色々なIF集   作:超人類DX

697 / 1034
半端にしてたのでぶちこみます。


精々頑張って・空色の花嫁修行
空色の花嫁修行の裏側


 兵藤一誠は取り敢えず荒れていた。

 理由は単純――刀奈が理由であった。

 

 

「ちくしょう……ちくしょう……!!」

 

 

 拒絶できなかった自分に対するものなのか。

 それとも別の意味でなのか――

 

 

「ちくしょおおおおおおおっ!!!!!」

 

 

 一誠はただ今精神状態が極めて不安定な状態で、IS学園の島の隅っこで軽く暴れまわっていた。

 具体的には、内包するパワーを外へと放出して沸き上がる感情を吐き出すといった方法で。

 

 

「あ、あのー……?」

 

「あ゛ぁ゛っ!?」

 

「ひっ!? い、いやその……! な、何も食べていないだろうと思って食事を……ご、ごめんなさい……」

 

 

 彼女の未来を考えれば、拒否して然るべきであるのはわかりきった事である。

 だが、自分にはリアスというものがありながら、何より常日頃からそう言い続けてきたはずのに、あの時の刀奈からの行為を拒否できなかった。

 

 それがリアスの言った通りだったのかなんてどうでも良い。

 これではまるで自分だってあの転生者の事なんて言えやしない。

 

 それが酷く、一誠を苛立たせていたのだ。

 

 それこそ、逃げるように飛び出した一誠を少しだけ心配したのか、食事をわざわざ運んできた千冬に対して脊髄反射的に殺意を向ける程度には。

 

 

『落ち着け一誠。この小娘はただ食事を持ってきただけだぞ?』

 

「っ!? ……あ、ああ、わかってるよドライグ――クソっ!」

 

「あ、あの……?」

 

 

 猛禽類を思わせる鋭い目付きにすっかり腰が退けてしまった千冬は、抑えるドライグによって多少は何時ものぶっきらぼうな一誠に戻った事に少し安堵をする。

 

 

「………どーも」

 

「ぁ……」

 

 

 そして千冬から食事を引ったくるように受け取った一誠は、その場に座り込んで行儀悪く食べはじめる。

 

 

「くそ、クソが……ボケが、俺のクソボケ野郎……!」

 

『重症だなこれは……』

 

「そ、そんなに嫌だったのか? その、更識にアレされたのが?」

 

『そうではなく、拒否できなかった自分に苛立っているだけだ』

 

「な、なるほど……。いやその、今の兵藤さんには近づけないからと食事を運んで欲しいとグレモリー先生に言われたからその……」

 

『ああ、わかった。ご苦労だったな小娘』

 

「こ、小娘……」

 

 

 ナチュラルに一誠の左腕に纏われている赤い装甲から発せられる渋い声と会話をする千冬は、ふて腐れたように食べ続ける一誠をじーっと見る。

 

 

「あの……。

あんな不意打ちは避けようが無いし、仕方ないと思うといいますか……」

 

「…………」

 

「それに更識は春人からストーキングされていた事もあるし……」

 

「………………」

 

「だ、だからそんなに落ち込まなくても良いのではないのでしょうか……みたいな?」

 

 

 どう見ても不機嫌だし、千冬的にもそのままはいサヨナラとは言えなかったので、出きる限りの言葉を送ってみる。

 全てを思い出す前はあれだけ嫌っていたリアスと一誠にまさかこんな事を言う日が来るとは思わなかったと今更に思ってしまう。

 

 

「……。アンタは俺を軽蔑しているだろうな? 未成年の小娘にあんな真似しちまった俺を」

 

「そ、そんな事は……。さっきも言いましたが、アレは防ぎようが無かったし……」

 

「クックックッ! これじゃあ一夏じゃねーアンタの弟と同じだな? ――あっははは!」

 

「ば、バカな! それこそ――」

 

「あー良いって良いって! 前から悟ってたが、所詮俺も奴も同じ穴の狢だったってだけの事だからよ……」

 

「………」

 

 

 余程ショックというか、春人と同類である事に堪えたらしいのか、千冬にしてみれば見たことないくらいに笑っている一誠。

 

 

「リアスちゃんを裏切らないって誓ったのに……結局こんな形で裏切ってしまった……あは、あははは」

 

「い、いやいやいや! あの時のアレはグレモリー先生の方から寧ろ焚き付けていたではないですか!」

 

「違う、これは俺自身の覚悟の問題だ。

って、アンタに語ったところで意味なんかねーが……」

 

「で、ですが更識だってアナタを……」

 

「………………」

 

 

 意外とかなり引きずるタイプなんだなと、ある意味で人間らしい一面を見た千冬は、自分でも訳がわからないほどにアタフタと大袈裟な身ぶり手振りで一誠を説得する。

 彼がどう見てもリアスを大事にしているのもわかるし、そもそも刀奈がそんな一誠に色々としても彼が跳ね除けて来た事も知っている。

 

 

「拒めなかった時点で同じなんだよ……ちくしょうが」

 

「…………」

 

『………』

 

 

 しかし千冬の精一杯捻り出した言葉は一誠には届かない。

 

 

 

 

 

 

 実質織斑春人が『再起不能』になった事で抑え込んでいた『自我』を解放し始めていた篠ノ之束。

 最早力を壊された織斑春人等取るに足らず、脅かす障害も消えた。

 そう、後は一夏に…………。

 

 

「大丈夫かなイチ兄は……?」

 

「暫くは不安定になるだろう。

私はどちらの気持ちも分かるから何とも言えないよ……」

 

「だよな……」

 

 

 後は一夏の手によって引導を渡される事。

 それが束の真の目的であり、最早自らが手掛けたISにすら興味はない。

 

 

「そういえば、箒のお姉さんは何してるんだ?」

 

「さてな。

あの日以降、何もして来ないのが却って不気味だが……恐らくどこからか観ているのは間違いない」

 

「なるほどねー……。

春人が実質再起不能になっちまったから、もっと過激に復讐してくるとばかり思ってたけど……」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 だが一夏自身が自分に対して何も感じていない。

 怨念も無く、ただただ箒の姉という認識だけでそれ以上も以下も無い。

 妹の箒や一夏にとっての大切な者達にだけ向けるその柔らかい表情や仕草を、親指の爪を噛みながら映像越しに見ることしかできない束。

 

 

「どちらにせよだ、もしもあの人が何かして来るというのなら、私がお前を守るさ」

 

「うーん、なんて男前な台詞。

普通俺の台詞なんだけどなぁ?」

 

「ふふ、危なくなったら勿論頼るつもりだよ」

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 自分がしてきた事を踏まえれば、一夏がああいった心底相手を信頼するような表情は向けられないのは分かりきっている。

 あの織斑春人の出現から全てが狂ってしまったのは確かだけど、ほんの一瞬でも織斑春人に心を奪い去られてしまった現実も覆すことだってできやしない。

 

 だからこそ、束はせめて一夏の手で葬られる事を望んで、自分の心を殺しきってでも織斑春人の側に居続けた。

 

 

「……………」

 

 

 しかし、好きの反対は無関心とはよく言ったもので、一夏は自分への恨みは一切無い。

 それどころか、ただの箒の姉としか思っていない。

 

 それがエゴであるとはわかっていても束には堪えきれない。

 だから……だから―――

 

 

「やぁ箒ちゃん……」

 

 

 束は動き始める。

 篠ノ之束としての最期を迎える為に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如やってきた姉からの電話。

 ふざけたテンションではない姉からの電話は、夜中にIS学園の端にある海辺に一夏と一緒に来いというものだった。

 

 

「噂をすればなんとやらだったな」

 

「二人だけで来いって言っていたんだろ?」

 

「そうだ。明らかに怪しいし、面倒かもしれないが、色々とはっきりさせる為に少しだけ付き合ってくれ」

 

「そりゃあ勿論構わないけど……」

 

 

 当初は相手にするか迷った箒だが、この際色々とケリを着けようと敢えて姉の提示に乗ることになり、同部屋になっていた刀奈が寝言で『えへへ……一誠さぁん……♪』等と言ってる隙をついてこっそりと寮を抜けると、合流した一夏と共に指定された場所へと向かう。

 

 そして指定された場所へと向かうと、夜風に晒されながら海をボーッと眺めている姉の束が本当に居た。

 

 

「………」

 

「マジで居るよ、箒のお姉さん……」

 

 

 どこか死んだ目をしているような気がする箒は、何時でも一夏を守れるようにと警戒しながらゆっくりと近付いていくと、二人の気配にきづいたのか、束が死んだ目をしながら此方に視線を向けた。

 

 

「やあ……」

 

「……」

 

「テンションが低いな」

 

 

 格好は臨海学校の時に姿を晒した時と似ているが、一夏の言うとおり明らかにテンションが低い。

 その低さが却って箒の警戒心を上げている訳だが、それ同時に妙な違和感を妹故に感じてしまう。

 

 

「こんな時間にわざわざ学園に侵入してまで私達だけを呼び出した理由はいったいなんでしょうか? 春人の復讐でしょうか?」

 

 

 少しでも一夏を傷つけるようなら実の姉であろうが容赦はしない――そんな『覚悟』の炎を小さく灯しながら低めの声で訪ねる箒。

 

 そんな箒に対して死んだ目をし続ける束はというと、じーっと箒――ではなくて一夏を見ると、ゆっくりと口を開き始めた。

 

 

「ちょっとした確認がしたいだけ。

こんな時間に騒ぎを起こす気は無いから安心してよ箒ちゃん?」

 

「…………」

 

 

 安心してよと言われてはいそうですかと警戒を解くほど姉との仲はよくない箒は、無論信じてはない。

 それを知ってか知らずか、束はただただ一夏をじーっと見ながら……。

 

 

「ねぇ、アナタは憎くないの?」

 

 

 まるですがるように一夏に訪ねた。

 

 

「は?」

 

 

 何が? と心底不思議そうに目を丸くする一夏。

 

 

「だから、アナタは私が憎くないの? 小さい頃から散々ハル君ばかり贔屓していて、アナタの事を虫けらみたいな扱いをしていた私のことを……」

 

「なんですか突然……? 別に憎いとなんて考えた事すらないですけど」

 

「………」

 

 

 変な人だな……と束に対してなんの関心が無いからこそ出てくるその言葉に、束の表情が歪み始める。

 

 

「なんでよ? 本当は殺したい程憎んでいるんじゃないの? ちーちゃんも私もずっとハル――あんな奴を可愛がってて、アナタを邪魔者みたいに扱ってたんだよ?」

 

「……あんな奴?」

 

「ねぇ、本当の事を言ってよ?」

 

「本当の事も何も、本当に何とも思ってませんってば。

第一――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――アナタは箒のお姉さんってだけで、小さい頃から別になんの関わりも無かったでしょう?」

 

 

 

 そんな束に向けられた一夏の言葉は(プラス)でも(マイナス)でも無い―――ただの『零』であった。

 

 

「…………」

 

「え、そんなことを聞くためにわざわざここに来たって訳じゃないでしょう? むしろアナタの事だから春人に関する復讐でもしようとか……」

 

「待て一夏。様子がおかしい……」

 

「は?」

 

 

 過去の事を全て割りきってしまっている。

 まだ傷つけられるだけで抵抗もできなかった頃も、その頃に束にした事も……。

 

 

「そっか……そうなんだ」

 

 

 いや、仕方ない事なのだろう。

 それだけの事を一夏にしてきたのは自分だ。

 けど、それでも憎しみだけは抱いて欲しかった。

 

 身勝手で押し付けがましいエゴであったとしても、妹の箒とは違ってほんの一瞬でも心を奪われてしまった自分を一夏の手で終わらせて欲しかった。

 

 

「ふふ……あはは……! 私ってホントに馬鹿だね?」

 

「姉さん、アナタはまさか……」

 

「ははは、箒ちゃんが羨ましかったよ。

どんな事があっても―――いっくんの味方であり続けられるその強い心が。

私にはそれが無かった……あんな奴に一瞬でも奪い取られて、いっくんを傷つけて………」

 

「いっくん……?」

 

「そりゃあそうだよね? 私なんかいっくんを傷つけた連中の一人でしかないもんね? なにが『憎まれて殺される』だよ――ただの間抜けの馬鹿だよこれじゃあ」

 

 

 泣きそうな笑みを浮かべる束に、箒は全てを察した。

 束は早い段階で自我を取り戻していた事を……。

 そして一夏にとっての『敵』として殺される事を……。

 

 

「だからさ――今この場でいっくんに憎まれる事にするよ?」

 

「!?」

 

 

 そして、取り戻した自我を殺し続けた事で途方もなく歪んでしまった事を。

 

 

「あの二人に引き上げられたいっくんと箒ちゃんには勝てないだろうけど、喧嘩ぐらいは売れるでしょう?」

 

 

 そして一夏の本音を聞いても尚、諦めるつもりがまるでないことを。

 

 

「おっと! 動かないでよ箒ちゃん? 今私がこの手に持ってるスイッチを押したら、この人工島全土が消し飛ぶ程度の爆弾が爆発するんだからさ!」

 

「なに……!?」

 

「わざわざ言ってくれてどうも……! それならアナタからそのスイッチを奪い取れば――」

 

「残念だけど、私の手からスイッチが離れた瞬間もドカンさ。

そうなれば、二人の面倒を見てきたあの二人や友達達は平気だろうけど、他の一般人達は全員あの世行きだね?」

 

「……」

 

「一誠兄さんとリアス姉さん達ではなく他の者達を人質に使う気か……!?」

 

「そうでもしないと、私みたいな『カス』の話なんて聞いてもくれないでしょう?」

 

 

 一夏への執着心だけを糧に生き続ける天才ならぬ天災の真偽はわからない。

 ただひとつ言えるのは、千冬がそうであったように、彼女もまた織斑春人の中身が崩壊し始めた事で過去を思い出した―――いや、それ以前に最初から知っていたような……。

 

 

「目的はなんですか……?」

 

「さぁ? 最近自分でも自分が何をしたいのかがわからなくなっちゃってさ? このままいっくんに憎悪と怨念を込められながらぶち殺されたいのか、それとも……」

 

「だからこんな真似を? だとしたら、紛いなりにも箒のお姉さんだからと抑えていましたが―――死にたけりゃあ一人で勝手に俺の関係ない所で死ねばいい」

 

 

 

 だが一夏の考えにブレはない。

 そもそも今更織斑春人を恨むだとか、それに与する周りがどうとかという考えは一切無い。

 

 結果的に一誠に喧嘩を売って返り討ちにあった事で今の状況となっているわけだが、あくまで結果論で何も無かったとしても一夏から何をするといった気はなかったのだ。

 

 

「全く、俺は心の底から春人には『精々頑張ってくださいな?』と思っていたのに、余計な事をして自爆されちゃあ世話ねぇぜ」

 

「…………」

 

「何か勘違いしてるようですが、この際だから言いますよ。

アナタがどうだったとか、今までどんな状況だったとか――そんなもの、心の底から興味が無いんだよ。

俺に憎まれながら死にたい? 知ったことかよ。爆破したきゃしなよ? した所でアンタに憎悪することなんて無いしな」

 

 

 ずっと自分の傍に居てくれた箒。

 箒と自分に生きる術を教えてくれたリアスと一誠。

 

 そしてこの学園で知り合った、数少ない友人達。

 一夏にとって大切な者はそれだけ。

 それ以外が消えてなくなろうが――――心底どうでもいい。

 

 

「アテが外れて残念でしたね姉さん。

私と一夏の『良心』とやらを突こうとしてでの行動のようですが………そんな事でアナタの思う通りになるとは思わないことだ」

 

 

 だから変わらない。

 この前の千冬に少し似た少女を消したように、自分と箒の歩む道に転がる石ころをただ退ける――それだけの事。

 

 

「故に、一夏を脅したアナタの罪は大きい……!」

 

「!」

 

 

 そして箒は誰よりも一誠の生き方に酷似しており、最も大切な存在を守る為ならば肉親が相手でも『鬼』と化す。

 

 

 

 

終わり

 

 

オマケ・夢見るたっちゃん。

 

 

 こっそりと箒が部屋を抜けた頃、更識刀奈は夢を見ていた。

 その夢の内容はお察しの通り――――

 

 

 

「ふぅ、今日のトレーニングはこんな所かしら」

 

 

 更識家の当主としての責務も兼ねて、常日頃から己を鍛える事には一誠やリアスと出会う前から欠かすこと無く続けてきた刀奈はこれまで以上に妥協のない厳しいトレーニングをこなしている。

 

 自分の先を行くリアスのようになる為に。

 そしてなによりも、そのリアスが隣を歩く一誠に追い付く為に。

 

 

「あら?」

 

 

 そんな、夢に見る程の積み重ねを今尚続ける刀奈は、トレーニングを終えて汗を流そう――と思っていた時にそれはやって来た。

 

 

「……………」

 

「一誠さん……?」

 

 

 目が完全に据わっていて、千鳥足状態でフラフラとこちらに向かって歩いてくる一誠が……。

 

 

「ど、どうしたの一誠さん?」

 

「……………」

 

「う……め、目が怖い……」

 

 

 フラフラとおぼつかない足取りで近づいてくる一誠を見て何があったのだと駆け寄る刀奈は息を飲んだ。

 何故なら、一誠の目が何時もとは違いすぎる程に目が据わっていて、更にいえばその手にはお酒の入った一升瓶が握られていたのだから。

 

 

「グビグビ……うぃっ! ひっく!」

 

「ちょっ!? 一誠さんったらお酒を飲んでいるの!? あんなに弱いのに――」

 

 

 以前の出来事から、一誠が死ぬほど酒が弱いのを知っていた刀奈は、らっぱ飲みをする一誠を見て慌てて止めようとした。

 

 

「ふん、俺が少しくれーの酒で酔っぱらうかってんら……!」

 

「ろ、呂律が……」

 

 

 だが言うことを聞かない一誠は飲むのをやめないし、呂律が既におかしなことになっていた。

 そもそもリアスは、一誠は酒もギャンブルもタバコもしないと言っていたし、知り合ってから今まで父の勧めを断れずに飲んでしまった時以外で一誠がそういったものに手を出した姿を見たことがない。

 だというのに何故飲んでいるのか……と、考えていたせいで隙だらけであった刀奈に突然一誠が信じられない行動を起こす。

 

 

「ひゃあ!?」

 

「ひっく……」

 

 

 なんと一誠の方からいきなり刀奈の手を掴むと、持っていた一升瓶を放り捨て、もたれ掛かるように押し倒したのだ。

 

 

「にゃ、にゃにを!?」

 

 

 間違いなくリアスにしかしないであろう――自身の想い人である一誠にされてしまった刀奈は、ちょっと乱暴気味に腕を回して拘束するように抱き着いてくる一誠に、全身が発火しそうになるほどに熱を帯びさせつつ、漫画みたいに目を渦巻き状に回しながらテンパった。

 

 

「うるせー……! リアスちゃんしか興味ねーって言ってんのにてんで諦めちゃくれねーオメーのせいだ!」

 

 

 そう主張する一誠は、そのまま刀奈の胸に顔を埋め始めた。

 

 

「ま、待って一誠さん!? わ、私今運動して汗かいたから……!」

 

 

 酔うと大変な事になるのは知りつつも、内心ちょっと得した気分だった刀奈だが、流石に恥ずかしいので離れて欲しいと訴える。

 けれど一誠は全然離れないどころか……。

 

 

「知らねーよ……そんなの」

 

「ぁ……」

 

 

 突然のそのマジな表情に刀奈の中で色々と消し飛んでしまった。

 

 

「お前、初めて?」

 

「は、はい……あ、あの……本当に?」

 

「その覚悟があるんだろ? じゃあ仕方ないだろ?」

 

「で、でもここお外……」

 

「だから?」

 

「は、はい……! か、関係ないです……」

 

 

 抵抗など最初から無く、自分に対する支配欲のようなものを向けてくる一誠に刀奈はただただ身を委ね――

 

 

 

 

「…………はっ!?」

 

 

 刀奈は夢から現実へと戻るのだ。

 

 

「ゆ、夢か……そ、そうよね。

あんな都合の良い事があるわけ――――――あ」

 

 

 そして……。

 

 

「い、一誠さんとキスした日からこんな夢ばかり見るようになっちゃいました……。

私ってスケベなんでしょうか!?」

 

「まー、アナタくらいの年頃の子ならよくあることだと思うわよ? ねぇ山田先生?」

 

「わ、私は見てませんからねっ!? 一誠さんと海辺で追い掛けっことかしてませんからねっ!?」

 

「………ほらね?」

 

「や、山田先生の方が健全じゃないですかっ!? うぅ……途中で覚めたせいで身体は凄く熱いし、し、下着が大変な事になっちゃうで……うぅ……」

 

「だから大丈夫よ。

多感な年頃なんだし……。私もアナタくらいの年の頃は大体そんな感じだったわよ?」

 

「で、でもその時のリアス先生は一誠さんと毎日……」

 

「うん……それは否定しないわ」

 

「うー……! 羨ましい!」

 

 

 色々と自分を殺しながら生きてきた刀奈はここにきて多感なお年頃に突入するのであった。

 

 

 空色の花嫁修行・継続




補足

まるでブレません。

好きではありません。嫌いでもありません――ただ、とことん興味がございません。

完全に割りきった事でこうなりました。


その2
一夏の本音としては、イッセーに壊されなければ春人にはこのまま精々頑張って貰いたかった。

だから恨みもなにも本心で無かった。

………箒さん達に何かしたらその限りではございませんが。


その3
そして逆に一誠の気質にもっとも近い箒さんは、彼等を一生許さないと思ってます。


その4
そしてたっちゃんは相変わらずたっちゃんなのだった。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。