色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

シリアスが消し飛び気味


リストラされてしまった子

 清掃員で戦闘員的なアルバイトで異世界にて食いつないでいる三馬鹿。

 

 何気に其々この世界での生活を楽しんでいる感は否めないが、勿論彼等は何れこの世界から去るつもりではある。

 

 戻れる手立てが今のところ無いだけで。

 

 

「酷いな……」

 

「ここ最近色々と忙しくて……」

 

「忙しいのはわかるが、いくらなんでもここまで部屋をしっちゃかめっちゃかにはしないだろ……」

 

「つ、次の休暇の時にはちゃんと掃除するつもりだった……」

 

「……………………」

 

「ほ、本当だ! だからそんな目で私を見るな!!」

 

 

 ヴァーリはここ最近、よく話すようになった――イッセーに原始人のようなナンパを(理由ありき)された時につい顔面に一撃見舞った翼という女性とセルフコンビを組んでノイズ殲滅をしているのだが、世間的にも歌手的な意味で有名である翼を知るにつれて、実生活が割りとだらしがないという事を知る。

 例えば、今現在翼が使用している部屋に居るのだが、空き巣にでも侵入されたのかと思うほどに凄まじい散らかり具合だった。

 

 

「洗濯物はちゃんと畳んでしまえ。まったくもう」

 

「はい………」

 

 

 結果、ヴァーリは仕方なく翼と一緒にお部屋掃除を開始する。

 

 

「それで? 立花とはそれなりに上手くやれそうなのか?」

 

「ま、まあ……」

 

「そうか。

アンタにも色々あるのだろうけど、あまり独りで抱え込もうとするな」

 

「う、うん………あ、そ、それ私の下着――」

 

「ん? 見ればわかるぞ」

 

「……………」

 

 

 ヴァーリの食生活のだらしなさと翼の部屋管理能力のだらしなさ。

 微妙に互いが互いのだりなさをフォローし合う奇妙な関係性はこうやって積み重なっていくのだ。

 

 

 のわぁっ!? す、すみません! よそ見をしていたんだ! 決してそんなつもりじゃ――

 

 

 

「神牙の奴、またやらかしてるのか? ここに世話になってから余計ひどくなっているぞ」

 

「………。本当にわざとじゃないのか? 昨日だって女性の職員さんを押し倒していたけど……」

 

「それが本当にわざとじゃないんだよアイツの場合。

イッセーとは違ってな」

 

 

 近くで神牙がまたしてもとある女性相手に大事故をやらかして大騒ぎしている声をBGMに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一度見ると言い出してから、これまでただの一度も放棄したことのないイッセーの律儀さによって、日に日に戦闘力が上がっていくビッキーこと立花響。

 

 律儀に放課後の時間になると学院の門前で待っているせいで、ここ最近は学院で噂されてしまうこともあったし、この前なんて女性教師にナンパしかけてしまったせいで危うく出禁になりかけもしたが、響への特訓と時は普通に真面目に教えてくれるし、事実その成果は出ていた。

 

 名物謎男子の出現のせいでクラスメート達から響の彼氏かなにかだと勘違いされてしまったりもするけど、響にとっては間違いなくイッセーは師と呼べる存在であった。

 

 が、そんな響のここ最近の躍進とイッセーとの噂が学院中に勝手に解釈されて広まっていく事に対して微妙な気分になる者が居なかった訳ではない。

 その人物とは、響の幼馴染みである小日向未来。

 

 三馬鹿の事は近所のラーメン屋を響と通り掛かった際に、店主に向かって土下座かましている姿を見てしまい、手持ちがゼロ円で警察に突き出されかけていたところを見かねて響と一緒に立て替えてあげた頃からの顔見知りだった。

 

 それが知らぬ間に響を外に連れ出して男でも音をあげるだろうキツイトレーニングをさせていると知ってからの当初は響についた悪い虫と思ってしまった。

 

 が、本来ならばこの時点では知り得ない響の隠し事を――

 

 

『ひ、響がノイズと戦っている!?』

 

『おう、シンフォギアって奴に選ばれちゃってさ』

 

『ちょっとイッセー君!? な、なんで言っちゃうの!?』

 

『え? この子にバレて困ることでもあるか?』

 

『それはっ! …………………ハッ!? た、確かに無いかも!』

 

『だろ? それに親友なんだし、俺がキミを連れ出してる事に対して心配してんだから、事情を話すべきだべ。

他の誰かにベラベラと喋るってタイプでもないし』

 

 

 イッセーが平然とバラしたせいで既に知ってしまった。

 勿論、響がそんな危険な事をしているのだから余計心配するのだが、イッセーが確実に響の安全を保証する事を誓い――『異次元めいた力を見せられる形で』 信じる他もなかった。

 というか、未来自身も大人しそうな少女ながら知った以上ただ黙ってられるというタイプでもなかったので、役に立つか立たないかは別にしてイッセー式トレーニングに参加を表明した。

 

 結果……。

 

 

「小日向さん……100メートル走タイム、ご、5.5秒……」

 

「あ、あれ? …………あ!? く、靴の重り外してたままなの忘れてた!?」

 

『………』

 

 

 どこぞのデビルーク王女みたいなフィジカルを体得するに至っていた。

 仕方ない、なんもかんもイッセーがノリノリだったのと、響LOVEパワーが強すぎたのがいけないのだ。

 

 流石にノイズの特性上、素手で叩きのめしたりはできないが……。

 そんな理由もあり、イッセーが年上女性にしか興味もなく、同年代か年下には単なる面倒見の良いそこら辺の若者でしかないと知ってからの未来は、割りとイッセーを信用していた。

 

 結果、ここ最近響と未来とその名物謎スケベ男子との間での三角関係を噂され始めてしまっている現在、未来は珍しく響には内緒で公園で小学生達に懐かれていたイッセーに接触する。

 

 

「んぁ? ビッキーに内緒にしたいことがある?」

 

「内緒というよりは、先にイッセーさんに確認しておいた方が良いかなって思って……」

 

「???」

 

 

 名残惜しそうな顔をする小学生達に、『すまんすまん』と謝りながら未来と共に公園を出るイッセーは、なんでも響が補習授業中であるところを見計らって来たらしい。

 

 大人しそうな顔なのにハードなトレーニングについていき、響LOVEパワーだけでフィジカルが人間超越に片足を突っ込み始めている未来が響には話を通さないといいのは、なにかあるに違いないと思ったイッセーは、二人にトレーニングを科す例の廃工場へと連れていかれ、今は使われていない簡易事務所だった小部屋に案内される。

 

 

「この人です」

 

「…………え?」

 

 

 案内されたイッセーが目にしたのは、ソファに横たわる一人の少女。

 白髪で、一応敵同士ではある少女――

 

 

「雪音……?」

 

 

 雪音クリスだった。

 未来が寮の自室から持ってきたのであろうタオルケットが掛けられ、意識の無いクリスを見たイッセーは、どういう事だと未来に訪ねる。

 

 するとどうやらイッセーと響がちょうど出現したノイズを殴って蹴って放り投げてからのドラゴン波で消し飛ばしている間に偶々外を歩いていた未来が倒れているクリスを発見し、ここに連れてきたらしい。

 

 

「何度か響と戦っていたのを見た事があったから、敵なのかなって……。

でもこの前は似た人がイッセーさんと歩いてたし、もしかしたら敵じゃないのかもって……」

 

「ああ……あったなそんなこと」

 

 

 そういや最近飯を集りに来られたからその時未来に見られてたのかと、思い返すイッセーは、どこか苦しそうな表情で眠るクリスを見る。

 

 

「どうしたら良いかわからなくて、だからまずはイッセーさんにと思って……」

 

「おう……わざわざサンキューな? ビッキーには……あー……言わないでほしいかな?」

 

「それはこの人が敵だからですか?」

 

「敵っつーか、喧嘩相手っつーか……。

まあ聞けば色々とややこしい立場っぽいんだよねこの子って」

 

 

 微妙に返答に困りながらも、敵とは少し違う的なニュアンスで返すイッセーは苦しそうに呻いているクリスに近づき、取り敢えず額に触れてみる。

 

 

「うーん、熱でぶっ倒れたって訳じゃないか……」

 

「…………」

 

「取り敢えず何か食い物でも……」

 

 

 流石に倒れていて意識も無い相手にふざけるつもりは無いイッセーは、自分と同等に食いしん坊万歳なクリスの為に食料調達をしようと考えていると……。

 

 

「ん……」

 

 

 クリスの意識が戻った。

 

 

「こ、ここはどこ……だ?」

 

 

 ボーッとする思考がまだはっきりしないクリスの声。

 

 

「よかった、目を覚ましたのね……?」

 

「だ、誰だ―――って!?」

 

 

 ふと見知らぬ少女が自分を覗き込むように見ていた事に気づいたクリスは、その時点ではまだボーッとしていたのだが、すぐ横で見慣れた男が軽い調子で『よっ』と言っていることに気づき、一気に覚醒する。

 

 

「な、なんでお前が!?」

 

「落ち着けよ。

キミがぶっ倒れてるところをこの子が見つけてここまで運んでくれたんだぜ?」

 

「運んだって………あーっ!? あんたよく見たら立花響とよくコイツにトレーニングして貰ってる奴!」

 

「い、意外と元気そうね……」

 

 

 ビシッ! と未来に指差すクリスの変なテンションに、割りと元気そうだと思う未来。

 

 

「く、くそ! あ、アタシをこんな所に連れ込んでなにする気だよ!?」

 

「なんもしねーよ、てか小日向ちゃんにちゃんとお礼言えよ。この子がキミをここまで運んでくれたんだぞ」

 

「え……あ、あ、ありがとうございます……」

 

「あ、いえいえ」

 

 

 辿々しく割りと素直にクリスがお礼を言うものだから、微妙に緩めな空気が漂う。

 しかしそれも一瞬の事であり、瞬時にイッセーを睨む。

 

 

「あ、アタシに変な事してねーだろうな……?」

 

「俺を何だと思ってんだよ……」

 

「ヘンタイ野郎」

 

「…………ごめんなさいイッセーさん、ちょっと庇えないかも」

 

「そりゃねーぜ……」

 

 

 色丸かぶりおっぱいちゃんとか、メロンサイズちゃんとか、おっぱいだけは最強等々、普通にセクハラな言動ばかりされてきたクリスからすれば警戒は当然であり、未来もそこら辺のだらしなさを知っているのでイッセーの味方は誰も居なかった。

 

 

「…………。寝てる間にそのメロンをスゲー揉んでやればよかったぜ」

 

「なっ!? や、やっぱお前アタシにその気があったのか!?」

 

「はいはいはい、何時か隙があったらやるかもねー……」

 

「ふ、ふざけんなよ! 絶対にアンタなんかに――」

 

「そんな事よりだ――――――――真面目な話、何があったんだよ?」

 

「…………………ぁ」

 

「……? おい雪音?」

 

「…………うぇっ!? な、な、ななな、なんでもねーよバーカバーカ!!」

 

「えぇ? なんなのこの子?」

 

「イッセーさんの普段の行いのせいだと思うよ?」

 

 

 

 だが意識を失う程のなにかがあったという事を問う時のイッセーの表情が不意打ちのように真面目だったので、テンパったクリスの罵倒にイッセーは訳がわからんと、未来からジトーッとした視線を向けられつつ首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 本当にどこまでもお気楽で、どこまでもおちゃらけている。

 死ぬかもしれない状況を前にしても、何時もヘラヘラとしていて……そして化け物みたいに強い。

 

 本当に気にくわない。

 どうせコイツも何の苦労なんてしないでこれまで生きてきたんだろ……そんな風に思っていた。

 

 

『親? あー……さぁ? 生きてるんじゃねーの?』

 

 

 けれどコイツには何かがある。

 ふざけた言動や行動の中に隠している――たまに見せるどこまでも冷たい顔をする意味が。

 それが何なのかはアタシにはわからない。

 

 腹が立つことばかり言われるけど、なのにどうしてこんなに気になるのかもわからない……。

 

 

「用済みって言われて解雇されたぁ?」

 

「あ、ああ……言われると同時に殺されそうになったから逃げてきて……」

 

「マジかよ、超ブラック組織じゃんか」

 

 

 本当にムカつくし、嫌いではある。

 だけどどうしてアタシはコイツに自分の事を話しているのだろうか……。

 未来って奴が食料を持ってくると出ていった後、コイツと二人になり、こうなって理由を話している。

 

 

「アンタ達が現れてからはフィーネはマシというか、緩くなったんだよ。

けど突然前の様なフィーネに戻って……」

 

「…………………」

 

 

 聞いている時のコイツは言い方こそ当初は軽かったけど、途中から表情が険しくなっていく。

 

 

「そのフィーネって人の傍に最近見知らぬ誰かが居たりしなかったか?」

 

「わかんないけど、どうしてだ?」

 

「………………………。ちょっとな」

 

 

 そう嘘みたいに真面目な顔をする。

 な、なんだよコイツ……こんな顔できるのかよ。

 

 

「ヴァーリと神牙にだけに後で話とくべきか……。

ドライグはどう思う?」

 

『あまり考えたくは無いが、もしそうなら『厄介』なのは間違いない』

 

 

 何気に神器とかいう赤い鎧みたいな腕から声が聞こえてるけど、アタシはずーっと真面目な顔のアイツを見ていた。

 

 

「これからどうするんだ?」

 

「…………………………」

 

「? おい雪音?」

 

「……………………………………」

 

 

 うー……なんなんだよぉ。とことん訳がわかんねーよコイツ……。

 

 

「本当に大丈夫か? 無理しないで少し休んだ方が……」

 

「…………………」

 

「ど、どうした雪音!?」

 

 

 本当にわからなすぎて頭の中がめちゃくちゃになって……。

 ヘラヘラしながらいっつもアタシの胸ばっかり見てたのに、この時はずっとアタシの目を見てて……。

 

 本当……嫌いだ。

 

 

「アンタとアタシは敵同士だろ? なんでそこまで気にするんだよ?」

 

「へ? …………………………………あ、言われてみりゃあ確かにそうだわ。

でもよー、敵同士つってもキミもキミで平気で俺に飯を集りに来るじゃん」

 

「そ、それは……」

 

「それに組織から逃げたんだろ? ならもう俺やビッキーと喧嘩する理由もねーじゃん」

 

「そんな単純な話かよ……」

 

「それに」

 

「それに……なんだよ?」

 

「………。うん、今までこんな事思った事無いから自分でもよくわからないんだけどさ、どうもキミを敵って思いたくないというか……。

俺も最近なんか変なんだよなー」

 

「……」

 

 

終わり

 

 

 

 

 イレギュラーである以上は、他のイレギュラーが存在しないとも限らない。

 そのイレギュラーが、三馬鹿をもってしても簡単には対処できないイレギュラーである可能性も。

 

 しかし、だからこそである。

 

 

「ひょー!? フィーネさんクソ美人じゃないか! フィーネさーん! 俺と結婚を前提に清い交際を―――ぐげぇ!? や、やめろ雪音にビッキー……! お、俺の春の訪れかもしれない――うげぇぇぇっ!?」

 

「「………」」

 

 

 シリアスロスかもしれないし。

 

 

「ヴァーリ、イッセー……俺が時間を稼ぐ! その間にアレをしろ!」

 

「再びか……ふっ、やるぞイッセー!」

 

「ああ、終わらせてやる……!」

 

 

 

 

 

 

 

「「フュ~~~~ジョンッ!!! ハッ!!!」」

 

 

 

 三馬鹿達にとっての最後の清算かもしれない。

 

 

 

『黄昏の聖槍保持者・曹操!!

そして真名を魔戒騎士、道外神牙! 黄金騎士・牙狼の称号を受け継ぐ者!

俺は一人では無い! 友と……かつて牙狼の称号を得た全ての英霊と、俺は共に戦い続けるのだ!!』

 

『俺は白龍皇でも赤龍帝でもない……! 俺は貴様を終わらせる者だ!!』

 

 

……となるかは不明だが。




補足

フワッとした感じで解雇通知された……と思いきや何かの予感を感じとる。

その瞬間、キリッとするから雪音さんはびっくりした模様。


その2
ビッキーLOVE精神でフィジカルが某デビルーク王女様みたいになった未来様。

一途だからね!


その3
フィーネさんに当然突撃しようとするでしょうが、フィーネ自身はねぇ……?

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