色々なIF集   作:超人類DX

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前回の続き。

サクッと感でどうぞ


◯◯◯同士は引かれ合う

 人間界のとある町の管理を任されている悪魔、リアス・グレモリーが町中で良からぬ事をしている堕天使の一派を成敗しようと町外れの教会に眷属達と乗り込んだ時、目にしたものは殺戮現場同然の光景であった。

 

 全身が何かに貫かれたと思われる虫の息の堕天使。

 

 下半分の顔が見るも無惨に破壊されたリーダ格の堕天使。

 

 腹を空かせた猛獣に襲われたかの如く血塗れに伏す堕天使達の配下と思われるはぐれ複数の悪魔祓い達。

 

 

「こ、これは一体……?」

 

「ぜ、全員生きては居るようですが、我々が到着する前に何者かに襲撃されたようですわね……」

 

「多分、下半分の顔が破壊されているこの堕天使がレイナーレだと思います……」

 

「他にも、レイナーレ配下の他の者達もかろうじて生きてはいるようです……」

 

 

 眷属達が次々と虫の息であるレイナーレやその配下達を調べながらリアスに報告するが、誰も彼も一体誰がこんな事をしたのかという困惑の表情だった。

 

 それはリアスも同じであり、この光景を生み出した誰かは、何故ここまで痛め付けておきながら全員生かしているのかが理解できなかった。

 

 唯一無傷だったのが、神器を宿したシスターの少女で、どうやら意識を失っているだけ。

 

 

「取り敢えずこのレイナーレ達を捕縛し、喋られる程度に治療しなさい。

……どうやら彼女達から話を聞かないといけないようだわ」

 

 

 この町の管理を任されている以上は、必然ともいうべきリアスの判断はきっと間違えてはいない。

 

 ある程度回復させたレイナーレが、精神崩壊を起こしたの如く、裏切り者の堕天使の存在とその堕天使と裏で繋がっていた化け物のような人間の存在を知り、数日の調査の結果、その堕天使と人間が潜伏しているボロボロの借家を突き止め、これを期に転生悪魔として迎え入れたシスターの少女も加えてその場所に赴いたのも、彼女の立場からすればきっと間違いではないだろう。

 

 そう――相手があまりにも理不尽で異質な二人組であることを痛いほど眷属共々思い知らされるその瞬間まで。

 

 

 そして――

 

 

 

「リアス・グレモリーが借金返せない記念~」

 

「恒例の可愛いものしりとり~―――――――せーのっ、ラッコ」

 

 

 かわいい

 

 

「コアラ」

 

 

 かわいい

 

 

「ラベンダー」

 

 

 かわいい

 

 

「ダ……ダチョウ!!」

 

「…………………」

 

「……。全然かわいくない」

 

「な、何でよっ!? だ、ダチョウは可愛いでしょう!? こんなの理不尽――」

 

「罰ゲェェェム!! タバスコのハバネロ割り一気飲みー!」

 

「うっ…!?」

 

「ほら飲めッス、グレモリーの悪魔なら、その無駄に目に優しくない赤髪に恥じない一気飲みくらい出来るッスよねぇ?」

 

 

 リアス・グレモリーとその眷属達は知ってしまうのだ。

 常識を説いても通用しない、真性の異常者を。

 

 

「ん……くっ……!? おえ゛あ゛っ!? い゛ぇっ!?」

 

『ぶ、部長!?』

 

「「わっははははははははっ!!」」

 

 

 悪魔より悪魔のような、堕天使の少女と人間の少年を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

  笑えぬ程に理不尽な堕天使と、自分達と年の変わらそうな身よりも無ければ学校にも通わない人間の少年を知ってしまい、その上『返事はイエスか喜んでかはいと言え』と説得(物理)の末に、二人に干渉せず町の住居を認める事になってしまった悪魔のリアス・グレモリーは、当初こそこの理不尽二人にどう『復讐』してやろうかと、寝る間を惜しんで考えていた時期もあった。

 

 だが、そんな復讐もリアスの身に降り掛かってきた、どうしても避けなければならない状況が迫ってきてしまったが故に中止にせざるを得なくなり、そればかりか、その問題の解決の手伝いをこの理不尽な二人組に床に頭をぶつけながら懇願する羽目になってしまった。

 

 自分のプライドを捨ててまで懇願する程の問題そのものは、文字通りこの理不尽二人組が理不尽に粉砕したくれたので、晴れてリアスは自由にはなれた。

 

 しかしその代償はあまりにも大きかったのだ。

 

 

「な゛ん゛で、わ゛、わだぢが、こんな目に゛……!」

 

「そんなの決まってるっしょ? アンタがさっさとウチ等を雇った賃金を払わねーからッスよ」

 

「元金どころか金利すらまともに払えわず、挙げ句待ってくれ?

なぁグレモリーさんよ、アンタも悪魔の子ならわかるだろ? 願いを叶えるにはそれ相応の対価を支払う。それができなきゃ地獄行きってさ?」

 

「おえ……えほっ!」

 

 

 鼻水と涙で顔面をぐしゃぐしゃに濡らし、信じられぬ激辛調味料を直のみさせられた事で喉までやられて上手く喋れないリアスに対し、ミッテルトと一誠は一切の同情もせず淡々と言う。

 

 

「つーか、アンタの実家金持ってんだろ? 高々800万くらいすぐ払えよ?」

 

「む、無理よ。

実家に話をしたら母が『自分で何とかしなさい』って……」

 

「あー、じゃあ自分で払うしかねーっすねぇ? まあ、最悪こっちからアンタの所の実家に出向いて回収なんて出来るッスけど」

 

「そ、それだけはやめて! は、母に殺される……!」

 

『………』

 

 

 どうやらリアスは『問題解決』の為に戦力として二人を金で雇ったらしい。

 当初はそれこそ終わったら即座に払える腹積もりだったリアスなのだが、実家――というかリアスの母はその事を聞いて激怒し、リアス自身が工面して払う様に命じたばかりか、娘や妹に甘々な父や兄もまた母の目が怖くて手助けできなくなってしまう。

 

 しかも契約の際に結んだ『元金20万に対する金利』が膨らみ続けた結果、利息のみで800万程にまで膨れ上がってしまったのだ。

 

 具体的に言うと、雇ったその日のみ二時間につき元金に対して2割りの利息。

 それ以降は5日つき五割の利息という、闇金業者以外の何者でもない暴利極まる金利で。

 

 当然ミッテルトも一誠も一切リアスに慈悲は与えず、つい五日前は学校で授業の真っ最中だった現場に出向き、その時持っていたリアスの金を財布ごと回収するという鬼っぷりを見せたのだ。

 

 そして5日後となった今日、発生する金利分すら払えないリアスは眷属達と共に『支払い延長』を懇願しに来たのだが、当たり前の様に拒否された挙げ句、理不尽罰ゲームの餌食にすらなった……という顛末だった。

 

 

「どうするイッセー? この悪魔、思ってた以上に金になりそうもねーっすよ?」

 

「こうなったら、町の変態共相手に金をつくって貰うしかねーか?」

 

「ひっ!? ま、待ってちょうだい! そ、それだけは! わ、私まだ処女なの! だ、だから――」

 

「へー? じゃあそれなりに売れそうッスねぇ?

変態はそういう点も買ってくれるしー?」

 

 

 最早鬼畜としか言えぬ物言いを真面目な顔で淡々と告げるミッテルトと一誠に、リアスはガタガタと震えていると、それまで同じように青い顔をしていた眷属達も一緒になって懇願する。

 

 

「そ、そういう方向はどうか勘弁して頂けないでしょうか?」

 

「わ、私達もリアス部長と一緒にどうにかしてお金を作りますから……」

 

「お、お願いします!」

 

「…………」

 

 

 次々と土下座をしていくのは、女王・姫島朱乃。騎士の木場祐斗。最近加入した僧侶のアーシア・アルジェント。戦車の塔城小猫だ。

 

 だが、土下座なんてされても何も感じないイッセーは、無表情でミッテルトに訊ねる。

 

 

「どれくらい売り上げだせそうだ?」

 

「この騎士もホモに売り飛ばして、全員で一週間フル稼働させれば……500万ってとこッスね」

 

「ま、そんな所か。残り三百万はグレモリー個人が所有している財産を差し押さえれば良いかな」

 

『………………』

 

 

 慈悲の欠片も無い会話に今度こそリアス達は絶望した。

 こんな事ならまだライザーフェニックスの慰みものにされていた方がマシだったと後悔すら覚える程に。

 

 もっとも、そのライザー・フェニックスなる者は、一誠が放ったドラゴン波によって絶命こそはしなかったものの手足が消し飛ばされ、今も尚生死の境をさ迷っているのだが。

 

 しかし運はまだリアスをどうやら捨ててはいなかったらしい。

 今まさにリアス達が売り飛ばされる寸前、ボロボロの借家の扉が開かれると……。

 

 

「そのリアスの借金、私が代わりに支払いましょう」

 

 

 黒髪で眼鏡を掛けた少女が現れてそう告げながらズカズカと上がり込むと、懐から1000万円は札束で入っているであろう茶封筒をポンと置いた。

 

 

「なんスかアンタ?」

 

「そ、ソーナ……?」

 

 

 いきなりの訪問と行動に、そもそも目の前の少女が誰なのかも知らないし覚える気もないミッテルトが、一誠と共に訝しげな顔をする。

 

 どうやら、唖然とした顔でリアスが呼んだところによれば、ソーナという名らしい。

 そういえばこの町にはグレモリーの他にももう一勢力の悪魔が居たっけ……とその時ミッテルトは思い出す。

 

 

「確かシトリーの所の娘さんだっけ? アンタが払うんスか?」

 

「ええ……これでリアスは自由と約束して頂けるのであればですけど」

 

「………どうするイッセー? 本物のお金で間違いは無いみたいッスけど」

 

「……………数えるぞ」

 

「………ふふっ♪」

 

 

 

 手に取った限りでは本物の日本円で間違いはない。

 確認と同時に札の計算をミッテルトと共にする一誠を、ソーナという悪魔の少女は何故か楽しげに微笑みながら見ているのが気になるが、金さえ手に入れられれば誰の金でも関係無かったので、きっちり800万円を回収し、残りの二百万円余りはソーナに返す。

 

 

「確かに。

じゃあこれで完済だね。

よかったねグレモリーさん」

 

「な……え……? は、はぁ……で、でもどうしてソーナ……?」

 

「決まっているでしょう? 『友達』だからよ?」

 

「そ、ソーナ……!」

 

 

 困惑するリアスに、ソーナは微笑みながら友だからと宣言する。

 そのある意味男らしさすら覚える言葉に、リアスと眷属達は感激の眼差しをソーナに向けるのだが……。

 

 

「うっさんくせーッスね」

 

「ああ……」

 

「…………」

 

 

 一誠とミッテルトには、ソーナの笑顔がどうにも胡散臭く見えた。

 いや、二人だけではなく、リアスの眷属である筈の小猫もまたソーナを……どこか警戒した様子で見ていた。

 

 こうして鬼みたいな暴利の借金地獄だったリアスは、ソーナという幼馴染みのお陰で解放される事になった。

 

 

「ところで、迷惑料としてこの二百万円もアナタに差し上げるつもりなのですが……」

 

「要らん。

金利と元金以上の金は取らない主義なんで」

 

「………。へぇ?」

 

「なんスかその目は?」

 

「いーえ? ………ふふふっ♪」

 

 

 ただ、どこまでもソーナという悪魔の胡散臭さに引っ掛かりを感じて……。

 

 

 

 

 

 

 最初に知ったその瞬間、ソーナ・シトリーは悟った。

 

 自分と『同じ』だと。

 

 種族としての力ではない説明のつかぬ異質を持つ者。

 

 それはソーナ自身が生まれながらにして持っていて、かつ肉親にすら悟られず仮面で覆い隠して現在までを生きてきたソレと同じモノ。

 

 まさか本当に同じ者が――それもどこまでも自由に、隠すことなく自我を解放しているなんて。

 

 知られたら最後、自分は肉親にすらも消されるかもしれないと思い続けた事で隠し続けてきたソーナにとって、ミッテルト――そしてイッセーという少年は劇的な存在であると同時に、どうしようもなく惹かれていった。

 

 だからわざわざリアスの借金を『利用』し、実家からくすねてきた物品で日本円を作ったソーナは、自分という存在をアピールする為にここまで来た。

 正直に思えば、リアスがこのままどこぞの変態に売り飛ばされようが知ったことではなかった。

 

 幼馴染みであるし、多分友人という関係ではあるのだろうが、ソーナにとって『同じ』ではない者は等しく平等に『カス』なのだ。

 

 

「あ、ありがとうソーナ! この恩は絶対に忘れないわ!」

 

「大丈夫よリアス? それよりも怖かったでしょう? これに懲りたら今後は絶対にあの二人には関わらないこと。

悔しいけど、私たちではどうにもならない存在だし、下手につつかずが得策よ」

 

「…………え、ええ」

 

 

 本来の目的の為に踏み台にしたリアスには今後あの二人に―――特にあのイッセーという人物には近づかないようにと釘を刺した。

 

 まあもっとも、彼もリアス達には何の関心も無いのは態度でわかるが、念には念だ。

 障害はあのミッテルトという堕天使だけで充分だ。

 

 

「で、でもどうやって私はお金を貴女に返せば……」

 

「そんなの良いわ。

金利なんて取らないし、なんなら返さなくても良いわ」

 

 

 だってこれは単なる『投資』なのだから。

 金なんてどうでも良い投資への見返りを考えたら、返済だなんだのは関係ないのだ。

 

 

「頑張りなさいリアス」

 

「そ、ソーナァ……!」

 

「ふふふっ♪」

 

「…………………」

 

 

 感激した抱きついてくるリアスの背中を優しく撫でながら抱き返すソーナ。

 そしてそんな二人を感激した様子で見つめるリアスの眷属達。

 

 ………いや、ただ一人だけ、ソーナに対して『余計な事を』といった『敵意』を向ける者が一人いるが、ソーナは気づかないフリをする。

 

 

(そんな目で睨んじゃって? ふふ、でも私は『悪くない。』)

 

 

 唯一、理不尽な彼に対して別の感情を抱き始めていたらしいが、ソーナには関係ない。

 何故ならソレ以上に彼には『運命』を感じてやまないのだ。

 

 両親や姉に言われて仕方なく抱える眷属達もまた、彼に関わることに反対するが、冗談ではない。

 

 やっと見つけた同質の存在……それも『運命』すらも感じる相手なのだ。

 

 何がなんでも逃がしてなるものか……。

 

 

(ああ、そろそろシトリーって名前も邪魔になってきたわねぇ。

ふふ……あぁ、こんなにもアナタを想うだけでドキドキする。

物言わぬ肉片になってしまったアナタを想像しても変わらないこの気持ち……。

ふふ……間違いないわ、これが恋なのね?)

 

 

 本人が聞いたら間髪いれずに『消えろ』と言われ、ミッテルトが聞いたら殺しにでも来そうな事を恋を知った少女のように夢想する悪魔の少女。

 

 生まれながらの人外の素質を持つ彼女の名はソーナ。

 

 

(仲良くなって、ソーナって呼んで貰って、手を繋ぎながらデートしたり、キスしたり。

それでそれで彼の家のベッドの上で……キャーッ! 私ったらはしたないわ!)

 

 

 ちょっと変な少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

「あの眼鏡の貧乳悪魔、気に入らねーッス」

 

「何がー?」

 

「イッセーをエロイ目で見てたッス。間違いない」

 

「どっちでも良いしどうでも良いよ。

んー……ミッテルト~」

 

「まあ、ウチもあんなのに渡しやしねーっす! ふふ……イッセーは甘えん坊ッス♪」

 

 

再封印終了




補足

説得(物理)で居住に同意させられ。

例の件で戦力を求めた結果金を使わなきゃならなくなり。

 利息のせいと実家(母)が激怒したので自力返済不能となって売り飛ばされかけ……。

肩代わりしてくれた親友と思ってる相手には内心『踏み台』扱いされ……。

割りとリーアたんは泣いていい


その2
ひんぬー会長とガチマイナスのソーたんセンパイを半々にしたのがこのソーたん。

軽い妄想癖がチャームポイント。


その3
そんなソーたんの下心を感覚的に察知するのが白い猫ちゃん。

……この子もまた危険度でいったら上位クラスのアッチに到達出来るかまでは知らない。


再封印! 再封印!!

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