そんな訳でお友達特別割引料金で雇われ事になった一誠。
この事を神牙とヴァーリに話してみた所、二人は呆れこそすれど反対は無かったので、取り敢えず安心して仕事に打ち込める。
「という訳で一誠先輩を雇うことに成功しました」
「ちーっす」
『……………』
要するにリアスの婚約話を消すためのゲームに勝つ協力をすれば良い――とざっくばらんな説明を白音から受けつつ、何とも言えない顔をしていたリアス達に適当な挨拶をしておく一誠。
「ま、まあ何にしても良かったわ。
これで何とかライザーとの婚約を破棄させられるし……」
白音に連れてこられて早速出された食い物を無遠慮に食べまくっている事に思うものはあれど、意味不明レベルの力を持っている者の一人を雇えた時点でリアスの不安感は消えていく。
「じゃあ早速当日のゲームの動き方を――」
「あ、良いっす良いっす。
さっき白音からそのレーティングなんたらってのについての内容は大体聞いたんで。
要は相手のキングをぶちのめせば良いんでしょう?」
「そうだけど、ただ戦うだけじゃなくて魅せるゲーム内容も――」
「眷属じゃない俺を雇う時点で魅せも何も無いでしょうよ?」
「う……」
ただ、普段と違って割りとグサリと刺さるような事を言ってくる一誠にリアス達はこれ以上言えることも無く、当日の集合場所だけの確認をしてから一誠はさっさと帰ってしまい、そのまま当日まで姿を現す事は無かった。
そしてレーティングゲーム当日。
集合場所であるオカルト研究部の部室には戦闘服――という名の学園制服を着ているリアス達や、シスターのようなローブを着ている最近加入した元見習いシスターであるアーシアが既に居る中、兵士として一時的に雇われた一誠もやって来た。
「すんませんすんません、準備に手間取ってしまいまして」
目元まで隠れたヘルメットに全身水色の若干身体のラインが浮き出るピッチピチタイツみたいなステレオヒーローのコスプレ衣装姿で………。
「な、なにその格好……?」
ただの不審者にしか見えない格好の一誠に、リアス達はドン引きしながら趣旨を求める。
「はっはっはっー、私は兵藤一誠じゃないぞー、」
「えぇ?」
いや、どう聞いても一誠の声なんだけど……と全員が思う中、白音だけは彼の格好の意味を知っているのか、少し呆れ気味の声だった。
「なんでDXフ◯イターのコスプレなんですか……? そこはせめて鷹◯爪団の総統の方がまだマシでしょう……?」
「で、DXファ◯ター? 鷹の◯団……?」
さっきから自分の戦車の言ってる事がわからないリアス達はただただ棒読み加減に笑ってる一誠に対して共々戸惑う。
「はっはっはっー、◯の爪団だと最低5人は必要だからなー その点DX◯ァイターなら一人でもオーケーだ」
「まあ、セアカゴケグモより嫌われてる彼なら、こういう事をしても問題にはならないでしょうけど……」
「さっきから何を言ってるの小猫は?」
「さ、さあ……」
「へ、変な格好ですね……」
◯の爪だの◯Xファイターだのと、全然聞いたこともないネーミングを交えた会話に全くついていけないりリアス達。
こうして結局一誠のコスプレの元ネタがわからないまま時間は過ぎ、いよいよゲーム開始10分前となると、グレモリー家で使用人をしていてリアスの兄の嫁であるグレイフィアなる銀髪メイドが現れるのだが……。
「時間となりましたので皆様を会場へ―――――」
「あ、うん、その反応になるのもわかるわよグレイフィア? けどその、彼は今回の代理の兵士で……」
「はっはっはっー、地球の平和は私が守るー DXファイ◯ーですよろしくー!」
「………………………………………………………………………あ、はい。では皆様を会場へ……」
水色のピチピチタイツ着たヘルメット男を見ればいかにグレイフィアでも固まる訳で……。
こうして不審者の極みたいな姿をした一誠も共にレーティングゲームの会場――まあそのまんま学園をコピーしただけの会場へと転移するのだった。
そしてどうやら今回のゲームは魔王も見ているし、そこそこ地位の高い悪魔達もモニターで見ているようで、DXフ◯イターの格好した男がモニターに出てきた時は、リアス・グレモリーが正気を失ったのではと心配されたのは云うまでもなかった。
だが、リアス達を含めた多くの悪魔達は知ることになるのだ……。
この変態みたいな格好した男の滅茶苦茶さに……。
具体的にはゲーム開始3分後にそれは起こった。
「はっはっはっはー火の鳥団! 今日がお前達の最後の日だー!」
「なっ!? だ、誰だお前等!? というかなんだその格好!?」
「そうだーDXファイタ○だー!」
「DXキャットも居ます」
「だから誰だよ!? というかどうやってここに来た!?」
「普通に入り口が空いてたから入ってきたぞー」
「この方が道案内してくれましたー」
「はぁ!? お、おいレイヴェル! 見張りはどうした!?」
「あ、ごめんなさい。DXファイターと名乗るヒーローというのでうっかり中に通してしまいましたわ」
「な、なんだと!?」
さっさと敵陣本陣に白音と共に行ってしまい、ちょっとアホの子疑惑が出てきた敵方の金髪少女に本陣まで案内して貰い、完全に不意を突かれて焦りまくってる敵陣大将のライザーフェニックスに向かって……。
「「というわけで――
―――――――ダブル・デラックスボンバー!!!」」
「なんじゃそらーー!!!!!?」
猫耳つけたデラックスファイター風な格好になってくれた白音と一緒になって左手からビームをぶちかまし、敵本陣ごとライザーフェニックスを粉砕するのだった。
そして開始約5分で決着がついてしまい、見ていた悪魔達もどんな顔をしていいのかわからなくなったとかなんとか。
こうしてワケの解らない速度でゲームが終わってしまい、一応ライザーフェニックスとの婚約が破棄な形になったリアスだが、まあ評判自体は下落したのは云うまでもない。
何せライザー達を倒したのは眷属ではない代理だし、その代理も格好がふざけている。
挙げ句の果てには中身があの悪名高い今世の神滅具三人組の一人だったとなれば、ズルをしたと見なされても仕方ないのだ。
とはいえ、そんな事は正直一誠的にはどうでも良いし、本人は仕事をしたまでである。
白音から金額を受け取り、契約を完了させた一誠はそれから暫くリアス達との連絡は行う事無く日々を過ごしていた。
「東京の麹町?」
そんなある日の休日に、隣町に家がある三馬鹿達――というよりは一誠を偶々なタイミングで出会した白音と一緒に訪ねてみると、どうやら三馬鹿達は出掛けようとしていたらしく、場所を聞いてみると都内に行くとの事だった。
「麹町というと……あそこですか?」
「そう。
そろそろ金が無くなって埃とかおがくずで飢えを凌いでるだろうと思って、すき焼きでもご馳走してあげようかなって……」
「なるほど……相変わらず貧乏なのねあの人達」
その場所に何があるのか覚えがある――というか、何度か同行しているソーナと白音はすぐに察したらしく、そのまますき焼きの材料を持った三馬鹿達に同行することになり、麹町のとあるボロアパートへと行くことになるのだった。
東京麹町のとあるアパート。
単なるアパートにしか見えないこの建物だが、実のところ世界征服を企む悪のベンチャー企業の総統とその部下達が住んでいる。
「総統!」
「なんじゃね吉田君?」
真っ赤なコスチュームを常に身にまとうこの軍団の名前は鷹の爪団。
その気になれば確かに世界征服を可能にするのに、総統や愉快な仲間達が三馬鹿達に匹敵するレベルで愉快な為、貧乏暮らしの日々である。
そんな鷹の爪団のアジトは本日そこそこの賑わいを魅せていた。
「レオナルド博士と同じく外部契約者の一誠とヴァーリと神牙がすき焼きの食材を調達して来てくれました!」
「な、ななな、なんじゃとー!?!?」
「うぃーっす総統、吉田さん」
「また埃とかおがくずで凌いでるのかと思って差し入れに来たぞ」
「ついでにラーメンの出前もできるだけの金もあるぞ」
「おおっ!? い、一誠君、ヴァーリ君、神牙君……!
こ、これで10日連続おがくず晩御飯から解放されるぅ……!」
「可愛い女の子も連れてきてますよ! 総統!」
「お久しぶりです」
「本当に相変わらずなんですね……」
「おおっ! 白音君にソーナ君まで! まあ、何もないところだがゆっくりしていってくれたまえ」
耳が何故か尖った初老男性小泉純一郎こと総統。
子供みたいな背丈だが、実は二十歳過ぎの男島根の吉田。
見た目は可愛らしいクマに見えて、あり得ない発明力を持つマッドサイエンティストのレオナルド。
紫色の肌をした超能力少年の菩薩峠。
そしてバイトから大企業の会長へと到達して実は金があるフィリップ。
以上が主な鷹の爪団の構成員であり、三馬鹿達とは数年前に偶々ある事で共闘した事で知り合い、結果レオナルドと同じ外部契約者として籍を置いていたりする。
「よーし、久しぶりに全員集合したし、ここはひとつアレをやるぞい! せーのっ……たーかーのーつーめー」
『たーかーのーつーめー!(イシクラッ)』
すっかり気を良くした総統達と共に三馬鹿達が持ち込んだ材料ですき焼きパーティーをすることになった鷹の爪団。
「オラッオラッ! アザゼルはどうしてるんだ?」
「先生ならグリゴリの総督業が忙しくて来れないってさ」
「博士と話したかったって残念がってたし、よろしくと伝えてくれだって」
「そうか、ならこれをアザゼルに渡しておけ!」
「? なんだこれ?」
「100円ショップのタライと鉛筆で作った人工神器作成装置だ! オラッオラッ!」
「……わぁお」
「相変わらずヤバイな博士は……」
「他のやつらが知ったらひっくり返るぞ色々な意味で……」
ティッシュペーパーから原子炉を作れるあり得ぬ科学力を持ったレオナルドから渡されたスマホサイズの人工神器作成装置に凄すぎて逆に笑えてしまう横で、ぱくぱくと食べていた白音に吉田が声をかける。
「なぁ、お前のお姉ちゃんは来ないのかよ?」
「黒歌姉様には声をかけてませんからね」
「なんだよ連れて来いよー! そろそろ文通だけじゃ物足りなくなってきたんだよー」
どうやら白音の姉が居ないことにご不満な様子の吉田は黒歌なる人物と知り合いらしい。しかも文通仲らしい。
「だったら来いって手紙で誘えば良いじゃないですか? ああ、そういえば直で会うと借りてきた猫みたいに大人しくなるんでしたっけ?」
「そんなの! お前、そんなの……ちょっと恥ずかしいだろ……?」
「お母さーん! なんて叫びながらエッチな本を読んでる吉田さんらしくないですよ?」
「さ、最近は読んでないぞ!! 読んだら怒られるし……」
「でもなぁ? 吉田さんって一誠先輩にタイプ似てるからなぁ……」
「ば、バカヤロー! 俺は一誠よりも誠実だよっ! というか一誠もどんぐりの背丈程度には誠実だろが!」
「まあ……だからちょっと辛いと思うこともあるんですけどね」
「あ……うん、お前も大変だな?」
吉田と白音が互いにちょっとした相談をし合っていたり。
「なんじゃと!? デラックスファイターの格好で悪魔をやっつけたのか!? なんで鷹の爪団の格好じゃないんじゃ!?」
「いやなんとなく……というかそんな怒るとは思わなかったし……」
「キミ達は立派な鷹の爪団の一員なんじゃぞ! まったくもう……ご飯持ってきてくれたからこれ以上は言わんが……」
「ほら総統さん、取り敢えずお飲みになって……」
「うむ、すまんなソーナさん。
しかし、キミはモテモテじゃの。こんな素敵なお嬢さん二人に慕われてるなんて……」
「いや、人妻の方が俺は……」
「そういうひねくれかたも相変わらずじゃの。なら大大家のババァは――」
「アレは良いっす」
「だろうな」
「……おにいちゃん」
「んぉ、どうした菩薩峠? もっと肉食うか?」
デラックスファイターのコスプレをしてた事に総統から怒られていたり……。
閑話休題
「そういえば私の姉が総統さんと会いたいと大騒ぎしてましたが……」
「げっ!? あ、ああそうなのか? う、うむ、ワシはあんまり会いたくはないかのぅ……。悪気が無いのはわかっとるのだが、会うたびに全身をバキバキにされたくはないからの」
「総統さんが貧弱過ぎる以前に、姉が実の所総統さんに会う度にテンパるのがいけないんですよねぇ」
「ワシ、お姉さんに何かしたかの……?」
「総統さんの全身くまなくドツボらしいですね」
「えぇ……? それはワシがダンゴムシ以下の無能だから殺したくなるって意味でかの? うぅ、恐ろしい女じゃ……」
終わり
補足
デラックスボンバーの便利さったらない。
というわけでからのデラックスボンバーでなんでも解決だぜ!
その2
総統と愉快な仲間達とも仲が良いらしい。
波長が合うとかなんとか。
その3
鷹の爪団の皆さんもこちらがわの影響を受けているけど、レオナルド博士は最初からチートレベルにヤバイのだ。