オルクスの大迷宮。
そこがイッセーとヴァーリの最後の戦いの後のオマケの始まりの場所。
そして、出会った場所でもあった。
二人の目的は今も変わらない。
どんな事をしてでも元の世界へ――共に戦った、家族では無いがそれ以上の深い繋がりを持つ者達のもとへと帰る。
その為にはこの世界の事をある程度知らなければならない。
知った所で、この世界に肩入れをする気はあまり無いにせよ……だ。
「そろそろ、アリスが居た階層より更に下に降りてみようと思う。
ひょっとしたら、俺とイッセーがあの場所で目覚めた理由があるのかもしれないからな」
「これまで降りなかったのは、キミ達三人がそのレベルに到達していなかったからだ。
が、キミ達は見事に俺とヴァーリの特訓を乗り切った」
「勿論これは強制ではない。
特にハジメとカオリは共にこの世界に飛ばされた者達と合流できたし、アリスは自由の身。
あくまでもこれから行う事は俺達個人の問題だ」
「「「…………」」」
「けれど俺達個人としては――折角だからキミ達ともう少しこの奇妙な冒険をしてみたいなとも思っている」
「だから着いて来いとは言わない。力を貸してくれ。
そしてその気がもしもあるのなら――――――
「「「………………」」」
奇妙な冒険の道中出会った運命が変わりし奇妙な者達もまた二人の目的を知る。
そしてそんな二人の言葉に対して、三人の少年少女は愚問だと云わんばかりに腰をあげた。
「へっ、決まりだなヴァーリ?」
「ああ、俺達は最後の最後で運に恵まれたようだ」
無尽蔵の進化をする赤龍帝と果てなき挑戦者である白龍皇の奇妙で最後の冒険はまだ始まったばかりなのだ。
王宮に通され、そこに居る偉い人達に色々と話を聞かれたり、逆に聞いている内に、ヴァーリとイッセーはこの国に長居するのは自分達を――いや、アリスを危険な目に逢わせる確率が高いと判断する。
どうやらこの世界は人間と人ならざる者――魔人族という、悪魔に近いであろう種族との小競り合いが絶えないらしく、ハジメ達がこの世界の者達によって召喚された理由もまたそれに直結する理由だったらしい。
それはつまり――このままこの世界の人間に自分達の正体……特にヴァーリの正体が知られてしまったらかなり厄介な事になる。
そう判断したイッセーにより、この国からフェードアウトする形で離れようと提案したのだ。
その際、ハジメ、香織、アリスにだけはヴァーリの身体に流れる半分の血について告白している。
「あ、悪魔の王族の末裔って……」
「じゃ、じゃあ王子様なのヴァーリくんって……?」
「…………」
「やめてくれ、確かに俺は旧ルシファーの血族者だが、半分は母の人の血が通っている。
ルシファーを名乗る気も一切無い、俺はただのヴァーリさ――なんだアリス?」
「……。もっと前に教えてほしかった。
知った所で私は変わらないのに……」
「すまないな。
わざわざ自慢する事でもないし、あまり話したくない事でね」
ヴァーリがルシファーという悪魔と人の混血児であると知った事に驚いたり、もっと早くに教えてほしかったとアリスが言ったりもしたけど、結局の所ヴァーリという軽い天然の入った戦闘大好き少年という認識は変わらない為に普通に受け入れられた。
寧ろ、この世界の状況を最初に説明されているハジメと香織はそちらの意味で心配をしてくれる程だった。
「この事を説明したところで、王宮の人達は……」
「それはわかっている。魔人族とやらが俺達の世界でいう悪魔と変わり無い存在だとするなら、正体を明かした瞬間に殺しに来る可能性は高い」
「俺も悪魔に物凄い味方しまくってたしね。ていうかリアスちゃんが悪魔だし」
「そ、そうなの!?」
「おう。といっても俺はヴァーリやリアスちゃん、それとリアスちゃんの兄貴であるサーゼクスさんやサーゼクスさんの娘であるミリキャス以外の悪魔なんてどうでも良いし寧ろ嫌いなんだけどね」
寧ろこの二人がこの世界でいう魔人族に対して殆ど敵意を持っていない。
それを王宮の者達に知られたら、得体の知れないパワーを持つ二人の力を利用すべきと考えている者達の考えを転換させる材料になる。
即ち――死刑もありえる。
「オルクスの迷宮を制覇し、そこに俺達が帰れる方法があるのならそのまま帰る。
もし無ければこの国からこっそり出ていく」
「流石にそこまでキミ達を付き合わせるつもりはないけど――」
「いや、僕は行くよ。
二人に助けられた命だ……キミ達の一緒なら香織ちゃんを守れる確率も上がるし―――と言ったらキミ達は怒るかい?」
「いいや? 腹にそれを抱えずに馬鹿正直に言ってしまう時点でアリだよ。なぁヴァーリ?」
「ああ、ある意味健全な取引という奴だ」
「わ、私も着いていくわ。
その……もっとイッセーさんとリアスさんの事について聞きたいし」
「おう色々と聞いてくれ! リアスちゃんみたいな事をキミができたら、間違いなくハジメは獣になるぜ? 俺がそうだった……!」
「あ、あんまり変な事を教えないでよね? ただでさえ最近色々と辛いのに……男として」
「アリスはどうする?」
「私は変わらない。イッセーとヴァーリについていく……!」
「……。俺達に借りがあるからと考えているのなら――」
「違う。もっと見たい……二人の行く先を……。
ヴァーリが歩く道を歩いてみたい……」
「? イッセーと俺ではなく、俺の……?」
「うん、だめ?」
「別に良いが……多分お前にとってはつまらないと思うぞ?」
「つまらないはない……絶対に」
こうして密かに『元の世界に帰り隊』が発足された。
……それを快く思わない者達が多いのだけど。
こうして決起集会的な団らんも終わり、夜が明けた。
相変わらずこの世界に召喚された元学生達の大半は王宮のバックアップを受けながら世界を『平和』にするための特訓やら何やらを受けているようだ。
そして、先日から王宮により事情聴取を受けていたヴァーリ、イッセー、アリス(ヴァーリとイッセーによって正体を伏せさせた)の三人は、年も近い彼らに加わって世界平和の為に戦って欲しいと言われた。
「まずはお前達にこのステータスプレートを渡す。
登録の方法は南雲や白崎に教えられている筈だ」
「「……………」」
これは予想できた流れなので二人は惚けた表情で言われた通りにする。
この時、先日の二人の殴り合いを見て只者ではないと理解したハジメと香織のクラスメート達が訓練をほっぽって興味津々といった様子で二人のプレートに記載される内容を覗いてやろうとしている。
そんな中を、あくまで知らぬ顔で言われた通りの方法でプレートに情報を記載させたのだが……。
「これはどういう事だ? 名前と年齢と性別以外の全てが全く意味のわからない羅列になっているのだが……」
「「さぁ?」」
『……』
馬鹿正直に見せてやるつもりはなかったので、其々の宿すドライグとアルビオンの協力でステータス表記をめちゃくちゃにしてやった。
その事を知らないメルドは驚きながらも何度新しいプレートを試しても全て同じ結果となるので、その内諦めてくれた。
「まあ、なんだ……これで一応正式に迷宮に入れるようになった訳だが……」
「どうも」
「理解した」
「……………」
コイツ等絶対に何かやっているとメルドは察知したのだが、追及してもしらばっくれられるのは目に見えたので敢えて触れなかった。
ちなみに、暫くプレートを見ていなかったハジメと香織のステータスは現状の光輝ステータスを三倍以上も上回る数値を叩き出していたらしいが、言ったら騒ぎになるのでこっそり隠しておいた。
とにもかくにもこれで一応は堂々と迷宮に再突入できるようになれた。
後は食料の準備をするのみなのだが……。
「暫くはお前達もコイツ等に加わって迷宮に入って欲しいのだが……」
単独行動させると嫌な予感でもしたのだろうか、メルドが釘を刺してきた。
「俺達が再突入する階層を考えた場合、彼等は死ぬと思うのだが」
「悪いんですけど、そう何度も他人を守りながらとか無理っすよ?」
『…………』
これも半分は予想できた。
どうやら余程自分達を野放しにはしたくないらしい。
それは確かに妥当な判断だろうが、生憎『赤の他人』の為に戦おうとする気はない。
ましてや、ハジメに対する悪意を今現在も向けている者達に貸してやれる力は無い。
死んだらそれまでだったというレベルの特訓を隻腕というハンデを抱えながらも乗り越えてみせたハジメや、そんなハジメの為に覚悟している香織、そしてアリスと比べるまでもなく、二人が肩入れする相手は固定されているのだ。
「待ってくれ」
平等主義者と共に修羅場を乗り越えた癖に、実は割りと『区別主義者』だったりするヴァーリとイッセーのうもはも言わさない言い方にメルドが渋い表情をして押し黙ると、それまで沈黙を貫いていた天之河光輝が声を掛けてきた。
「キミ達も俺達とは違う理由とはいえ同じ世界から来たのだろう? ならばここは協力すべきではないか?」
そう言う光輝の言い分は確かに正しいのかもしれない。
「同じ世界……」
「ねぇ……?」
「な、なんだ? 何かおかしな事でも俺は言ったか?」
だがそれは本当の意味で同じ世界からここに来た者同士ならの話だ。
しかし既にヴァーリとイッセーはハジメや香織から元の世界についての事を聞いた結果、自分達とハジメ達の世界は更に違う世界と判断している。
何故ならイッセーとヴァーリの世界は最後の戦いの余波――いや、転生者と呼ばれた男が苦し紛れに自分達を道連れにしようとした結果、世界の大半が破壊されたのだから。
それは二人の世界の人間界も例外ではない。
つまり、それほどの規模の破壊が起こったにも拘わらず、ハジメも香織も普通に学生をやっていて、そんなニュースなんてやっていなかったとも言っていた。
「いや、申し訳ないけど俺達は俺達で探すさ」
「互いに変な気を使いたくはないものでね」
「………」
もしかしたらハジメ達とは帰還する方法が違うのかもしれない。
そうで無くても、この期に及んでまだハジメに対して悪意を向けている者が何人もいるような連中に身体を張る気も無い……という本音を隠しながらクールにお断りをすると、光輝は意外とすぐに引き下がった。
どうやら光輝も本音としては得体の知れないイッセーとヴァーリと行動するのは反対らしい。
「という訳で俺達は早速再突入をさせてもらう」
「お互い頑張りましょうや? 『世界平和』の為に」
「……」
こうして交わる事無く別れる事になったイッセーとヴァーリとアリスを呼び止める者は誰も居なかった。
しかし……。
「………。待ちなさい香織と南雲くん」
そんな三人の後を当たり前のような様子で追おうとする香織とハジメに気づいたのは八重樫雫だった。
「まさかとは思うけど、二人はあの三人に着いて行く気?」
親友を助けてくれた事には感謝をしているが、どうもあの三人からは得体の知れないものを感じてしまっていた雫の止めるような声に、ハジメと香織は『うん』と頷いた。
「なっ!? よせ香織! 彼等が行こうとしている所はかなり危険なんだぞ!?」
それを知った光輝が途端に、香織だけにやめるよう、説得し始めた。
例によってハジメはスルーされた訳だが、この時に限って言えばスルーされ体質の自分に感謝したという。
「危険なのは知っているわ。
でも、それに耐えられるだけの訓練はしてきたし、私とハジメ君はイッセーさん、ヴァーリ君、アリスさんの三人からも合格ラインに入っているって言っていた。
なにより、私はハジメ君の歩く道を一緒に歩きたいの」
「南雲が行くからって……!」
「わかってる、これは所詮私の我儘。
でも……それでも私はハジメ君の傍に居たい。
例えこの世の全てが否定しているとしても、私はそれに抗ってでもハジメ君と一緒に生きる……!」
そういっそ穏やかに、その場の者達が見惚れる程の穏やかな笑顔と共に宣言する香織の身体からはほんのりと暖かみを感じる魔力が放出され、そよ風のように周りの者達の髪を撫でた。
「元の世界に居た時の事をハジメ君に言われたわ。
そして私は自分がいかに馬鹿だったのかを知った。
当時から私はハジメ君が好きで、隙があったらハジメくんに話しかけたりもしてきた。
でも、その私の中途半端な行動のせいでハジメ君が苦しんだ……」
『………』
「香織……」
香織がハジメに話しかけた後の事を知らなかったとはいえ、当時の半端な真似がハジメを追い込んだと、オルクスの迷宮に堕ちた時、ハジメ本人から聞かされた。
だからやっかまれたのだと。寧ろ香織から絡まれる事が苦痛に思う時もあったのだと。
その苦痛を隠し続け、耐え続けてきた事を知った香織は己を恥じた。
そして覚悟をした。
もう隠さない。もう中途半端にはしない。
例えこの世の全てがハジメに敵意を持っても、自分は決してハジメを裏切らない。
この先何があっても、そんな自分の為に腕を失ってでも守ろうとしてくれた想い人を支えられる女になるという覚悟を。
それは密かにハジメに想いを寄せている事を知っていた雫を驚かせる程の――精神的な進化だった。
「いっそ開き直りにすら聞こえる程に吹っ切れているのね?」
「うん。ごめんね雫? こればかりは誰にも譲れないから」
「……………はぁ、昔から頑固なのは知っていたわ。
まったく……でも、あの三人と今の南雲くんと一緒なら、危険はかなり少ないのは認めるわ」
既に単純な戦闘力ですら自分の遥か先に到達していると思っている雫は、香織を止める事を諦めるように苦笑いをする。
イッセーとヴァーリとアリスの事はまだ信用できた訳ではないが、少なくともかなりの下層から無傷で香織を地上に生還させたのは事実だし、あの強さは本物だ。
………ちょっとだけ親友に先を越されたのは悔しいのが本音だけど。
「馬鹿な! 何を言っている雫! 香織を止めないのか!?」
「ここまで言っても聞かない事はアナタだってわかるでしょう? それに、悔しいけど今の南雲くんやあの三人の傍に居れば安全でしょうしね。
……香織の安全は保証してくれるのでしょうね?」
「命に代えても僕が守る」
「そうでなくても、今のカオリは強い」
「大丈夫……!」
「なぁに、泥船に乗ったつもりで任せろってお嬢ちゃん!」
「泥船だと沈むじゃない……。
それにお嬢ちゃん呼ばわりはやめて。……学年的にアナタの方がひとつ上に過ぎないでしょうが」
「おっと、悪い悪い――えーっと……」
「八重樫よ、八重樫雫」
「おう、任せとけ八重樫ちゃま!」
「ちゃ、ちゃま……? ヴァーリ君だっけ? 彼に比べるとアナタって凄く軽いようね……」
「フレンドリーと言って欲しいな。
それに俺は恋愛に関してはクソ真面目なつもりだぜ?」
「……どうかしらね、彼女なんていそうも無いけど?」
「いるぜ! 見せてやるよ! リアスちゃんの写真じゃあ!」
「……」
気づけば光輝達をスルーし、イッセーからこの世界に来た時に持ってたらしいスマホの写真を見せられる雫。
「う……わ……こ、これは」
「この子がリアスちゃんだぜ。
へっへっへっ、どうだ恐れ入ったか! 宇宙一かわいいだろ!?」
『』
ついでに覗いたクラスメート達も、幸せそうな表情でイッセーと寄り添っているリアスの写真に絶句する。
なんというか、香織とは別系統の美少女だったので。
「あ、ある意味信用できるわ。
軽そうに見えるアナタが香織に変な事をしないって意味で」
「? 俺そんなに軽く見える?」
「見えるわ、何故かは知らないけどね」
「マジかー……」
軽そうな男と言われて微妙に凹むイッセー。
こうして空気的に香織と別れる流れになりかけたのだが、それでも光輝は納得しない。
「キミ達が何者かよりも香織の事だ! 俺は認めた訳じゃないぞ!」
「何だよ? キミは保護者かなんかか?」
「俺は香織の幼馴染みとして反対するんだ!」
「そんな事言われてもな、本人がその気なんだから幼馴染みだからって止める権利なんてあるのかよ?」
「そうじゃなくて、お前達が普通に信用できないだけだ!」
ラチがあかないとはまさにこの事だった。
いい加減うんざりもしてきたので、いっそリーダーっぽい彼を軽く捻って黙らせてやろうかと、少々危険な思考に変わり始める。
そんな時だろうか、今まで沈黙を保っていたハジメが口を開いたのは。
「イッセーとヴァーリとアリスが信用できない……じゃあないだろう天之河君。
もっとハッキリ言いなよ? 南雲ごときが香織と行動するのが気にくわないってさ?」
「な、南雲……!」
光輝は直接何をしてきた訳ではないが、学生時代に自分が香織と話をしている現場に出くわすといい顔をしなかったのはわかっていた。
つまり光輝は三人よりも自分が香織の傍に居ることが気に入らない――そう感じ取ったのだ。
「オタクで、モヤシで、自己主張もない、成績も中、オマケに冴えない。
そんな男が香織ちゃんみたいな美少女の近くに居るのは相応しくない―――そうだろう?」
「そういうつもりは無い。だがお前があの時落ちたせいで香織まで危険な目にあった!」
「そうだね。まさか香織ちゃんが自分から僕を助ける為に落ちて来るとは思わなかったよ。
きっと香織ちゃんが居なかったら、僕は死んでいたか、生きていたとしても精神が壊れていたのかもしれない。
そうさ、僕は天之河のような才能も無い弱虫だったよ……」
しかし覚悟を示した香織の想いを知った時。
そして自分の今までの想いを伝えた時。
それでも尚変わらなかった香織に本当の意味で惹かれたあの時から、ハジメもまた覚悟をした。
「だから僕は強くなる覚悟をした。
死んでしまうかもしれない特訓にも耐えた。
どんな状況でも一切――本当に、それこそイッセーみたいにブレなかった香織ちゃんを守れるようになる為に……」
二天龍を宿す男達により、南雲ハジメもまたその『殻』を破り、本当の意味で外へと飛び出し始めた。
その証拠とばかりにハジメの全身から放出される力強い闘気が光輝達を戦慄させる。
「そんなに僕を疑うのなら、全員一斉にで構わない。
…………かかってきなよ?」
少しだけ運命が変わった南雲ハジメは飛翔する。
「今度の僕は、ちょっと強いよ?」
『っ……!』
ちなみに、この時大人である畑山愛子は寝坊していたらしい。
終わり
こうして『黙らせた』事で、改めてオルクスの迷宮の制覇へと乗り出した二天龍チームなのだが、何者が物影からこそこそと覗いては追跡していることに気づく。
そして放置していたら、その追跡人がデカめの竜に追いかけ回され、そしてこちらに向かって走ってきた。
……涙目で。
「や、やっとみつけたけど、たすけてくださ~~~い!」
『………』
と言いながら走ってくるので、仕方なくヴァーリとイッセー――そしてハジメが揃って手からビームを出してデカい竜的な生物を消し飛ばしてやった。
「た、たすけてくれてありがとうございます! では私の話を――」
「この竜って食えるの?」
「あまり美味くはなさそう……」
「ラーメンの出汁に――無理だな」
「ヴァーリ、おんぶ……」
「取り敢えず弔ってあげましょう」
「」
そして正体は謎のウサミミボイン少女だったのだけど、誰も興味すら持たず、殺してしまった竜に南無南無と手を合わせながら遺体を焼いていた。
「あ、あのぅ……?」
初見は総スルーであることは、ある理由によりウサミミボイン少女はわかっていたが、イザ直面すると微妙に傷つく。
だがここで諦めてはいけない理由もあるので、意を決して話しかけたのだが……。
「き、きき、貴様ァ……!!!!!」
一歩踏み出した瞬間、ウサミミボイン少女の足から何かが砕けた音が聞こえた。
はて? と少女が足元を見ると、粉々に砕けている謎の物体が……。
そう、それはお察しの通り……リアスとの写真が大量保存されているイッセーの携帯だった。
つまりこの少女はうっかりイッセーの携帯を……リアスの写真で80GBは消費していたそれを踏み潰してしまったのだ。
「ファッキュー!!! テメーは死刑だクソガキァ!!!」
「ぎょぇぇぇぇっ!?!?」
その瞬間、両目の瞳孔を猛禽類のように開かせ、血のように赤く輝せたイッセーが火山噴火のごとくガチギレすると、困惑していた少女に某不沈艦を思わせるウェスタンラリアットをぶちかました。
その瞬間、ウサミミボイン少女はボインボインしながら乱回転し、壁に頭から突っ込んだ。
しかしイッセーの怒りは収まらないし、まるで容赦せず目を回していたウサミミボイン少女の頭を掴んで無理矢理たたせると……。
「地獄の九所封じその1 大雪山落としィィィッ!!!」
「ぎぇーっ!?」
「地獄の九所封じその二とその三! スピン・ダブルアームソルトォォォッ!!」
「おべがーっ!?!?」
「その四と五! ダブルニークラッシャー!!!!」
「ぐげぇぇっ!?」
「その六! 兜割りぃぃぃっ!!」
「や、やめて――ぎょぇー!?」
「と、止めた方が……」
「リアスの写真やら動画入ってた携帯を落とすアイツも悪いが、ああなったら止まらん」
「それに多分、あの女の子は死なないよ。
元気にリアクションしている辺り、イッセーも手加減はしてるみたいだしね……」
「でも本当に怒ってる……」
ウサミミボイン少女がイッセーにズタボロにされている状況を眺めているヴァーリ達。
「その七、ストマッククラッシュ!!」
「ごぼぇ!?」
「その八! …………おいコラ、立てや」
「ま、まって……! は、話を――うきゃ!?」
「禁手化・赤龍帝の鎧+硬度10#ロンズデーライトパワー!!!」
「ほ、本当にまって――ぎぇぇぇっ!?」
「ラストワン! 地獄でほざいてろ! 神威の断頭――ごぼぇっ!?」
「………流石に止めなければと思ったわけだが、暫くイッセーはいじけるだろうなぁ」
「と、取り敢えず彼女を治療しないとね!」
「僕はヴァーリに吹き飛ばされたイッセーの様子を……」
「というか誰?」
こうして新たに出くわした謎のウサミミボインのファーストコンタクトは割りとやらかしであったとさ。
嘘です。
補足
どんどん頑固になります。
主にイッセーが自分の体験談を赤裸々に――特に香織さんに話すから余計……。
どこかの世界の箒さんみたいに、どちらかといえばイッセーの影響をもろに継いでいるのは香織さんだったり……。
その2
アリスさんの最近のマイブームはヴァーリにおんぶして貰う事の模様。
乗り心地は普通によくて、然り気無く優しいらしい。
その3
嘘だけど、兎さん今世紀最大の大ポカ。
合計80GBオーバーのリアスさんのデーターが入った端末をうっかり踏んで壊したせいで大変なことに……。
……決してどこかの世界のモモさんにはならんでしょうが。