色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

拗らせというか、拗れた魔法少女は変化を知る。



拗らせ魔法少女の変化の兆し

 かつては毎日を『進化』の為に割いていた青年も、今では実に怠惰になっていた。

 進化をする理由を無くしたというのもそうだし、何よりこれまで培ってきた進化のせいで自分自身で死を選ぶ事もできなくなってしまった。

 

 守ると誓った存在と別れた時点で『生きる意味』を失っていたのだから、怠惰になるのは必然なのだ。

 あるとするなら、世界の『癌』としてヒーロー&ヒロインに粉砕されて死ぬ未来を待つくらいか。

 

 その為に今日も怠惰ででき損ないのチンピラちっくに生きるのだ……。

 

 

「おたくのガラクタ共はよく出来てるじゃないか。

これはなんだ? 血か? それともオイルか?」

 

 

 存在してはいけない『異形』として。

 

 

 

 

 

 アリシア・テスタロッサにとって、例え本人が『ちょっと喧嘩慣れしてるだけの、そこいらに居るチンピラ風情』と自分を卑下していたとしても、彼という存在は自分と母の運命を変えてくれた英雄(ヒーロー)だった。

 

 他にも、行く宛を失ったさ迷う死に損ない(ゴースト)だとか、この世にとっての癌細胞だとか、他人の人生をねじ曲げてしまったクソ野郎等々、自分自身を散々扱き下ろす事ばかり言うし、この世界の価値観がそうだったとしてもアリシアにとっては変わらぬ存在なのだ。

 

 出会い、母と共に再び生きるようになって10年近くの間も彼はずっと守ってくれた。

 そして、自分自身の写し鏡のような存在とその存在から恨みを持たれている事を知った。

 

 アリシアのクローンであるフェイト。

 

 彼女は青年を恨んでいる。

 そして管理局の存在として青年を長年追い続けている。

 アリシアとしては、フェイトの存在についてはちょっと出生関連含めて複雑だけど、何時か手を取り合えると信じている。

 

 けれど、フェイトが彼を――一誠を憎めば憎む程、一誠の関心がフェイトへと向けられていくのはとても複雑だった。

 一誠本人は自分に一言も話した事は無いが、明らかにフェイトに目を掛けているし、その理由も何となく察している。

 

 だから――決してフェイトが嫌いになったとかではないにせよ、ちょっとフェイトには嫉妬心を覚える訳で。

 

 逆にフェイトから同じような感情を抱かれているのだとしても……。

 

 そして何よりも――時を経るにつれて『自分と母を助けてくれたお兄さん』から『自分だけを守ってくれるヒーロー』になって欲しいという気持ちを抱けば抱く程、一誠が決して自分をそういう目では見ていない現実と、一誠の気持ちが『過去』に向けられ続けている事がとても辛い。

 

 

「…………」

 

「? どうしたのイッセー? ぼーっとした顔だけど」

 

「ん? ああ……ちょっとな」

 

 

 一誠が時折呼ぶ『朱乃ねーちゃん』と呼ぶ誰かが……。

 

 

「まさかな……」

 

 

 

 

 

 

 フェイト・T・ハラオウンにとっての一誠とは、自分からすべてを奪い取った畜生男であり、必ず越えなければならない存在である。

 自分の出生の理由となるオリジナルであるアリシアと母であるプレシアを取り戻す事が自分自身の生まれた存在意義だと信じて。

 

 その為に強さを求め。

 誰よりも努力を重ね。

 誰よりも貪欲に。

 何よりも餓え続けてきた。

 

 その結果、フェイトの魔導師としての実力は管理局に限れば最強レベルに到達している。

 かつては拮抗していた親友のなのはをも大きく超越し、管理局上層部達が一時は危険視する程までに到達しても尚、P.T.事件を経て最強最悪の生物として認定された彼には届かない。

 

 いや、魔導師という括りではフェイトは一誠を越えている。

 しかしそれは畑違いだし、純粋な闘争となればあまりにもその差は大きすぎる。

 

 自分達魔導師とは毛色の違う『魔力』を、デバイスを一切介さずコントロールし、フェイトの魔力変換資質・発電に近しい力を扱う。

 

 忌々しいまでにピンポイントで自分に似ている力を有しているのに腹も立つ。

 故に……故にだ――

 

 

 

 

 

「アナタは次元漂流者となりますので、暫くここに居て貰います」

 

「………はい」

 

「大丈夫ですよ。

必ず我々がアナタを元の世界に帰れるようにバックアップしますから……!」

 

「ありがとうございますわ……」

 

「では、それまでの間はウチの部隊が所有する寮にでも住んでいただきますので、彼女に案内させますね―――

 

 

 

 

 

――――――――姫島朱乃さん」

 

 

 そのルーツを知った時、フェイトの何かが再び変わり始めるのかもしれない。

 

 

 

「ではこちらのお部屋をお使いください。

一応外には自由に出られますが、その際は我々職員に一声掛けていただけるといいですよ?」

 

「ご親切にありがとうございますわ」

 

 

 地球での任務も終わり、一誠のせいですっかり拗れたモードになってしまっていたフェイトもとあるホテルでの任務も切り抜けて少しは落ち着きを取り戻してきた頃、ミッドチルダのとある地区で保護された次元漂流者の女性に六課の中を案内する任についていた。

 

 落ち着きのある――なのは曰く『地球の日本でいうところの大和撫子みたいな人』的な雰囲気漂わせる女性は、フェイトから見ても目が覚める程の美人だった。

 

 物腰も柔らかく、自分が陥った状況にも取り乱したりはしない。

 

 

「………」

 

「? えっと、なにか?」

 

 

 実に……まったくもって思い出したくなんてなかったが、彼が実に好みそうな女性だと、途中でちょっとだけムカムカしてきたフェイトは思わずその姫島朱乃という名の女性をじーっと見てしまう。

 

 

「いえ、ここミッドチルダにも『だらしない男性』は居ますので、もし外出したくなったら私に声をかけてください。

そういった輩からお守りしますから……!」

 

「は、はあ……」

 

 

 絶対にあの男だけには会わせてはいけない気がしてならないフェイトは、外出する時は絶対に自分に声を掛けろと、微妙に戸惑った顔をする姫島朱乃という――自分達と然程歳も変わらなそうな女性に釘を刺す。

 

 

「不思議な方ですね。

お仕事とはいえ、そんな事までご心配して頂けるなんて……?」

 

「女性にすぐ鼻の下を伸ばす指名手配犯が居ますからね……。

姫島さんのような女性は特に狙われやすいです」

 

「へぇ………………?」

 

 

 気づけば一誠の事で頭が一杯になっていたフェイトは気付いていなかったが、フェイトが名前は出さなかった指名手配犯の特徴を話した時、時姫島朱乃の表情が僅かに揺れていた。

 まるで、ほろ苦すぎる過去を思い出すかのように……。

 

 

「暫くご迷惑をおかけしますね? えっと……」

 

「フェイトです」

 

 

 そしてこの出会いがフェイトの道を変えていく事になるとは、この時まだ誰も知らない。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 捨てきれない過去がある限り、停滞し続ける青年にとってはまさに予想だにできぬ展開だった。

 

 

「な……!?」

 

「っ!?」

 

「え、ど、どうしたのイッセー?」

 

「朱乃さん……?」

 

 

 互いに捨てきれぬ『過去』の再会。

 

 

「こ、この人がイッセーの言ってた『朱乃ねーちゃん』って人――きゃっ!?」

 

「あ!? に、逃げ――」

 

「ま、待ってよイッセーくん!? どうしてここにとか、そのフェイトさんにそっくりな人は誰なのかはこの際置いておいて、どうして逃げるの!?」

 

「あ、アンタこそなんでこの世界に居やがる!?」

 

「アナタが私の前から居なくなって、真羅さんやリアスやソーナ達と探し続けていたら、安心院さんが私に何の説明もなくこの世界に……」

 

「ま、またあの平等主義者が余計な真似をしたのか! クソが!!」

 

「待って!!」

 

 

 その過去から逃げようとアリシアをお姫様だっこして逃走するイッセー

 

 

「朱乃さん、アナタまさか彼の事を……」

 

「………。元の世界では私の幼馴染みで――その、色々あって疎遠になっていましたの。

まさかアナタにそっくりな方とこの世界で生きていたなんて……」

 

「……………」

 

「その、あの子はこの世界では指名手配されているのですか……?」

 

「え、ええ……」

 

 

 色々とショックが大きすぎて放心なフェイトだったり……。

 

 

「く、クソ……」

 

「イッセー……」

 

「過去の女が次元漂流者として管理局に……か。

フェイトにそのやり取りを見られた時点で、その姫島朱乃という者は間違いなく管理局に押さえ込まれたわね」

 

「……………」

 

「フェイトが居るから大丈夫だよきっと……」

 

「べ、別に心配してねーよ。

もう俺には関係ないんだ……。だが……変わってなかったな」

 

 

 所謂元カノ的ポジションの存在が現れたせいで不安で仕方ないアリシアだったり。

 

 

「大丈夫かい? フェイトから聞いたけど、姫島朱乃がこの世界に漂流したって……」

 

「耳に入れるのがの早い奴だな。

その通りだが……俺には関係ないよ」

 

「そうは見えないけど……」

 

「か、関係ねーよ本当に! だ、第一今更どの面下げてあの子の前に姿さらせるってんだ!」

 

「イッセー……」

 

 

 心配してくれるアルフが居たり。

 

 

「兵藤一誠とアナタが幼馴染みだった事については一切報告はしません。

恐らく報告をすれば上はアナタを対兵藤一誠に利用して軟禁しますから……」

 

「あ、ありがとう。でも良いの……? アナタにも立場が……」

 

「私はあくまで彼を捕まえる為にこの地位についているだけですから。

それにその……その代わりにアナタには色々と聞きたいことがありますし」

 

 

 あの狼狽っぷりから、姫島朱乃とはただならぬ関係だったとすぐに察知したフェイトが独自に行動し始めたり。

 

 

「元は朱乃さんと朱乃さんのお父さんの力……」

 

「ええ、あの子は進化の異常によって人としての壁を越えて堕天使としての力を自力で掴んだの。

だからあの子は私と父の雷の力を……」

 

「なるほど……」

 

「アナタにも私たちとは毛色こそ違えど、雷の力を持っているのね? それとその……もしかしてだけど、アナタは一誠君が―――」

 

「嫌いです。大嫌いです。

本当に嫌いです。私から母と姉を奪った男ですし、何時までも私を子供扱いしますし、女の人にデレデレばっかりするので凄く大嫌いです!」

 

「…………………。相変わらずなのね。

私も何度も泣かされたわ……」

 

 

 一誠が基本的に性癖が変わってないことにため息だったり。

 

 

 

「ちっ……」

 

「今回はそう簡単には逃げられません……!」

 

「考えた結果、この子と協力してアナタを捕まえる事にしたの。

勝手に私の前から居なくなったケジメもつけてないしね……!」

 

「へっ、女癖の悪い俺に愛想つかしたのはアンタだろうが」

 

「そうね。あの時は私もまだ若かった。

でも10年経ってもアナタを忘れることなんてできなかった……! 私だけではなく、真羅さんもリアスもソーナさんも……!」

 

「……………………………………。朱乃さんばかりだけではなく、元の世界でもそんな大勢の女の人にちょっかいかけてたんですか? 最低ですねやっぱり」

 

「うぐ……!? ち、ちげーわ! 単なる知り合いだっつーの!」

 

「…………私もフェイトと同意見かなぁ?

ホント浮気者さんだよ一誠は」

 

「ア、アリシアまで……」

 

「だ、大丈夫だよ! 私はその軽さを知っててもアンタを嫌ったりはしないよ!」

 

「その優しさが今は微妙に辛いぜアルフ……」

 

「………ふふ、この世界でもこんなに女の子を引っかけちゃって……。

久々にお仕置きしてあげたくなっちゃったわ……♪」

 

「! ちくしょう! 上等だコラ! この世界じゃ超悪者の俺に勝てると思うなよ!!」

 

 

 元カノ(?)の登場によりおかしな運命は余おかしな方向へと飛んでいくのかもしれない。

 

 

「けほけほ……!

あのお嬢ちゃん、朱乃ねーちゃんから何か教わったな……。

明らかに成長スピードが上がってやがる……」

 

「だ、大丈夫かい?」

 

「アリシアを先にプレシアに任せておいて正解だったぜ……。

くくく、まさかここに来てここまでのダメージを負うなんてよ……」

 

「て、手当てを……」

 

「要らねぇ。ふふ……ダメージは負ったが死にはしない。

暫く寝てりゃあ回復するぜ……」

 

 

 

 

 

「だからアルフ……俺のことはほっといて―――………」

 

「い、イッセー!? …………あ、よ、よかった、眠っただけなんだね?」

 

「…………」

 

「ど、どうしよう? やっぱりこのまま放ってはおけないし……」

 

「くーくー……」

 

「と、取り敢えずこのままじゃ首を痛めそうだから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………。またアルフが美味しいところ持ってってる」

 

「美味しいところって……。

フェイトはイッセーが嫌いなんじゃないの?」

 

「……ハッ!? あ、う、そ、そうだけど!? 嫌いだけど!? それがなにかなアリシア姉さん!?」

 

「…………別にー?」

 

「決して好かれやすくは無かったけど、好かれる相手には好かれる所は変わらないのね……。

浮気性な所もホントに……」

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「な、なんだいプレシア! イッセーは今休憩中なんだよ!」

 

「別に邪魔する気はないわよ。

というかアナタって―――――」

 

「な、なんだいその目は……?」

 

「…………いえ別に?」

 

 

 

終わり




補足

さぁ……変な昼ドラの始まりだー!



その2
互いに死ぬほど引きずりっぱなしなせいでギクシャクしまくりだし、多分初見は逃げるであろう予想がなされてる模様。


その3
でもアルフさんだけは全然変わらないという謎の安心感。

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