それはいきなりの話だった。
『扇風機に向かって『あー』ってやってる時に思い付いたんだけどさ一誠』
『あん?』
俺の師匠である安心院さなじみは、本人が作り出した教室空間に眠ってる俺の意識だけを連れ出したかと思えば、教壇に腰掛けながら言った。
『お前はイレギュラーの存在によって消されかけ、僕というイレギュラーによってイレギュラーを越えたイレギュラーになった……てのは前に教えたな?』
『あぁ……それが?』
この師匠。現実世界で会うことはあんまり無いものの、こうした夢的世界では毎晩の様に現れてぺちゃくちゃとトークをせがんで来る。
それ自体は別に良いのだが……今日の話は何だかよく解らん話で何時も以上に意図が掴めない。
『本来歩む筈だった自分に興味はないかい?』
『は? ……………ぬっ!?』
しかしなじみは結局真意を語ることは無くニコリと微笑む。
そして次の瞬間目の前は暗くなり――
『行って見るが良いさ。赤龍帝としてのお前を――』
最後に聞こえたのはアニメ声みたいななじみの悪戯っ子の様な声だった…………。
兵藤一誠。
彼は転生した悪魔と赤龍帝として様々な奇妙な人生を歩んでいるが、自分の主であるリアス・グレモリーとその仲間達との絆により日々を逞しく生きていた。
だがある日、色々とあってオカルト研究部の顧問をしてる堕天使アザゼルが突如持ち込んだ謎の装置により――
「え、ま、お、俺……?」
「くっ……此処は? チッ、なじみの奴め――本来の道とはそういう意味か。あの悪戯女め」
スイッチと共に目映い閃光が走り抜け、光が止んだその場所に立つは、赤龍帝――いや乳龍帝イッセーと瓜二つの少年――
「成功だ。
ふふふ、コイツが平行世界のお前だ」
右腕に『会長』『副会長』『書記』『会計』『庶務』の腕章を付けた兵藤一誠自身が、何やら不機嫌そうに首の関節をゴキリと鳴らしながら参上したのだった。
アザゼル先生の発明品によって現れた平行世界の俺。
その出で立ちは物凄く威圧感があるというか……。
「あ、悪魔……じゃない……だと?」
「確かに気配が感じられねぇな。平行世界ならではってか?」
「……」
取り敢えずアザゼル先生に言われてリアス達オカ研の皆を呼んできたが、やっぱり前例も前例なので呼び出された方の俺には近付こうとしてない。
というか、皆してもう一人の俺が身に付けてる腕章――多分生徒会のだと思われるそれに目が行ってしまう中、原因であるアザゼル先生がもう一人の俺に質問を投げ掛ける。
「お前は兵藤一誠で間違いないよな?」
「む? ………………。貴様は堕天使か?」
何時の時代の俺なのかは知らないが、アザゼル先生を見ても誰だか解ってないらしく、堕天使である事だけを大雑把に見抜き、先生に問うその口調を聞いた俺達は地味に違和感と驚きを感じてしまう。
「あ、あぁ……如何にも俺は堕天使だが」
「……。それに此所は旧校舎でオカルト研究部の部室ときたか……なるほどな」
いやだって俺だぞ? 俺があんな威圧的な口調をするのも違和感バリバリじゃん。
皆だってそりゃ思うわ。
「つまり貴様の作った装置とやらで俺を此方に引き寄せた(という事になじみがした)と?」
「まぁな。
しかし驚いたぞ、どうやら向こうのお前は悪魔に転生すらしていない処か赤龍帝ですら無いとは」
そして俺達が最も驚いたのがこの事実。
何と平行世界の俺は赤龍帝の籠手を持ってないとの事で、その事をアザゼル先生に問われた時『若干』顔をしかめたのがちょっと気になる。
「赤龍帝ね。はっはっはっ、赤龍帝ねー………ハァ」
いや訂正だ。
顰めっ面じゃなくてマジで嫌そうな顔であった。
何か俺と俺の中で様子を伺ってたドライグはそんなもう一人の俺の態度に妙な居心地の悪さを感じるのは果たして気のせいか。
「何で嫌そうな顔をしてるのでしょう?」
「あの反応から察するに赤龍帝という言葉は知っているみたいですね」
「もう一人のイッセーさんはちょっと真面目そうです」
「ちょっとアーシア!? 俺は真面目じゃないのかよ!?」
口調も冷静だし、皆してもう一人の俺に対して妙な好印象だし、何だか俺だけど俺じゃないというか……おっぱい好きであって欲しい。
「私からも一つ聞きたいわ」
「む、何だグレモリー3年?」
「う……!?」
そして最も違和感を感じるのは、口調もさる事ながらリアス達に対しての態度が全くの他人行儀だって所だ。
いや悪魔に転生してないという事はリアス達との関わりが薄かったんだろうと考えればそれまでなんだけどさ…………
「い、いえ……。
向こうのアナタはどうも生徒会所属というのが気になって」
俺だぞ? 普通俺なら親しくないにしてもリアス相手にこんな威圧感丸出しの態度はしないだろ。
おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとかに無反応かお前は。
「此所の生徒会を誰が運営してるか知らんが、間違いなく俺は駒王学園の生徒会長だ。
勿論、自分の世界でのという意味でだが」
それに生徒会長なんてやってるみたいだし……あれ、じゃあ匙達は……?
「ソーナじゃないなんて……」
「ソーナ? あぁ、シトリー3年の事か。
此方でのシトリー3年がどんな人物かは知らんが、俺の知る貴様とシトリー3年は『色々と』あってね。
とにかく俺が生徒会長だ」
『……………』
色々との部分を妙に強調しながら皮肉っぽく笑って言うもう一人の俺に、俺を含めた全員が言葉を詰まらせ、それ以上突っ込むのに抵抗感を感じてしまった。
「ま、平行世界なんだらこんな可能性もあったという事でひとつ納得してくれ」
「…………」
色々と……気になるけど聞いたら後悔しそうな気がして……。
「さて、それなら俺からも一つ聞いて良いかもう一人の俺よ?」
「え……おう」
変な空気になったのを察したのか、急に声のトーンを変えて俺に何かを聞こうとするもう一人の俺に頷く。
するともう一人の俺はオカ研の部室を見渡しながら木場と小猫ちゃんにだけ何故か『優しく微笑む』と――
「この世界でのレイヴェル・フェニックスは――どんな子なんだ?」
「は? レイヴェル?」
悪魔じゃないもう一人の俺から聞くとは思わなかった思わぬ人物の名前に俺達は揃って目を丸くしてしまった。
「そうだ、フェニックス家のレイヴェルだ。
言っただろう? 俺は色々とあって悪魔に転生してない。
だがその『色々』を経て餓鬼の頃からフェニックス家の厄介になってるんだよ」
「ワッツ!?」
「あ、あら……また凄い違和感だらけの事実ね」
まさかのフェニックス家に俺達は驚いたのと同時に、もう一人の俺はライザーとかとも親し――
「ライザーはどうなんだ? やっぱり此処でもサーゼクス・ルシファーが言われてる様な『超越者』なのか?」
「はぁ!? あのライザーが!?」
親しい上に衝撃的な事実を発覚しちまった!?
「む……その反応を伺うに、貴様等の世界のライザーは違うのか?」
「お、おう……。
ライザーとは前にリアスとの婚約を破棄する為にレーティングゲームで戦ったんだぜ」
「なに、婚約だと? 此処でもそんな騒動があったのか……。
此方はベロンベロンに酔っ払ったシュラウドのおっさん――失礼、現フェニックス当主がグレモリー卿にパーティーの席で絡んだ結果勝手にそうなっちゃったっていう経緯があってだな」
「な、な、何だそのアホらしい理由!?
此方はそんな理由は無いしライザーも物凄い乗り気で困ったぐらいなんだぜ?
いやまぁ、最近はアイツも根はイイヤツだって分かったんだけど、最初は眷属達は女の子しか居ないわリアスをエロい目で見る遊び人みたいな男で気に食わないと……」
「……………………。えぇ~? 此方はフェニックス当主のやらかしの火消しの為にライザーがグレモリー3年に頭とか下げまくって何とか解消したってオチなんだが……。
此方のグレモリー3年は見た目でライザーを毛嫌いしてたしトントン拍子だったのに……」
あ、チャラ男っぽい見た目は変わってないんだ。
でもそれにしてもライザーが超越者って事は魔王クラスの実力を持ってるのかよ……。
こっちの世界のライザーが普通で良かったぜ……。
「……。まぁだからライザーは俺の兄貴の一人でな。
よーく面倒を見て貰ってるよ――今もな」
「イッセー先輩が鳥と家族……」
「う、うーん……あんまり想像が……」
ぽつりと小猫ちゃんと木場が呟き、俺やリアス達も大いに同意し、やっぱり驚くのと同時に……此処までもう一人の俺が一切本当の両親の話をしない理由が気になったので聞いてみると――
「…………。フェニックス家にガキの頃から世話になってて、肉親の話をしない時点で何と無く解るだろう?」
『………………』
フッと遠い目をしながら確信を避けた言い方に俺達はまたもや察して閉口してしまった。
一気に気まずくなったので、俺は話をすり替えようともう一人の俺と向こうの世界のレイヴェルとの関係が知りたいと話を切り出してみた。
「お前とレイヴェルはその――どんな関係なんだ?」
ライザーは兎も角として、こっちの世界でもレイヴェルとは友達であり親しくもしているし美少女でおっぱいもそこそこだと知ってるゆえに……気になる。
するともう一人の俺はハッキリと恥ずかしげも無く、微笑しながら言った。
「ガキの頃から支えてくれた、俺の生きる理由――――と言ってもよく分かんないだろうから解りやすく言ってやるよ……………………………好きすぎてアイツが傍に居ないと駄目人間になれる自信がある」
『………………』
お、おぉ……爽やかに言ったぜもう一人の俺。
「まあ話すより『見て』貰った方が早いか」
もしかして平行世界の俺って色々と重い性格なのかななんて思ってた時だった――
「で、デカっ!? なんだその釘!?」
何処から取り出したのか、何時取り出したのか。
まるで手品師みたいに手に巨大な釘を持った貰ったもう一人の俺は驚く俺達を無視してその釘を天井に投げ付けて刺すと……。
「『
よく解らない言葉を口にした。
最初は意味が解らず首を傾げていた俺達だったが……。
「っ!?」
「な、なによこれ……頭の中に……!?」
「お、おいおい……これってお前の記憶なのか?」
俺達全員の頭の中に、もう一人の俺のこれまでの人生の軌跡が流れ込んできた。
「な、なんだよ……兵藤誠八って誰だよ……?」
「馬鹿な……! 神器が移動しただと?」
「っ!? こ、これが……もう一人のイッセー世界の私ですって!?」
そしえ流れ込んできたもう一人の俺の人生はハチャメチャだった。
転生者という存在にドライグと両親の記憶を奪われた思い出。
その時出会った滅茶滅茶可愛い美少女に導かれ、俺達の知るフェニックス家とまるで違うフェニックス家達との思い出。
神器とはまるで違う
もう一人の俺が覚醒させた無限と夢幻にも似た力。
そして何よりもショックだったのは――
「うぎゃぁぁぁぁっ!? 木場と小猫ちゃん以外の女の子達があんな奴とぉぉぉぉぉ!!!」
リアス達が転生者って奴と寝た現実だった。
「お、おい兵藤一誠。
お前のその力は何なんだ? まるで全能の神のような……」
「そんな力じゃないよ堕天使アザゼル。
無限に進化する・現実を否定して作り変えるってだけの小さな能力さ」
「いやいやいやいやいや! 小さい訳ねーだろ!? 明らかに――」
「おい!? 何でリアス達があんな奴とアレなんだよ!? 助けろよ!!」
赤龍帝という言葉に嫌そうな顔をした理由が今解った。
だがその代わりに目覚めたチートじみた能力さえあれば転生者とかいうふざけた奴の洗脳からリアス達を助けられたのも事実。
なのにもう一人の俺はそれをしなかった……。
確かに転生者に惚れた向こうの世界のリアスはもう一人の俺に敵意を抱いてたのしれないけど――
「…………。この世界の貴様とそこのグレモリー3年達との関係が深いのは見て解るが、生憎俺自身は奴等に何の感情も持たんのでな。
『兄貴様。』と深夜のプロレスごっこをしてようが俺の人生には何の関係もないし、貴様等も見た通りどうであれ『自分の意思で』兄貴様とやってたんだ。止める資格なんぞ俺には無い。
まあ、やり過ぎて見た通りの末路を辿ったがな……ふっ」
もう一人の俺は嘲笑うかの様にそう言い平行世界の自分の末路を見て顔を真っ青にするリアス達を見つめていた。
「う……うぅ……ソ、ソーナまでだなんて。
アナタが小猫と祐斗にだけ一瞬優しく笑ったのはその為なのね?」
「そういう事だグレモリー3年。
と、祐斗と白音以外の面子よ」
「そ、そんなぁ……」
うぉぉぉぉ!!!! 何だこのぶつけようない怒りは!? 今すぐぶっ飛ばしてやりてぇ!!
それに解ってるけど納得ができねぇ!!
「どうして助けてやれなかったんだよ……!? お前のスキルって力ならいくらでも――」
「だから言っただろうもう一人の俺よ。
俺はあの連中を助ける意味が無い。目の前で死のうが生きようがヤッてようが知ったことではない。
だから助けない……俺の知る祐斗と白音と元士郎は既にそんな奴等を見限ったしな」
今解った。
もう一人の俺は俺とは違う。
もう一人の俺は本当の意味で『自分の大切だと思う』人達の為しか動かない。
「お前の世界のコカビエルが強すぎなんだけど。
つーかあんな事件をやらかしといて生きてるのかよ……神を超えたとか悪夢じゃねーか」
「ん? その言い方から察するに、此所のコカビエル違うのか?」
「ま、まぁな……最下層でおねんねしてるよ」
「最下層? ふむ……俺の知るコカビエルなら大笑いしながら抜け出しそうなもんだな」
「……。だろうよ」
俺達の知るコカビエルより遥かにやばいコカビエルとの戦いの時にしてもこいつは身内にしかその力を使わなかった。
その気になれば洗脳だって解けるし、リアス達の身だって綺麗なものへと変えられた筈なのにコイツは無関心だった。
「しかし俺も俺で逆に驚いてるのだぞ?
グレモリー3年と仲良くやれてる平行世界の自分にな」
『……………』
「この際どっちが正しいのかはどうでもいいけどな」
そう言って口を半月の形に、どす黒いオーラを放ちながら嗤って言い切るもう一人の俺に俺を含めた全員が得体の知れない寒気を感じて身を引いてしまう。
平行世界の自分の心の内は……俺達ではどうしようも出来ないと悟らされたのだ。
「あ、だが見て貰った通り、俺の世界の祐斗と白音は違うぞ? 黒歌やゼノヴィアや元士郎と同じく嫌だと言われても全力で助ける」
「…………。でしょうね、そちらの私は随分と違う人生みたいですし」
「銀牙騎士……。
聖魔剣の他にそんな力を向こうの僕は……」
自分が好きだと思う人しか助けず贔屓しない。
他人は所詮他人と割り切る。
「無闇に可能性の自分を知るのは良くないとお互いに良い教訓になったな。
さて……俺はそろそろ帰ってレイヴェルを抱き枕にしてお昼寝でもするかな」
そしてその精神から生まれた凶悪な力。
アザゼル先生の言うとおり、世界を思うがままにねじ曲げるその力を経て別の次元へと進化したもう一人の俺に俺は……。
「俺と……戦ってくれ」
「む?」
勝ちたいと思ってしまった。
赤龍帝・兵藤一誠として否定したいから……寒気すら覚える
けれど……。
「可能性の自分を否定したいか? 平行世界の俺よ」
「…………」
「フッ、だんまりか――まぁ良いだろう。俺も気にはなるしな」
「
「なっ!? ぐふっ!?」
俺の力は――
「まだだ! クリムゾン……ブラスタァァァァァッ!!!!」
「へぇ、『兄貴様。』の赤龍帝とは違うなぁ…………なるほどね、ならちょいとこの枝を借りて―――――」
「なじみ……四年ぶりに使うぞ」
刀を精製するスキル『
影を斬るスキル『
肉を気切らずに骨を断つスキル『
命中のスキル『
一振りで二回斬るスキル『
斬ったら爆発するスキル『
追加攻撃のスキル『
居合のスキル『
刀が曲がるスキル『
刀を遠隔操作スキル『
刀傷が自動増殖するスキル『
刀と同化するスキル『
絶対斬のスキル『
刃の長さを変えるスキル『
曲斬りのスキル『
原子を斬るスキル『
刀を盾にするスキル『
斬った相手を酔わせるスキル『
残像剣のスキル『
三回斬れば対象のスキルを封じるスキル『
かすり傷が致命傷になるスキル『
武器を消すスキル『滅を背負う
刀身を見えなくするスキル『
どんな物体でも剣化するスキル『
剣の重量が自在のスキル『
滅多切りのスキル『|定滅多標的《メタジャンクション』
刀が悲鳴を上げるスキル『
刀が成長するスキル『
鎧を斬るスキル『
全方位同時斬撃のスキル『
斬らずに斬るスキル『
剣速のスキル『
後の先を取るスキル『
斬った物体の情報を得るスキル『
第三の手で斬るスキル『
斬った対象の血液を沸騰させるスキル『
二刀流のスキル『
柄で斬るスキル『
必ず折れるが威力絶大のスキル『
刀身に触れていると体力が回復するスキル『
対象武器破壊のスキル『
障壁をすり抜けるスキル『
自然体のスキル『
持ち主の代わりに剣がダメージを受けるスキル『
刀身修復のスキル『
光の剣のスキル『
空気を斬るスキル『
木刀のスキル『
斬りたい物だけ斬るスキル『
斬った対象を記録するスキル『
剣戟弾幕のスキル『
星を斬るスキル『|剣を翻せば星雲を斬り剣を覆せば流星群雨を斬る《メイキングスペースデブリ》』
挟撃のスキル『
平衡感覚を斬るスキル『
適度なダメージを与えるスキル『
感情を剣に乗せるスキル『
隙を消すスキル『
剣圧を飛ばすスキル『
微塵切りのスキル『
概念を斬るスキル『
峰打ちのスキル『
どんなにきっても死なないスキル『
残心のスキル『
「以上、劣化ver安心院なじみ――――
「が………ぁ……」
人の外にまで上り詰めたもう一人には届かず、一瞬で倒されてしまった。
「イッセー!!!」
「イッセー先輩!」
「イッセーくん!!」
「…………」
皆の声が遠くに聞こえる……。
「……。オリジナルの遥か劣化だ。殺しはしないさ……理由も無いしな」
「ば、化け物かお前。今のだって……」
「ふっ、化け物で良いよ。
俺の大切な者を守れるなら何にでもなれるさ……じゃあなもう一人の俺よ。
縁があったら今度は俺の大切な人達を紹介してやる……」
そう言った声が最後の記憶であり、意識が戻った時にはもう一人の俺は帰ったらしい。
「あ、あんなイッセー……イッセーじゃないわ」
「そうです。私たちのイッセー先輩はこの人です……あの人は――」
「………」
こ、この野郎……涼しい声で言うだけ言って帰りやがって。
良いぜ……今度あったら俺が……。
終わり
補足
レイヴェルたん達が近くに居ないので、なんか地味に意地悪な一誠。