色々なIF集   作:超人類DX

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続き。
といっても、一誠の軌跡みたいな感じ


車イスの少女とチビ龍帝

 何故こうなったのか、何で身体までもが縮んだのか。

 考えた所で答えなんて見つからないし、見つからないまま、見知らぬ世界で生きなければならない。

 

 当然だが、俺達が力と身体を完全に取り戻せさえすれば、あの時の喧嘩と同じ方法で強引に次元を破壊してこの世界から抜け出せる筈だ。

 

 だから今は、この不便過ぎる状況に腐る事なく、力を取り戻さなければならない。

 

 幸いここが別世界とはいえ日本で、しかも出会した妙に街の住人がお人好しだったのが良かった。

 今の所、俺もヴァーリも神牙も上手いこと衣食住の確保に成功したお陰で、力と身体を取り戻す事に少しは集中できる。

 

 もっとも、過ごしていく内に、この世界は俺達の世界のような悪魔だなんだが蔓延ってるクソッタレな世界とは違った意味で不思議なものがあるみたいだが……。

 

 そんな不思議な状況によもやヴァーリと神牙が巻き込まれているに加えて、現状敵対中って聞いた時は笑ってしまったけどな。

 

 まあ、俺はそんな二人の話をほっといて、身寄りが無くてまだ9歳だというのに一人で生きている女の子の家に厄介になっている。

 

 なんというか、まんま俺達に似た境遇の女の子で、最初聞いた時は別の意味でドキッとしたのだけど、この女の子は警戒心が無いのか、それともやっぱり子供だからなのか、腹へって動けなくて家も無いと言った俺の言葉を普通に信じたばかりか、飯まで食わせてくれた。

 

 脚が悪くて普通には歩けないその女の子の名前は、八神はやて。

 亡くなったご両親の『友人』だかなんだかを名乗る人が生活費だけ振り込んでくれるお陰で独り暮らしが出来る様だけど……9歳の女の子をマジの意味で独り暮らしさせるその友人とやらは、この子を引き取る事はしなかったのかと疑問に思う。

 

 いや、その人にも引き取れない事情があるにせよ、歩くことも儘ならない女の子を独り暮らしさせるってのは――どうなんだ?

 

 ………まあ、そんな状況だから飯を食わせて貰えてるし、寝床まで貸して貰ってるのだから深く考えるべきじゃあないんだろうけどよ。

 

 

 

 ヴァーリと神牙が、ジュエルシードなる――ヴァーリと神牙の印象としてはそこそこの値段で売れそうな石集めを、其々世話になってる女の子と一緒にやっては、たまにその石を賭けてバトルなんかをしている頃、ある意味で精神年齢と今の肉体年齢が合致している一誠は、脚が悪くて歩けない女の子こと八神はやてのお世話になっている。

 

 本来なら最初の時点で腹さえ膨らめば、それっきりと思っていたのだが、つい馬鹿正直に家も無いなんて言ったものだから、普通に信じてしまったはやての厚意により、今現在ははやての家を根城にして活動中だ。

 

 活動といっても、学校を休学中のはやての病院の付き添いだとか、殆ど足の病気について諦めていたはやてを持ち前の馬鹿が付くほどの騒がしさで説得してリハビリの手伝いをしたりと――ほんの少しだけど過去の自分に似ているはやてと案外うまい事共存していた。

 

 

「ああ、白衣のお姉さん。僕は今お姉さんの姿を見た瞬間から心の病気を発症してしまいました。

だから僕に恋の治療を――」

 

「はいはい、はやてちゃんを待たせたら駄目だから、また今度ねー?」

 

「あ、お姉さーん!」

 

 

 一誠は相変わらずの一誠であり、はやての遠い親戚で同じく親が居らず、最近一緒に生活するようになった……………という、普通に考えたら滅茶苦茶で荒唐無稽すぎる話を、はやての担当医さん達に信じさせる事に成功したまでは良かったが、付き添いで病院に行く度に女性ナースをナンパし始めるようになっていた。

 

 もっとも、今の一誠の見た目が10歳前後な為にほぼ相手にもされておらず、呆気ない空振り続きなのだけど。

 

 

「ふふふ、あの素っ気なさも良い……!」

 

『馬鹿だな』

 

 

 好きなタイプが年上で完全に固定されている一誠にとって、女子高生程度の年齢は完全に子供で、異性としての対象から外れている。

 だからこそなのか、異性から外れている相手には普通に非情になれるし、それが完全な敵と認識すれば、例え己のタイプの女性であろうとも全力をもって叩き潰すという、本来の人生を歩まずに生きた事への違いを持つ。

 

 そして、敵でなくて尚且つ好みから外れた相手――例えば完全に子供に対しては、案外な包容力を持つ――それが彼の性質だ。

 

 

「また看護婦さんに変な事言うてたん?」

 

 

 そんな一誠のアホさ加減を、何時もながら呆れた様子で一誠の中から眺めていたドライグと、最近一誠がそいいう感じの子なんだと知ったはやて。

 

 家すら無くて今時珍しい行き倒れ寸前にまでなっていた、同い年くらいの男の子を勢い任せに暫く住んでいいと言った時は、正直後になって不安だったが、この年上の女性に対するアホさを除けば、意外な程普通というか、足が悪くてどんくさくなってしまう自分に合わせてくれる優しさというか……とにかくはやて的にはいい人だと思うようになった。

 

 なったからこそ、この年上の女性に対する変な声の掛け方を見てると『なんだかな』と思ってしまう訳で。

 

 

「おう、はやて。

検診終わったのか?」

 

「うん、何時も通りやって」

 

「そっかそっか、そんならこのまま家に帰るか?」

 

 

 端から見ればちょっとした兄妹に見えなくもないやり取りをしながら、一誠がはやての車イスを押しながら病院を出る。

 

 

「お……? あの人良いおっぱいしてんな……?

ぬおっ!? あそこの喫茶店でコーヒー飲んでる女性は特盛じゃねーか!? ええぃ、この街の女性の戦闘力(おっぱい)は化け物かっ!?」

 

「こ、声が大きいからやめーや……」

 

 

 最近はやてが帰宅する道中は、後ろで疲れた素振りすら欠片も見せない一誠が目ざとく、決まって胸の大きな女性に対してだらしない声と顔をするのを見たり聞かされたりすることが多くなった。

 

 その度に、すれ違う人達にクスクスと笑われたりするせいで、はやては微妙に恥ずかしい。

 

 

「ははは、覚えておけよはやて? 男って生物はおっぱいに希望を抱く生物なのさ!」

 

「そこまで露骨な男の子は一誠君しかわたしは知らんよ」

 

「頭の中で思ってても、声には出してないだけさ。

俺は正直なんだよ」

 

「そんな正直さは要らん気がするわ」

 

 

 カッカッカッ! とおっさんみたいに笑う一誠を、はやてはつくづく不思議に思う。

 年上の女性に対してアホ丸出しな行動をするかと思えば、殆ど諦めていた自分の足の病気の事を聞けば、リハビリを真剣に手伝ってくれる。

 

 その時に限ればちょっとだけカッコいいかもしれないとはやては思うし、その時に限れば、まるで一誠が一回りは年上の男性みたいに感じる。

 

 

「よっし、天気も良いし今日はここで練習してみるか?」

 

「え、家の方が……。

それに、周りの人に見られたら恥ずかしいし……」

 

「心配すんな。

はやてを見て笑う奴が居たら、それが例え俺好みの女であろうがぶっとばしてやるぜ」

 

 

 その癖、その時に限れば妙に頼もしく感じる。

 この前も殆ど強引に『折角だから外で歩く練習しようぜ』と言って連れ出して練習させられた時、はやての姿を奇異な目で見ていた――それこそ一誠的には好みの部類に入るであろう女性を、一誠が輩丸出しに凄みつつ、女性の真横に立ってた決して細くは無い木を蹴り折って追っ払った。

 

 なので、一誠のこの言葉には嘘は無いとはやてもわかるし、最近になって一誠に手伝って貰いながらリハビリを行うと『前よりすこしずつ歩けるようになってきた』気がするのだ。

 

 

「ちょっとずつだぞ? それ右、左」

 

「右……左……!」

 

「よし良いぞはやて! この前より上手く歩けてるぜ!」

 

「ほ、ほんまや……。

殆ど無理やって諦めてたのに……」

 

「どうせ治らないんだって精神(ココロ)もあったからだ。

確かに無理だと諦めた方が楽になる事もある……けど、どうせなら限界まで抗ってみてから諦めても遅くはないだろ?」

 

「一誠くんって不思議やな。

リハビリなんて無駄って思ってたのに……」

 

「考えるのがめんどくさいってだけだよ。

よし、このベンチからあそこのブランコまでゆっくりで良いから歩こう。

手は俺が握っててやるし、転びそうになっても俺が抱えてやるからな」

 

「う、うん……ありがとう……」

 

 

 本当に不思議な男の子だ。

 はやては、しっかりと自身の手を握ってくれる一誠とゆっくり、少しずつ自分の足で歩く練習をしながらただぼんやりと思うのだった。

 

 

 そして近い内にはやては知る。

 

 一誠と――一誠が親友と呼ぶ二人の男の子の精神(ココロ)を。

 一誠の宿す過去(チカラ)を……。

 

 泥臭くも這い上がろうとするその異常性(アブノーマル)を。

 

 大切に思う者の為ならば、その力をも捨て去るという覚悟を……。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 信じた相手を引き上げる。

 それが一誠の、本来ならば永遠に目覚める事は無かった筈の異常性。

 

 その異常性はこの世界に迷い込んだ事で、本来の力と肉体共々縮小した。

 しかし、その精神がある限り、決して消えることはなく、小さくなってもその性質は変わらない。

 

 だからこそはやては、普通ならば闇の書と自身の生まれながらに持つ強大で発展途上状態の魔力の結びつきによって更なる悪化となっていくのが、無意識に一誠が引き上げる事で、徐々に知らずに克服していく。

 

 

「つまり、俺が今はやてから離れれば、止まっていた闇の書の侵食が再開し、また歩けなくなるって言いたいのか?」

 

『俺の見解ではな。

そうで無くても、あの小娘はお前が消える事を恐れ始めている。

精神を破滅――とまでは行かんだろうが、生きる気力を失う可能性は大いにありえる』

 

「…………。俺があの子に干渉し過ぎたって訳か……」

 

『言ってしまえばな。

だが、お前が存在しなければヴォルケンリッターの連中が無茶をやらかし、結果小娘が――今神牙とヴァーリがそれぞれ小娘に付いて所属している管理局だったか? それに敵認定されて排除されていた可能性もあった。

どちらが正しかったなんて、俺にはわからん』

 

「…………」

 

 

 だからこそ、一誠は中途半端にはやての前から去る訳にはいかなかくなった。

 

 

『ガキとはいえ、女の気持ちとやらをそのまま無かった事にするのか? 男ならケジメくらいはつけろ』

 

「……」

 

 

 ドライグの言う通り、今更無かった事にはできない。

 飯や寝床の世話になった女の子ひとり救えなければあの人外に名付けられた無神臓(ココロ)の名折れだ。

 だから一誠は覚悟する。

 

 得体のしれぬ自分を助けてくれた女の子の為に――

 

 

「俺の力をアンタ等に渡しておく、だから、もし俺がくたばったら、アンタ等がはやてを守り続けろ」

 

「お、お前はどうするんだよ? はやては一誠にも――」

 

「元から! 俺達は存在しなかったんだよ。

馬鹿やって、この世界に迷い込んだだけの、居ちゃいけない存在なんだよ! だが俺は結局あの子やお前達と関わりすぎた。

だからこそ……その代償を払うんだ、」

 

 

 その命を燃やす。

 

 

「ぐ……ぅ……! 管理人格ってんだから、どんなイカツイ奴なんだろうって想像してたけど、ははは、なんだよ――良い女じゃねーかよクソッタレ……!」

 

「何故、まだ立ち上がれる……?」

 

「し、知らねーな。本音をぶちまければ、今すぐにでも大の字にぶっ倒れちまいたいさ。

けど、倒れたら、これまでの俺自身の生き方まで否定してしまう気がした……だから倒れたくないだけだ……!」

 

「……意味がわからない。どうしてそこまで……」

 

「さてな、お前もその内わかるだろうよ……! 俺はゴキブリ以上のしぶとさなんでなァ!!!」

 

 

 失った力にすがることなく、今持ちうる己の力を引き出し……。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ……! あ、後は、お前を……! はやてが名付けて受け入れたお前を――この、場所から引きずり出してやる……!」

 

「む、無理だ! 私は主達に生きて貰いたいから私自身を代償に使った! アナタには無理――」

 

「うるせー真面目馬鹿が! 俺がそうするって決めたんだから、黙って俺に引きずり出されやがれ! そしてはやて達とほのぼのと生きてみやがれってんだ!!」

 

「う……」

 

 

 消え去る運命にあった者の手を掴み、強引に引っ張りあげ……。

 

 

「俺と神牙の力も合わせれば、何とかなるだろう?」

 

「まったく、一人で英雄(ヒーロー)になろうなんて狡いぞ一誠? 俺とヴァーリも混ぜろ」

 

「…………へっ、馬鹿野郎共。

だけど――サンキューな? 最高だぜヴァーリ、神牙ァ!!」

 

 

 災厄。悪夢。世界の害虫。

 そう元の世界で呼ばれた三馬鹿は、少女達にとっての英雄となる。

 

 

「「「禁手化(バランスブレイク)っ!!!!」」」

 

 

 そして小さな英雄となった三馬鹿は――

 

 

 

 

 

 

「それは俺のラーメンだろう!?」

 

「テメーだって俺の取っておいたカツ丼を食っただろうが!」

 

「その前に二人して俺のハンバーガーを食べただろう!!?」

 

 

 

 

 

 

「た、隊長……。

また三人が食べ物の事で喧嘩したせいで、食堂が滅茶苦茶にされてます」

 

「またかいな……はぁ、あの三人は子供の頃からずっと食べ物に意地汚いから困ったもんや」

 

「取り敢えず止めようか?」

 

「そうだね、じゃないと永遠と喧嘩してそうだし」

 

 

 小さな英雄達は、元の姿に自然と戻る月日が経っても三馬鹿なままだった。

 

 

「ほら喧嘩は駄目だよヴァーリ?」

 

「離せフェイト! ラーメンの恨みは恐ろしいということを今日こそこの二人に叩き込む!」

 

「後で新しく出来たお店に連れていってあげるから……」

 

 

 

「何で三人はいっつも食べ物の事で喧嘩になるの?」

 

「二人が食い物に意地汚いからさ。

俺は冷静のつもりだ」

 

「神牙くんも本気の顔してるよ毎回……」

 

 

 

「俺のカツ丼……」

 

「カツ丼が食べたいなら私が作るから、一々喧嘩すんなや……。

毎回喧嘩の度に食堂を壊すし……」

 

「ついムキになっちまうんだよ……」

 

「ほんま、そういう所は変わらんからある意味安心やけどなー」

 

 

 管理局の抱える悪夢。

 出撃した後の現場はペンペン草も生えなくなる暴れん坊共。

 通称・三馬鹿とこの世界でも呼ばれるようになってしまったらしい。

 

 ただ、元の世界との違いは止める者が何人も居るのと、尻に敷いてくる強者がそこそこ居るという所くらいか。

 

 

「それより、他の部署から苦情が来とるんやが。

兵藤一等陸尉が女性職員をナンパしまくるのを止めさせろって……」

 

「まともな職にありつけて、安定収入もあるのに未だに恋人すらできないから割りと焦ってるだけだ! それにガキの頃から言ってたろ? 男はおっぱいに希望を抱く生物だってな!」

 

「……………………」

 

「けど苦情になってるなら、やめないとな。

という訳で、シグナムかシャマルと爛れた夜を過ごしてみないかとでも言ってデートに誘って―――」

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

「――――――と、思ったけど、や、やっぱりやめるわ。……ごめん」

 

 

 その一角、一誠は小さい少女だったはやてに逆らえなくなり……。

 

 

「アインスを連れ戻してくれた時、全裸のアインスに抱きつかれてた事は絶対に忘れへんからな?」

 

「ま、まだ根に持ってるのかよ? そもそもアインスに対してはそういう目では見たことねーし……」

 

「それを聞いたアインスが死ぬほど落ち込んだ時、私はイッセーがやらかしたと泣いた事も忘れへん」

 

「………すまん」

 

 

 何故ナンパが全く成功しないのかについて、一誠は全く気付かないままなのだ。

 

 

「取り敢えずえーっと……抱っこしてやるから機嫌直せ? なっ?」

 

「抱っこって表現が嫌や。もう子供やない」

 

「お、おうすまんすまん……ほれ」

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーも馬鹿だよな?

どうせ無理なんだからさっさとナンパなんてやめちまえば良いのに」

 

「というか、イッセーのナンパが成功しない理由をイッセー自身が気付かなければ意味が無いだろ」

 

「毎回困るんですよねぇ? 声を掛けられる度にはやてちゃんとアインスから泣きそうな顔して見られるし……」

 

「いや、現に今アインスが泣きそうな顔で二人を見てるのだが……」

 

「な、泣いてない。

泣いてないけど……主が羨ましい……くすん」

 

 

 別ベクトルでヴァーリと神牙もそんな状況に陥っているのだが、それはまた別の機会。

 

 

「ごめん、自分でもめんどくさくて嫌な女だって自覚しとるけど、イッセーくんが知らん女の人と楽しそうにしてるのを見ると辛いんや……」

 

「う、うーん……。

はやてが良い男にでも出会えりゃあ良いんだけど……」

 

「そんなの居らん。

居てもどうでもええ」

 

「こりゃ困ったぜ……」

 

 

 

終了。




補足
今は単に飯の恩返しをしてるだけです。

ここから受け入れた場合は最終防衛ライン化します。


その2
この時点では元の時代に帰ろうと、代わりに管理人格を引きずり出そうと三人で現時点の限界状態になって大暴れします。

 まあ……お察しの通り失敗しますが。

その3
そのまま時間の流れと共に肉体と力を全盛期に戻していくのですが……そのまま住み着いたまんまというオチに。


………続かないよ。

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