色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

特にヤマもオチもない。

※微修正


『不純だ!!』(微修正)

『だからこそ生きるんだよ。何の為とかそんな小難しい事を考えず、思う通りに生きるんだよ。

例えそれで周りから化け物扱いされようが、自分は自分って我を持ってりゃあ、その内周りも慣れるってもんよ! ――――多分な?』

 

 

 今の私が私であれる理由は、この出会いとこの言葉があったからだ。

 自分が何者で、何の為に生まれたのかもわからなかった文字通りの子供であった私は……そんないい加減で後先もまるで考えずに、常に笑いながら本能的に生きる一誠という男の――常に私と善吉の先を歩くその背中を追いかけ続けた。

 

 それは今でも変わらないし、きっとこれからも変わらない。

 散々私と善吉が我儘を言っても、一誠は困った様に笑いながらも付き合ってくれる。

 暴走する私達を止めてくれる。

 

 全力でぶつかっても、アイツは笑いながら受け止めてくれる。

 

 だからこそだ……アイツが他の者に現を抜かしていると酷く狼狽えてしまう。

 年上に変な希望を持っているのは、出会ったその瞬間から知っているし、間違いなく相手にはされてないので不安はない。

 

 だが、まさか同年代の女子とああも仲良くなれるとは思わなかった。

 

 だって中学時代はその本能的過ぎる行動のせいで友人と呼べる者は居なかったし、当時はほぼ私と善吉と一緒だったので、一誠の『内面』を知って好意を抱く輩が現れるといった心配もなかった。

 

 

『また球磨川先輩に絡まれたら怪我した!?』

 

『めだかちゃんがな。

あの破壊臣とか呼ばれてる阿久根先輩を使ってめだかちゃんを襲撃したみてーでよ』

 

『まあ、見ての通り私は軽傷――』

 

『どこがだ!? あ、あの金髪コゾーとチビ野郎めが……!』

 

『いや別に大丈夫――って、どこへ行くんだ一誠!?』

 

『や、やべぇ、ありゃあプッツンモードだぜ……。

取り敢えず阿久根先輩と球磨川には手を合わせておこう……』

 

 

 たまに球磨川とかいう男がちょっかいを掛けて来たりしたけど、友達が居なさすぎて寂しいからと普通にスルーしてやったら大人しくなったし。

 いや、当時生徒会長をやっていた球磨川を全校集会の場で一誠が阿久根二年生共々『地獄の九所封じ』からの『神威の断頭台』なる――曰く、地獄の断頭台(改)なる大技をぶちかましてから大人しくなった。

 

 

『あれから球磨川を一誠に言われた通り『友達が居ない構ってちゃん』と思って接してあげたら、逆に近寄られなくなってしまったぞ』

 

『よーく思い返したら、めだかちゃんに対してはストーカーのそれみたいな感じだったもんな。

阿久根先輩は逆にめだかちゃんを神聖視するし』

 

『いやー俺もちょっと頭に血が昇り過ぎちまったよ。

よーく考えたら、あの先輩は構ってちゃん気質だったと思うと、寧ろ優しく接してやりたくなるぜ』

 

 

 それ以降、球磨川は全く私に対して仕掛けては来なくなったし、たまに廊下ですれ違った時は笑顔で挨拶もしてやった。

 まあ、大体全身から冷や汗流しながら逃げてしまうのだが……。

 

 そんな中学時代を送りつつ、善吉と共にまだ届かない一誠の背中を追い続けていた私だが、私にとって一番脅威だったのは球磨川ではなく、あの女子生徒だった。

 

 そう……よりにもよって一誠に対して――所謂逆ナンを仕掛けてくるようになった女子生徒。

 

 名前は――何故か思い出せないのだが、容姿はかなり良かった覚えがある。

 生徒会の立場を利用して一誠に近づいては何か話したり、どこかに誘っている現場を善吉と押さえては追い払うような日々。

 

 

『またか一誠!? 今度は何を言われたんだよ!?』

 

『何か横で勝手にごちゃごちゃと言ってたけど、第三地区の公園に集う子持ちの人妻の事を考えてたから、全く聞いてねーぞ?』

 

『しかしあの女はあまりにも一誠に近づきすぎだ』

 

『そんな事言われてもな……。

そもそも俺は彼女になんの興味も無いし』

 

 

 一誠本人は、電波な事をのたまう変な生徒としか思っておらず、更には異性としての欠片も意識していない様子だったので、善吉と私はその女子生徒を逆ナン女子と命名した。

 

 

『そろそろ返事が欲しいんだけどね霧島く――』

 

『ちょ、横でベラベラと喋るのやめてくれます? 新たなお姉さん出現ポイントを模索中だから』

 

『……………』

 

 

 まあ、一誠があまりにも相手にしなさ過ぎたので、その内私と善吉も彼女を可哀想な人と思うようにした訳だが。

 最後の方など相手にされなさ過ぎて、球磨川みたいに半泣きになりかけていたし。

 

 

『お、おいどーすんだよ? あの人がスカートの裾を掴みながらプルプルしてんぞ?』

 

『……。軽く泣いてないか?』

 

『電波な人とはちょっと友達になりたくないって言ったらああなっちまった。

うーん、取り敢えずコーヒーガムでも与えて……』

 

 

 そう、結局の所一誠は同年代に対しての興味が限りなく薄い。

 

 だから……だからまさか有明二年生にああも優しくしているのは本当に驚かされたし、善吉もそうだが、多分生まれて初めての『真の強敵』が有明二年生だと思う。

 

 

「俺はどうやら勘違いしていたようだよ。

だがこの失敗のお陰で俺は生徒会としての心構えが――いや、めだかさん傍に仕える意味を理解できた」

 

「横でベラベラうるせーよ金髪野郎。

毛根ごとひきちぎるぞコラ」

 

「……………。心配しなくてもその内キミにも勝たせて貰うよ霧島クン」

 

 

 阿久根書記のデビュー戦も何とか成功した今、私達は今まで以上に気を引き締めなければならない。

 ……そう、一誠に近づく変な輩からガードするという意味でな!

 

 

 

 

 

 阿久根高貴が一度失敗しかけたラブレターの代筆依頼は、どれ程に字が汚かろうが、本人の意思で書かせるという熱血ルートによって何とかギリギリの成功を収め、晴れて生徒会書記となれた。

 

 依頼人の八代がそのラブレターによってどうなったのか――は、野暮な為に聞かなかったが、明くる日からその男子と共に登校する姿を見かける辺りはお察しただろう。

 そして相変わらず阿久根と一誠と善吉の仲も宜しくは無かった。

 

 

「部活動対抗の水泳大会ねー……?」

 

 

 そんな生徒会達とは別に、どこまでいっても部外者である霧島一誠は、最近出来てないナンパ活動に精を出そうと、暫く生徒会室には行かなかったらしく、そういった行事が生徒会主導で開催されることを、ありあ経由で知る事になった。

 

 ちなみに、ナンパ活動はお察しの通り全玉砕だった。

 

 

「この前完成したプールがあるじゃない? その完成を祝してって名目で生徒会の子達が開催することにしたんだってさ。

優勝した部は部費が増額されるんだって」

 

「へー?」

 

 

 たまたま古びた駄菓子屋のガチャガチャで手に入れたスーパーカー消ゴムで遊びながら、ありあの話を聞く一誠の反応は、思っていたよりも普通だった。

 

 

「あれ? こういう話を聞いたら喜ぶと思ってたけど?」

 

「水着女子が眺められる! みたいな反応を期待してたのか? 残念だけど部活には入ってないし、そもそも小娘の水着姿を見てもなぁ……。

どうせ先生方は参加しないんだろ?」

 

「ああ、なるほどね……。

まあ、黒神さんが主導だから間違いなく一誠くん好みそうな先生達は参加しないね」

 

「だろー? じゃあテンションもあがんねーわ」

 

 

 どこまでも性癖がぶれない一誠にとってすれば、一個上の先輩なんて所詮小娘でしかない。

 なので別にテンションなんかも上がりはしないし、どうも開催は日曜日と来たものだ。

 

 だったら普通に銀座にでも繰り出してマダムのナンパをしたほうが余程わくわくする……と一誠は考えているのがありあには読めた。

 

 

「一応部の代表として私も諫早先輩と出ることになったんだ」

 

「へぇ? 例の一件以降、随分仲良くなれたんだな? 良いことだぜ」

 

「うん。

でも困ったことに、あまり泳ぐのは得意じゃなくて……」

 

「そうなのか? いや、そういえば去年の水泳の授業の時、ビート板使って泳ごうとしてたなありあは? ……ばた足しても全然前に進んでなかったけど」

 

「み、見てたんだ? ま、まあそういう事……」

 

「ふーむ……」

 

 

 が、泳ぎはそれほど得意ではないのに代表に選ばれてしまったと少し不安げな様子のありあを見た一誠は、スーパーカー消ゴムを弾きながら考える。

 

 

(水泳部が明らかに有利になるし、あの子もその事には気付いてる筈だから、ある程度のハンデやらルールを設けるとは思うが……)

 

 

 自分も泳ぐのは得意という訳じゃないし、水の上は基本的にジャンプするか走り抜ける方が早いので泳ぐとなれば専門外だ。

 

 

(どーすっかなぁ……ナンパしたいけど、ありあが困ってるとなれば、ほっとけないぜ)

 

 

 が、ありあの友人としては少しでも力になりたいとも思う訳で……。

 基本的に受け入れた者に対しては少々過保護になりがちな一誠は、銀座でナンパという予定とありあを頭の中で天秤にかけた結果――秒でありあに傾く。

 

 

「よし、日曜日はありあの応援に行くぜ。

それで明日は近くの温水プールでちょっと練習してみよーぜ?」

 

「え?」

 

 

 丁度本日は金曜日。

 たった一日の練習では付け焼き刃にもならないかもしれないが、何もしないよりはマシだろうと考えた一誠は、ありあの練習に付き合うと宣言する。

 

 

「でもナンパは……?」

 

「そんなものは何時でも出来るぜ。

それよりも困ってる友達を助けた方が有意義だ!」

 

 

 その瞬間、やはり近くで聞いていたクラスメート達が詐欺でも見るような目で一誠とありあを見るのだけど、慣れてしまった二人は普通にスルーするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で今週の土曜日はありあの練習を見てあげるから、家に来ても意味ねーぞ?」

 

「「はぁっ!?」」

 

 

 そんな感じであっさりと予定を変更した一誠は、毎度よせば良いものを、善吉とめだかに言ってしまう。

 それは、幼少期に知り合って以降、頼んでもないのに毎日家に二人が押し掛けて来ては居座るからであるのだが、当たり前のように入り浸る気でしかなかっためだかと善吉にしてみれば、またしてもありあという強烈無比なライバルにぐぬぬモードになった。

 

 

「だ、駄目だ駄目だ!! そんなのは私が許さん! 休日に有明二年生と二人だけで温水プール等不純だ!」

 

「そうだそうだ! 不公平だ!!」

 

「毎日毎日頼んでもねーのに家に押し掛けて居座るお前等にだけは言われたかねーだろうよ、ありあも……」

 

「まだそういう事をしていたのか、人吉クンとめだかさんは……?」

 

 

 幼少期から両親が蒸発し、父方の祖父母からの資金援助で生活している一誠の家はごく普通の一軒家で、人吉家とそう変わらない規模だ。

 

 

「一昨日なんて、宿題を一緒にやろうと思ってありあを家に入れたら、普通にふんぞり返って寛いでやがったからなコイツ等は」

 

「ああ、有明さんを家にね……さぞ大騒ぎになっただろうね」

 

「ええ、その後来たうちのお母さんがはしゃいで色々と大変でした」

 

「キミとめだかさんが一番大変だったんじゃないか……?」

 

 

 

 だが幼少期から押し掛け、入り浸り、そこに週四ペースで善吉の母まで押し掛けて夕飯やら家事までするようになってからは、果たして一体あの家は誰のなんだ状態にまでなってしまっていた。

 

 だって、家の部屋の大半に善吉とめだかの私服だ私物だが置かれてしまえば、そう思うもの仕方ない。

 

 それでも一誠は文句こそ言うが、追い出した事は一度も無いという、広いのか狭いのかよくわからない器である。

 

 

「前に聞いたが、既にキミの自宅は二人の私物まで置かれているとか……」

 

「個人の部屋まで勝手に決めやがったからな。

しかも、その割りには寝る時は俺の部屋に押し掛けてきやがるし……」

 

「………。人吉クンはどうでも良いが、つまり貴様はめだかさんと共に寝ているということか……?」

 

「追い出そうとすると人生に絶望したような顔して泣くんだからしょうがねーだろ……」

 

「き、貴様ァ! やはり貴様とは相容れないようだな!!!」

 

 

 挙げ句に寝る時は大体一緒と聞かされた阿久根まで敵意剥き出しに食って掛かられる。

 どうあがいてもそこまでの仲にはなれないという意味での阿久根の嫉妬だが、一誠にしてみれば文字通りの『知らんがな』である。

 

 

「だったら土曜日は私も参加するぞ!」

 

「俺もだ! これ以上有明先輩に取られてたまるか!」

 

「俺も参加するぞ! これ以上めだかさんを貴様みたいないい加減男に汚されてたまるか!!」

 

「……………………」

 

 

 結局、阿久根まで別の意味でのぐぬぬモードになってしまい、そのまま土曜日の練習に参加するとまで言い出す。

 言わなきゃ良かったかも……と一誠は今になって後悔するが、全てが後の祭りであった。

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 オマケ・お家デート(仮)

 

 

『一緒に宿題やろーぜ?』

 

 と、まるで男友達でも誘ってるようなお手軽感覚で誘われてしまったありあは、ハッキリ言って生まれて初めてとなる男子の家を前にかなり緊張した。

 

 先輩の諫早が『ああ、うん頑張ってね?』と生暖かい目をしていたのは、一誠に一切の下心を感じなかったからに他ならないのだろう。

 

 それほどまでに一誠は――聞けば現在独り暮らしではあるらしい一誠は楽しそうにありあをご招待したのだ。

 

 

「クラスメートの友達とこうして家で宿題するって、何気に初めてだし、ちょっとした夢だったんだぜ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 

 一誠とは正反対に、緊張し続けるありあは、ひょっとしたらといった不純な考えに至って自分にちょっと自己嫌悪になる。

 

 いや、というかここまで下心零で来られるとそれはそれで、自分は女としての魅力が零なのでは無かろうかという不安も沸いてくる。

 

 

「ちょっと待ってな、今飲み物持ってくるぜ」

 

「うん……」

 

 

 特に変なギミックがある訳ではない普通の家に上がり、案内されるがままに一誠の部屋に入ったありあは、何故か軽くスキップしながら部屋を出ていく一誠を見送ってから、初めての男子の部屋を見渡してみる。

 

 意外な程整頓されている本棚や机やベッドといった家具が配置されているという至って普通すぎるお部屋。

 

 

「そういえば、男の子の部屋のベッドの下にはそういう本があるって聞いた事が……」

 

 

 軽く拍子抜けすら覚える程の普通に綺麗な部屋という感想を抱いていたありあは、ふと前に何処かで聞いた事のある男子の秘密について思い出す。

 

 

「多分年上っぽい感じの本なんだろうけど……」

 

 

 自分だけ緊張するのも何だか悔しくなってきたのもあって、ちょっとした悪戯心に突き動かされる様に、ありあはベッドの下を覗いてみる。

 

 

「暗くて良く見えない……」

 

 

 けれどベッドの下は思ってるより暗くて、何があるのかすらわからない。

 なのでそのまま腕を入れて何か無いかと探ろうとしたその時だった。

 

 

「何してんだ?」

 

「ひゃあっ!?」

 

 

 トレーの上に二人分のコップと飲料と軽めのお菓子を乗せて持っていた一誠の声に、ありあは心臓が飛び出しそうな程驚いてしまう。

 

 

「あ、あのそのっ! ちょ、ちょっとした出来心って奴で! へ、変な事とか企んではないからね!?」

 

 

 完全にテンパり、目をグルグル回しながら言い訳しようとするありあに、一誠は特に気を害した様子は無さそうにトレーをガラステーブルの上に置く。

 

 

「何でも良いけど、いつまでその格好してんだよ? 普通にパンツ見えてんぞ?」

 

「うぇ!? み、見ないでよっ!?」

 

「いや、見たっつーか、見えっぱなしだったというか……」

 

 

 普通に冷静に見えてると言われてしまい、軽い敗北感も相俟って逆ギレ気味になってしまうありあ。

 結局ベッドの下に隠されてる秘密について知ることは出来なかったが、緊張といったものは消し飛ばされ、何時も通りになれたのだという。

 

 

「も、もう…! 私だけ緊張するのがバカらしいよこれじゃあ」

 

「部屋に戻った瞬間、ありあが四つん這いになってるのを見た時、一瞬俺はドキッとしたけどな」

 

「…………。今言わないでよ……」

 

 

 そして約一時間後に、当たり前の顔をしながらやって来ためだかと善吉が、ありあが一誠の部屋で宿題をやっていると知るや否や大騒ぎし始めたのはご愛敬である。

 

 

 

終わり

 

 

 

 霧島一誠の真の過去は誰も知らない。

 それは霧島一誠として生まれ変わった本人ですら知らない――最悪の記憶と過去。

 

 しかしその過去が――封じられた全ての過去が解き放たれた時――

 

 

「おい待てよ。

過去の傷を開くマイナス――だったか? ふふ、礼を言わせてくれよ」

 

「あ?」

 

「ずっと心のどこかで引っ掛かっていた。

何かを忘れている気がしていたってな。

だが俺はその過去を思い出したくなかった――だから今を生きることに事にこだわり続けた」

 

「さっきから何をベラベラと――」

 

過負荷(マイナス)の気持ちなんてわかりはしない……とお前らは言った。

確かにそうだ……別に知りたいとも思わなかったし今もそれは変わらねぇ。

だから改めて礼を言わせろ――――――

 

 

 

 

 

――――――――――――赤龍帝(オレ)に、戻る刻だ」

 

 

 霧島一誠は最後の龍帝に戻る。

 

 

「ククク……ハッハハハハハハハ!!! 全部思い出した! 俺が誰なのかも、どこで生きたのかも! 全てなァ!!」

 

 

 その力は異常でも過負荷でも無いお伽噺のような力。

 

 

「これが俺……これが俺の生き方だ……!」

 

 

 世界そのものに反逆し、そして相討ちとなった青年の力。

 

 

「俺は兵藤一誠、最後の赤龍帝。

復活記念に俺の事を教えてやる―――見ておけ、これが俺の……戦いだ!!!」

 

 

 その腕に赤き龍の帝の証を纏い、全てを消し飛ばす膨大な力の奔流は――

 

 

「待たせたな――ドライグ!!」

 

『待たせ過ぎたこのバカ野郎が……! だが、漸くだ!!』

 

「ああ、行くぜ!!」

 

 

 最後の赤龍帝の帰還を悦ぶのだ。

 

 

 

 それから、すべてを思い出してしまった青年は――

 

 

「へぇ? 善ちゃんとめだかちゃんばかりか、お前までここまで到達したのか――ありあ」

 

「違うよ、皆が助けてくれたらから私は今一誠くんの前に立てた。

だから――全力で一誠くんを止めて連れて帰る!」

 

「お前を独りには絶対にさせねぇ……!」

 

「それが私達の気持ちだ!!」

 

「………。お前達と出会えて本当良かったよ。

けど、だからこそ――全力で振り切らせて貰うぜ!!」

 

 

 世界から消えようとする彼を、捕まえる為に赤き龍の系譜となった者達は走る。

 

 

 そして――

 

 

 

「『ねぇ』『安心院さんが何か言いたげな顔をしながら僕達を見てくるんだけど?』」

 

「そういう年頃なんだろ? ほっとけよ? なんたら計画を再開したとか自慢げに語られても知らねーよ」

 

「ああ、どうぞお好きにしてくれだぜ」

 

「まったくだ。アレコレ理由をつけて一誠を逆ナンさえしなければ勝手にしてくれだ」

 

「私はそもそもよくわからないし……」

 

「『……』『安心院さんが皆からスルーされすぎてちょっと泣きそうな顔なんだけど?』

 

「じゃあ球磨川先輩が構ってやればいいでしょう? 俺は今かなり忙しいんで」

 

「そうだぜ、構ってちゃん同士でよ?」

 

「波長は合うだろう?」

 

「私はノーコメントで……」

 

「『………』『最早普通に泣き出してるんだけど』『僕もいいかな』」

 

 

 裸エプロン先輩は普通に仲間に入れて貰えたのに、人外さんだけは未だにスルーされ続けていたとさ。

 

 

「計画のサンプルとして、計画関係なく到達したありあを調べたいとかほざいたから、ついアロガントスパークの刑にしちまったぜ」

 

「この前は一誠を懲りずに逆ナンしたから、めだかちゃんが千兵殲滅落としの刑にしちまったんだっけ?」

 

「『そういう善吉ちゃんだって霧島君に口移ししようとしたのを見て』『ジャッジメント・ペナルティとかいう技で粉砕しちゃってたじゃないか?』」

 

「仕方ないだろう? 一誠に変な真似をする輩は例外無く……ギルティだぜ」

 

「異議なしだ」

 

 

 ちょっとそんな彼等の仲に茶々をいれようものなら、完璧超人始祖奥義なる技で粉砕するのだから、涙目も仕方ないのかもしれない。

 

 

全部嘘だ

 

 

 

「すぴーすぴー……」

 

「な、なんだろ……どんどん一誠くんからの密着度が……」

 

「ず、ずるいぞ有明二年生!」

 

「こ、こんなの最早抱き枕じゃないっすか!!」

 

「そ、そんな事言われても……。私だって恥ずかしいんだよ?」

 

「すぴーすぴー……ふふっ……♪」

 

「な、なんという心地よさそうな寝顔……」

 

「く、くそ……! 有明先輩をそれだけ気に入ってるって訳かよ……!」

 

「そっか、それなら嬉しいかな? ………さっきから安心院さんって人が何とも言えない顔でこっち見てくるせいで落ち着かないけど……」

 

 

終わり




補足

最早ただの番犬化してる善吉くんとめだかちゃんによって、中学時代に立ちかけていたフラグ類は知らず知らずに粉砕されていた模様。


その2
でも本人も特に人外さんに対しては胡散臭いと思ってるので、スルーしていた模様。

何言っても『ふーん、あっそ』で切られるので、その内マジになりすぎてガチで泣きかけたもよう。


その3
少なくとも、無防備な姿を見せながら密着を求められる程度には親しみを有明さんに持ってる模様。

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