色々なIF集   作:超人類DX

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続きだけど、途中で色々と省きます。


その後

 英雄(ヒーロー)への憧れた事もあった。

 

 英雄(ヒーロー)なる為の努力をした事もあった。

 

 その魂が望んだ事もあった。

 

 しかし、いざそう呼ばれ始めた時に青年が思った事は―――それまで災厄だ、世界の癌だ、ゴミクズ呼ばわりしてきた連中共に挙って掌返しされる事への不愉快さだけであった。

 

 そして気付いたのだ。

 

 自分にとっての英雄(ヒーロー)は、自分が大切に想う者達を守る為のものであると。

 それは最早英雄(ヒーロー)ではないのかもしれない。

 

 しかし親友の為。

 自分を慕う仲間の為。

 

 例え世界から拒絶されても、信じてくれる者達を守る為に自分は生まれてきたのだと。

 

 英雄失格者である英雄の青年は――その出会いと日々を過ごすことで確信するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 摩訶不思議な世界から、元の世界へと帰還し、二人の親友と共に復讐(リベンジェンス)を果たした青年――曹操。

 

 既に曹操の子孫である拘りを捨て去り、ただの神牙として生きるようになって久しい彼は、ただのリベンジが結果的にねじ曲げられた世界をある程度救った事になり、それまで自分達を殺そうとまでしてきた連中達が挙って掌を返し、英雄だなんだと騒ぎ立ててくる事に鬱陶しさを感じてやまない。

 

 特に親友の一人である一誠は最近、かつて見捨てた悪魔達からしつこいレベルで言い寄られているし、ハーフ悪魔で旧魔王の血族であるヴァーリもまた同じように言い寄られている。

 その度に神牙もイラッとなるのだが、どうやらヴァーリも一誠もそんな連中の言葉に耳を貸すことも無ければ、話す舌も持ち合わせてない様子なので、あまりにしつこければ、三人で連中の根城を更地にしてやる気だ。

 

 勿論、他の仲間達も三人を他の連中にくれてやる気は無い。

 その中の一人にて、華琳達と共にこの時代へと飛ばされ、そして敬愛してやまない神牙と再会することが出来た忠犬もとい、忠臣少女こと楽進――真名を凪は、彼女にとっての元の時代の時よりも神牙の傍を離れなくなった。

 

 

「これが神牙様の好物の『はんばーがー』という食べ物ですか……。

確かに美味ではありますが、辛味が足りませんね」

 

「ラー油バーガーとか、激辛バーガーは存在しているが、やはりオーソドックスなバーガーこそが至高なのさ。

凪は辛いもの好きだし、物足りないとは思うがな」

 

 

 神牙とは華琳の配下として、軍を任されていた頃からの付き合いである。

 しかし凪は確かに華琳に対する忠心はあるにはあるが、彼女があくまで命を以て忠を尽くす相手は神牙である。

 そのあまりの忠義っぷりは、何があろうとも神牙の傍を離れようとはしないし、神牙が他の女性辺りに話し掛けられたりすれば番犬みたいに威嚇するし、威嚇した後は泣きそうな顔になるしと。

 

 友人の真桜(李典)やら沙和(于禁)にしょちゅうからかわれていた。

 だから、赤壁の合戦で覚悟を決めた神牙達が魏軍を完全勝利に導いた少し後に元の時代へと戻ってしまった時は、それはもう飼い主を失った飼い犬みたいにしょんぼりし続けたし、変態としか思えない格好の輩によって逆にこの時代へと華琳達と飛ばされ、神牙達と再会した時は飼い主と再会できて嬉しい犬みたいになっていた。

 

 つまり凪は華琳ではなく神牙に対しての忠を捧げているのだ。

 それこそ文字通り、身も心も……。

 

 それは姓と名を捨て、只の凪となっても変わらない。

 いや、これまでよりももっと……。

 

 

「それより凪。

俺の事は様を付けなくて良い」

 

「しかし……」

 

「この時代ではあくまでも俺達は『対等』なんだ。

そもそも俺は畏まられる程偉くも無いしね」

 

「で、ですが神牙様を呼び捨てにするなど恐れ多くて……。

それに、ちょっと恥ずかしいです……」

 

「少しずつ慣れてくれれば良いさ。

正直に言うと、また凪や皆と再会し、今度はこの時代で共に過ごせるのは俺も嬉しいんだ」

 

「神牙、様……」

 

 

 神牙から言われた言葉は今でも凪は忘れない。

 

 

『キミな必ず伸びる、だから俺はキミが欲しい』

 

 

 手を差し伸べ、少年のように笑いながら言ったあの言葉を。

 

 

『す、すまない凪! 嘘に思うかもしれないが、本当にわざとじゃないんだ!』

 

 

 

 結構抜けてておっちょこちょいで、しょっちゅう『事故』が発生する度に地面に頭を叩きつける勢いで謝られたりしてきた事も。

 

 

『傷跡? 別に何も思わないぞ? あろうが無かろうが、キミは充分綺麗さ』

 

 

 コンプレックスに思っていた己の外見に対して言ってくれた言葉も。

 

 

『もう、二度と帰れなくも構わない。

だから今一度言うぞ凪……この先も俺に付いてこい!』

 

 

 神牙に貰った全てが凪にとっての宝物。

 これまでも、そしてこれからも……。

 

 

「これからもよろしく頼むぞ凪……」

 

「はい……!」

 

 

 募る想いはより強くなり続けるのだ。

 

 

 

 

 

 

 止まっていた『精神(ココロ)の時間』が再始動し、本当の意味で先を歩けるようになれた――――という意味でなら、自分達の意思に間違いは無かったと思えるし、事実後悔だってない。

 

 だが決してこの世界の為に戦った訳ではないし、ましてや誰かの為などではない。

 

 寧ろ、世界の殆どを味方につけていた相手を殺した事で、男に与した者達による報復を想定していたつもりだった。

 それがどうだ、蓋を開けてみれば誰も彼もが『正気』に戻ったと宣い、その元凶を屠った自分達に対するまさに熱い掌返し。

 

 まったくもって反吐が出る――そう言ったのはヴァーリであり、一誠と神牙もまた同意見だった。

 特に一誠は、その元凶の男の一番近くに常に居た悪魔――かつての主達が今更になって戻れと言ってきた時は、怒りよりも戸惑いが勝ってしまった程だ。

 

 確かに最初こそは彼女達――つまりリアス達がその男によっておかしくなっていくのを知り、助けようと思ったのは事実だが、そのリアス達からゴミを見るような目で『もう要らない』と言われもすれば、それまで抱いた情は消し飛ぶ訳で。

 

 その後出会ったとある無限の龍神からも、すぐにその男と関わる事で裏切られた事もあるし、今更そんな事を言われても嫌だし、困るのだ。

 

 

「おいイッセー、連中はまだお前の事を諦めちゃいねぇみたいだぞ。

その証拠に、正式な話し合いの場を持ちたいって悪魔のパーティーの招待状がお前宛に届いてるぜ?」

 

「えぇ……?」

 

「そんな顔になるのはわかるが、一応中身だけは確認してみろよ? 大丈夫だ、呪いといったトラップの類が無いのは確認済みだ」

 

「……はぁ」

 

 

 とある日の出来事である。

 既に駒王町から離れ、今はアザゼルが個人で所有している邸宅に、ヴァーリや神牙………そしてあの摩訶不思議な世界にて一度は別れたが、紆余曲折あってこちらの世界へと飛ばされた華琳達とそれなりに静かな生活をしている一誠に、悪魔側から話し合いをしたいという意味でのパーティーの招待状が届き、アザゼルが渡してきた。

 

 

「…………。確かにパーティーの招待状みたいっすね」

 

「余程、お前という存在を獲得したいんだろうぜ。

あれから、奴を抱えていた悪魔達は他の勢力達から憎悪されちまってるしな」

 

 

 渋々中身を読んでみれば、確かに一見すればパーティーの招待状ではある。

 場所はグレモリー家との事だが、その時点で既に一誠はかかわり合いたくもないので行きたい気分にはなれない。

 そんな渋い表情をしながら手紙を丸めようとしていた一誠の手から、隣に座って様子を見ていた華琳が掠めるように取る。

 

 

「お、おい」

 

「捨てるつもりなら、私が目を通しても問題ないでしょう? ふむふむ――――――って、見たことない文字で読めないわね……」

 

「そりゃあ悪魔言語で書いてあるからな」

 

「悪魔の言語? じゃあどうして一誠は―――ああ、そういえばアナタは一度は悪魔の下に居たんだったわね。

これ、なんて書いてあるの?」

 

「英雄の一人である一誠様を是非我らの集いにご招待させていただきたく――みたいな感じだよ。まったく、誰が英雄だっつーの」

 

 

 読もうとしたけど、悪魔言語だったので読めず、一度は転生悪魔でそこら辺の事も教えられた経験のある一誠に中身を読ませた華琳は、悪魔達に英雄呼ばわりされて心底嫌がっている様子に、ふむと考える。

 

 

「マジでこういうことされるのは困るんですよね。

……いっそ襲撃しちまおうか」

 

 

 元の時代で一誠の過去は既に聞いている。

 どういう生だったのか、誰と共に居たのか、その後ヴァーリと神牙と生きる事になった経緯の殆どは、元の時代の『ある夜』に一誠から告白されたので華琳も大体は把握している。

 

 一誠がかつて誰に思いを寄せたのか。

 というか、一誠の性癖がほぼそれによって形成されたのだろうとか。

 

 この前、かつて一誠が一度は思いを寄せた相手である悪魔のリアス・グレモリーと初めて華琳が相対した時は、そのスタイルを見てなるほどと思ったのも記憶に新しい。

 

 実に自分達の世界に来たばかりの一誠が好みそうな女であった。

 そして今でこそ一誠は彼女等に対しての情は無くなっていると言いはしているものの、それが本当ならとっくに殺すという行動に走る一誠が未だに彼女等に何もしないのは、情こそ無くしても、ある程度の手心の気持ちを抱いているに他ならない。

 

 

「戦でも起こすつもりか?」

 

「今の時代にその様な行動を起こすと問題になると言ったのはお前だろう一誠?」

 

「それも時と場合によるさ……まさかこうもしつこいとは思わなかったしな」

 

 

 ……と、同じく一誠に送られてきた手紙の内容を聞いていた秋蘭と春蘭が悪魔達に殴り込みをしようと呟く一誠と雑談しているのを横に、華琳は考え――そして閃く。

 

 

「一誠、この申し出を敢えて受けなさい」

 

「は?」

 

 

 そう、あくまで一誠が受け身であるのなら、その周囲――つまり自分達が攻勢に出れば良いだけの話だ。

 あくまでリアス・グレモリー達はイッセーではなく、イッセーの力を求めている時点で――いや、そうでなくても華琳としてはイッセーを連中にくれてやる気等更々ない。

 

 それがどんな事情があったにせよ、捨てたのは他でもない奴等なのだ。

 それが今になって戻れ等――これは一誠の主である華琳に対する宣戦布告に他ならない。

 

 だからこそ、現代的に言えばスマートに突きつけてやるのだ。

 お前らが捨てた一誠は立派な男になって、私の傍にこれからも居るから、間違いなく貴様等には付かない……と。

 

 

「神牙とヴァーリは私の配下。

そして一誠は私のものなのよ? その事もこの前言ってあげた。

それなのに連中は一誠に戻れと宣う―――ねぇ、これって私に対する宣戦布告になると思わない?」

 

「…………」

 

「た、確かに! これは華琳様への冒涜だ!」

 

「落ち着け姉者。

しかし華琳様の解釈には納得できますな」

 

「でしょう?」

 

「じゃあなにか? 冥界に乗り込んで、殲滅でもするのかよ?」

 

「そんな野蛮なやり方ではなく、もっと……ええっと、この時代の言葉で表すなら『すまーと』にやるわ。

だからまずはこの招待状とやらに私の言った事をそっくり書き加えてから返事を出しなさい」

 

「ん?」

 

 

 だから華琳は、この時代で生きる事になってから初となる『戦い』の準備を―――三馬鹿を従えし三国の覇王として命じる。

 

 特に一誠を知り、共に過ごし、一夜をも共にした事で開花し、そして飛躍した王の器。

 

 金色の覇王としての覇気を纏う姿に、秋蘭と春蘭は歓喜の笑みを――一誠はちょっとハラハラした顔で頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 冥界に激震が走―――ったのかはわからないが、少なくともグレモリー家内は大騒ぎであった。

 何故なら、これまで一度も反応が無かった元リアスの兵士であり、今は英雄の一人と数えられる一誠から初めて返答が届いたのだ。

 

 しかもこちらが招待したパーティーに応じるとまで来れば、上手くいけば再び彼が悪魔として復帰し、例の男によって堕ちに堕ちた悪魔全体の権威が甦るかもしれない。

 

 だからこそ上層部は、戦犯でありながらも唯一一誠と過去に繋がりのあったリアス・グレモリー達に対して、くれぐれもと釘を刺し続けた。

 

 それは凄まじきプレッシャーであったが、リアスとしても他種族どころか同族達からも戦犯として憎まれ、肩身の狭いこの状況から『自由』になれると、一誠との和解という光にすがりつこうと気合いが入る。

 

 

「何としてでも一誠を取り戻すのよ……! あの子は子供の頃からちょっとエッチな子だったから、今の私達の身体でも何でも使うわ! 良いわね……!」

 

「「は、はい!」」

 

「そ、それって私もなんですか……?」

 

「僕はどうすれば? 男ですけど……」

 

「ぼ、僕もですぅ……」

 

「わ、私も殆ど知らない人を誘惑するのは気が引けると言いますか……」

 

「私も協力しかねるぞ」

 

 

 リアスの言葉に力強く頷くのは、リアスの眷属としては古参の部類となる女王の姫島朱乃と、戦車の塔城小猫だけで、古参ではあるが男である騎士の木場祐斗や、見た目こそ女の子だけど男である、ギャスパー・ヴラディは、既に戦力外扱いで軽く凹み、一誠が転生者の男によって去った後に眷属となったアーシア・アルジェントやロスヴァイセやゼノヴィアといった新参側は、災厄だの寄生虫だのと呼ばれていた赤龍帝に自分の身体を使った誘惑に関してはかなり抵抗感を抱いている。

 

 そんな彼や彼女達に対してリアスは『大丈夫』と言う。

 

 

「アナタ達までしなくて良いわ。

あの子は朱乃を女王にした直後に兵士として迎え入れた古参側だし、あの子の事をよく知っている私と朱乃と小猫で多分充分な筈だから……!」

 

「ええ、寧ろ結構です。余計なのが増えたら嫌ですし」

 

「そうですね。あの小さかった一誠くんがあんなに逞しくなってくれたのだから、余計な邪魔者が増えては困りますわ」

 

『……………』

 

 

 どうやら新参者達にやる必要性は無く、寧ろ三人としてもお断りだった模様。

 それはそれで安心ではあるが、ああもきっぱり言われると逆にムッとするのは女子としての心情なのか……。

 

 とにもかくにも、来る会合の日までの間、リアスと小猫と朱乃は毎日鏡の前で無駄に気合いを入れ続けたのだった。

 

 

『同席者を連れてくる事を了承すれば招待を受ける』

 

 という事を知らず、更にはその同席者があの金髪の女達であったと知るまで、彼女達は希望を持つのだ。

 

 

 

 そしてパーティーの当日。

 

 既にフリーの堕天使となっているアザゼル。

 

 そしてそのアザゼルが護衛として雇った同じくフリーの堕天使となっている『転生者によって殺されたと世間では思われていた悪人顔の堕天使』。

 

 その悪人顔の堕天使が死んだ直ぐ後に組織を抜け、行方を眩ませていた『金髪の女性天使』。

 

 

 という、悪魔側からしたら驚愕の面子と共に一誠はヴァーリと神牙――――そして華琳、秋蘭、春蘭といった美女・美少女達と共にグレモリー家に再び足を運ぶ。

 

 

「こ、コカビエル……!? 貴様は死んだ筈では……」

 

「奴に身体の殆どを壊され、絶命寸前だったところをこのガブリエルに助けられてな。

復活するのに時間は掛かったが、この通り俺は生きている。

そして今は小僧達の護衛としてアザゼルに雇われた身だ」

 

「な、何故天使のガブリエルが……」

 

「個人的な動機ですよ。

それと、今日の主役は我々ではなく、彼等です」

 

 

 誰しもがガブリエルとコカビエルの出現に驚く中、本人達はシレっとした顔で悪魔達の視線を受け流す。

 そしてそんなガブリエルが手で促した先には……スーツを着た一誠が。

 

 

「ご招待頂き、ありがとうございます」

 

「あ、ああ……よ、よく来てくれたね」

 

 

 無表情で、代表者である魔王サーゼクスに形だけの挨拶を済ませる一誠に、色々な事が重なってすっかり動揺してしまっている悪魔達による会合が始まる。

 

 

 

 

 

「キミは妹の兵士だった。まずは兄として妹がキミにしてしまったことを謝罪したい」

 

「………」

 

 

 ぴくりとも表情を変えない一誠に、リアスの兄であり魔王でもあるサーゼクス・グレモリーが頭を下げた。

 そしてその謝罪と、これからについてを話し始めたのだが……。

 

 

「結論から言わせて貰いますと、俺はそちらがどんな条件をだそうともそこのリアス・グレモリーさんの眷属としては復帰しません。

無論、他の悪魔の眷属としてもです」

 

「…………」

 

「理由……は、わかっているつもりだ。

眷属としてではなく、キミに爵位を持った悪魔としてでもかい?」

 

「純血悪魔でもないですからね。

それに俺は彼女の配下として生きていますから……」

 

「……! 彼女というと――」

 

「………。私よ。

フッ、こんな小娘が………って誰も彼も思っている様だけど、私は正真正銘一誠の主よ」

 

 

 敢えてドレスといった礼服ではなく、元の時代の衣服でこの場に赴いた華琳。

 

 

「私は華琳。

そこに居るリアス・グレモリーが自ら手離した一誠とこれから先も共に在り続けると誓い合った者」

 

 

 只の人間の少女ではない尋常ではなき覇気を放ちながら名乗る華琳に、名指しされたリアスはその圧力に圧されながらも声を荒げた。

 

 

「あ、アナタ、この前の時も言っていたけど一誠とどんな関係なのよ!?」

 

「あら、そこまで言わなければ察しも付けられない程度に鈍いのかしら?

まったく、下品な言い方は好まないけど教えてあげるわ――毎晩共に寝てる関係よ」

 

「なっ!?」

 

「「!?」」

 

『………』

 

 

 あんまりにも堂々と言う華琳にショックで再び固まるリアス。

 そして横で言われた一誠は、どこぞのカップルの片割れが特別な気分だと宣い、それに対して顔を隠した片割れみたいに片手で顔を隠して下を向いている。

 

 

「だから最初からアナタ達の望みは破綻しているのよ。

一誠が動かないから暫くは見過ごしてあげたけど、これ以上私にとって大切な者にちょっかいをかけるのなら――――――――――

 

 

 

 

 

 

 ―――殺すわよ?」

 

 

 しかしそれでも華琳は堂々と……そして青い瞳を赤く輝かせると、覚醒した覇王のオーラを放出する。

 

 その瞬間、周辺に居た大勢の……目の前のグレモリー一族やそれに準じた実力を持つ者以外の悪魔達が突如として白目を剥き、口から泡を吹きながら卒倒する。

 

 

「っ!? こ、これは……!」

 

 

 人の放つ覇気を遥かに凌駕し、自身をも怯えさせる程の圧力を前に、サーゼクスは戦慄する。

 

 

「私をただの人間の女と思っていたのなら、これでわかったでしょう? それと、その無駄な身体で一誠を誘惑して引き込もうとか、アナタの妹は企んでいたようだけど無駄よ。

そうでしょう、一誠?」

 

「まあ、全裸でダンスしてても勃たねぇわな」

 

「うっ……!」

 

 

 アザゼルが愉悦とばかりに、やっぱり偶々横に居た秋蘭の肩を借りながら腹を抱えて大笑いし、コカビエルは自分の復活するまでの間にここまでの覇気を放てる華琳を興味深そうにしげしげと眺めており、それに気付いたガブリエルが頬を膨らませながらコカビエルの頬を引っ張っている。

 

 

「それでも一誠にちょっかいをかけるというのなら、我々が相手になるわ」

 

 

 そんな状況でも華琳は華琳らしく堂々と宣言する。

 するとその言葉に呼応するかのように、華琳の配下であり、この時代に渡ってきた者達が華琳に及ばずとも、人の壁を越えた異質な覇気を放つ。

 

 

「知ってる? この三人の受け売りじゃないけど、人間も壁を越えたらアナタ達程度なら潰せるのよ?」

 

『……………』

 

 

 かつて魏軍であった者達はこの時代においても変わらない。

 

 その覇道は変わらない。

 

 

そして……。

 

 

 

「ぷわっはっはっはっ! あっひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

「お、おい大丈夫かアザゼル? ずっと笑いっぱなしだぞ?」

 

「くくく! わ、悪い……! も、もうちょい肩貸してくれや秋蘭? や、奴等の間抜け顔が面白過ぎて笑いがとまんねぇぜ! あっはははは!!」

 

「い、いやそこは肩じゃなくて私の胸……」

 

 

 堂々と華琳を先頭に帰還した真・魏軍は、先程のパーティーでは一切料理や飲み物に口を付けなかった反動とばかりにどんちゃん騒ぎだ。

 

 

「おいパラレルワールドの曹操の配下よ、それほどの力をどうやって身に付けた? というか俺とやらない――いたっ!? な、何をするんだガブリエル!」

 

「知りません! この浮気者っ!」

 

「なんの事だ!? ぐあっ!?」

 

「む……あのアザゼルの友人二人――強いな」

 

 

 この際とばかりに完全に合流することになったコカビエルが、三国少女で猪気味の春蘭に対してナンパ(バトル申し込み)をしようとして、ガブリエルに怒られていたり。

 

 

「その、すまん凪……」

 

「い、いつもの事ですから! それに神牙様なら私は何をされても構いませんし……」

 

「ひゅーひゅーなのー」

 

「今日もごっそさんやでー」

 

「う、うるさいぞそこのガヤ二人!!」

 

 

 神牙はどんちゃん騒ぎ中に、凪にまたやらかしていたり……。

 

 

「ふぅ、ヴァーリさんに対するしつこいお話もこれで落ち着くと宜しいのですが……」

 

「そうなれば今度は私達で守れば良いだけですよ」

 

「当然ですわっ!」

 

「ふふ……ほらヴァーリさん、もっとゆっくり食べましょうね?」

 

「……? 何故頭を撫でる……?」

 

「さぁ? 何時も通り、何となくですよ? ふふっ……♪」

 

「ま、また貴女ばかり……! ヴァーリさんっ!!」

 

 

 ヴァーリはその天然に引っ掛かってしまった女子とのほほんとしていたり。

 

 

「はぁ、騒がしいのがさらに増えて余計騒がしくなっちゃったわね……って、どうしたのよ?」

 

「うー……またイッセーと華琳様が二人でどこかに行っちゃったっす~」

 

「……。何時もの事でしょ? 私もムカつくけど、こればかりは邪魔したら怒られるし、我慢するしかないわ」

 

 

 軍師さんと元気っ娘は其々敬意にしてる人物が二人でどこかに行った事にため息を吐き。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり甘くなってるわアナタ」

 

「何が?」

 

「何時ものアナタなら、最初の時点で殲滅に走るのに、あの悪魔達にはそれをしない」

 

「え? ……ああ、確かにそうかもしれない」

 

「…………。まだ情を抱いているのね?」

 

「違うな。俺が殺す価値を感じてないだけだ。

奴等がもしこれから先、お前に少しでも触れた場合は―――躊躇はしねぇ」

 

「…………。それでも甘いわね、何時もの一誠にしては」

 

「んだよ、怒ってるのか?」

 

「まあね。

あの白髪以外はアナタの性癖通りの女ばっかりだったしね」

 

「リアス・グレモリーの眷属は四人くらいしか面識無いぞ? それ以外はよく知らん」

 

「あっそ……」

 

「お、おいおい……。こっち向いてよ?」

 

「アナタが私を向かせれば良いじゃない」

 

「………わかった、悪かったよ華琳。

でも、誓って奴等にはそういう感情はありえない、それだけは信じてくれ」

 

「……………。当たり前でしょう? 他の女に走ったら、アナタのそれを切り落としてやるわ」

 

「怖いなオイ……」

 

 

 そして二人だけで屋敷の庭から夜空を眺めていた一誠と華琳は、軽い痴話喧嘩をしながら……。

 

 

「あの時決めた覚悟から、俺は変わらないぜ華琳……」

 

「知ってるわよ……ちょっとからかっただけよ? ふふ、お互いに素直になれないと苦労するわね?」

 

「だから波長が合ったんだろうけどな」

 

 

 肩を寄せあいながら月を眺める。

 子供じみた喧嘩をする事の方が多いのかもしれない。

 

 けれどあの夜誓い合った事だけは……。

 

 

「……。私からさせる気?」

 

「うっせーな、今でも恥ずかしいんだよ」

 

 

 絶対に変わらない。

 屋敷から聞こえるどんちゃん騒ぎの声をバックに、二人の影は重なるのだった。

 




補足

さ、サーゼクスさんがもしあのサーゼクスさんだったら、チームD×Gだったのに! 惜しかった!


その2
ちゃっかりあのお二人が合流したせいで、ヤバイ勢力化した模様。

尚本人達はどんちゃん騒ぎできたらそれで良いらしい。

その3
華琳様、海賊王みたいにヤバイ。

武装色も技術として体得してるから、戦闘もバッチリだぜ!


その4
最近アザゼルさんに絡まれる秋蘭さん、ナチュラルにセクハラされる。

尚、後で軽い感じで謝られたので、力が抜けてしまって許した模様。

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