勝つか負けるか。
生きるか死ぬか。
昇るか堕ちるか。
人生ってのは大まかにこの二つだと思ってるし、俺の人生の動機は『楽しく生きる』事だ。
故に喰らう。
故に全てを糧とする。
楽しく、気持ちよく生きる為に……ね。
私は堕天使。
けど堕天使として生まれた事に特別なんて感情は無い。
なので同僚さんには小バカにされる事も多いし、見下される事しか無いし、鉄砲玉に使われることもしょっちゅうだ。
でも別に良い……死なないから。
いや、死のうにも守ってくれるヒーローさんが居るからへっちゃらと云った方が正しいのかな。
「ヒュ~♪ 美少女に囲まれてるぜ俺!」
「おい、この状況で他所の女の乳見て鼻伸ばしてんじゃねーよ。レイナーレさん達殺されちまったじゃねーか」
スケベだけど強くて、絶対に私を守ってくれる……ヒーローさんと一緒だから……私は、いや――
「まだ生き残りが居たのね――――一人は堕天使で、一人は…………人間、ですって?」
「お、お、おおお? 紅髪おっぱい悪魔が俺を見てるぜミッテルトちゃまよ! 確変? 俺確変来てる!?」
「心配しなくても即座に玉砕して終わるから黙ってろッス」
「んだよツレねーな……毎晩変態プレイおねだりする可愛い可愛いミッテルトちゃんは何処に行っちゃったのかーしらー?」
「んな!? こ、ここここ、こんな所で言うなよこの変態!」
「「「「…………」」」」
ウチは……堕天使・ミッテルトは――
「いて!? 脛を蹴るなこのロリッ娘め!!」
「うるせーっす! ド変態イッセー!」
そんな男に惹かれただけの女で構わないのだから。
とある事情により、実は悪魔が裏で管理してまーす――的な土地でとある事をコソコソやっていたとか何とからしい堕天使集団が管理を任されてる悪魔集団に殲滅させられましたー……………という話が実はあったりしたりするんだけど、その堕天使集団に鉄砲玉的扱いで加えられてたミッテルトちゃんと、伝で同じく鉄砲玉をさせられてた俺の二人だけが生き残る超皮肉なオチで幕を閉じた――――んな訳もなく、俺とミッテルトちゃんは只今悪魔からどう逃げようかと考えてる所だぜ。
「あーぁ……レイナーレって堕天使は言うわりに弱かったっつー残念なオチってか? 何でこんな程度の奴等に消されるかねー……?」
「く……が……」
まー…………考えるまでも無く叩きのめして堂々と帰れば宜しいのですがね。
「な……ぅ……」
「人間だと思って油断し過ぎだぜ悪魔さん。
つーかそこは頑張って『くっ、殺しなさい』と反抗的な台詞を言おうぜ?」
「くっ、さっさとウチを殺せ……!」
「いや、ミッテルトちゃんは良いからね? 夜にでも言って貰うつもりだし?」
「あ、そっすか」
あの白髪神父がケタケタ笑いながら『あのレイナーレってのは所詮夜のネタにしかなんねーだろ』と言ってたけど、今ならよーく解るわ。
こんな程度に殺られるんだもん……ガッカリだわ。
スキルを使うまでもねーっすわ。
「い、一誠だと? お、お前は居ない筈じゃ……ぐぁ!?」
「おっとと? またまた出ましたねー……。
ったく……どうしてこうもゴキブリみたいにわらわらと」
レイナーレが始末された廃教会に響く多数のうめき声の中に混じる、一誠――つまり俺と同じ顔をした男が一人に俺は辟易しつつも――
「恨みはねーけど、二度と父さんと母さんみたいな事を繰り返したくはねーからバイバイね? どうせ、キミも死んで神様ってのに転生させられたんだろ? だったらそのまま死んで普通に輪廻転生しようぜ? な?」
「がはっ!?」
とっとと殺す。
鉄砲玉の真似事をしてまでレイナーレなる堕天使にコキ使われてきた理由を消化する為に……そしてコイツじゃないけどかつて同じような理由で沸いて現れ、そして殺された父さんと母さんの時を繰り返さない為に……。
「ぢぐじょ……は、ハーレムが……は……」
「欲望に素直だけど、ケタケタ笑ったら女が堕ちるなんてつまんねー力使ってまで叶えるものじゃないでしょ? やっぱ自力で女の子イチャイチャする事に意義があるんだよ……バーイ」
転生者だけは絶対に消す。
父さんと母さんの仇だった奴を全力で殺した時と同じく……絶対に。
「終わったぜミッテルトちゃん」
「ういーす……何でイッセーと同じ顔をした奴とか変に顔が整ってる男ばっかりなんすかねー?」
「さぁ、酒池肉林でも味わいたいからじゃね? 知らんけど」
俺と同じ顔に整形して変な真似をされても困るんでさっさと殺した。
罪悪感? そんなもんはとうの昔に捨てちまったよ。
そんなもんを抱いて見逃したから父さんと母さんは…………いや、今は良いか。
「この悪魔さん達はどうするんスか?」
「別に特に何も……と言いたいけど、一応記憶は消すよ。
『先生』の開発した記憶消しの『お香』を嗅がせてな!」
とにかく俺はこれ以上人生を荒らされたくないから必要以上に力を付ける――それだけなのだ。
「よーし……こうして炊いておけば起きた時にはスッキリとした目覚めと共に俺とミッテルトちゃんと――さっき始末した転生者も綺麗さっぱりデリィィト!! で解決だね。帰ろーぜ」
「おいーす」
なぁ、父さん母さん……。
此処まで息子が非行に走ってる姿に幻滅するか?
「ところで、さっきの女騎士プレイについてのお話についてなんだがねミッテルトちゃんや」
「あーはいはい、ウチみたいなちんちくりん体型じゃイマイチって言いたいんでしょう?
ふんだ! どーせウチはガキ体型ッスよ……」
「いやそうじゃなくて、女騎士の所を『敵に捕らわれた西洋のお姫様』に変更したいというか……」
息子がド変態になっちゃって嘆いちゃうかい? ―――あ、いや父さんと母さんもノリノリで裸エプロンプレイしてたし、これに関しては血筋って事で勘弁してくれよ?
「イッセーの性癖に付き合ってるウチも大概だけど、ホント変態ッスね」
「や~め~ろし~ ミッテルトちゃんからそんな蔑んだ目で見られると逆にコーフンしちゃう~」
「…………」
俺は父さんと母さんの子供……兵藤一誠なんだからよ。
終わり。
オマケ
「そーいや今もおねんねしてるだろう女悪魔達に変なこととかよくしなかったっすね?」
「は? いやいやいや、寝込み襲うとか変態通り越してゲスじゃん。流石にそれはしないぜ」
任務も完了し、後の事は――つーか記憶を消した悪魔さん達には先生が何やかんやとするだろうと思いつつ自宅に帰ってる最中、急にミッテルトちゃんがそんな話を振ってきたので即座に否定した。
俺は確かにアレだけど、そこら辺の境界はちゃんと守ってるというか――――
「基本的に直接的なセクハラはミッテルトちゃんにしかしねーし俺」
言うだけでぶっちゃけるとミッテルトちゃん以外の女に然程興味が無いと言いますか――あれ? これはこれで問題があるのか? 主にロリロリなミッテルトちゃん的な意味で。
「まあ、確かに言うだけ番長で浮気はしないっすもんねイッセーは」
「そうそう、分かってんじゃんか」
「別に……ただ確認しただけッスよ。
ボインな他の女に興味出たら何時でもどーぞー」
なんてちょっと不機嫌そうに言いながら俺より先を歩くミッテルトちゃんに、思わず笑いそうになってしまった。
そして思わず序でにひょいと後ろから持ち上げて抱っこする。
「わわっ!? な、何するんすか!」
いきなりだったせいか、バタバタと暴れて抗議の声を出すミッテルトちゃん。
うーん……昔からホント体型かわってねーなぁ……。
なんて思いながら顎に一撃貰うアクシデントを挟さみつつ……………取り敢えず耳朶を軽く噛んでやる。
「ひん!? な、なんだよぉ……」
「心配しなくても、此処まで俺にとってドストライクな反応してくれる子はミッテルトちゃんしかいねーから他人な女に走らねーよ」
「だ、だったらそう言うだけで……こ、こんな外で……あっ……く、首はひゃめろっすぅ……!」
あー……もうホント好きだわこの子。
この子のお陰で俺完全にグレずに居れたってのもあるけど、何より好きで好きでたまんねーや。
「へんたい……へんたい!」
「言うわりには惚けた顔だけどね……。
つーかミッテルトちゃんもミッテルトちゃんで俺とタメ張れるじゃんか」
体型とかそんなんじゃなく……俺何かに付き合ってくれてるこの子自身の性質というか、甘えさせてくれる所が好きなんだよなー……。
あ、そんな涙目で見られたらスイッチ入っちゃうよーい。
「うぅ……イッセーのせいでお腹が疼いて熱くなった……責任取れ」
「任せろ、姫様プレイでヒーヒーさしてやんよ」
兵藤一誠。
所属・『先生』直属の始末屋。
終わり。
補足
全シリーズ最強レベルの変態指数ですが、割りと一途……か?
ちなみに悪平等ミッテルトちゃんでは無いです。
そして悪平等でも後継者一誠でもありません。
殆ど自力の独学で人外領域に侵入してます……まあ、例の彼女のは何度か会ったことはありますがね。
その2
ミッテルトたんは……まあ、マゾなロリっ娘です。
故に一誠とのイケナイ夜遊びも平然と付き合うばかりか、かなりノリノリです。