これも基本緩いです。
ドラゴン波でなんでも解決脳筋パターンなんで。
復讐が生きる動機だった少年は、同じ傷を負った悪魔の少女と出会い、共に生きる事で彼女を守る事が生きる動機と変わっていった。
それはやがて、歪みきった世界とそうなった元凶を倒し、本当の意味での『自由』を取り戻す戦いとなり、自由を取り戻す為に集った仲間達と共に果てしなき進化を続けた。
恐らく、少年にとって辛くとも幸せでもあった時期であろう。
惚れた悪魔の少女と同じ時間を生きる為に人を超え、自由を勝ち取ることの出来た戦いの果ての未来を夢見続ける事ができたあの頃が……。
けれど、その未来が訪れる事は永遠になかった。
全てを取り戻す戦いに勝利こそすれど、少年にとった最愛の
少年の腕の中で、笑いながら……。
そして生き残ってしまった少年は生きる実感の無い、ただ死んでいないだけの無意味な生を、自ら幕を引くことも許されずに送る事になる。
復讐を果たせたことに後悔は微塵も無い。されど、守ると誓ったリアスを守る事ができなかった自分が許せなかった。
本当の意味で孤独となり、自分を終わらせる事も叶わずに生きた屍のように生き続ける少年がどうなったのかは誰もわからない。
過去に思いを馳せ続けながら生き続け、やがて青年期へと至った彼がどこに行ったのかを知るものはもはや誰もいない。
ましてや、異界の地で死ぬことを望みながら生き続けているなんて……。
常に過去に生きる青年はいつでも青年のままであった。
それはつまり、青年と自分達の生きる時間の差があまりにも大きく離れすぎている事であり、何れは再び青年が独りになってしまう事を意味していた。
地獄のような世界に現れた
だからこそ、かつて戦地でボロボロの青年に助けられた姉妹は、青年が今尚君臨し続けるその領域に近づく覚悟をする。
それは後に出会うことになる仲間である少女達も同じで……。
「ヴァーリ。
赤龍帝であるアナタと対となる白龍皇が本当にこの世界のどこかで生存しているのですか?」
「ああ、ヴァーリの特徴に合致しまくってる男と何年か一緒に居たらしい女の子達から話を聞いた。
やることがあると言って今は雲隠れしちまったらしいが、恐らくはヴァーリで間違いない」
「なるほど、ですがその白龍皇がガングニールの適合者となると少し厄介な予感がしますね……」
「アイツにとっちゃかなり厄介だろうぜ……色々とやらかしてるみてーだし」
その青年の過去のひとつは、ある意味で少女達にとっての厄介な存在なのだ。
「アイツが本当にアイツで、この世界で生きていたというのなら、俺はアイツに会わなきゃならない」
「それはアナタ自身の過去を共有できる相手だからでしょうか?」
「そんなんじゃねぇ。アイツが親友だからだ」
「………」
「好きな女も守れず、不様に生きてきた俺だけど、アイツとは同じ釜の飯を食った仲なんでね……」
決して前を向こうとしないから。
出会い、その異質さと内に後悔と贖罪の念を抱き続けながら、借りを返すために自分に手を貸してくれる青年を見てきた老女もまた同じで……。
「………………てかアンタ、本当に若返ってねーか?」
「あ、わかりました? アナタの細胞に適応できてからというものの、若い頃の肌の艶は戻るし、胸も張りが戻ってきてましてねぇ……。
この調子ならアナタの今の見た目程の若さを取り戻せそうですよ」
彼の進化の一部を取り込み、適応した事で段々老女から妙齢女性に戻り始めているのもひとつの運命なのかもしれない。
「私がこうなってるのを見てるせいか、最近はあの子達がウィル博士に土下座しながら自分達にもアナタな細胞を取り込ませて欲しいと言っていましてねぇ……」
「本人が困った面で俺に相談しに来た事もあるけど……」
病の進行により、一時期は立つことすら儘ならなくなっていた老女ことナスターシャは、赤き龍を宿す最後の赤龍帝によりその運命が変わった。
そしてこの組織の在り方も……。
死にたくても死ねない。
亡霊のように死に場所を求める
「あの、すまないが一誠君から釘を刺されていてね、彼の自己進化の細胞の研究はするが、誰かを使って試そうとは思わないし、しないと約束しているのさ。
だからキミ達の要望には応えられないというか……」
「……けちんぼ」
「マムだけズルいデス」
「ナスターシャ博士の場合は緊急事態だったし、殆ど賭けのようなものだったのだ。
それが上手いこと彼の自己進化の特性に適応できただけで、常人が何も考えずに彼の力を取り込めば、瞬く間に拒絶反応が起こって死んでしまう」
「でもある程度その拒絶反応を抑える調整はできているのでしょう?」
「本当にある程度だ。
これでも毒性が強すぎる」
本日も元気に偏食家の科学者のもとへと突撃し、マムことナスターシャと同じ事をしろと言ってくる適合者達の対処に忙しい。
ナスターシャが一誠の力に適応し、ここ最近は見た目が普通に40代くらいまで若返っているのを少女達はただただ羨み、こうして自分達にもやれやと時には土下座までかますのだが、一誠との約束もある手前、最近ただただ普通にいい人化しているウィルは丁重にお断りしようとする。
「もう一度言うが、一誠君の細胞を取り込むというのは、生まれたての赤子にウォッカを一気飲みさせるくらいに危険な事だ。
確かに科学者としてはキミ達がどうなるかという事に興味はあるが、約束をしている以上、キミ達の要望に応える気はない」
一誠という、未知と可能性の塊のような存在にすっかり熱が入ってしまっているウィルの割りと頑なな態度に少女達はぐぬぬと悔しそうに唸りながらも、旗色が悪いと一旦は引き下がる。
「あの人、普通に一誠から信頼されてる……」
「気付いたら普通に仲良くなってましたからね」
「やっぱりそう簡単にはいかないか……」
「このままではマムと私達の見た目の年齢が逆転してしまうわ……!」
腹いせに研究室に備蓄してあったコーラだポテチだといった菓子類を失敬してやった少女達。
この組織の目的の為に、この前のコラボライブで派手に宣戦布告して世界の目を此方に向けてやろうとしたのに、一誠が『自分を殺せなかったら、逆にこの世界を破壊する』と割り込んでしまったせいで、一定の者達にその存在を知られたばかりか、完全に危険生物扱いされてしまった。
本人はそんな状況を前に『頼むから俺をぶち殺してくれますように』と相変わらずの死にたがりっぷりだし、聞けば最近は一誠と同じ『過去』を生きた者がこの世界のどこかで生存している疑惑まで浮上している。
どこまでも自分達を置いて、自分達の手の届かない所へと行こうとする事に、焦りすら感じてしまうからこそ、何とかして一誠の立つ領域に近づこうと画策する訳だが、今のところ上手くいかない。
「しかも最近、そのヴァーリって人と知り合いだったらしい女の人二人と連絡先を交換したみたいよ……」
「もしかして立花響、だっけ?」
「ガングニールの適合者で仮にも敵同士なのに、一誠は呑気過ぎマス」
「それだけじゃなくて、電話をしている時の一誠はとても楽しそうだったわ」
上手くいかなすぎて、最近妙に嫉妬深くなっている。
「………………………ダメだ、全くヴァーリの気配が感じられない。ドライグはどうだ?」
『俺も白いのの気配を察知できん。
あの小娘達の言っていた特徴からして、ヴァーリと白いので間違いないんだが……」
「なにか変な事に巻き込まれてしまってるのか……うーん?」
『………』
ナスターシャとの話が終わり、組織のレクリエーション室で相棒の龍と共に瞑想中である一誠を発見する少女達は、ブツブツと言っている彼に近寄る。
「一誠」
「つーかアイツ、あの子達にめっさ騙されてる気が――――――んぁ? どうした?」
本当にどこからどう見ても自分達とそう変わらない程に若々しい一誠が少年のようにキョトンとした表情で少女達に気がつく。
「トランプでもしましょうよ?」
「トランプ? おー良いぞ。なにする? 7並べか? 神経衰弱か?」
いっそ冷酷で残虐な男だったらこんなに思う事なんてなかったのに……。
『ガキにやらせる事にしちゃあ、ちょっとふざけすぎだろ? アレだわ、今日の俺の機嫌がマッハで悪いから今から暴れるけど、ここら辺が消しとんでもしょうがねーよなぁー!?』
自分達の為に大人達に啖呵を切り、それこそ大国すれど敵に回す真似すら平気でしてしまうからこそ……。
「もし一誠が一位になったら、良いものを見せるデス!」
「良いもの? なんだそれ?」
「一誠が勝った時のお楽しみ……」
「そうそう、お楽しみ。ね、お姉ちゃん?」
「あ、う、うん……」
「??? よくわかんねないけど、やるからには負けねーぜ!」
少女達は過去ばかりを見続ける青年を振り向かせんと頑張るのだ。
「あー負けちゃったデス(棒)」
「一誠が一位(棒)」
「今日の一誠兄さんは強いやー(棒)」
「あ、あー仕方ないからいいものを見せないとー(棒)」
「………………。なぁ、お前ら明らかにわざと――」
「じゃあここで待ってて! 準備があるから!」
終わり
おまけ……良いもの。
どう考えてもわざと一誠に一位を取らせた出来レース丸だしトランプバトル。
解せない気分で一位になった一誠は、少女達に言われた通りその場に待機し、部屋を出ていった少女達を待っていた訳だが……。
「お待たせデス!」
「これが見せたい良いもの」
「どう?」
「………………………」
戻ってきた少女達……まあ、一人はもう少女ではなく女性なのだが、その格好に一誠はピタッと固まった。
『リアスが通ってた学校の制服……か?』
そう、ドライグが呟いた通り、少女三人……暁切歌、月読調、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ――
「ほら、恥ずかしがらないでマリアお姉ちゃん?」
「だ、だって……」
それでいて一誠が今尚忘れること無い悪魔の少女ことリアスに声が酷似している少女――ではなくて女性であるマリア・カデンツァヴナ・イヴがリアスがかつて袖を通していた駒王学園の女子制服とほぼ同じデザインの衣装を着て一誠の前に立つのだ。
これには色々な意味で一誠も固まるし、そういえば元の世界から持っていた携帯端末に残っていた、制服を着たリアスと撮った写真のデータを以前この子達に見せたっけ……と、思い返す。
「感想なんかあったら是非聞きたいデス」
「正直に言ってほしい」
「え、あぁ……」
しかし何故? と思いながら、感想を求める少女三人と段々小さくなってる女性を改めて見て……ポロッと溢す。
「切歌と調とセレナはまあ普通に似合ってるとは思うけど……」
年齢から考えてもこの三人はまあ普通に年相応……でもないけど似合うとは思う。
しかし……と一誠の視線はもじもじもぞもぞしているマリアに向けられ――
「マリアはなんか……いや、うん」
凄く複雑な気分になる。
何故か知らないけどそんな気分にさせられる。
「な、なによ?」
途中で言葉を濁し始めた一誠に、三人と違って明らかにネガティブな事を思ってると察知したマリアが恥ずかしがりつつも若干ムッとしながら一誠を睨む。
それに対して一誠は……。
「いやその……すっげー怪しいビデオかなんかに出てきそうな女優並の違和感しか―――ふべら!?」
要するにほぼ似合ってませんと言ってきた一誠に、マリアはほぼ反射的にビンタをかましてやった。
「あ、怪しいビデオってなによ!?」
「い、いやだから……災害レベルに似合ってないかなって」
「………………―……………―ぐすっ、うわーーーーん!!!!」
そして成人したマリアは大泣きするはめになる。
「言い方が酷いデス」
「流石に無い」
「お姉ちゃんが一番張り切ってたのに……」
「だ、だって正直に言えって言ったから! どうしろと!?」
びっくりするくらいわんわんと泣きじゃくるマリアを何とかしろ的な目をする三人娘に、一誠は納得できない気分となりつつ、仕方なくマリアに謝る。
「悪かった。俺の言い方が悪かった。
アレだ、リアスちゃんと違って何でも着こなせる訳じゃないってだけで、他の服ならきっと――」
「うぅぅぅ……ま、またその人のことばっかぁ……!」
「わ、わかったわかった! ごめんって! ほ、ホント割りと泣くなお前は……」
マリア・カデンツァヴナ・イヴ。
一誠が愛し続けるリアス・グレモリーのようになろうとする健気さが空回りしまくりな女性の戦いは色々な意味で大変だった。
そして……。
「えへへ~ 昔のヴァーリ君の写真だ~」
「この前の変な男から貰った写真のデータか。
この銀髪の男がヴァーリって奴なのか?」
「カッコいいでしょ? ………でも私と響だけのヴァーリ君だから、変な事思っちゃダメだからね?」
「変わらないなぁ、昔からヴァーリ君は私と未来の知ってるヴァーリ君だよ」
「そうだね響。
今頃どこで何をしているのかしら……。私と響を置いていっちゃうなんて。
でも帰ってきても絶対に怒らずにあげないとね?」
「うん、きっと何か事情があったのだろうし、帰って来てくれさえしたら他の理由なんてどうでも良い。
今度はずっとずっと三人で一緒に居る、だからヴァーリ君がずっと見てくれるようにもっと強くならないと。
えへへ、でももし帰ってきたらまずは昔みたいに三人で一緒に寝たり、お風呂入ったりして……キスもして貰って、それからそれから……!!」
「ああ、楽しみだね響……ふふふ♪」
「ま、またやべー事に……」
こっちはこっちで行方不明の白龍皇によって精神的なパワーを増幅させまくる少女二人が、友人となった少女にドン引きされているのだった。
終わり
補足
マムがリアル17歳化し始めてる模様。
現在30代後半から40代半ばまで見た目が若くなってる模様。
走れるし、飛べるしと嘘みたいに元気になってます。
その2
偏食家博士は意外に律儀になってます。
その3
まあその……マリアさんの駒王学園制服姿に関するイメージは各々で……はい。
その4
天然白龍皇の略歴
最後の戦いの余波で別世界に死にかけた状態で飛ばされる。
離散しとらんビッキー家族に発見され、そのまま保護された。
一般人の家族からの恩を返す為に取り敢えずまだ小さかったビッキーとその幼馴染みちゃんに、天然なせいか、戦い方を教え始める。
結果懐かれた。
その後、普通にマセ始めた二人の少女に騙される形でアレコレしてしまう。
今現在行方不明――戻った場合が怖い。