないか?』

 

 

 そんな不機嫌な宿主に声を掛けるのは、赤い龍ことドライグだ。

 

 

「俺の性格は知ってるだろうドライグ? 俺は根に持ちやすい奴だってな」

 

『まぁな。まあ、建前とは言え、あの兎の小娘の頼みをわざわざ全員で聞くには過剰戦力ではあるな』

 

 

 一度根に持ったら相当引きずる事を知った上で宥めるドライグはやれやれといった声だ。

 

 

『何でも良いが、あの兎の小娘は『奴等』とは違うのだということだけは頭に入れておけよ?』

 

「わかってるよ……」

 

 

 見守る親の様な言い方のドライグに、拗ねた声色で返しながら下へと進む。

 

 

『ん? あれはハジメの小僧と香織の小娘と同じ世界から来たガキ共じゃあないか?』

 

 

 その降りている最中、訓練のつもりでやって来ていたハジメと香織のクラスメートらしき少年少女と出会したが、話す理由も関わりも元から薄いので普通に通りすぎる。

 

 

「! アナタは……」

 

 

 その面子の中に、香織の友人と言っていた八重樫雫が居たわけだが、機嫌の悪さもあってイッセーは気づかないフリをして通りすぎる。

 

 

「待ちなさい、アナタ一人なの……?」

 

「し、雫よせ……!」

 

「……………」

 

 

 仲間がどう見ても機嫌悪いですオーラをぶちまけている事を察して雫を止めるのだが、雫はチャラチャラヘラヘラしているイッセーのイメージが強すぎたせいか、殆ど恐れてはいない様子。

 

 

「気になるでしょう? 香織と南雲くんが」

 

「だ、だが……」

 

 

 その仲間の一人である光輝は特にイッセーとヴァーリが、『言葉には表現できないが、真上から自分達全てを見下しているような態度』をされていると最初から感じていたので、下手な関わりを避けたかった。

 

 

「それで? 香織と南雲くんは?」

 

「……………………………………」

 

「? なによその目は?」

 

 

 しかし雫は構わず話しかける。

 その時、イッセーの視線がやっと雫に向けられる。

 

 

「別行動中」

 

「別行動? ということは無事なのね?」

 

「そーだよ。それじゃあ」

 

 

 取り敢えず香織は無事らしいと知り安堵する雫に対して、ぶっきらぼうに言うと、さっさと行こうとする。

 

 

「待ちなさいって……ひょっとして喧嘩でもしたの?」

 

「してない」

 

「でもあまり機嫌が良いとは今のアナタからは感じられないのだけど……」

 

「こんな時もあるだけだ。早くどっか行け」

 

「ほら、やっぱり。

アナタとはそんなに多く話をした訳じゃないけど、何時ものアナタじゃないのは何となくわかるわ。

なにかあったの……?」

 

「なんでもない」

 

「なんでもないのなら話せるでしょう?」

 

 

 香織とハジメが同行をすると言うだけの存在だからこそ、イッセー達の事は把握しなければいけないと思う雫。

 短期間で香織とハジメがかなりのレベルアップをした理由も含めて割りと気になるのもあるが。

 

 

「待て雫! これ以上下には行くなとメルドさんに言われている事を忘れたのか!?」

 

「忘れてなんてないわ。

でもそれは『今の私達』だけの場合でしょう? 彼が居るじゃない?」

 

「なっ!? 雫らしくないぞ、そんな屁理屈みたいな……」

 

「そうかしら?」

 

「……………」

 

 

 気付けば厳禁されている下の階層に到達してしまっても付いてくる雫とそんな雫を止めようとする仲間達。

 

 

「それにしてもここまで来ても魔物が全然現れないわね……」

 

「……」

 

 

 そんな連中を引き連れる様な形で、雫達にとってはトラウマものの階層まで降りる。

 

 

「ここまで勝手に降りてしまったぞ……」

 

「マズイんじゃないか……?」

 

 

 光輝と龍太郎なる人物が辺りを警戒しながら歩いているのを背に、まるで散歩でもしているような足取りで歩いているイッセーの後ろをちょこちょこと雫がついていく。

 

 

「……………」

 

 

 そしてベヒモスと戦ったあの橋のような場所の真ん中で足を止めると、奈落の底ににしか見えない橋の下をじーっと見る。

 

 

「まさかここから下へ一気に降りる気……?」

 

「その方が早く降りれるしな」

 

 

 簡単に降りれるとは思えない程の深い穴を前に、平然と頷くイッセーはここで初めてまともに雫、光輝、龍太郎に言う。

 

 

「さっさと戻れ。

キミ達がどれだけやれるかなんて知らないけど」

 

「「「…………」」」

 

 

 見下している訳ではなく、ただ本当に忠告するイッセーに三人は何も言えなかった。

 

 

「教えてくれ、下を目指す理由はなんだ……?」

 

「元の世界に戻れる方法が最下層にあるかどうかの確認だ。

………あるとは思えないけどね」

 

「だがアンタは可能性が0ではないと思っているんだろう?」

 

「そりゃあね。でなけりゃあ降りる訳もねーぜ」

 

 

 光輝と龍太郎に答えながら、首の関節をパキリと鳴らす。

 その返答に、光輝が何か考えているような素振りを見せているのだが、イッセーは興味を持たなかった。

 

 

「そんな事よりも、キミ達はさっさと戻れよ」

 

「「………」」

 

「仮にキミ達が目の前で魔物に食われかけても俺は助ける気なんてねーからな」

 

「俺達は救うに値しないというのか……?」

 

「テレビでアフリカの野生ライオンが草食動物を狩って食ってる映像を見て、草食動物を助けたいと思うか?」

 

「……つまり、どうでも良いということか」

 

「そういう事」

 

「………香織と南雲くんは助けたのに?」

 

「状況が状況だったからな。

それに、今の二人は狩られる草食動物なんかじゃねぇよ」

 

 

 つまり、今のハジメと香織はお前達なんか軽く叩きのめせる程の差がある。

 

 それだけを言ったイッセーはなんとも言えない顔をしていた三人から背を向け、家の階段でも降りるような感覚で穴へと降りるのであった。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 こうして一気に最下層付近まで着地したイッセーは、今頃ヴァーリ達が例の兎小娘のお助けでもしているのだろうかと思いながら、更に下の階層へと続く道を進もうとしたのだが……。

 

 

『おいイッセー』

 

「んぁ? なんだドライグ?」

 

『早くそこから離れた方が良いぞ』

 

「は? なにを言って――――ごばぁっ!?」

 

 

 突然話しかけてきた相棒の妙な忠告を受けたと同時に凄まじい衝撃が背中に襲いかかり、イッセーは地面に倒れた。

 

 

「ぐ、お……! な、なんだぁ……?」

 

 

 ダメージ自体は殆ど無かったものの、突然のことで面を食らったのと、妙な重みを感じ、身体を起こして確認をしてみると、そこには……。

 

 

「…………」

 

「は!?」

 

 

 気絶している雫が居た。

 

 

『どうやらなにかが理由でここまで落下し、ちょうど真下に居たお前が下敷きになったらしい。

お陰でこの小娘は無事だったようで……』

 

「チッ、おいコラ! 寝てんじゃねー!」

 

「へぶっ!?」

 

 

 ドライグの言葉に舌打ちをしながら、落下の最中気を失ったらしい雫の頬を軽く往復ビンタしてたたき起こす。

 

 

「あ、あれ? ほ、頬がヒリヒリするし、ここは……?」

 

「ここはじゃねーぞ。

落ちてきたんだぞキミは!」

 

「へ? あ、ああ、そう言えばアナタの忠告通りに戻ろうとしたら、足下が崩れて……」

 

「崩れた? ちょっと待て、じゃあキミの仲間二人もひょっとして」

 

「いいえ、光輝と龍太郎は落ちていない筈だわ……でもどうしましょう……」

 

 

 完全に事故だったらしい。

 厄介な荷物が増えた気がしてならないイッセーは舌打ちばかりが止まらない。

 

 

「今頃大騒ぎだろうに……ったく」

 

「え、ええっと……」

 

「クソが、一人で戻れるような場所じゃないし……あーめんどくせー! 今日は厄日かちくしょー!」

 

「あ、あの……」

 

「あぁっ!? なんだよ! 怪我でもしてんのか!?」

 

「お、お腹が……」

 

「腹? 腹がなんだ? 変なもんでも食って壊したのかよ?」

 

「そうじゃなくて、お腹空いて力が……」

 

「は?」

 

 

 こうして拗ねたイッセーに同行者が一人発生するのであった。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「ありがとう、食料を分けてくれて……」

 

「別に」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、リアスさん……だっけ? あの女の人の写真が入った携帯が壊されたから機嫌が悪かったの?」

 

「わざとじゃない事故だってのは頭では理解してても納得できなくてな」

 

「そうだったの……それで今香織と南雲君はその兎族を助けに……」

 

 

 

 

 

「うっ!?」

 

「ぼさっとするな!」

 

「あ、ありがとう……」

 

「まったく……! とんだお守りまでしなきゃならんとはね」

 

「こ、ここの魔物達は異常に強いわ……そんな魔物達を簡単に倒せるなんて……。

香織と南雲君も同じことが……?」

 

「ああ、まぁね。少なくとも今のキミの千倍は強い」

 

「…………」

 

 

 

 

「重要なのは、相手の気配や強さを感じ取る事だ。

キミは一々相手の動きを目で追おうとするから、自分より高いレベルの相手の動きを見失うんだよ」

 

「簡単に言ってくれるわね……!」

 

「でなきゃキミは死ぬぞ?」

 

「わ、わかってるわ……!」

 

 

 

 

 

「最下層より更に下の下層まで来たのに……クソ! やっぱり手掛かりは0か! あるのは返事のない屍と変な石ころ……ハァ」

 

「えーっと……」

 

「せめて土産にこの石を持って帰るか……。

ああ、それとキミを上に送らないと……」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

「ほら、さっさと仲間の所に帰んな」

 

「アナタは……?」

 

「ヴァーリ達と合流する」

 

「そう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………。いや何で付いてくるんだよ? キミが行く方角は向こうだろう?」

 

「……………」

 

「聞いてるのか? んだよ、わけわかんねーな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「香織!!」

 

「し、雫!? ど、どうしてイッセーさんと一緒なの!?」

 

「えっと、話せば長くなりそうでそうでも無いのだけど、簡単に言うと南雲君みたいに事故で落ちたら彼がなんだかんだ助けてくれて……」

 

「そ、そうなの?」

 

「流石にあの階層から一人で帰るのは無理だったからついでにね。

ただ、地上まで送ったのに、帰らないでここまで付いてきた理由は知らねーけど」

 

 

 

終わり

 

 

 




補足

一回拗ねると、リアスさんロスした場合のイッセー並に冷たくなりますし人当たりも悪くなる。

その結果、ふて腐れての単独行動。


その2
カースト上位達と出くわし、なんやかんやあって事故が発生し、仕方なく面倒を見ながら調査したけど元の世界に戻れる手掛かり0という空振りオチだった。

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