色々なIF集   作:超人類DX

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憑依のパターンの奴。

執事とは逆に……ぺたんこの母性が限界突破してる模様


憑依リトシリーズ・『並ぶ者・支える者』

 リアスという悪魔の女の為だけに、誰にも届かぬ領域へと到達した。

 

 そのリアスと永遠の別れのなり、肉体が変わり、名が変わっても。家族が居てもアイツは、リアスを喪った喪失感が理由で独りで居ようとした。

 

 それが何の因果か宇宙人と名乗る小娘と出会った事で少しずつだが変わり始めた。

 そしてアイツは『敗北』をした。

 

 全力を出した結果、半歩の差で負けた。

 

 それからだろう、リアスとの思い出に囚われ、前へと進むことが出来なくなったアイツが同じように少しずつ前への進み始めたのは。

 

 好き嫌いの激しさは全く変わらないが……。

 

 だが、アイツが一誠であった頃から共に生きて来た俺として良い傾向に繋がっていると思う。

 

 負ける事で刺激され、少しずつだが周りの状況を見始める事で、アイツは『進化』を再開する様になれたのだから。

 

 何度も言うが、好き嫌いの激しさは変わらないがな。

 

 

 リアスはもう居ない。

 アイツもそれは承知で、忘れられないのは俺だってわかっている。

 リアス程『相性が良すぎた女』は居なかったし、何よりリアスも守られるだけの女に甘んじなかったからな。

 

 アイツと肩を並べ、共に抗い続けた最良のパートナー――それがリアスであり、一誠からリトへと世界ごと生まれ変わった今、リアスに匹敵するパートナーはそうそう居ないだろう。

 

 もっとも、俺個人としてはイヴという真名の小娘がいい線行ってると思うがな。

 性格や見た目こそは違えど、あの小娘はリアスに近い気質だし、小娘自身もリアスに似ていると言われても『リアスとは違う道でアイツに追い付く』と言った。

 

 だから俺は小娘にちょくちょく教えたくなるのさ。

 

 アイツとリアスを見てきたせいか、『意思の強い者』は好ましいのでな……。

 

 もっとも、最近はもう一人――力ではない意味でリアスに近しい小娘と出会せたのは大いにプラスだ。

 

 最初に出くわしたララという宇宙人の妹の片割れのナナという小娘が。

 

 逆に片割れのモモだとかいう小娘は完全に一誠…………いや、リトに対する最初の接し方を間違えたせいで死ぬほど毛嫌いされてしまって、ちょっと俺でも不憫に思う程ではある。

 

 同情は全くせんが。

 

 

 とにかく、宇宙人の小娘から始まった繋がりによって、一誠としてのリトで止まってしまった時が再び刻み始めたのだけは間違いない。

 そして久しくなかった敗北を経験もまたリトとしての進化を刻む良い刺激となった。

 

 

 何れはリベンジするその日まで、俺はリトとして生まれ変わった一誠を見ていく。

 

 

 

 

 父親との壮絶な殴り合いの果てに敗北を喫し、一時は誰も声を掛けられない程気分を落ち込ませていたリトは、必ず追い付くと宣言したヤミや、地球にやって来た当初は姉と妹をぞんざいに扱っていたという理由と、やかましいという理由で互いに嫌っていた筈のナナによって立ち直った。

 

 そして進級し、ルールに厳格なクラスメートに一時期は絡まれたりもしたけど、『関心のない存在』に対しては何を言われようが無表情で無視を決め込み続けた結果、何時しか何も言われなくなった。

 

 もっとも、リトは基本的に学校で騒ぎを起こす事はしないし、ララも騒ぎを起こしたらリトに見捨てられると思っているので、問題生徒認定される謂れは元々無かったりするのだ。

 

 

「…………」

 

 

 さて、そんな立ち直っていくリトを『ただ見ているだけしか出来なかった』と思っている、リトが始めて出会った宇宙人美少女ことララは、後から出会った筈のヤミや妹のナナがどんどんリトに心を開いて貰えているという状況に酷く寂しさを感じていた。

 

 

「なあ、モモが家の庭の花壇に頭から突っ込んで動かなくなってるんだけど……」

 

「ああ、部屋に勝手に入ってきたかと思えば、お前等の故郷の星について語りだして『一夫多妻性が認められるからハーレム作りましょう! そしてついでに私もその中に入れてください!』――って勝手にほざき散らしたもんだからよ……」

 

「モモさんって……」

 

「どうして尽く結城リトの地雷を踏めるのか、逆に不思議です」

 

「……なんか悪い」

 

「別にキミが謝る事じゃないさ」

 

 

 大体何時もの結城家の日常。

 ララの妹の片割れであるモモが、散々酷い目に遇ったというのに、何を思ったのか、リトに対する地雷をまたしても踏み抜いて、確かにリビングから見える庭の花壇には、まるで何処かの犬神家の様な姿でピクリとも動かないモモが見える。

 

 双子の妹の何度目となるかも最早数えるのが億劫となる地雷踏みに対して、内容が内容なだけに擁護もできずにただ謝るナナだが、リトはそんなナナに対しては実妹の美柑や、元は殺し屋のヤミ並に態度が柔らかいので、気にするなと言っている。

 

 

(どうしてナナには優しいんだろうリトって……)

 

 

 そんなやり取りを、下手な言動のせいでモモみたいに毛嫌いされてしまうからと恐れて、信じられないくらい大人しくなってしまった長女のララは、ナナに対して羨ましい様な感情を渦巻かせている。

 

 

(ヤミにもそうだけど、どうやってあんなに仲良く……)

 

 

 宇宙人としては最初にリトと知り合った筈なのに、気付けば後から知り合ったヤミやナナが一番リトと仲が良いのだから、ララにしてみれば、ここ最近は生まれてこの方抱いたことのなかった嫉妬にも近い感情があった。

 

 それは最初の方に、知らずにララがある晩に寝ていたリトが譫言の様に何度も呼んでいたリアスという名の誰かについて聞いた事で、その時のリトの『虫けら以下の何かを見る様な目』を向けてきた事がトラウマになってしまい、自分の個性ともいうべき天真爛漫さが完全に発揮できなくなってしまったのが大きいのかもしれない。

 

 これこそ、まさにリトを知ってしまったが故の不幸だろう。

 

 

「そーいや父上がリトの様子が気になるみたいなんだけど……」

 

「だったらあの親父に言っといてくれよ? 『今度そのツラ見せたら確実にぶちのめす』って」

 

「うんわかった。多分喜ぶと思うけど」

 

「下手をしたら負けていたのは自分だったと自ら認めてましたからね、あの時も。

恐らく、自分と拮抗する強者の出現が嬉しいのでしょう」

 

「あんまり怪我する事はしないでよ……? お母さんが聞いたら本当に大変なんだし」

 

「…………」

 

 

 何がダメなのか。

 ララは未だにわからない。

 

 モモがダメな理由は普通にわかるのだが、自分は一体何が足りないというのか……。

 

 その毒にも薬にもならなくなってしまった――自分の個性を潰してしまったことが恐らく一番の理由であるのだけど、ララは下手な事をして今度こそ本当に見捨てられる事を恐れてしまっている。

 

 ある意味ララにとって、リアスという未だに会ったことのない名が『トラウマ』なのだった。

 

 

 

 

 下手に計算高いのと、どこかでリトを軽く見た事で、デビルークのお姫様三姉妹の中では徹底的に嫌われてしまっている三女のモモ。

 

 もっとも、つい最近やって来た実母のセフィがぶっちぎりでリトの嫌悪メーターをぶち破ったので、実質2位ではある。

 

 あるのだが、双子の姉であるナナとの露骨過ぎる差はやはりモモにとっては不満なのである。

 

 

「何でナナは良くて、私とモモはダメなんだろうね?」

 

 

 だから相談をあの天真爛漫な姉から受けた時はちょっとビックリしたし、確かにとも思った。

 

 

「様子を見た所、『土足でズカズカと自分の中に入ってくる者』が男女関係なくリトさんにとって嫌悪の対象の様ですね。

お姉様はそういう覚えはありましたか?」

 

「……前に一度だけ」

 

「そうですか……。

ですが不思議なんですよ、どう見てもその禁忌を犯している筈のヤミさんやナナには全く怒らないのが。

だから二人の共通点を探した結果、胸が足りない事に気付いたので、この前リトさんに尋ねてみたのですよ」

 

「なんて?」

 

「『リトさんは所謂ぺったんこなのがお好きなのですか?』と……」

 

「そしたら?」

 

 

 何と無く――いや、先が確実に読めるモモのリトへの質問の答えを一応聞いてみるララ。

 すると案の定、モモは苦い表情だった。

 

 

「その時は何もされませんでしたが、一言―――『よほど、くだらねぇ事をほざくその舌を切り落されたいんだな?』って、心底冷めきった顔で言われました」

 

「うわー……」

 

 

 本当に予想した通りの事を言われたらしいと、ララはモモの百発百中さに引いた。

 何せこのモモはそれだけ地雷を踏みまくっているというのに、全く反省しないのだ。

 

 というか、リトをそこら辺の男の様な願望を持ってる筈と、妙に拘っている節がある。

 

 

「あのさ、リトってモモが思ってる様な事は望んでないと思うよ?」

 

「いーえ! 間違いなくリトさんには他の男性と同じ様な願望を少しはお持ちの筈です! というか持ってて貰いたいんですよ!」

 

「どうして……?」

 

「だってそうあってくれたら、ハーレムですよ!? つまり私とお姉様にもチャンスが回ってくるという事です!」

 

「………………」

 

 

 モモの考察というか願望はある意味当たりではある。

 リト――いや、本来の兵藤一誠はまさにそんな男であるのだから。

 両親を殺され、復讐を誓い。

 復讐の為に鍛え続け、同じ境遇に落とされた悪魔の少女を助け、共に過ごす内に互いにとって無くてはならないパートナーとなることで、彼女一筋となった歴史さえ無かったらの話だが。

 

 

「だからデビルーク星の制度をリトに話したんだ?」

 

「ええ、まさか虫を見る様な目で『じゃあそこら辺の地球人の男の穴にでもなってろクソガキ』なんて言われるとは……」

 

(……モモってこんなに頭の弱い子だったっけ?)

 

 

 どちらかといえばナナの方が苛烈だったのに、いつの間にか逆転してしまってる二人の妹の状況に、ララは微妙な気分だ。

 

 

「ふふん、でもリトさんは言ってましたらね! 『あの頭の緩そうな母親と比べたらテメーの方がまだマシだ』って! それってつまり脈はまだあるって事ですもんね!」

 

(ママが特大の地雷を踏んだから、相対的にそうなってるだけであんまり変わらないと思う……)

 

 

 ドヤッてるモモを見ながら、つい最近地球にやって来た母親とリトのやり取りは記憶に新しい。

 そんな気はしていたが、まさか母の魅了すらまったく通じなかったし、挙げ句悪気の無い天然を母がリトに炸裂させてしまった事で、多分だが、リトは宇宙一ララ達の母を毛嫌いしている程になってしまった。

 

 

 あの時リトが向けた罵倒の言葉は凄まじいものがあったし、下手をしたら本当に殺しに掛かりそうな殺意まで放っていた。

 ナナとヤミが止めてくれたから罵倒だけで済んだが、あの時の母の『生まれてこの方一度も言われた事なんて無い暴言の数々』を受けてショックで固まっていた顔は、ララも忘れられない。

 

 ………まあ、母の自業自得な所もあるとはララも思うが。

 

 

「ああ良かった! お母様の魅了を受け継がなくて! ありがとうございますお母様! アナタの犠牲を踏み台に私は進みます!」

 

「うん、それは思った」

 

 

 モモが今言った事に関してはララも同意する。

 もし母の特性を継いでいたら―――多分初対面の時点で遠くに投げ捨てられてたのだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 破綻の予感しかしないハーレム計画を勝手にモモが企てている頃、ギドへのリベンジの為にこれまで以上に鍛えていたリトは、今日もヤミや付いてくる様になったナナと共に鍛練をすると、家に帰ってシャワーを浴びた。

 

 

「気持ちに身体がまだ追い付いてないな。

微妙なズレというか、ラグがある」

 

『肉体の成長を無意識に抑えてきた弊害だな。

あの宇宙の王も以前よりも進化する筈だし、手は抜くなよ?』

 

「ああ、わかってるぜドライグ」

 

 

 風呂から上がり、服を着替えて部屋に引きこもるリトは、自分の身体を確認しながらドライグと共に進化の方向性を模索する。

 

 

『今までのスタイルを根本的に変えるのではなく、どこか修正をしていくしか無いだろう』

 

「一応それなりに進化はしている筈だもんな」

 

『その鍛練に付いてくるイヴは着実に進化をしている』

 

「そうでなけりゃ困る。わざわざたい焼きまで買わされてるんだからよ」

 

 

 リアスの特性に酷似した気質に目覚めたヤミの成長速度を褒めるドライグに、リトは鍛練の度に財布の中身がどんどん無くなっていく状況に軽く苦い顔で呟いていると、部屋のドアが開く。

 

 

「ミカンがリトが部屋に戻ったって聞いて来たんだけど、邪魔だった?」

 

 

 家族か、良いと言った者以外は決して部屋には入れない。

 ララやモモはそれを知らずに入った事で以前酷い目に遇った訳だが、その数少ない例外がこのナナであった。

 

 

「いや別に……。どうかしたのか?」

 

 

 良いと言った事は無かったが、ナナが入ってきてもリトは怒る事はせず普通の態度だ。

 それがモモやララといった者を刺激するのだが、そんな事はリトの知った事でなかったし、何よりギドに敗けて本当に凹んでいた時期にナナから色々として貰った事で再起する事ができた――という理由があるせいか、寧ろリトの方がナナに懐いている気すらあるのだ。

 

 

「ん、今ヤミがお風呂入ってて、姉上はモモと何か話してて暇でさ? 座っていい?」

 

「ん」

 

 

 誰かに敗北した時点で価値が無くなると思っていたリトに、そんな事は無いと再起するまでの間ずっと元気付けてくれたのがナナだった。

 言動こそズケズケと言うタイプだが、決して土足でリトの中には入ろうとしなかったからこそ、リトは少しずつナナに気を許した。

 

 そんなナナも、強さを示すことしか自分に価値が無いと思い込んでいるリトの生き方を見て、父であるギドに負けた時の弱さを知っていく内に、『放っておけない、出来る限りの事をしてやりたい』と思う様になり、気付けばびっくりする程三姉妹の中で――もっとも、リトや動物達にのみ限定ながら、包容力を身に付けていった。

 

 それこそ、かつて一誠とリアスが互いに足りなかったものを補い合ってきた様に……。

 

 

「どう? 父上には勝てそう?」

 

「まだだ。

まだ何かが足りないんだ。悔しいけど、ナナの親父はマジで強い」

 

「そっか、でもあんまり無茶するなよ? ヤミにも言える事だけど」

 

「わかってる。根を詰めすぎて良かった試しが無かったのはよーく知ってるからな……」

 

「ん、なら良し」

 

 

 でもナナ自身は、共に切磋琢磨するヤミと違って、自分がリトの為になれる様な事が出来るのは少ないと思っているし、ましてやリトやリトに宿るドライグから教えられたリアスという者の様にはなれないと考えている。

 

 それが歯がゆく思うことも最近多くあるけど、それでもナナは放っておいたら本当の意味で独りになってしまうかもしれないリトの横を支えるべきだと思うのだ。

 

 

「……。なんで撫でるんだよ?」

 

「ははっ、最近やってなかったし、なんとなく?」

 

「俺はガキじゃねーぞ……」

 

「わかってるわかってる、あたしが勝手にやってるだけだもんな? 嫌ならやめるよ」

 

「…………別に良いけど」

 

「ホントかっ、ふふ……ありがとな?」

 

「……………」

 

 

 敗けて価値を失う事を恐れている。それがリトの心の内であると知ったあの時から、ナナは見返りを求める事無くリトに無償の気持ちを向けてきた。

 自分が必要なくなる日が来るその日が来る事になろうとも、大きく見えるけど小さくも見えたその背中を支える事が今のナナの気持ち。

 

 

「なぁ、お前は寧ろ俺を嫌ってなかったか?」

 

「まーな、姉上やモモに酷い事するお前なんて最初は大嫌いだったよ。

でも……なんでだろ? いつの間にかそんなの無くなっちゃった」

 

「…………」

 

 

 最初は頭を撫でていただけだったのが、次第に抱き締めるナナは、動物達に向けるものよりも優しげな表情で、リトも抵抗はしなかった。

 

 

「迷惑になるからアタシは言えないし、言わない。

鬱陶しいって思うだろうけど、お前の事は絶対に放っては置かないし途中で投げ出さない。

だから独りで抱え込まなくて良いんだぞ? 大丈夫だ……また父上と戦って、それに勝っても敗けてもアタシは変わらないから……」

 

「変な奴……」

 

「知ってる、アタシ自身の事だからな。

ん、それとごめんな? リアス・グレモリーと比べたらぺったんこで……」

 

「まだ気にしてたのかよ……?」

 

「だってヤミよりも小さいし、ドライグに見せて貰ったイッセーの頃のリトと一緒に居たリアス・グレモリーは姉上より大きいから……」

 

「…………」

 

「なんだよ、その話になると何時も黙っちゃってさ……って、寝ちゃったのか……?」

 

 

 違う強さを持ち始めたナナは、自身のコンプレックスに思う胸に抱かれて寝てしまったリトにとても優しく微笑みながら撫で、起きるその時までずっと包み込むのだった。

 

 

「モモも変な事言わなきゃ、こんな普通なのになぁ……」

 

『………』

 

 

 そんな様子をただ黙ってリトの中から見守るドライグは、単純にナナを『凄い』と思っていたとか。

 

 

 

「ま……まって……リアス……! お、おれを……ひとりにしないで……」

 

「大丈夫……大丈夫だから。アタシはちゃんとここに居るから。

でも、リアスでなくてごめんな……?」

 

 

 その抱く『覚悟』に。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 オマケ・モモさんのリカバリー作戦

 

 

 双子なのにここまでの格差が出来上がってしまったのは、間違いなく『ファーストコンタクト』で大失敗してしまったからであるモモ・ベリア・デビルーク。

 

 母であるセフィの魅了にすら眉ひとつ動かさない程の鋼の精神力は、裏を返せば一途な性格なんだというのがモモの解釈であり、そしてここまで自分に対してもブレぬ嫌悪感を隠そうともしないからこそ、ほぼ女としての意地が発動している。

 

 というか、どこまでも取り繕わらずにリトと接することが出来る双子の姉のナナとかヤミへの対抗心もある。

 

 

「なぁ、モモはアレなのか? リトが好きなのか?」

 

「好きとか嫌いじゃなくて、私のプライドの問題なの!」

 

「だったらさっさと捨ててしまうべきかと……」

 

「二人はリトさんにあんなに優しくされているからわからないでしょうね!? 会う度に舌打ちされる悲しさが!」

 

「流石に私も舌打ちまではされないかなー……でもモモの気持ちはわからないでもないかも」

 

 

 実母のセフィが初登場にしてブッチギリの『リトの毛嫌いする者ランキング』にて一位を獲得したことで、暫定二位となるモモが開催する、ナナやヤミやララを交えての作戦会議。

 

 内容は勿論、今現在クラスメートの猿山ケンイチに誘われて家を留守にしているリトについてであり、どうやって今の状況から少しでもリカバリーが出来るのかについて――であった。

 

 

「別に好きじゃないならリトの事は本当にほっといてやれよ? そういう所だぞ?」

 

「ええ、そういう所が結城リトが毛嫌いする理由です。

なんというか……貴女は結城リトをそこら辺の男と同じ思考回路であると決めつけ過ぎなのです」

 

「そ、それは私も流石に他の男性とは違うとは思っています! だ、だけどリトさんだって男の人なんです! 異性とのちょっとした刺激的なハプニングを絶対に嫌っている訳ではない筈です!」

 

「お前がふざけて実践した結果が今じゃないのかよ……?」

 

「どうしても結城リトをスケベなタイプと思いたいみたいですね。

…………強ち間違いではないのですが」

 

「え、それってどういうことヤミ?」

 

 

 

 本来の人生を歩んだ兵藤一誠ならば間違いないモモの考察だが、生憎本来とは大分逆な人生を歩み、そしてリトとして生まれ変わった彼の心の中はリアス大好き思考回路で埋まっている。

 

 

「そもそもアイツって普通に好きな人が居るからな」

 

「ええ、それで寝惚けると大体私かプリンセス・ナナがその方と間違えられるんです」

 

「それってその……リアスって人?」

 

「謎の人物ことリアスさんですか……」

 

 

 モモもこれまでの失敗から学んでいるので、リトがそんじょそこらの男とは違うのだけはわかってはいる……が、今の時点でリトがナナとヤミことイヴには心を開いてはいるのを考えれば、モモの考えが100%間違いでは無い……筈であると本人は思いたいらしい。

 

 

「ララお姉様に釘を刺されているのでその方の名をリトさんの前では決して口にはしませんでしたが……一体どれ程の方なのでしょうか?」

 

「多分だけど、ミカンは会ったこともないみたいだけど……」

 

「「………」」

 

 

 なので、その謎人物ことリアスがどんな人物かによっては攻め方を変える必要があると考えているモモだが、肝心のリアスの姿も形も見たことがない。

 

 実はナナとヤミだけはある『特殊』な理由でそのリアスと会った事があったりするのだが、主に胸の戦闘力の差に軽く凹まされた事があるが、決してララとモモには言わなかった。

 

 第一そうでなくてもリアスの容姿から何から――そして一誠として共に過ごした時間からして違いすぎる。

 だからこそナナもヤミも敢えてリアスの事については訊ねるようなことは避けているのだ。

 

 リアスに直接今のリトとしての一誠について託された事も……。

 

 

「あ、リトが帰ってきたみたい……」

 

「むむ……結局大きな課題はそのリアスなる人物をなんとかしないといけない訳ですね。

流石に聞いたら取り返しが付かないので聞きませんが、せめて特徴だけでも知れたら然り気無く――」

 

「それこそリトに殺されるぞ……」

 

「彼にとって彼女との事を『他人』に触れられるのはまさに地雷ですからね……」

 

「くっ……! 難しい……! とても難しいです! というか二人は何故そこまで知っているのに嫌われないのですか!?」

 

「そんな事言われても……」

 

「どこかで聞いた地球の言葉には、『慢心・環境の違い』というものがあります。

プリンセス・モモの場合はそれ以前に結城リトに対して嘗めてかかったからというのが大きすぎるのでしょうが……」 

 

 

 その差があるからこそ、ナナとヤミには微妙な仲間意識をリトは抱いているということをモモは知らない。

 

 

 

「おかえりリト? 楽しかった?」

 

「猿山だけかと思ってたら、何故か西連寺さんとその姉ちゃんも一緒だった」

 

「西連寺さん……? ああ、何度かウチに来たことのある……」

 

「お、おかえりなさいリトさ――」

 

「チッ」

 

「う……い、嫌ですね? 私だってこれまでのリトさんへの失礼な行為は反省していますよ? それで今日はどう――」

 

「テメーの知った事かボケ」

 

「」

 

 

 そして最早何時もの通りに、モモが話しかけてきた瞬間、虫けらでも見るような顔になるリトは、美柑、ヤミ、ナナには動物園のお土産コーナーで売っていた馬だパンダだ熊のぬいぐるみをお土産に渡し、ララにはペンギンのキーホルダーを渡す。

 

 

「え、わ、私には……?」

 

 

 まさか自分にまでと一転して大喜びし、その勢いでリトに飛び付こうとして避けられるララにはあるのに、自分に渡すどころか目すら合わせないリトに、ただただ普通に傷ついた顔のモモ。

 

 

 

「なぁリト、モモにはなにもないのかよ?」

 

「流石に少し可哀想ですよ……」

 

「………。チッ、一応あるよ。本当にこんなのには一円たりとも使いたくはなかったがな……」

 

「!!!」

 

 

 そんなモモを見て姉として助け船を出すナナと、ただただ軽く同情しているヤミに、リトは心底嫌そうに……本当に仕方なくといった顔満載で手提げ袋から乱暴にそれを取り出すと、モモに向かって放り投げた。

 

 

「へぶっ!?」

 

 

 見事なまでにモモの顔面を捉えたそれは、本当に安物のプラスチック製の――どう見ても帰り道の100円ショップで購入したと思われるコップだった。

 

 

「西連寺さんに言われなきゃ絶対買わなかったんだ。精々西連寺さんに感謝するんだな」

 

「ふ、ふぁい……! で、でもうれひいでしゅ……」

 

 

 しかしどうにもモモ的には嬉しかったらしく、顔面キャッチしたプラ製のコップを、大事そうに抱えている。

 

 

(や、やった! ちょっとは前進したわ……!)

 

 

 そしてここに来て変なポジティブさによってモモのメンタルは変な方向にどんどん強くなっていくのであったとか。

 

 

終わり




補足

えーっと、ナナたそー
そして、ヤミたそー……だっけ?


実質のこのお二人がリト(ベリーハードバッドendルート一誠)に心を開かれていて、ナナたそーに至っては一誠から懐かれているとか。

 おかげでナナたそーが特にすごいことになってる。


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