色々なIF集   作:超人類DX

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660話の魔法先生ネタの続きになります。

……要らんとは思ったが、これも書きかけてて放置してたので


其々の求める進化

 さて、神楽坂アスナが何故一誠の過去の夢を見たのかについては神楽坂アスナ自身が忘れている過去に起因しているのかは定かではない。

 

 どちらにせよ、奴が一誠の過去に少しばかりの興味を抱いた事による余計な詮索をさせない為の釘はちゃんと刺さなければならないのだけは間違いないのだ。

 

 アイツは自分の過去について『土足』で踏み込まれる事を最も嫌う。

 つい先週もそれを知らずに訊ねた神楽坂アスナに殺意を向け、危うく奴を肉片になるまでバラバラしてしまいそうだったからな。

 

 だから何度でも神楽坂アスナには釘を刺さなければならない。

 もっとも、奴はバカではあるが愚か者ではないらしく、あの殺意を向けられた時点で『理解』はしたようなので、そこまで酸っぱく言う必要も無い様だ。

 

 それよりも、修学旅行の時に抱いた『挫折』と『無力感』のせいでしつこい程に坊やが弟子入りを志願してくる事への対処が面倒で仕方ない。

 

 坊やはとにかく力を求めて私に弟子入りをしたがるみたいだが、私は面倒を見る気にはなれん。

 これがもし、『一誠と出会う事なく、今尚封印されている状態』であったのならば、私を封印したナギの息子という事もあり、もしかしたら面倒を見ていたのかもしれん。

 

 だが私は何度も言うが自由になれた。

 

 所謂別世界から迷い込んだ行き倒れの男――一誠を発見し、拾って飯を食わせ、仕事の斡旋をしてやり……その見返りを貰い、過去を知った今、坊やにもナギにも興味は無い。

 

 

「お願いします! どうか僕を……!」

 

「ほら、ネギ先生も一週間ずっとこんな感じだし、弟子にしてやればよ?」

 

「冗談じゃない。只でさえお前の面倒を見るだけでも手一杯なのに、これ以上子供も面倒を見させる気か。それにずっと言っているが、将来敵になるやもしれん相手をわざわざ強くしてやる意味が無い」

 

「ネギ先生が強くなった分、エヴァも強くなりゃあ良いじゃねーか?」

 

「じゃあお前が面倒を見ろ。

魔法は確かにお前は専門外だが『戦い方』は教えられるだろう?」

 

「いやー……俺人に教えるのとか本当に向いてないからなぁ。それにナンパしに行く時間が減るのはちょっと……」

 

 

 私と同じ、人から化け物へと変わり果てたコイツの生きる世界を見ていたい。

 それが今の私の生きる理由なのだから……。

 

 

 

 

 

 

 何とかして強くなりたいネギは、ここの所毎日エヴァンジェリンに対して弟子入りを志願するが、返って来る答えは何時も決まって『貴様の面倒を見る程暇じゃない』であった。

 

 

「おっかしぃな、アイツに世話になりたての頃は、ネギ先生の親父さんに並々ならぬ執着を抱いてた筈なんだけどなー……」

 

「色々聞いると、エヴァちゃんがネギのお父さんに拘ってたのって、登校地獄の呪いをなんとかしたかったからじゃない?」

 

「それだけじゃなかった気がしたんだがなー」

 

「………」

 

 

 塞ぎ込むネギが段々可哀想になってきた一誠も一応協力してエヴァンジェリンに頼んでみたが、結果は同じだった。

 何故か一誠を相手にする場合のみ、バカレッドではなくなるアスナの推察は概ね当たっている。

 

 

「いっそアンタがネギに教えたら良いじゃない?」

 

「それさっきも言ったけど、俺はそもそも魔法とか専門外だし、教えるって言っても『近づいてぶん殴れ』としか言えないしな……」

 

「見事なまでの脳筋スタイルね……」

 

「それで生きてきたからなぁ……」

 

「僕はどうしたら強くなれるのでしょうか……?」

 

「いや、まだ子供なんだからそんな焦らなくても良いんじゃないか? 身体が成長すれば自と力も付いてくる筈だし……」

 

 

 修学旅行の件以降、すっかり力を欲してしまうようになってしまったネギの焦りの感情を察した一誠はそう言うも、ネギは納得はしていない様子だ。

 

 

「ちょっと教えるくらいなら俺も出来なくもないけど……微妙だな。

ネギ先生って基礎体力が年相応過ぎて、俺の基礎トレーニングをやらせたら死にそうだし……」

 

「死にそうって……どんなトレーニングしてんのよ?」

 

「2時に起きてから学園周りを全力疾走で100周を10分で終わらせてから、筋トレを朝5時になるまで永遠と続けて――」

 

「……もう良いわ。

そういえばアタシが配達をやってる時も大汗かきながら爆走してたもんねアンタって……。というかサラッと学園周り100周を10分ってどう走っても無理じゃない」

 

「…………」

 

「む、何よその顔?」

 

「いや神楽坂が頭良さそうな事言ってるのに普通に驚いた……」

 

「どういう意味よ!!」

 

「……………」

 

 

 基礎の時点で次元が違いすぎる一誠に弟子入りしても、待っているのは身体を壊して魔法使いどころではないオチ。

 

 

「第一、ネギ先生を仮に俺が弟子にしたら、周りが煩いだろうしさ……」

 

「学園長とタカミチ先生は何も言わないと思うけど?」

 

「いや、その他の先生とか裏の事情を知ってる生徒さん方だよ。

エヴァの件で大分嫌われちまったし俺……」

 

「どーせ、エヴァちゃんの封印を解いた後に色々言われて逆ギレして黙らせたとかしたんでしょ? アンタって見てる感じ、自分が好きと思った相手の為なら平気で犯罪とか犯しそうだし」

 

「………。どうした神楽坂? お前ひょっとして熱でもあんのか?」

 

「だからどういう意味よ!? アンタの行動がバカ過ぎて読みやすいだけじゃない!!」

 

 

 そうでなくても、エヴァの件で他の先生や生徒からは化け物認定されてしまい、ここでネギに戦い方を叩き込むなんて真似をしたらエヴァの件以上に騒がれてしまう。

 

 修学旅行の一件で、関西側からは『出禁』すら喰らってしまったのだから……。

 

 

「あ、でも基礎のトレーニングの方法を知ってそうな奴なら宛があるぜ?」

 

「え!?」

 

 

 だから一誠は強さを欲するネギの気持ちは痛いほどわかるものの、教えることができない。

 そもそも戦い方から目指しているものまでの全てがネギと一誠は違いすぎたのだから……。

 

 とはいえ、それではあまりにもネギが不憫なので、基礎から学べるであろう人材についての情報を提供することにした。

 

 それは……。

 

 

「――てな訳で、エヴァは教える気が全然無いし、俺は教えるのが下手すぎてなんにもならない。

だからお前達でネギ先生に身体の使い方の基礎を教えて欲しいんだが……」

 

「「………」」

 

 

 お察しの長瀬楓と古菲である。

 成績はお察しだが、身体能力の面ではずば抜けている二人ならば、一誠よりは無茶の無いトレーニングの面倒をみてあげられるという意味で、二人を呼び出してみたのだが……。

 

 

「エヴァンジェリンじゃないけど、メリットが無いアル」

 

「同じく。ネギ坊主の面倒を見るのが嫌だとかではなく、対価が無いのは嫌でござる」

 

 

 ここ最近――具体的には封印解除の件からエヴァンジェリンと隠す事なく仲良くしている一誠にぐぬぬさせられていた二人は、一誠の頼みを拗ねたような顔で断った。

 

 

「なんだ、バカレンジャーの癖に対価を要求するとは……。

神楽坂といい、最近どうなってんだバカレンジャー?」

 

「「「バカレンジャー言うな(アル)!!」」」

 

 

 だが一誠は拗ねてる二人を……ついでにアスナも怒らせてしまう。

 

 

「都合の良い時だけ頼むなんてフェアじゃないアル!」

 

「そうだぞ! こっちは最近の一誠に色々と戸惑ってしまってモヤモヤさせられっぱなしだというのに!」

 

「そんなん言われてもしょうがないだろ。

エヴァじゃないが、俺の素はああなんだから……」

 

 

 困った顔をする一誠に楓と古菲はぷいっとソッポを向いてしまう。

 女子供であろうが敵ならば徹底的にぶちのめすという事に対してどうこうではなく、そうとは知らずに、エヴァンジェリンの言った通り、一誠の皮しか知らず、本質を自力で知れなかった事への悔しさという複雑な乙女心が今の二人にはあるのだ。

 

 

「ダメか……。

仕方ない、それなら――」

 

「!? ま、待つアル! ネギ坊主を鍛えたら何をしてくれるとかあるなら考えても良いアル!」

 

「鍛えてくれたら? うーん……何か好きなものでも買って――いやダメだ、持ち合わせが無い」

 

「き、金品ではなくてこう、心の篭った何かをしてほしいでござる!」

 

「へ? 心の篭った……? えーっと……エヴァにも隠し通せている俺の秘蔵のエロ本を――って、女でガキに渡すもんじゃねーし」

 

「普通に最低ねアンタって奴は……」

 

 

 結果、無自覚に楓と古菲に対して『押してダメなら退いてみろ』をやった一誠は、鍛えてくれた暁には二人に何かしてあげる――という条件で何とか契約を成立させ、ネギは二人に基礎体力向上の修行をつけて貰うことになったのだった。

 

 

 

 

 

「てな訳で、古菲と長瀬に頼んで暫くネギ先生の面倒を見て貰う事になったから、暫くは押し掛けられる事も無いと思うぜ?」

 

「それを聞いて少しは安心したよ。

あのまましつこかったら、軽く痛い目を見て貰うつもりだったからな」

 

 

 エヴァンジェリンの棲み家に帰宅した一誠は、地下室でエヴァと軽く実戦感覚で戦うトレーニングをして一汗かいた後、一服しながら経過報告をしていた。

 

 

「代わりに二人に何かしてやらないといけなくなっちまったけどな」

 

「ふん、生意気に対価を求めてきたか。

それで、何をする気だ?」

 

「えーっと、キャンプにでも連れていってやろうかなって……あんま金も掛からないだろうし」

 

 

 エヴァンジェリンの地下室には魔法によって形成された『別荘』が存在しており、その中に入り込む事である程度本気で力を解放しても現実世界に影響を与えずに済むという、ビックリギミックがあった。

 

 なので現実世界では基礎的なトレーニングに収め、別荘に入った時はガチの修行をエヴァンジェリンとする――というのが現在の一誠の修行パターンであった。

 

 

「これで暫くは私自身の進化に集中できる訳か……」

 

「ま、そういう事だが……良いのか? 俺の修行の相手をしてくれるのは割りと助かってるが、そこまで俺に付き合う必要はねーぞ?」

 

 

 割りと便利な場所だが、かつてと違って全力で鍛えられる相手が居ない。

 当初はエヴァンジェリンが用意したらしい思考機能をオンミットした大勢の茶々丸相手にトレーニングをしていたのだが、瞬く間にスクラップにしてしまったので現在は闇の福音に戻ったエヴァンジェリンが主に一誠の相手であった。

 

 

「お前だけに先に行かれても癪だし、お前が怒りを爆発させて理性が飛んでしまった時の為の保険でもある。

それに、封印が解かれて全盛期を取り戻したからといって満足しているほど私は気楽な性格ではないからな」

 

「お前がそう思ってるならそれで良いけどよ……」

 

 

 一誠との過ごした時間により、全盛期以上の力となっているエヴァンジェリンだが、遥か先に立つ一誠を知ってしまった今、それだけでは満足できない。

 一誠の生きる世界を生きてみたいと望む様になったのだから、当然彼の立つ領域に到達するのは必然だし、何より何時までも力で一誠に劣っているのは嫌だった。

 

 

「む、何だその目は?」

 

「いや、エヴァってやっぱ変だなーって」

 

「変? なにがだ?」

 

「だって封印を解く為に俺を利用するって言ってたし、その目的はもう果たした訳だろ? もう俺は用無しじゃないのかなってさ……」

 

「確かにお前の面倒を見ると決めた理由は果たされたし、お前の言うとおり、その目的だけだったら用無しと言えるだろう」

 

「………」

 

「だが、お前以外に私の退屈を紛らわせてくれる者等存在しない。

アホでスケベで、そこら辺の女に騙されて金をむしりとられる大間抜けだとしてもな?」

 

 

 だからエヴァンジェリンは更なる進化を渇望した。

 地獄から這い戻り、友を喪っても尚友の意思を胸に今を生きようとする一誠がこの先歩むその道を歩む為に……。

 

 

「だから心配しなくても、私に拾われた時点でお前がどう宣おうが、私はお前を手放す気は無い。

精々私に拾われたのが運の尽きだと思って諦めろ? ククク……!」

 

「変な奴……」

 

「お前にだけは言われたくないな? ふふっ……」

 

「お前のそういう所……やっぱり好きだわ」

 

 

 修学旅行の件以降、エヴァが作成した人形に入り込む事で独立して動けるようになったドライグが、現在人形形態でエヴァの封印が解除されると同時に眷属として復帰したチャチャゼロに追いかけ回されているのを二人して眺めながら、奇跡の出会いをしてしまった二人の人外は笑い合うのだった。

 

 

「ところで茶々丸がお前の寝ている部屋から低俗極まりない雑誌を見つけて来たのだが……」

 

「げっ!? そ、それはだな……!」

 

「こんなものを持ち込む奴には、今日はしてやらんぞ?」

 

「うっ……! い、いやそれはちょっと困るぜ? さ、最近マジでお前居ないと寝れなくなっちまってるし……」

 

「罰だ馬鹿者……。

今日は大人しく一人で――のわっ!?」

 

「返せとも言わないし、処分してくれても構わないから、お願いだエヴァ! なっ!?」

 

「や、やめろこのバカ! ど、どこを触って……!」

 

「ええい、だったら今寝る! ぜってー離すかァ!!」

 

「わ、わかったから止めろ! チャチャゼロとドライグと茶々丸がこっちを見ているから!」

 

 

 割りと仲良く。

 

 

「すぴーすぴー……」

 

「ま、まったく、本当に図体だけはデカイ子供め……!」

 

「マジデガキダナコリャア」

 

「じーっ……」

 

「前にも言ったろ、一誠は信用した相手にとことん弱くなると。

無防備な姿を晒せるほどお前達を信用しているんだよ」

 

「ダ、ソウダゼ御主人? 御主人ハドウナンダヨ?」

 

「………。コイツがどうしてもと私に土下座でもすれば考えてやらんこともない」

 

「ホー?」

 

「な、なんだチャチャゼロ? 何か言いたいのか?」

 

「イヤ別ニ? ソウ言ッテル割ニハ、イッセーニ抱キ着カレテ満更ジャネーッテ顔シテルカラナ」

 

「ふ、ふん……仕方なくだ! 私は悪の魔法使いだ。だから後でコイツの目の前で都会のど真ん中でカントリーマアムを食ってやるし、朝食の時にランチパックを食べてやるぞ!

オマケに女だが『少年』マガジンを読んでやる!!」

 

「…………。悪ノ基準が低レベルスギルゼ御主人」

 

「それは俺も思ったが……放っておいてやれ」

 

「んー……」

 

「っ!? こ、このバカイッセー!? 昨日もそうだったが、どこに顔を……!」

 

「…………オイ、ドライグ。

オ前ノ相棒ガ御主人ニセクハラシマクッテルゾ?」

 

「…………。放っておいてやれ」

 

 

終わり

 




補足
エヴァにゃんの件で殆どの裏を知ってる者達からは腫れ物扱いされてます。

そして困った事にそのせいでエヴァにゃんがスプリングフィールドさんに対する関心が消えてしまうという……。

弟子入りも苦難化したネギ先生の明日はいずこへ……。



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