色々なIF集   作:超人類DX

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段々自分でもワケわからなくなる赤と戸惑う赤。


迷走モードON

 最後であり、過去に例の無い異質を持つ宿主。

 

 永遠の進化を運命付けられし、外からの例外(バグ)により、世界そのものが抗体を作り上げるかのように生まれてしまった怪物。

 

 それが彼の本来の道から外され、代わりに与えられた運命。

 

 神を破滅させん異常性を持つ少年の歩む道。

 

 

 

 

 

 

 

「ウォラァ!!」

 

 

 歯を剥き出しにし、獲物を血祭りにあげんとばかりの血走った赤い眼で次々と現れるノイズを素手で粉砕していくその姿は、獰猛な野獣を彷彿とさせる。

 

 

「ははははっ! ははははははっ!!!」

 

『Boost!』

 

 

 龍の籠手が呼応すると同時に、そのパワーは更に跳ねあがる。

 それと同時に一誠自身の『精神(アブノーマル)』が、一誠自身を進化させる。

 

 戦う度に……敵を屠るその度に進化をする。

 

 

 それが彼の異常さであるのだ。

 

 

(アイツ……)

 

 

 そんな一誠を見て、イチイバルを纏うクリスは相変わらずの化け物っぷりを思う以上に、これまで何度かの衝突の際は完全に手加減をされていたのだと悟らされ、悔しいと感じる。

 

 

(けどこうして改めて見てわかる……。

アイツは何かに怯えている……)

 

 

 それと同時に、これまで見てきた一誠の側面から、何かに怯え――――怯えるからこそ虚勢を張るような戦い方をしている事に。

 

 

「じゃあな謎生物共!!」

 

 

 決してノイズに怯えている訳ではなく、もっと別の……一誠だけが見える幻影のようなものへの恐怖を誤魔化すような戦い方をしている気がする……。

 

 空へと跳び。上空から両手に赤く輝くエネルギーを生成し、それを腰に構えて一つに合わせ、ノイズ達へと一気に放出する。

 

 

「10倍・ドラゴン波ァァァッーーー!!!」

 

 

 赤き閃光がノイズ達を飲み込み、一気に殲滅させる。

 

 

「こんな所か……」

 

 

 閃光が晴れ、ノイズ達が全て消え去った事を確認した一誠は、息を切らせる様子も無く着地をする。

 

 

「ヴァーリと神牙もどうやら終わらせたみたいだ」

 

「……………」

 

 

 二人の気配を辿り向こう側で出現したノイズも片付いたと察知した様子の一誠に、一応数体程一誠が見落としたノイズを片付けていたクリスもイチイバルを解除する。

 

 

『相変わらず雑な奴だ……』

 

「は?」

 

「?」

 

『ヴァーリと神牙が此方に向かっている様だが……小娘二人と司令と呼ばれている男も一緒だ』

 

「? それがなんだってんだよ?」

 

『アホか。お前は別に良いとしても、そこの小娘がソイツ等と出会してはややこしいことになるのではないのか?』

 

「…………………………あ」

 

 

 ハッとした顔でクリスを見る一誠。

 けれど気づいた時にはすでに遅く……。

 

 

「一誠君!!」

 

 

 嫌な予感がする展開が超速度でやって来てしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

 ヴァーリと神牙から、一誠は本日体調不良により休暇中だ――と言われた響と翼は、一誠抜きでのノイズ殲滅をした。

 しかしながら響は内心ヴァーリと神牙が言っている事が嘘だと見抜いていた。

 

 その証拠に自分達が普段よりそこそこ発生率の高いノイズ達と戦っている最中に司令から連絡が入り、別の箇所でもノイズが発生した時は、ものの数分でその反応が消えた。

 

 

「どうやら一誠君がB地点のノイズを殲滅したようだが、イチイバルの反応も確認した」

 

「え、それってクリスちゃんが居たって事ですか?」

 

「そうだ。

そして此方から一誠君に何度も連絡を試みているが、反応が無い」

 

「つまりこのノイズの同時発生は雪音クリスが噛んでいる可能性があると……?」

 

「それはわからないが、無関係とは思えん」

 

「「……………」」

 

 

 わざわざ現場にまでやって来た弦十郎の話を聞いた時は、響もそうなんじゃないか? と思ったのだけど、話している最中ずっと神牙とヴァーリがそわそわしていたのを響は見逃さなかった。

 

 

「ねぇ二人とも……ひょっとして何か知ってる?」

 

「む、何か知っているのか?」

 

「いや……」

 

「知っているといえば知ってはいる。

まず間違いなく今回の件に雪音クリスは関係ない」

 

「……なぜそう言い切れる?」

 

「そりゃあさっきまでその雪音クリスと居たからな一誠と俺と神牙は」

 

 

 どうやら三人してクリスと居たらしく、この件にクリスはまったくの無関係であったとの事。

 それに対して響は安心したのだが、ふと思い返してみると一誠は確か……。

 

 

「三人で修行するって言っていなかった?」

 

「私はナンパに成功したから訓練を休みにするって言われたんだけど?」

 

「いや……」

 

「正直に言ったらややこしくなるかなーって思っただけで他意は無いぞ? 第一俺達は所詮バイトだし、一々行動を報告する義務も無いだろうし」

 

 

 クリスと会ってると正直にいえば良いのに、なぜわざわざ誤魔化したのか。

 寧ろそっちの方が気になる響は、しれっとした顔の二人をじとーっとした目で見る。

 するとその視線に気付いていたのかそうではないのか、神牙がぽろっと口を滑らせた。

 

 

「聞いた所によると、フィーネって女から突然解雇されたらしいぞ雪音は。

それを聞いた一誠が、珍しく熱心に雪音の今後についてどうしようかと考えていてな。

……まあ、その後盛大にフラレてたが」

 

「……は?」

 

「フラレてたって……。

確か彼ってパーソナルカラーが被るって雪音クリスに因縁ふっかけてたでしょう?」

 

「そうだが……これも珍しい事にアイツなりに雪音が気になってしょうがなかったらしくてな。

証拠に雪音からフィーネとやらに命令されて仕方なく一誠に近づいて探りを入れていたと聞かされた時は割りと泣いてたぞ」

 

「なんと……」

 

 

 クリスが路頭に迷ったから、なんとかしようとしてあげていたのは全然良い。

 だがフラレて割りと泣いていたというのはどういう事なんだ? と自分でもわからないが絶妙に納得しかねてくる気分になってしまう響。

 

 というかそもそも、一誠は年上にしか興味がない筈なのに。

 

「あ、立花君!?」

 

 

 気づけば響は、一誠式進化トレーニングによって跳ね上がったフィジカルを全開にし、生身で異質な速度で走り出した。

 

 別にそんなつもりではないが、一体全体一誠はクリスに何を思っているのかが猛烈に気になってしまったので。

 

 そんな走り出した響を見て慌てて追いかける弦十郎や翼……そして『しゃべりすぎたかな?』『いや、何だか面白そうな気がしてきた』と、野次馬根性丸出しな気分で追従するヴァーリと神牙。

 

 

「た、立花響……」

 

「??? どうしたよビッキー?」

 

 

 こうしてドライグに指摘されて気づいた頃には後の祭りであり、一誠はクリスと居る現場を抑えられてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 根っこで他人を疑っている一誠は、表情こそヘラヘラとしているが、内心は舌打ちをしている。

 

 

(チッ……何で気づかなかったんだ、俺のボケが)

 

「……………」

 

 

 クリスは不当解雇をされた身であるとはいえ、響や弦十郎達といった二課所属の者達にとっては『敵』である。

 ここでどれだけ『聞いた所によると、この子は不当解雇されちゃったので敵ではございません』と言った所で今までのクリスの行動が帳消しにはならない。

 

 

「色々と彼等から聞いた。

どうか彼女からもっと詳しい事情を聞くために連れていきたいのだが……」

 

「………」

 

 

 弦十郎が手荒な真似はしないと言う。

 確かに弦十郎――というか、この組織の大人達はしっかりしているし、嘘を言ってはいないのはわかる。

 しかし一誠はどうしても『他人』を根で疑ってしまうし、何よりクリス自身が大人を一切信じていない。

 

 

「それ、嫌だって言ったらどうなります?」

 

「!」

 

 

 クリスを知った当初なら『極刑求む』とでも言って――何なら抵抗不能レベルに叩き潰してから渡してやっていたのかもしれない。

 しかし……認めたくは無いが、パーソナルカラーもさることながら、やはりクリスと己はどことなく似ている。

 

 過去へのトラウマ……他を信用しきれない所。

 

 

「ば、バカかお前……! 何を言ってるのかわかってるのかよ……!? こんな所でアタシなんかの肩持ってもなんの得にもならねーんだぞ!」

 

「得になるかならないかなんて俺が決めることだ

俺の生き方は俺が決める、誰かの決めた正しさなんてものに興味はねぇ……!」

 

「アホか!? この状況でカッコつけてんじゃねーよ!」

 

「そ、そうだよ一誠君。

ここはクリスちゃんにも来て貰った方が……」

 

「そんなのわかってるよ。

少なくとも、俺が今まで会ってきた大人達の中じゃ、風鳴司令さんはアザぜル先生やコカビエルのおっさんやガブリエルさんくらいにはまともに思えるさ」

 

「だったら――」

 

「わかってるよ! 俺だって今自分でワケわかんないんだよ! 別に雪音がどうなろうが知ったこっちゃねぇって思ってたのによ! なんなんだよクソが!!」

 

『…………』

 

「完全に迷走してるな……」

 

「色々と自分の中で自覚し始めていても認めたくはないのだろうな……」

 

 

 ギャーギャーとテンパって騒ぎ立てる一誠のせいですっかりおかしな空気になってしまい、とにかく止めるという意味でクリス自ら連行されることに同意するという展開になる。

 

 

「チッ……どうしちまったんだ俺は」

 

「アタシが知るわけないだろ。

言っとくけど、下手にアンタを追い込んだらあのまま暴れ倒しそうだったから黙って連行されてやってんだからな」

 

「わざわざどうも……!」

 

「あのー……」

 

「あ? なんだよ立花……?」

 

「クリスちゃんって、一誠君と知らない間に仲がいいねと思って……」

 

「べ……別に仲よかねーよ。コイツに借りを作りたくないだけだ」

 

「へー……?」

 

「な、なんだよ?」

 

 

 そしてクライマックスへ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 所詮はただの清掃員で通すには最早無理がある程に、三馬鹿達の力は組織の中に伝わってしまった。

 

 皮肉にも、出会う必要もなければ、出会う筈もなかったこの邂逅により、災害による世界への難易度が二段階は下がった。

 それを大人達は間近で見てきたからこそ、並行世界から迷い混んだ彼等を放っておく訳にはいかない。

 

 多くを語ろうとはしないが、三人は『普通』に生きてきたという訳ではないのだろうから。

 

 

「今、司令が直接雪音クリスに事情聴取をしている」

 

「…………」

 

「まあ、彼なら大丈夫だろ」

 

「だからそんなに心配するなよ一誠?」

 

「してねーよ、殴るぞコラ」

 

 

 

 クリスが司令と共に別室へと入っていくのを見送った後、口でこそ知らんぷりを決め込んでいる一誠はうろうろと落ち着かない様子で事情聴取に使われている部屋の前を行ったり来たりしている。

 

 

「…………」

 

「聞いた所によると、私達が知らない所でも結構会ってたみたい」

 

「上からの命令で、皮という意味では一番分かりやすい一誠に接近して色々と探りを入れようとしていたらしいな」

 

「まあ、知った所で理解なんてできる訳もないんだが……」

 

 

 うろうろうろうろとしつつ時折立ち止まっては扉を見詰めて貧乏ゆすりしている一誠が、まるで飼い主が出てくるのを待っている飼い犬のように見えてくると、響、翼、ヴァーリ、神牙は思う。

 

 

「ヴァーリの言ってた神器とは違うモノってどういう事なの?」

 

「何年か前に元の世界において、ある人外の女に教えられた力――というべきか。

その女曰く、その力は個人個人の持つ『個性』を具体的にしたものだと言っていてな」

 

「えっと、つまり……?」

 

「心がある生物ならば誰しもが持つ可能性がある力ってことだ」

 

 

 うろうろしている一誠を目の前にしながら、三馬鹿が其々持つ神器とは違う力についての話に変わる。

 

 

「誰しもって……それは私や立花にもあると?」

 

「まあ、トレーニング次第かな」

 

「だが、持っていてもあまり良いものではないぞ?」

 

「……」

 

 

 その個性の力に興味を持つ二人に、ヴァーリと神牙は然り気無くやめておけと忠告する。

 

 

「その個性もピンからキリだけど、俺達は――特に一誠はあの人外の女曰く、人の進化の歴史を根本的にねじ曲げてしまうものだからな」

 

「ねじ曲げるって……」

 

「一体どんな個性なの……?」

 

「立花はなんとなく理解しているんじゃないか? アイツの『トレーニング』を受けたら、ありえない程の成長をしている事に」

 

「……………うん。

でもそれは私がギアに選ばれたから」

 

「じゃあキミのお友達は?」

 

「あ……」

 

 

 最近なそれが当たり前になっていたので自覚していなかった響はハッとなる。

 そう……一誠式のトレーニングを受けた時から信じられない速度での成長をしている自分に。

 

 

「つまり彼の個性は……」

 

「あらゆる環境・状況に即時に適応し、糧として無限に進化し続ける。

それがアイツの個性だ」

 

「無限の進化……」

 

 

 言葉にするだけなら突拍子も無いし荒唐無稽にしか聞こえない。

 だが、彼等は生身でノイズに触れても何の害すら起きず、寧ろ張り倒せる。

 つまりそれは彼等が常人の遥か先の領域に君臨している訳で……。

 

 

「しかも、アイツの個性は他の者すらも引き上げる事ができる。

だからキミやキミのお友達は急激な成長を果たせたのさ」

 

「無論、それに準ずる努力をキミ達がしたからだがな」

 

「そうだったんだ……」

 

 

 ここ最近の自分自身の急成長の正体を知った響は、飼い主レスで落ち着かないシベリアンハスキーのようにうろうろしている一誠を見る。

 

 

「だから不思議なんだよ。

アイツは過去のこともあって、自分の個性を他人に晒したりは絶対にしなかったのだが……」

 

「過去……?」

 

「気を抜いていたからなのか、それとも見所をキミ達に感じたからなのか……。

どちらにしても―――っと?」

 

 

 ヴァーリと神牙の意味深な言葉の続きを聞く前に、扉が開かれ、弦十郎に促される形でクリスが出てくる。

 

 

「事情聴取は終わった。

彼女は取り敢えず―――おっと?」

 

 

 中でどんな事があったのだろうか、若干不貞腐れた表情のクリスを横に、弦十郎が響達に話をしようとした瞬間、一誠が軽く弦十郎を押し退けながらクリスに近寄る。

 

 

「…………」

 

「な、なんだよ……?」

 

 

 よく見たら両目が猛禽類のように鋭くなっている一誠にガン見されてちょっとびっくりなクリス。

 そんなクリスを暫くじーっと見ていた一誠は――

 

 

「…………」

 

「な、なにしやがる!?」

 

 

 ペタペタと無遠慮に、まずはクリスの頭にさわり始めた。

 これには全員驚き、クリス自身も反射的に一誠の手を払い除けようとするのだが……。

 

 

「ふみゅ……!? にゃ、にゃにを……!?」

 

「………………」

 

 

 今度はむにむにと頬を捏ねるようにさわる。

 この意味不明な行動にはヴァーリと神牙も首を傾げる訳だが、やがて満足でもしたのか、クリスから離れた一誠の眼は何時もの彼の目に戻っていた。

 

 

「よし……!」

 

(((((何が……?)))))

 

 

 どうやら一誠なりの確認だったらしい。

 一体何が『よし』なのかサッパリだが、本人的には納得している様子なので敢えて突っ込みはしなかった。

 

 

「それで? 雪音はどうなるんでしょうか?」

 

「あ、ああ……本当に彼女は組織から解雇されたようだし、キミ達のようにアルバイトでもして貰おうと提案した」

 

「で?」

 

「いや……本当は嫌なんだけど、これまでアンタや立花響にしてやられてきた借りが返せるならと思って……」

 

「つまり? バイトすんだなここで!?」

 

「お、おう……」

 

 

 な、なんなんだよ? と両肩をガシッと掴まれてしまったクリスは何度もうなずく。

 本来の物語ならばもう少し紆余曲折あってから――があるのだが、この三馬鹿達があまりにも理不尽で緩かったせいで、こんな形で収まってしまった……という事を本人達は知るよしもない。

 

 

「ふー」

 

「………」

 

『………』

 

 

 そんなこんなで今の所は大丈夫だとわかった一誠は安堵するように息を吐き――

 

 

「よーっし! これで思う存分ナンパできる!!」

 

『………』

 

 

 何時もの調子を取り戻した。

 

 

「はっはっはっ! じゃあ後の事はよろしくっ! 俺は今日こそ素敵なお姉さんと大人の一時を送るぜ!」

 

 

 え、さっきまでの感じは何だったの? としか思えない切り替えっぷりに、当初唖然としていた一同。

 だがしかし、そんな一誠に戸惑わされていたクリス本人からしたら段々腹が立ってきてしまうわけで、無駄にキリッと―――こう、顔文字で表現するなら『( ・`д・´)』みたいな顔して走り去ろうと背を向けた一誠に向かって、綺麗すぎる飛び蹴りがヒットする。

 

 

「ふざけんなっっっ!!」

 

「げぎゃ!?」

 

 

 見事にクリーンヒットした事で一誠は壁に向かって顔から激突する。

 

 

「さっきまでの訳のわからなさは何だったんだよ!?」

 

「な、なにしやがる!」

 

「それはこっちの台詞だバーカバーカ!!」

 

「馬鹿じゃねーよ!!」

 

 

 無論、大したダメージも無く起き上がった一誠は、鼻を擦りながら、怒り状態のクリスを睨むも、クリスに馬鹿呼ばわりされてしまう。

 

 それにカチンとでも来たのか、さっきまでの変な空気が嘘のように、一誠がクリスに飛びかかる。

 

 

「お前の訳のわからない感情に振り回されて最悪なんだよ!」

 

「うるせー!」

 

「もう限界だ! 今ここでぶっとばしてやる!!」

 

「へっ、無駄無駄ァ! オメーじゃ無理だっつーの!!」

 

 

 取っ組み合いになり、揃って床を転げ回る一誠とクリス。

 割合的にクリスの方が一誠をポカポカと叩きまくっている辺り、一誠の方は手加減はしているようだが……。

 

 

「アホらしくなってきたんだが……」

 

「アイツは何時もああだからな……」

 

「困った奴だよ」

 

「やっぱり仲良いんだね……」

 

 

 弦十郎に止められるまでゴロゴロと床を転げ回りながら取っ組み合う二人に、一同は途端に馬鹿らしくなったのは云うまでもなかった。

 

おわり

 

 

 

 

 

 ほんの少し先の未来。

 

 

 

 一度でも自覚をさせた場合、彼は極端なまでにヘタレとなる。

 

 

 

「最近響の彼氏君はどうしたのよ? 来なくなったみたいだけど」

 

「だ、だから一誠君は彼氏じゃないってば!」

 

「運動のコーチみたいな人だよ」

 

「コーチにしては若すぎるじゃない。

この前年を聞いてみたら17って言ってたし……そもそも彼氏じゃなかったら何で毎日門の前で待ってるのよ?」

 

「だからそれはトレーニングの為であって……」

 

 

 放送室をジャックし、下品極まりない歌を熱唱して一時期出禁にまで発展してしまったお陰で、学院で一誠の顔を知らぬ者はいない所まで来てしまった。

 そればかりか、ここ最近は学院近くの路上で色々と古いアイドル活動をしているせいで、ますます響の彼氏疑惑を持たれてしまう。

 

 

「なぁ」

 

「ひょっ!? な、なんだ雪音か? ど、どした?」

 

 

 そんな響との噂を、ここ最近学院に転入したクリスはといえば、聞いていてもあまり面白く無く、『ある日』を境に微妙にクリスを避け始めていた一誠に聞いてみることに。

 

 

「ガッコーでよくお前と響が付き合ってる的な感じになってるけど……」

 

「まだそのデマ流れてるのかよ……?」

 

「いくら本人が否定しても信じてくれないんだと。

最近は別の意味で有名になってるから尚更な」

 

「そ、そうか……。ビッキーには悪いことしちゃってるな……」

 

「…………………」

 

 

 妙に挙動不審な態度の一誠に、クリスは解せない気分だ。

 というのも、響も響で強く否定はしないのだ。

 

 

「…………。こっち見て喋れよ?」

 

「み、見て喋ってるし」

 

「嘘いえよ、さっきからアタシを一切見てねーって」

 

「そ、そうかな? 気のせいじゃないか? あははは……」

 

「…………」

 

 

 そして一誠も一誠で最初は平気でセクハラばかりしてきたのに、全くしなくなるばかりか目も合わせてくれない。

 しかも年上のお姉さんが云々というのもあまり聞かなくなった。

 まるで避けられてるような気がして少し不安にもなるクリスとしてはさっさと何時もの一誠に戻れと思うし、正味恥ずかしいが、強行手段に出てみる。

 

 

「なあ、髪に糸屑くっついてるぞ?」

 

「へ? どこ?」

 

 

 根は単純な一誠を誘導するのはたやすく、クリスは言葉巧みに一誠を誘導する。

 そして一誠が誘導に乗せられて軽く屈んだ瞬間……クリスは一誠の首に腕を回すと、そのままガッチリと抱いてみた。

 

 

「…………」

 

「お、おい……何か言えよ?」

 

 

 一誠がなにも言わないので、ちょっと恥ずかしくなってきたクリスはパッと離した。

 すると一誠は茹で蛸のように真っ赤な顔で目をギャグ漫画のようにグルグルと回しながら気絶していた。

 

 

「ちょ、おい!?」

 

「め、めろん……が、す、すいか……がぁ……あへへへ……!」

 

 

 意外と耐性に乏しかったらしく、暫く一誠はクリスにもたれ掛かりながら気絶していたのだという。

 そして意識が戻ってからは余計テンパってよそよそしくなったらしい。

 

 

「お、俺は最低でも5歳は年上のお姉さんが好き……ブツブツ」

 

 

 

冗談です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女は後悔の人生を歩み続けるという罰を受け続けた。

 少女は全てを思い出すも、全てが遅すぎた。

 されど少女は自分と同じ罰を『諦める』という形で生きている仲間とは違い、どこまでも『裏切ってしまった彼』との繋がりを求め続けた。

 

 全てが戻った時には求めた青年は自分達との繋がりを断ち切り、新たな繋がりの中を生きている。

 そこに自分は一切存在しない。

 

 それは痛みのない苦痛という名の地獄。

 自業自得であることをどれ程に自覚していようとも、少女はそれでもかつての頃の繋がりを求め続けた。

 

 その想いが――いや、一種の執念が呼び起こしたのだろうか。

 少女はやがて『奇跡』を体験することになる。

 

 見知らぬ平行世界にて……。

 

 

 

「イッセー……先輩……?」

 

「…………」

 

「? 誰だ? 一誠の知り合いか?」

 

「すごく可愛い女の子だね」

 

 

 それは互いに予期せぬ再会。

 少女にとっては求めてやまなかった再会。

 されど少年にとっては過去の忌まわしき記憶との再会。

 

 

「あ、アナタは誰ですか?」

 

「アタシは……と、友達だよ一誠の」

 

「友……達……?」

 

「……………………」

 

 

 やっと見つけた、切ってしまったかつての繋がり。

 しかし少女の金色の瞳には、どこまでも見下しきった冷めた目を自分に向ける求め続けた少年と、そんな少年と『仲良さそうに』、『そして少年自身に受け入れられているように見える』少女達。

 特に自分と似た髪の色をした少女は……。

 

 

「せ、先輩……。私の姿なんて見たくも無かったでしょうし、殺したいとすら思っているのかもしれません。

私は先輩に殺されても仕方がない事をしたと思っています……でも、でも……! それでも私は――」

 

「わかったからもう何も言うなよ」

 

「せ、先輩……?」

 

「辛かったんだろ? 正気ってのに戻ってからは十分地獄を見てきたんだろ? だからもう俺に謝る必要はないぜ」

 

「せん……ぱい……」

 

 

 見知らぬ場所で再会したかつての仲間の少年は、少女にそう告げる。

 いっそ優しく、これまでの労を労うように……。

 

 

「俺はキミも、元・お仲間連中やら元・主に対して何も思ってない。

いや、ここに来てもう何も思うことがなくなったって言うべきかな。

君達だってあれから大分辛かったんだろう?」

 

「は、はい……あれから私達は戦犯として晒し者にされ続けていました」

 

「……。ならもう良いだろ。

お互いに自分の生き方を――」

 

「私には出来ません! 私は……私はイッセー先輩が――」

 

「よせよ。

俺は君達に対する憎悪だ嫌悪は無いが、興味も関心も無いんだ。

そんな事を今更思われた所で――普通に困る」

 

「……………。その人が関係しているのですか?」

 

「違うね。俺がそう思っただけだ。

キミが何でこの世界に居るのかは知らないし興味も無い――――いや、キミ達の存在自体に興味がない」

 

「」

 

 

 もはや戻れぬという現実を叩きつけられる。

 

 

「………」

 

「よかったのか? もしかして今のって一誠の昔の――」

 

「同僚だったが、彼女に対してはその時からそれ以上も以下も元から無かったよ」

 

「……。リアス・グレモリーか?」

 

「あー……まあ……。それも昔の話だけど」

 

 

冗談です2

 

 

 

 

 

 

「ほ、本当にイッセーだったの?」

 

「………はい」

 

「そ、それで?」

 

「………。私達の事を許していました。

けど……もう先輩の心に私達のことは欠片も存在しません」

 

「そ、そんな。

このパラレルワールドに迷い込んだ時に、白龍皇と黄昏の聖槍使いの男と歌っているのをテレビで見た時は奇跡だと思ったのに……」

 

「知らない女性と楽しそうに歩いていました……」

 

「女……って」

 

 




補足

こんな感じでアレコレ迷走した果てにどうなるかは不明。


ただ、自覚して認めた後に中学生みたいな思春期が到来するかもしれないけど。


その2
地道に活動した結果、一部にカルト的な人気が出たもよう。

ちなみに、狙っていた人気層は外れ、一誠は小学生女子とかに爆発的な人気が出た模様。

 軽いサイン会が始まっても群がるのが小学生女子ばっかで、主婦層はヴァーリとか司令さん辺りがかっさらってる。

ちなみに神牙は謎のパワーのせいでとある方にしか人気がないもよう。



最後はまあ……特に意味無い

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