色々なIF集   作:超人類DX

672 / 1034
多分続き。
これ、今更ながら時系列とかめちゃくちゃっす。


かつてのツケ

 人と魔の血を持つ少年は、どちら側でも生きることが出来ない運命により孤独であった。

 

 親にすらその力を恐れられ、挙げ句魔の力を持つ父親は祖父であり魔王の一人であった祖父に殺された。

 

 そんな少年が生きる為に必要なものは、何よりも力が全てだった。

 

 人と魔の血を持ち、白き龍皇を宿す少年が生きる事を主張する為には何者にも翻弄されぬ圧倒的な力。

 

 その力を求めて孤独に生き続けた少年は、同じ孤独と喪失を持つ二人の少年と出会い、生涯の親友同士となった。

 

 そして、ふざけた神の玩具にされていた世界そのものに対して共に抗った。

 

 自分とちょっと気質が似ている悪人顔の堕天使。

 

 その堕天使に想いを寄せ、その為になら自分の地位も名も捨て去る覚悟を持った天使。

 

 情に厚い堕天使という、少年達にとっても頼れる『大人達』と共に……。

 

 

 少年から青年へと成長した今でも、彼等とは共に在る。

 それはどこに行っても変わらぬ、不変の繋がり。

 

 

 もっと強く……更なる領域へと共に到達する最良の仲間達。

 

 

 

 

 

 ルシファーの名と血を超越し、半人半魔のヴァーリとしての個を確立するに至った白龍皇の青年、ヴァーリは戦うことがコカビエルと同等に好きな青年である。

 

 だが、それと同じくヴァーリはとある食べ物が死ぬほど好きだった。

 曰く、一度語りだしたらレシピからになる程にヴァーリを虜にした食べ物は……そう、ラーメン。

 

 世界を破壊し、それでも別世界で生き残ってしまった彼は当初ラーメンという概念が存在しないと知るや否や、どこぞの教祖みたいな真似事をしてまで世界にラーメンの概念を叩き込んだ。

 

 つまり、この世界にとってヴァーリはラーメン道の開祖ということになるのだけど、その事実を知る人間は誰も居ない。

 

 

「スープは良かったが、麺がまるでダメだったなあの店のラーメンは」

 

 

 そんなラーメン教の開祖であるヴァーリは、そこそこ発展をして久しいこの都市にて、食事店を転々としては取り敢えず存在はしているラーメンを食べ歩いては点数を付けて回る趣味をひたすら楽しんでいた。

 

 当初は神牙や一誠なんかも付き合ってくれていたのだが、あまりにもヴァーリが深いところでラーメンについて語るだダメだしをするものだから、少々うんざりされてしまい、最近の付き合いが悪くなってしまった。

 

 ラーメンの奥深さを理解しようとしない薄情な親友二人だとヴァーリは思うが、無理強いしてもラーメンの素晴らしさを理解させられはしないと最近はもっぱら時間があればこうして孤独のグルメよろしくに食べ歩きに奔走する。

 

 

「次は――」

 

 

 ヴァーリは今を楽しんで生きている。

 そして間違いなく孤独ではない。

 

 友や仲間達の背を守る男へと進化した白龍皇はまだまだ強くなるのだ。

 

 

 

 

 

 

 普通にスケベで、普通に女性の胸に鼻の下を伸ばす子供だった彼は、今でこそ記憶から永遠に消し去りたい黒歴史により、ちょっとだけ女性の対象が変化してしまった。

 

 それが彼にとって良いのか悪いのかは別にして、ある意味それによって『対象以外ならば女子供であろうとも敵であるなら確実に始末する』冷酷さを身に付けてしまったのは皮肉であろう。

 

 特に彼は裏切った者への殺意がとても強い。

 

 そしてその裏切り者達に少しでも『似た』者が現れた時の彼の攻撃性はえげつない。

 

 それが無ければ――まあ、どこにでも居そうなスケベな兄ちゃんみたいなものである。

 

 

「あのな、俺は見ての通り単なる街の住人Zなんだわ? だからその――サポートってのは真面目に必要ないし、売り込むならちゃんとした冒険者にしてやりな?」

 

 

 そんな表裏を持つ一誠は、最早癖となっている朝のトレーニングをヴァーリや神牙達と済ませてから、各々が好きに過ごし始める時間帯になった際、ヘスティアに隠れて人妻をナンパしようと張り切って街に繰り出した際、ちょっとした騒動に巻き込まれた事で知り合った少女に『今日も』絡まれていた。

 

 

「いーえ! アナタ様がヘスティア・ファミリアの眷属であることは既に調べております! ですから何卒!」

 

「……………」

 

 

 さて困った。

 一誠は目の前の『少女』のここ数日間の売り込みに対して困っていた。

 

 名をリリルカなる人ではない少女がここ最近しつこい程に自分に対して売り込みをかけてくる。

 

 それ自体はどこにでもありそうな話なのだが、問題なのは『冒険者等でなく、ましてやほぼ無名である自分にどうしてここまで頑なに売り込むのか』であった。

 

 パワーバランスの問題で、冒険者になることは不可能であり、何故この少女がここまで自分に拘るのか。

 

 それはこの少女が一誠の価値をある程度どこかで知ったからなのかもしれない。

 

 

「確かに俺はヘスティアの所に居る。

……………だから疑問なんだ。

何故キミが冒険者が一人も存在しないほぼ名前すら忘れられてるチームについて知っているんだ?」

 

「そ、それはアナタ様がどこに住んでいるのかを自力で調べた時に――」

 

「おかしいな……殆ど俺達のせいで神としては結構腫れ物扱いされていて、嫌がらせのように文献もほぼ抹消されてるヘスティアの事を自力で……ねぇ?」

 

「ぅ……!」

 

 

 一誠の指摘にドキッとするリリルカ。

 そう、一誠の指摘通り、ヘスティア・ファミリアという名前は一誠の存在を知った際に知った名前なのだ。

 どれだけ調べてもヘスティアという神に対する情報が何故か見つからず、ヘスティアの名前もちょうど彼のホームを外から覗いた時に彼がそう呼んで知った偶然。

 

 いつのまにか目付きが鋭くなっている一誠に少しずつ縮こまるリリルカはどう言い訳しようか必死に脳ミソをフル回転させる。

 

 

「まあ、偶然知ったとかそんな所なんだろう? ここ最近のキミはしつけーくらい寄ってくるしな」

 

「………」

 

「どうしてそこまで近寄りたがりたいのかは知ろうとは思わないが、俺達の事をこれ以上嗅ぎ回るなら……多分俺はキミを殺すよ?」

 

 

 そんなリリルカに、一誠はその目を猛禽類のように瞳孔を縦に開き、赤く輝かせながら殺意を向ける。

 どんな理由があれど、自分達の領域に土足で踏み込む輩は例え自身にとって好みの相手であろうが殺す。

 

 それが一誠の培われた結果到達した精神。

 もっとも、このリリルカなる少女は一誠の好みのタイプから大きく外れているのだが。

 

 

「昔みたいに大っぴらに気に入らない奴を八つ裂きにすると、ヘスティアに怒られるから今回だけは見逃してやる。

だから二度と俺達の事は嗅ぎ回るな」

 

「………」

 

 

 最終通告をリリルカにした一誠は、その場から立ち上がり、俯くリリルカに背を向けて歩き出す。

 どこかの回し者であろうが無かろうが、これ以上こちら側に土足で踏み込むのだけは許さないという明確な意思は揺るがない。

 

 意外な程、誰よりも警戒心がその実強すぎる赤龍帝と謎の少女の妙な出会いはこれにて終了――

 

 

「アナタが、赤龍帝と呼ばれる方だから……」

 

「…………は?」

 

 

 ――しなかった。

 

 

「アナタ様が、赤龍帝と呼ばれるかつて神々を相手に大暴れしたお方であるから、私はアナタを探していたのです……!!」

 

「………」

 

 

 久しく呼ばれなかったその称号をこんな年端もいかなそうな少女に呼ばれてしまった一誠は、一瞬思考が止まった。

 そんな一誠にリリルカは――嘘は通じないと理解したのだろう、やけくそのように語り始めた。

 

 自分が、ソーマ・ファミリにに所属する小人族の両親の間に生まれ、そのまま神の恩恵を受けてなし崩し的にソーマ・ファミリアの眷属となった。

 

 

 神々が下天するより前の時代に突如出現し、大暴れした悪夢のような連中の事もその時主神に教えられた事で知った。

 そしてその主神が一誠達を――そしてその一誠達を紛いなりにも制御しているヘスティアに復讐せんと、とにかく力を眷属達に求めた事を。

 

 そんな主神に溺れ切っていた両親は、主の満足する力を獲ようと無謀な冒険をしてあっけなく死亡し、リリルカ自身も生きる為になし崩し的に冒険者となっているが、レベルの上がりにくい小人族であった事や冒険者としての腕は恵まれず、蔑まれ続けた事を。

 

 それはつまり、かつて一誠達がもっとも強い時期だった神アレルギーを発症し、殆どの神々を八つ裂きにしたせいで起こってしまった事だった。

 

 

「へぇ? つまり、俺達を恨んでるその――誰とも覚えちゃ居ないクソ神の復讐道具にされてるのは俺達のせいだから、ぶち殺しに来たってのかい?」

 

 

 しかし一誠はそんなリリルカの事情を聞き……。

 

 

「ま、マジかー……あー、マジで?」

 

 

 途端に狼狽え、目を泳がせながらリリルカの前に座り直した。

 

 

「え、あ、あれ?」

 

 

 これにはリリルカもビックリである。

 どうせ『知るか馬鹿』と言わんばかりに突っぱねられると思っていただけに、殺意も消して実に申し訳なさげに顔を伏せられるとは思わなかった。

 

 

「いやその、俺達を相当恨んでる連中なんて星の数程居すぎて考えもしなかったんだよ。

まさか無関係なキミにその火の粉が飛んでるなんてさ……」

 

「あ、い、いえ……。一応見込み無しって捨てられたも同然なので今は大丈夫だったりはします」

 

 

 いじいじと路地裏の縁石に腰掛けながら地面を指で弄る一誠の意外さにちょっと面食らうリリルカ。

 

 

「す、捨てられたのか!? そ、それも俺のせいか!? いやそうだよな!?」

 

「い、いえ……」

 

「な、なんてこった、あの時のツケがここに来て……。

悪かった、お詫びにその神は責任もってぶっ殺してやるから、まずはそいつの場所を――」

 

「そ、そこまでしなくて良いですよ!? そ、それにこうして赤龍帝様のお姿を見つけられた訳ですし。

思っていたよりも若くて驚きましたが……」

 

「ま、まあちょっと色々とあってそう簡単にくたばれなくなっちまってさ。

てかマジで良いのか? そのなんとかって神の百や千は八つ裂きにできるぞ今でも?」

 

「私はあくまでアナタ様のサポーターになりたいだけですので!」

 

 

 意外と気にしいな性格であることが、かつての主神から聞かされた話とのギャップになって微妙な気分にさせられるリリルカ。

 てっきり何度も言うが、『知ったことか』の一言で切り捨てられると思っていただけにだ。

 

 そしてこんなやり取りがあった後……。

 

 

「この子の生活費は全面的に俺が面倒見るから、ここに置いてやってくれ! 部屋なら結構余ってんだろ!?」

 

 

 一誠はリリルカをホームに連れ帰ると、誘拐でもしてきたのか? とからかう面々の目の前で必死こいて頭を下げて、彼女をここに住まわせるよう懇願した。

 

 

「……ねぇイッセーくん、キミの女の趣味はそういう子じゃないんだったよね?」

 

「冗談いってる場合じゃねーんだよヘスティア。

昔俺が暴れすぎたせいで、時を経てそのツケがこの子に押し付けられちまったんだよ……」

 

「………」

 

 

 あれどうしよう? 一転してトントン拍子に話が……と困惑するリリルカは、かつての主神が散々恨み節をぼやいていた神への冒涜者達の姿を見る。

 

 なんか軽そうな金髪と黒髪の男。

 かなり怖い顔の色白男。

 最初この人がヘスティアなのかと勘違いした金髪の美女。

 

 なんかアホそうな黒髪の男。

 さっきからラーメンばっか食いながらこっちを見てる銀髪の男。

 

 

 語られぬ伝説とまで言われた面々にまさかこんな簡単に会えるとは思わなかったリリルカは、なんだか得をしたような、そうでないような微妙な気持ちだった。

 正直いって、別にリリルカは彼等のせいで自分が不幸だとは思ってはない。

 

 そりゃあ多少なりとも理由にはなるのだろうが、こんな神話レベルの存在を恨んだところでどうにもならないと思っていたし、ましてやここまで気にしてくれるとは思ってもみなかった。

 

 神をもぶっ飛ばす赤き龍帝本人に……。

 

 

「そこまで言うなら別に良いけど……」

 

「! お、お前って奴は! ホント神らしくなさすぎて良い奴過ぎるぜヘスティア! ありがとう!!」

 

「わ、わかったからそんな抱きつかないでよ……恥ずかしい」

 

「おっとすまねぇ。

よし、取り敢えずリリルカだったな? 今日からキミはここで暮らすんだ! ははは! 金が欲しいなら俺が持ってきてやるから安心しろ! ガハハハハ!」

 

「は、はぁ……」

 

 

 こうしてリリルカはなんちゃって廃教会の住人になったとさ。

 

 そして月日はそこそこ経ち……。

 

 

「ふっ、お姉さん。

俺はアナタを一目見た瞬間から、お姉さんに釘付けさ。

だからちょっと薄暗い宿屋でお互いの事を全裸で――ベガッ!?」

 

「脈の欠片もない真似をしてないで、さっさとお買い物に行きますよイッセー様?」

 

 

 リリルカ・アーデは濃すぎる人外魔境達によって、結構逞しく育っていた。

 

 

「こ、腰がっ……!? ば、バッキャロー……! 今のマジで入れたろ!?」

 

「ヘスティア様からも言われていますからね、イッセー様にアホなナンパをさせないようにって」

 

「じゃ、じゃあ普通に止めろよな……? あー、いってー……ちょっとトレーニングし始めたらメキメキパワーアップしおってからに……」

 

 

 そしてその壁も乗り越えて……。

 

 

リリルカ・アーデ

 

level.1

 

力・測定不能

 

耐久A・580

 

器用S・980

 

敏捷S・880 

 

魔力I・0

 

 

【対異常】【反転】【龍血】【適応】

 

 

スキル

安察願望(キラーサイン)

 

某神威的スキル。

 

 

「あ、神牙さんがアイズさんにまた追いかけられてますよ?」

 

「最早お馴染みだなありゃあ……。

はぁ、俺も綺麗なお姉さんと追いかけっこしてーなぁ……」

 

「………」

 

「なんだよその目? お前、段々俺に対する遠慮が無くなってねーか?」

 

「遠慮していたら色々と出し抜かれてしまいますから」

 

「誰にだよ?」

 

「イッセー様が全然気付いて無い方達です」

 

「??? ……………あ!? お、おいちょっと来いリリ!」

 

「へ? な、何を……っ!? ど、どこ触って……!」

 

「しっ! あ、あれ見ろ……!」

 

「み、見ろって――――あ、アレはヴァーリさんと……誰?」

 

「アレは確かミアっちがやってる店の店員だ……」

 

「え、何故そんな方とヴァーリさんが……」

 

「それはわかんねーけど……アイツ、腕組まれてんぞ」

 

「ほ、本当ですね。

ヴァーリさんは鬱陶しそうな顔ですが……」

 

「………。こりゃあアイツで笑えるネタが出来たな。

よし、取り敢えずこのまま隠れつつ帰るぞリリ」

 

「わかりましたが……イッセー様、そろそろセクハラはやめてください」

 

「はぇ? …………………あ、ごめん」

 

「………スケベ」

 

「わ、わざとじゃーよ……でもごめん」

 

「……。謝られると逆にムカつくのでやめてください……ふんだ」

 

「お、おう……」

 

 

 チーム・ヘスティア候補。

 

 

「あのさ、リリって意外とあるんだな?」

 

「……」

 

「わ、わるかったよ、冗談だって……」

 

「…………ふふ、私なんかその気になれば一瞬で殺せる癖に、不思議な方ですねイッセー様は?」

 

「へ?」

 

「ほら、早く帰りましょう?」

 

 




補足

ダンまち世界ではなんとラーメン道の開祖らしいヴァーリくん。

しかし誰もその事実を知らない。


その2
神アレルギーによる大暴れの弊害が、月日を経て現れた。

流石に自分達のせいだという事もあり、リリルカには結構優しかったりする。

優し過ぎて過保護になり、自衛手段を教え込んだら覚醒してしまったけど。

その3
そんな面々の中で生活していく内に、わりとメンタルが鋼化したリリルカさん。

今では逆にイッセーの面倒を見るようになったとかそうでないとか。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。