色々なIF集   作:超人類DX

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どこの世界線でも共通、アレに懐かれる気質


お休みの日

 自分が誰であるのか。

 何の為にこの世に生まれたのか。

 

 何故こんな力があるのか。

 どうして自分だけが恐れられるのか。

 

 

 その全てがわからないまま、先ず肉親に見捨てられた少年は深い絶望と恐怖に心を蝕まれた。

 しかし、そんな心の異常性があったことへの人生の変化が、本来もっと後に出会う事になる筈となる悪魔の少女との邂逅を果たし、完全に沈みかけた少年の心に一度は火を灯す事になった。

 

 それは己を宿し、更には今までの宿主達には誰一人として無かった精神の異常を持つが故に外れた運命の道を歩まなければならなくなったと感じた龍も安堵し、悪魔の少女や後に加わる仲間達の力になろうと真っ直ぐに成長せんとする少年を見守ってきた。

 

 しかし、運命は――少年に安心を簡単に与える事はしなかった。

 

 たったひとつの綻びを与える運命によって、少年は再び見捨てられたのだ。

 

 肉親に捨てられた時以上の絶望と悲しみ――そして恐怖。

 

 捨てられたばかりではなく、『敵』と見なされ、傷つけられたショックは永遠に消えない傷を少年に与えた。

 

 

 所詮自分はこの世のカスでしかなかったと、真っ直ぐになっていた筈の少年の心をねじ曲げるには十分な運命。

 

 少年との繋がりを得た事で進化した悪魔の少女達は、あっさりと『違う力』を示す者との繋がりを求め、その者の言葉にあっさり誑かされた現実は紛れもない真実。

 

 その後、畑違いながらも同じ『無限』を持つからと現れた龍神ですらも、後に某と出会した事で同じように少年を見捨てた。

 

 こうして心をねじ曲げ始めた少年を見ていく内に、深い復讐心を増幅させていく赤い龍は、今現在も決して彼女達を許さない。

 

 例え、宿敵の白い龍や、少年と酷似した力を持っていた白い龍の宿主。

 そして長年の運命を終わらせてくれた『英雄になるより友を求める少年』や、何があろうとまるで揺れない堕天使や天使との出会いによって、再びその心を甦らせたとしても、彼を見守り続けた赤き龍は赦しはしない。

 

 未だに根深く残り続けたこのトラウマが、少年から青年へと成長した彼の『進化』を真の意味で塞き止めているのだから……。

 

 だからこそ赤き龍はこの異界の地で得た少年の繋がりを全力で守ろうと決めている。

 

 

 どんなことがあろうとも……。

 

 

 

 

 

 

 たかが声質が似ていただけで、ここまで殺意を抱くとは自分でも実は思わなかったりしていた一誠。

 結果的にあの暴走がF.I.Sなんて名乗る武装組織の出鼻を完全に挫く事になったとはいえ、その時の映像が流出してしまった。

 

 世間体というものを一切気にしない一誠にすればそんな程度の事等どうでも良い。

 だがもし再びマリアという女性の声を聞いてしまえば、確実に殺しに掛かるのはわかっていたし、分かっていても自分を制御することができない。

 

 

「はは、思っていたよりも憎んでるんだなぁ俺って……」

 

 

 それは割り切ったと思いたかった過去を何一つ乗り越えられていない証拠でもあり、未だに過去に囚われているという意味もあった。

 

 無論、響達に語った『昔少しだけ好きになりかけた相手』としてではないし、その感情は消えている。

 ただ、あの時の恐怖と絶望が未だに、そして鮮明に一誠の心の奥深くに残り続けている。

 

 全てが嘘だったように、態度もなにもかもが豹変し、共に培ってきた筈の『力』で自分を殺さんとした彼女達の冷たい目が……。

 

 

「……………」

 

 

 頭では分かっていた。

 あのマリアとかいう女性がリアスとは何の関係もない存在なのはわかっていた。

 けれどあの声を聞いてしまった時から、押さえ込んでいた全てが腹を空かせた獣のように沸き上がってしまう。

 

 明確な『殺意』という名の感情が……。

 

 

「嫌になるぜ、女々しいったらありゃしない」

 

 

 今現在一誠は、先日の騒動を引き起こしたという名目で謹慎中だった。

 無論、これは建前であって本当の所は今の一誠がこれから起こるであろう騒動に対して前線には出せないし、何より落ち着く事が大事だという弦十郎といった大人達の判断によるものだった。

 

 

「なぁドライグ……俺って女々しいかな?」

 

『…………』

 

 

 二課が用意してくれた部屋の片隅に座り込みながら、相棒の龍に弱音を吐く。

 それは響やクリスや未来には一度も見せたことのない――そして親友であるヴァーリと神牙にも見せようとはしない一誠の抱える弱さ。

 

 それを唯一さらけ出し、吐露できるのは生を受けたその時から見ていてくれた相棒の龍だけ。

 

 

『お前がそう簡単に奴等との過去を克服できたとは思っていない。

だが、何時かは克服しなければならない。

未熟な過去に打ち勝たなければ、お前の無神臓(ココロ)は前に向かうことは無いのだ』

 

「だよな……はぁ、ホント儘ならないぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かな一誠くん。

もう三日も外に出てこないけど……」

 

 

 あの暴走以降、一誠は謹慎という名の休暇を与えられた事を知っている響は、それ以降一誠が学院に迎えに来なくなった。

 勿論、理由が理由なので未来やここ最近は付き合ってくれるクリスなんかと自己トレーニングは続けているのだが、部屋から一切出てこないとなると普通に心配になるわけで。

 

 ここ最近妙に連帯感が強くなっている三人は、一誠が住んでいる部屋を外から見るようになっていた。

 

 

「無理に押し掛けても良くないだろうし、自発的に出てくれると良いけど……」

 

「ちゃんと食べてるのかしら……」

 

「……」

 

 

 じーっと一誠が居る部屋の扉を離れた箇所から見ている様は怪しさしかないのだが、本人達は至って真面目であり、マリア・カデンツァヴナ・イヴを半殺しにしてしまって以降の一誠が部屋から一歩も出てこない事をただただ心配している。

 かれこれ四日はまともに顔を合わせておらず、時間があればこうして三人揃って部屋の前を張り込み捜査のように張っているのだが……。

 

 

「………!!」

 

「で、出てきた……!」

 

 

 そんな張り込みが項でもそうしたのか、遂に一誠が部屋から出てきた。

 

 

「見た目はあんま変わってない気がする」

 

「うん、でもどこに行くのかな……?」

 

「日用品でも切らしたから買い出し……とか?」

 

 

 顔色も至って普通で、窶れているといった様子もなく一度な安堵する三人だが、テクテクとどこかへ向かって徒歩する一誠の行き先が今度は気になってしまい、こそこそと仲良く後を尾行する。

 

 

 

「こうして見ると普通に見えるんだけど……」

 

「そうでもないかも」

 

「何がだよ?」

 

 

 街中を歩く一誠をこっそり尾けながら、様子を窺う三人娘。

 その時響が普通に見えると言うのだが、未来にはどうやらそうは見えなかったらしく、クリスがどういうことだと訊ねる。

 

 すると未来は一誠に指を差しながら言う。

 

 

「普段なら間違いなく鼻の下を伸ばしながら声をかけるであろう女の人と何度かすれ違っているのに、一誠さんは一切声をかけていないわ」

 

「た、確かに……!

今アイツとすれ違った女なんか、普段ならモロに一誠がアホみたいな顔してド下手なナンパをしそうなのに……」

 

「気付いてないって訳じゃなさそうだもんね、一瞬はちゃんと見るし。

けど何もしない……」

 

 未来の言う通り、何時もなら間違いなくナンパに走るような女性と何度もすれ違っているのに、全く何もしない。

 それはつまり、何時もの一誠とは程遠い精神状態である訳で……。

 

 

「やっぱりマリア・カデンツァヴナ・イヴさんの事かな……?」

 

「本人自体には何にも思ってないとは思うけど……」

 

「声が似てるらしい、リアス・グレモリーとかいう女絡みだよな……」

 

「「「……………」」」

 

 

 

 『昔、ほんの少しだけ好きになりかけた相手』

 

 そう本人から忌々しげな顔で言われて以降、三人娘は猛烈にそのリアス・グレモリーの事が気になって仕方ないし、妙にモヤモヤしてしまう。

 

 自分でもよくわからないけど、とにかくそう思ってしまうよだ。

 

 

「あ、公園に入った」

 

「あれ、ここってあの廃工場と同じで、お化けが出るって噂の公園……」

 

「ま、またお化けの話かよ……」

 

 

 そんなモヤモヤを各々抱えながら尾行している内に、フラフラと寂れた社が祭ってある公園に入っていく一誠。

 例によって、今ではすっかりちょっとした秘密基地となってしまった廃工場と同じような噂がある公園の様だがこんな所に立ちよった事なんて無い筈の一誠が何故? と疑問に思いつつも引き続き後をつけてみると、程なくして古びたベンチに腰かけてボケーッとしている一誠を発見する。

 

 

「………上の空だね」

 

「多分何時もの一誠さんなら、私たちがこうやってつけていることにも気付いて声をかけてくる筈なのに、相当心ここにあらずって所ね」

 

「……」

 

 

 ぽけーっと何をするでもなく座っている一誠に何時もの軽薄さがまるで感じられない。

 しかしぼけーっとしている一誠を見ていた三人娘は、暫くしたらわらわらと物陰から現れる野良猫にびっくりすることになる。

 

 

「な、なにあれ? 一誠君の周りに野良猫がたくさん……」

 

「……飼い猫みたいに懐いているわ」

 

「本人は嫌そうだけどな……」

 

 

 わらわらと現れる様々な毛色の野良猫達が一誠の周りに集結し、懐いた声色で鳴いては膝の上に乗ろうとする様に驚く三人娘。

 というか、よーく猫達を見てみるとほぼほぼ雌の猫だった。

 

 

「も、モテモテだね一誠くん……」

 

「確かに……」

 

「本人はマジで嫌そうな顔だけどな……」

 

 

 意外な性質を見た気がしたと三人娘は膝に乗っては『乗るな』と引き剥がされてはまた別の猫が乗ろうとするの繰り返しをする一誠に思う。

 

 

「あークソ! 鬱陶しい! 俺は犬派なんだよ!! なんなんだテメー等は! 昔っから訳わかんねーな!」

『にゃーん♪』

 

「にゃーんじゃねー! クソが……! あの猫ガキを思い出してイライラしやがる……!」

 

『にゃん?』

 

「あ? ……ああ、猫みてーな妖怪みてーな、そんな雌ガキと昔知り合いでな。

オメー等みてーに頼んでもねーのに近寄ってきて……かと思えば呆気なく『先輩の事はもうどうでも良くなりました』なんてほざいて――あーちくしょう! 要らねぇ事まで思い出したじゃねーか!」

 

『にゃん……』

 

「あぁ? そんな薄情な女と私は違うだぁ? んなもんわかっとるわ! あのガキといいその姉といい――あぁ思い出すだけで腸が煮え繰り返るぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ね、ねぇ、私の気のせいかな? さっきから一誠くんが猫と喋ってるような気が」

 

「私もそう見えるわ響……」

 

「端から見たらやベー奴だな」

 

 

 挙げ句の果てには猫の気持ちがわかるかのような会話まで。

 恐らくはこの一誠を含めたヴァーリと神牙が異世界人で、思っていたよりも混沌とした世界を生きていたから――と無理矢理納得できなくもないが、にゃんにゃん鳴いている猫相手に喋っている姿は普通にシュールそのものでしかない。

 だがそれよりも更に気になるのは………。

 

 

「別の昔の知り合いが出てきたな」

 

「うん」

 

「誰だろうね?」

 

 

 猫みたいな妖怪みたいな雌ガキという言葉が気になる模様。

 間違いなくリアス・グレモリーとは別の誰かの事なのは、懐かれてうんざりしている一誠の言葉からも察する事はできる。

 

「別に誰と知り合いだろうが知ったことじゃねーけど、なんでか聞く度にムカついてくる」

 

「「………」」

 

 

 考えてみれば、一誠の事について――特にどんな過去を生きてきたのかを知らない。

 人を超えた超常の力を持つに至った理由も。

 

 そして過去に関わってきた人間関係も……。

 

 

『にゃん?』

 

「あ? 向こうから見てくる人間は誰だって? 俺が知るわけ――――って……ありゃ知り合いだわ」

 

 

 意外と三人娘は一誠を知らない。

 

 

 

 

 

 一誠に寄ってきた野良猫達によって尾行が完全にバレてしまった響、未来、クリスの三人は下手に慌てる様子も無くあっさりと姿を現す。

 

 

「えっとごめんね? 部屋に籠ってばかりだったし、大丈夫なのかなって思って」

 

「まさかそんなに猫に懐かれる奴だとは思わなかったけどな」

 

「別に懐かれてる訳じゃ……」

 

『フシャーッ!!!』

 

「………。私たちが近寄ろうとすると、猫さん達が思い切り威嚇してくるのですが……」

 

 

 元々鈍いというか大雑把なせいで、気配を察知するという器用な事が苦手であるにしても、やはり色々あったせいで更に鈍くなっていると思いつつ、一誠に近寄ろうとする三人娘。

 

 だが未来の言う通り、近寄ろうとすると一誠に群がっている猫達が挙って三人を近寄らせまいと威嚇してくる。

 

 

「も、モテモテだね?」

 

「俺は犬派なんだがな……おい、この子達は知り合いなんだよ、威嚇してんじゃねーぞ」

 

『にゃー……』

 

 

 やはり一誠の言葉が通じているのか、威嚇していた猫達を注意すれば、猫達は渋々といった様子で威嚇をやめて一誠の周りを警護するように囲む。

 

 猫だけに伝わる気質でもあるのかは定かではないが、羨ましく感じる者からしたら実にパラダイスな光景であろう。

 生憎三人娘はそれよりも一誠の過去の知り合いについての方が気になる訳だが。

 

 

「んで、どうしたんだよ三人して? 最近雪音もすっかり仲良くなれてなによりだが……」

 

「お前がフラフラと外に出ていくのを見てなんとなくな。

何時ものアホ顔晒してへったくそなナンパもしないし……」

 

「え? ――ああ、見てたの? まー……そんな気分じゃないしな」

 

「それってやっぱり……?」

 

「ご想像に任せるよ――――って、ちょ、お前毛がウザい」

 

『にゃーん♪』

 

 

 そう言いながら然り気無く肩に昇って、頬にスリスリしてくる白い雌猫を鬱陶しそうに掴んで下ろす一誠。

 黒い猫や茶色い猫やら黒と白のハチワレ猫等々、様々な猫達がどれだけ嫌そうな顔を一誠がしていても構うこと無くスリスリとするせいなのか、その内諦め始めている。

 

 

「猫ってよくわかんねー、ガキの頃からそうだったが……」

 

「飼い猫じゃない限りは警戒心が強くて普通はこんなに寄り付くなんて無いと思いますし、私たちも驚いています」

 

「だよな? そうだよな? よくわかんねー」

 

「でも、一誠さんはあまり猫が好きって訳ではないですよね?」

 

「は? そりゃあ毛とかひっついて邪魔だ―――」

 

「猫の妖怪の知り合いがどうとかって事じゃなくてですか?」

 

「……………」

 

 

 そんな状況で意外と未来が割りと踏み込んだ質問をすれば、一誠は猫達にスリスリされながら口を閉じてしまう。

 クリスと響の二人はそんな未来の意外な踏み込み方に少し驚きつつも、気にはなるので未来と一緒になって一誠を見る。

 

 

「やっぱ聞いてたのかよ。チッ……」

 

「「「………」」」

 

 

 やがて舌打ちをひとつする一誠。

 

 

「可能なら永久に抹消してやりたいってだけの、くだんねー過去の話だよ。

一々キミ達が気にする事じゃねぇ」

 

 

 声を理由にマリア・カデンツァヴナ・イヴに向けた嫌悪の表情をそのままにそう言う。

 

 

「雌猫なんて言ってましたけど……」

 

「………。分類上はそうだったからな」

 

「ど、どんな人だったの?」

 

「…………………………………………。髪の色は大体雪音に近い」

 

「あ、アタシにか? ふ、ふーん?」

 

「だが心配すんな、体型は雪音に比べるまでもなく貧相なクソガキだったよ。

どっちかと言えばあのガキの姉なんてほざいてた猫女の方が体型的に雪音に近いかもな」

 

「……あんまり嬉しくねーぞ」

 

「そりゃ悪かったな、お前に比べりゃあ、あんな雌猫共なんて、カスも良いところだ。

チッ、つーか思い出してきたら余計腹立ってきたんだが。

クソが、あのクソガキ、どうせ縁を切るんだったら、歯を全部ぶち折って全身の骨を粉々にしてやりゃあ良かったぜ」

 

 

 相当の恨みがあるのか、一々言動が物騒な一誠。

 この時点で死ぬほど嫌いな存在だというのは理解できた。

 

 

「とにかく、ガキの頃の俺は黒歴史だらけで思い出したくもねーんだよ。

その、マリアほにゃららなんて歌手があのクソアマに声が似てたもんだから、つい我を忘れてこの様になっちまったとはいえ、一々気にしたくもねーし、過去より今だって話さ」

 

「その割りにはその思い出したくもない過去というものを気にしているように思えますけど」

 

「み、未来……!」

 

「キミはたまにズバッと言うな? ………へーへー、確かにそうだよ。

それは薄々俺も自覚はしてたよ――ヴァーリや神牙……それに元の世界にいるアザゼル先生やコカビエルのおっちゃんやガブリエルさん――あと安心院なじみのお陰でここまで立ち直れたけど、女々しい事に奴等への記憶がこびりついたまんまさ」

 

「でもよ、人間なんだからそういうトラウマって奴はそう簡単に忘れられるもんじゃないだろ?」

 

「まーな……。

うん、というかこんなに自分の事を話したのって初めてかもしんないというか、喋ってる自分に結構驚いてるわ」

 

 

 にゃーにゃーと猫にスリスリされながら、三人に苦笑いの表情を見せる一誠。

 

 

「あのさ、もしかして一誠君が年上の女の人が好きな理由って……」

 

「いや? これとは無関係だし、理由は4歳の頃に拾った三十路もののエロ本を読んだからだし」

 

「台無しだっつーの……」

 

「いかにも俺って理由ではあるべ? はっはっはっ!」

 

 

 人に愚痴れたせいか、少し何時もの調子に戻り始める。

 結局のところ、自由を勝ち取る為に進化を重ね続け、真に得た仲間や友と共に世界そのもに喧嘩を売って勝ち残れた今でも、奪い取られ、利用しつくされた過去のトラウマは残り続けているのだ。

 

 

「心配すんなよ、謹慎あけて、何かの拍子であのマリアほにゃららと出会して声を聞いても、暴走はしないよ。

……ついうっかり、中指でも立てながら『Fuck You ぶち殺すぞゴミめ』くらいはもしかしたら言ってしまうかもしれないけど……」

 

「全然克服してねーじゃねーか……」

 

 

 ヘラヘラと笑って言う一誠の過去が根が深い。

 そう感じる三人娘達なのだった。

 

 そして一誠を含めた四人はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

「よし、プロジェクトD×Gの始動をここに宣言するぞツバサ」

 

「D×G?」

 

「アザゼル、コカビエル、ガブリエル、安心院なじみと元の世界で勝手に名乗ったチーム名さ。

例の武装組織の顔役が世間的に知れ渡っているのなら、同じ土俵で対抗してやるのさ………ふふん」

 

 

 

 最近翼のマネージャーのお手伝いをしている内に変な方向にひらめいたヴァーリの暴走が始まっていることに。

 

 

おわり。

 

 

 

 

 

 過去に打ち勝つ試練を乗り越えた時こそ、真の意味での無神臓を取り戻す事になる。

 そして同時に、乗り越えられた者への恩を返すときこそ、最後の赤龍帝が真の飛翔をする。

 

 

「神獣鏡……ね。

何を誰に言われてそれを持ったのかは知らないし、言って渡した奴は確実に――地獄の果てまで追いかけて八つ裂きにしてやるさ」

 

「……………」

 

「良いぜ小日向ちゃんよ。

キミにも俺は借りっぱなしだからよ――そんな眠そうな顔から覚ましてやるぜ!!」

 

 

 借りた者への返しをする。

 

 

「オラどうした!? これなら生身の小日向ちゃんの方が何倍も速いし強いぜ!」

 

「っ……!」

 

「そうだろ? ――ビッキー!! 雪音!!」

 

「「絶唱・ファイナル・ドラゴン波ァッ!!」」

 

 

 

 友の為に人を辞める覚悟を示した少女を解放するために。

 

 

「ぅ……」

 

「よ、お目覚めかい小日向ちゃん。

ほれ、ビッキーが待ってるぜ?」

 

 

 彼女達の持つ繋がりを守る為に。

 

 

「なぬ!? 神獣鏡ってギアが小日向ちゃんの中で変化した!?」

 

「そう、アナタ達の宿す神器に近いものへと変質しているわ。

いえ、これは変質というよりは進化ね。

そう言えば立花さんとクリスの二人も同じような兆候が現れているようだけど、なにか身に覚えはあるかしら?」

 

「無い――」

 

「一誠くんが間違えてお酒飲んじゃった後にちょっとありましたけど……」

 

「「うんうん」」

 

「あら、多分それよ。

恐らくは彼の体液を取り込んだ事で――」

 

「や、やめろやめろやめろ!!! そんな訳あるか! てか生々しいわ!!」

 

 

 ちょっと変になったりはするけど……。

 

 

『なまじ間違いではないだろ。

そもそもアザゼルも言っていただろう? 赤龍帝(オレタチ)の血を制御できていない神器使いに取り込ませればある程度の制御を可能にする位の強化が可能だと。

それに加えてお前は無神臓がある――そりゃあそうなる』

 

「で、でもよ……!?」

 

『諦めろ、そして現実をいい加減直視しろ。

お前は泥酔した拍子にあの小娘共に絡み、そのまま――』

 

「やめれ! やめてくれ! 罪悪感で死にたくなる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「ほ、ほら間違って飲んじゃったし、悪気なんて無かったってわかるから……!」

 

「そ、そこに関しては責める気はねーよ……」

 

「大丈夫ですよ一誠さん。

これで皆と『同じ』になれたし……ふふ、ほら元気出してください? それより最近変な夢を見るようになって……」

 

「夢……?」

 

「はい……。

この我を逆に取り込むなんて遺憾だ……って怒られる夢なんですよ。

なんの事だかさっぱりですけどね?」

 

 

 進化はまたまだ止まらない。

 

 

「それにしても神牙君は大丈夫かなぁ。

最近普通に自分の正体を隠す気ゼロの櫻井さんの馬になって歩かされていたけど……」

 

「まあ、やって来た事を考えたら仕方ない気がするけどよ……」

 

「ヴァーリさんは翼さんと楽しそうですし……」

 

「ヴァーリは……まあ、うん」

 

「一誠は……」

 

「よ、よせよ……三人してそんな目で俺を見るなよ」

 

 

 

 

 

「もう良い、私を――」

 

「アンタの過去なんてどうでも良い。

どうであれ俺はアンタを信じる……だから、アンタを今から守る! そうでなければ、俺はアンタに仕返しができないからな!!」

 

「……」

 

「まったく、ほら神牙!!」

 

「俺と一誠の力を使え!!!」

 

『ウォォォォッ!!』

 

 

光覚大巌獣龍身・牙狼(真月)

 

 

『貴様の陰我、俺が解き放つ!!!』

 

 

嘘だよ




補足

にゃんこ好きにはたまらん気質は持っている。
 ただし、猫な後輩に思い切り裏切られたせいで猫嫌い気味。

その猫後輩の姉にも一度足の骨を折られた経験もある。
……当時は彼の気質により彼女達も同等に進化はさてしまったのと、例のアレによって更に凶悪化してましたので。


その2

で、やはり気になる少女達。

おかげでナチュラルに最近は仲良しになりかけてる皮肉。


その3
プロジェクトD×G……始動?


その4
この未来さんはフィジカルが既に進化しちゃってるので、ギアに乗っ取られた時は五倍は厄介になります。

ただし、取り込んだ場合は前線入りが確定するけど。

そしてギアそのものが神器寄りにもしかしたら変質する可能性がなきしにも――


条件は……………アレだけども。
まあ、嘘だしね

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