色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

なのですが、色々と吹っ飛びました。



取り戻す心

 地に這いつくばろうとも。

 何度叩き堕ちても。

 

 

『い、いい加減死ねよ!! もうお前は主人公でもなんでも無いんだよっ!!』

 

『やたらそんな主人公(しょうもないもの)に拘りがあるみたいだが、そんなものなんてテメーにくれてやる。

だがな、テメーに殺された父さんと母さんの仇を――そしてテメーの気分だけで地獄に突き落とされたリアスの仇を取らなきゃ――死ぬわけにはいかねーんだよ!!』

 

 

 内に宿した覚悟の業火(ココロ)と誇りは決して消さなかった。

 

 

『今度こそ死ね!!』

 

『俺一人地獄にはいかねぇ……! テメーも、リアスを裏切ったボケ共も皆まとめて道連れにしてやるっ!!!』

 

 

 みっともなくても良い。卑怯者と蔑まれようが構わない。

 

 

『アナタには感謝しているわ。

もし元・眷属達(カノジョタチ)みたいに、アナタのお眼鏡とやらにかかっていたらと思えば、私の今は確かに幸せだわ。

イッセーと出会えたから――そしてイッセーと一緒に生きたから『自分』を捨てることはなかった……!』

 

『こ、この無能の我儘女がァ……!!』

 

『アナタの中での私がどう見えているのかなんて興味は無い。

嫌いたければ好きにすればいい、そうやって自分の思う通りになる者達に囲まれて生きたければ生きれば良い……! だけど、イッセーとこの先を生きる為に――アナタに勝つ!!』

 

 

 どんな事をしても生き延びる。

 そして共に先の道を歩み続ける『自由』を取り戻す。

 

 

『さぁ行こうぜドライグ! リアス!!』

 

『ああっ……!』

 

『ええ!』

 

 

 赤龍帝・兵藤一誠……灼熱の時間(とき)

 

 

 

 

 

 

 

 

 燃え盛る業火のような生を潜り抜け、そして確かに掴み取れた自由。

 しかしそれ以上に一誠は大切な者を喪ってしまった。

 

 守るべき筈の悪魔の少女に最期の最期に守られてしまった自責の念を抱いたままその生涯を閉じた青年は、パラレルワールドにて結城リトとして相棒の龍と共に生まれ変わってしまった。

 

 最初の10数年はリアスを喪った途方もない喪失感――そして何より本来の結城リトしての生を邪魔してしまった事への自責の念により誰にも心を開く事は無くなってしまった。

 

 だがそんなリトは別の惑星から家出同然にこの地球へと逃げてきた少女と出会い、宇宙人の存在を知り、そな宇宙人の少女を取り巻くトラブルに巻き込まれていく内に、リアスに近しい気質の殺し屋宇宙人少女や宇宙人の少女の双子の妹の片割れとの出会いによって徐々にその情熱の炎を取り戻し始めていた。

 

 そう――銀河の覇者と呼ばれし少女の父親との最初の戦いで敗北したのも大きな岐路であっただろう。

 

 

「はははっ! 完全に力を取り戻した俺をここまで追い込むとは、やはりお前は大した小僧だ!

その力認めてやる! 俺がこれまで戦ってきた中で、お前の右に出る者は一人としていなかったと! この俺が―――お前を最強の敵と呼んでやる!!」

 

「ぐ……ぐぐっ……!」

 

 

 その僅かな炎は一度目とは違い、初めから完全な状態での宇宙の覇者との再戦(リベンジェンス)により大きく――再燃する。

 

 

『イッセー! お前はここで倒れる気か! お前の力はまだこんなものではない筈だ!!』

 

「う……ぐぅ……!!」

 

 

 二度目の戦い。

 この時の為に全ての準備はしてきた。

 本来の肉体との差も出来る限り縮めてきた。

 

 だが、まだ何かが足りない。

 リトとして――イッセーがかつて持っていた何かがまだ足りない。

 その差が、宇宙の覇者――ギド・ルシオン・デビルークによって極限まで追い込まれている。

 

 

「それ以上はよせ、俺はお前と確かに殺し合いに近い戦いを楽しんではいたが、別にお前を本気で殺すつもりはねェ。

最早勝負はついている……今回は俺の勝ちだ」

 

「………」

 

 

 思う存分戦える空間での死闘は数時間にも及んだが、壁に叩きつけられて意識を失いかけているリトと、立っているギドを見ればどちらが勝者なのかは一目瞭然である。

 

 

「結城リト! 立ってください! アナタが……アナタがここで終わる人間ではない!」

 

「リト……!」

 

 

 準備はしてきた。

 出来る限りの壁は乗り越えてきた。

 だけど勝てない。

 

 いや、足りない……。

 かつてリアスと共にあった時には確かに持っていた筈の心が……。

 だから勝てない……。

 

 

「例の金色の闇――それにナナか……。

くく、良い応援じゃねーか? だが、やはりここまでだな」

 

「……………」

 

 

 その最期の欠片が埋まれば……。

 意識が混濁していく中でリトは、ギドの言うとおり、ボロボロになる自分を見るヤミとナナの声が耳に入る。

 

 

(ドライグ……リアスちゃん……)

 

 

 今も自分を支えてくれる最良の相棒の声が……。失ってしまった最愛の悪魔の在りし日の姿が頭の中に浮かび上がる。

 

 そう、リトはわかっている。今を含めて完全な全盛期はドライグとリアスが居たからであると。

 その片方を守れずに喪ってしまった今、最早全盛期等永遠に取り戻せないし、その先の領域へ進む事もできないのだと。 

 

 

(へへ、ちくしょう……やっぱり俺は――)

 

 

 粋がってもここまでだった。

 その現実がリトをこのまま地に伏せさせようとする。

 

 だがしかし――

 

 

「が、頑張れリト! アタシは――アタシはリトが父上に負けたって変わらない! 負けても良い! 弱くても良い! 力が無くても良い! だから――」

 

「一緒にたい焼きを食べましょう! だから――」

 

「「頑張れ……!!」」

 

「……!」

 

 

 ヤミとナナの声が混濁していたリトの意識を蘇らせる。

 

 

『ここまで言われて、お前はここで終わる気か? 違うだろう……? 俺の知るお前はここでくたばるタマ等では断じて無い!』

 

 

 そして内に宿り続けるドラゴンの声が届いたその時――

 

 

(み、皆して無茶ばっか言いやがって。

あの化け物宇宙人オヤジのせいでもう身体はガタガタでさっさと寝たいんだよ俺は……)

 

 

 兵藤一誠であった青年は……。

 

 

(ちくしょうで、でもよドライグ……イヴ……ナナ……。

コイツ等の前で不様な姿見せたくない。そしてリアスと共に在った思い出やあの約束も……!)

 

 

 結城リトとしての殻を破り……。

 

 

(わかったよ、もう捨てない。俺の全てを――)

 

「! 結城リト……お前まだ――」

 

「二度と捨てて……! 捨ててたまるかあぁぁっ!!!!!」

 

 

 再びその心は――無神臓は燃え上がる。

 

 

「王様よ、本当の意味で壁を乗り越えるって意味を教えてやる! そしてこれが今の俺の全てだァ!!!」

 

「っ……! ふははははっ! 本当にお前は俺を楽しませてくれる!!」

 

 

 赤龍帝・結城リト――ver.無神の赤龍帝モード。

 

 灼熱の時間(トキ)

 

 

 

 

 

 

 再び小さく燃え上がった炎は灼熱へと変わり、足りなかった最後の欠片(ピース)を今再び埋め直した結城リトとギドの死闘はやがて伝説の一戦としてデビルーク星では語り継がれる事になるのかもしれない。

 だが本人達にしてみれば伝説になることには何の興味も無い。

 

 

「クソ、あの化け物宇宙人オヤジ……前より絶対にパワーアップしてやがった」

 

「そのデビルーク王に、あの状況から心を蘇らせ、引き分けに持ち込めただけでも充分過ぎる戦果ですよ」

 

「父上は満足そうに母上に支えられながら帰ったしな」

 

 

 死闘から二日後、顔や身体中にまだ死闘の痕が残るリトは、それから引き分けには持ち込めたものの結局勝てなかった自分の不甲斐なさに軽く不貞腐れていた。

 

 その不貞腐れ具合のせいで、ララやモモ辺りは下手に声を掛けたらヤバイと話し掛けられはしなかったが、ヤミとナナだけはそんな不貞腐れたリトと、約束の通りたい焼きを食べながらのんびりとしていた。

 

 

「まあ良いさ、更に壁を乗り越えるまでだ」

 

「それが完全に復活したアナタの無神臓(ココロ)という訳ですか……」

 

 

 美柑が持ってきてくれたお茶に口を付けるヤミの声にリトは肯定こそしなかったものの否定もしない。

 そう、あの一戦で燻り続けていた本来の無神臓(ココロ)が甦ったのは事実だった。

 かつてはリアスの存在が己の心を決して折ることない領域に到達させていて、この度はこの二人によって甦った。

 もっとも、本人達には口が裂けても割りと恥ずかしいので言いはしないが、この二人の声で復活したのだけは確かな事実だった。

 

 

「ヤミはリアスって人の気質に似てるんだろ? アタシには何も無いんだよな……」

 

 

 そんな片割れのナナはヤミと違って自分には何も無いことを気にしているらしく、ちょっと落ち込んでいる。

 

 

「別にあろうが無かろうが関係ないよ。

リアスちゃんにヤミがちょっとだけ似てたのは偶々ってだけの事だし、別にヤミをリアスちゃんとは思わないし、そもそも……なぁ?」

 

「……………私の胸を見て言うのはやめて貰えます? 腹が立つのですけど」

 

 

 そんなナナにリトはヤミを軽くおちょくりながら関係ないと言う。

 

 

「実際、ナナには随分色々と助けられてきたよ。

だから……お前はそのままで良い、無理に自分を曲げちゃダメだ。

えーっと……なんつーか、別にそういう意味じゃないけど、何時ものナナが俺は好きだからよ?」

 

「う、うん……!」

 

「…………。私の事は貧乳呼ばわりするくせに、プリンセス・ナナにはそういう言葉なんですね? やはりちょっとムカつきます」

 

「仕方ないだろ、だって貧乳は事実――あぶねっ!?」

 

 

 貧乳呼ばわりしたせいで怒ったヤミが、すっかり進化した実力でリトに襲い掛かる中、ナナはリトに今言われた言葉に対して少し心の中が暖かくなった。

 

 変わらない……自分を決して変えてはいけないという、その心が。

 

 そんなほのぼの(?)としたやり取りが結城家のお庭で繰り広げられていると、ここ二日は話しかけてこなかったララとモモがいきなり血相を変えた顔でやって来た。

 

 

「た、大変だよリト!!」

 

「緊急事態です!」

 

「あ? ……チッ、なにが?」

 

 

 暫く大人しかったモモに馴れ馴れしく話し掛けられたせいでイラッとしたのか、相変わらずな反応を示すリト。

 しかしララもモモもそれどころではないとばかりに言う。

 

 

「ぱ、パパが宇宙全土に言っちゃったみたいなの……」

 

「? 何を?」

 

「いやその……まことに納得なんてできませんが、リトさんをナナの婿として迎えると……」

 

「は……?」

 

「な、何だって!?」

 

 

 どうやら引き分けに転んでもタダでは起き上がらないオヤジだったらしく、自分のボロボロのナリを晒して『地球人の結城リトは俺と引き分ける程に強いから、その結城リトが惚れ込んでる俺の娘の一人のナナの婿ににする』……と、勝手宇宙中に発信してくれちゃったらしいのだ。

 

 

「な、何勝手に言ってんだよ父上は!?」

 

「デビルーク星に戻った直後に発信したみたいで……こんな映像つきで」

 

「こんな映像……? ―――って、な、何でこんな所が撮られてるんだよっ!?」

 

「結城リトが寝ぼけてプリンセス・ナナを抱き枕にして寝ているばかりか……え、えっちぃな事をしてしまってる映像ですね」

 

「」

 

「嫌がるザスティンに無理矢理隠し撮りさせたみたいで……」

 

「これは端から見れば言い逃れできませんね……って、う、うわぁ……私より遥かに小さいナナの胸を――」

 

「は、遥かに小さいは余計だモモ!!」

 

「わ、私が最初にリトと知り合ったのに……」

 

「あのザスティンとかいう奴はどこだ……!

取り敢えずまずは奴をぶち殺してやる……!」

 

 

 ガハハハ! と、リトとの死闘でボコボコになっている顔と包帯だらけの身体で映像発信しているギドに、リトは『もっとぶん殴っておけば良かった』と頭を抱え、ヤミは微妙に納得してなさそうな表情で映像を見ていて、ララもモモはナナに対して恨めしそうな顔をするし、ナナは戸惑いつつも頭を抱えているリトをチラチラ見ている。

 

 

「あ、あの宇宙人オヤジも喋れねぇ程度にもっとぶん殴っておくべきだった……!」

 

「わ、悪いリト、嫌だよなこんなの……?」

 

「ぅ……!? い、いや別にナナがどうとかって訳じゃないんだが……。しかもこれに限っては俺がやっちまってるし……」

 

「へー? ではそこまで嫌でもないと……?」

 

「そりゃあまあ……。

ナナは全然リアスちゃんに似て無いのに、なんか落ち着くというか、妙に安心するというか……」

 

『………』

 

「そ、そうなのか……? あ、あはは……ありがとなリト? 嬉しいよ……」

 

「――――――ってそうじゃねーよ!? ヤミまで冷たい目をしやがって……! 悪いのはこの自由人な王様だろうが! 俺は悪くねぇ!!」

 

「う、うん! これはリトのせいじゃないよ!」

 

「ですから今すぐに一夫多妻を条件に入れるようにお父様に――」

 

「するかボケ!」

 

 

 どさくさ紛れに余計な事を言っているモモを罵倒しつつ、リトはどうしたものかと頭を抱える。

 

 

「す、すまねぇナナ。

ち、ちくしょう、お前をリアスちゃんと間違えてる事もお前に失礼だってのに……」

 

「私も間違えるじゃないですか。

胸萎んだ? なんて言われてムカつきますけど」

 

「アタシも結構な頻度の寝言で言われるけど……ありゃあ仕方ないだろ」

 

「確かに、認めざるを得ない程の大きさですからね彼女は……」

「ご、ごめん」

 

 

 どこまで行っても自分にはリアスしか居ないという確固たる信念はあるが、微妙にジト目のヤミと寂しそうな顔をするナナを見てると、何故か変な罪悪感が沸いて出て仕方ない。

 逆にララとモモからは何を言われても何の罪悪感は無いのにだ。

 

 

「春菜が知ったら気絶しちゃうよ……」

 

「あ? 何でそこで西連寺さんが出てくるんだよ?」

 

「く、り、リトさんさえ受け入れてさえくれたらハーレムが完成するのに! ねぇリトさん? 本当はハーレムとか好きなんでしょう? 実は満更でも……」

 

「ファッキュー、ぶち殺すぞゴミが。

俺に何の妄想を抱いてるかなんて反吐が出るほど知りたくねーが、仮にテメーの妄想が当たってても、テメーの全裸なんぞテメーの母親もろとも見たところで勃たねぇなムシケラ?」

 

「」

 

「モモ……どうしてそうなんだよ?」

 

「最早プリンセス・モモは病気ですね、ここまで来ると……」

 

「じゃ、じゃあ今ここで裸になりますけど!? 本当に無反応か確かめさせて欲しいんですけど!!!?」

 

 

 終わり。

 

 




補足

一応リアスさんを喪った事で欠けていたピースが埋まった形で無神臓が完全復帰しました。

ブルー進化ベジータが身勝手ではない自分のやり方で進化したように……。


その2
結果、引き分けに持ち込んだのですが、余計わくわくしちゃったギド様がそのテンションそのままに動画配信しちまったもんだから、おかしな事に。

例の光景まで宇宙中にばら蒔かれてしまう悲運。


その3
怖いもの知らずなのか、後日それを知ったメアさんが訊ねたら――――地獄の九所封じフルコースからの神威の断頭台をくらったらしい。

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