色々なIF集   作:超人類DX

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スイッチが切り替わる時、それは残虐ファイトになるのだ。

※一応閲覧注意


スイッチオンな副担任

 奪われた事と失った過去があるからこその防衛本能なのだろう。

 

 そして、世界こそ違えど、この地には余程良い思い出が無かったのだろう。

 

 アイツ――イッセーは京都に来てからというもの、行動が全て極端になっている。

 

 敵と判断したものを片っ端から捻り潰し、殺す事すらも躊躇わない。

 

 私がアイツの事をとやかく言えるだけの善性なんぞ持ち合わせちゃいないが。

 

 今のアイツはまさにやり過ぎ過ぎている(・・・・・・・・・)

 

 まさにスイッチが切り替わったかの様に、アイツが一度そっち側に切り替わった時は、どれだけ敵がアイツ好みの女であろうが、一切の躊躇いが無くなる。

 

 

「このかお嬢様は頂きました――エ゛ゴバァ!?」

 

「あ……」

 

「うっわー……」

 

「ボロ雑巾でござる……」

 

 

 その証拠に、ホテルの従業員に変装し、隙を見て近衛木乃香を拐い、そのまま逃走しようとした関西呪術の者の後頭部を掴み、そのまま床に叩きつけたかと思いきや、既に意識すら無いというのに殴り続けている。

 

 

「おい、寝たフリしてんじゃねぇ。

テメーのお仲間は残り何人だ?」

 

「が……へ……っ……!」

 

「お前の存在に気づけなかった、俺のバカさ加減に腹が立ってしょうがないぜ。

ホント、ガキの頃から俺はそうだ――足下がお留守で取り返しがつかなくなる」

 

「ぎ……ぎ……っ!?」

 

「それで、テメーの背後には後何人居る? 所属は? ………まあ、吐きたくなければ別に吐かなくて良いよ。

その代わり――テメーは一生寝たきりだボケ」

 

 

 これがイッセーの本質。

 イッセーに宿る龍が少しだけ私に教えてくれた、アイツの『怯え』という名の本心。

 

 失う事を恐れるが余り、奪おうとする相手を徹底的に破壊し尽くそうする――それがイッセー。

 

 

「………」

 

「マズった……。

思わず殴りすぎて顔面の判別が付かなくなっちまったぜ」

 

 

 その本心を知らぬ者からすれば、今のイッセーは暴力に快楽を見出だす異常者にしか見えないだろう。

 現にこういった事に耐性を持たぬ神楽坂アスナや坊やは、顔を青ざめさせているし、イッセーに好意を持つ小娘達も見たことの無い形相で、近衛木乃香を拐おうとした敵を殴り続けているイッセーの姿に多少のショックを受けている。

 

 ある意味でこちら側でもある桜咲刹那ですら、普段のイッセーしか知らないせいで、初めて見る『純度100%の殺意』を前に足がすくんでいる。

 

 

「せ、先生……それ以上は」

 

 

 それでも止めようとする辺りは、そこそこの度胸があると言えるだろうが、振り向いたイッセーの眼が血を思わせる殺意に染まりきったそれに輝いているのに気づいた事で、完全に呑まれてしまっている。

 

 

「心配しなくても、これの後処理はちゃんとやるぞ?」

 

「そ、そんな問題じゃないわよ。

あ、アンタ……いくらなんでもやり過ぎよ」

 

「やり過ぎ? どこが? 近衛を拉致ろうとしたんだぞコレは? 何の目的があるんだか知らねーし、別に近衛個人に対して俺も思い入れなんぞ持ち合わせちゃいないけど、下手に加減して逃げられるくらいなら、ここで確実に処理した方が後腐れもねーだろ?」

 

『……………』

 

 

 そう言って、名前も結局知らぬまま全身を破壊されて、糸の切れた人形状態にされている女の首を掴み、拳を再び叩き込むイッセー。

 

 

「イッセーくんがイッセーくんじゃないみたいアル……」

 

「イッセー……いったいどうしてしまったんでござる」

 

 

 

 肉と骨が潰れる様な音だけが何度も聞こえる。

 普段女に鼻の下を伸ばし、金に強欲な女に何度も騙されて貢がされてるイッセーとは思えない程に徹底的で容赦の無いやり方に、好意を持つ小娘達には大きなショックらしい。

 

 しかし私は別に同情なぞしない。

 そもそも私は前に忠告したのだ――アイツの皮だけしか知らず、その皮に好意を持っているのだとしたら、その内後悔する――とな。

 

 そうさ……イッセーは正義の味方等でも、ましてや英雄(ヒーロー)なんかではない。

 

 自分の定めたルールの中でしか生きられやしない――ある意味で私と同じなのだ。

 

 だから私はコイツの行き着く先が見たくなった。

 だから衣食住の面倒を見てやってきた。

 

 恐らくコイツはこの世界のルールに適応は出来ず、何れ世界そのものから拒絶されるのだろうから。

 

 だから私は――

 

 

「ガキにトラウマを植え付けてどうする。

お前は一応まだコイツ等の『教師』なのだぞ」

 

「…………………。おっと、そうだったな」

 

 

 コイツの生きる世界で生きてみたいと思うんだ。

 

 

 

 

 リアルでスプラッターな映像を見せられてしまったネギやアスナといった子供達は、ここにきてやっとキレたイッセーが洒落にならない事を覚えさせられてしまう。

 

 

「コレの処理は私たちでやってやる。

お前達はそこで寝てる近衛木乃香を部屋に連れ帰ってやれ」

 

「う、うん」

 

「わ、わかったけど、エヴァンジェリンちゃんは?」

 

「私はこのやり過ぎなバカの熱を冷ましてやる」

 

「「………」」

 

「……。エヴァンジェリンさんは、兵藤先生が怖くないのですか?」

 

「怖い? 何故怖いと思わないとならないんだ? 私は悪の魔法使いだぞ? それこそ過去にはイッセーみたいな真似を散々してきた身だ。

普通に生まれて普通に死ぬことができるお前達には『一生涯』理解できないし、嫌悪する事なのかもしれんがな」

 

「そ、そんな……」

 

「だがこれでわかった筈だ、長瀬楓に古菲。

アイツ――イッセーにどんな『幻想』を抱いていたのから知らんが、アイツは必要とあらば誰であろうが殺すことを躊躇わん奴である事がな?」

 

「「………………」」

 

「文字通り、アイツとお前達では『住む世界』が違う。例え『裏の世界』を知っていようがな」

 

 

 

 ついさっきまでのほのぼの気味だった空気が嘘の様に、重苦しい雰囲気が流れていく。

 どこまでも冷たい表情で、相手を殴り続けるイッセーの姿は余りも普段とのギャップが強すぎたからこそのショックなのだ。

 

 それは、そこそこイッセーが苦手だった桜咲ですらもショックを与えるものだったのだから、イッセーと親しき者達のショックはそれこそ大きい。

 

 しかし私はそんな小娘達の事を気にも止めず、既に名前すら何なのかも知らないまま壊された女の足首を掴んで引きずりながら『後処理』に向かったイッセーの後を追う。

 

 そんな私達を小娘達が追うことはなかった。

 

 

 

 

 

 殺すことはしなかったものの、最早再起不能となった襲撃者の後始末をする為に、ホテルを出たイッセーに追い付いたエヴァンジェリン。

 

 

「これで三人目だ」

 

 

 辛うじて息はある襲撃者を、近くで流れていた下水道に放り投げたイッセーの表情は引き続き冷酷だ。

 生きる為に敵を殺し続けた事で完成してしまったイッセーの本質を久し振りに見たエヴァンジェリンに恐怖はなかった。

 

 

「さっきまでそこそこ良い空気だったが、お前に好意を持っていた小娘達すらお前の殺意に怯えていたぞ?」

 

「なら目が覚めて良かったじゃねーか。

元々、俺があの子達に好かれていた事がありえなかったんだし」

 

 

 自分が異常者である事を自覚している様な台詞に、エヴァンジェリンは敢えて何も言わない。

 これに関しては、異常性を知った上で受け止められる覚悟が無ければ成立しないものなのだから。

 

 

「明日には残りの連中も叩き潰す。

あの子供先生にはまだ荷が重いだろうしな……」

 

「戻ったら、間違いなくまた呼び出されるだろうな」

 

「否定も言い訳もしないさ。

それでクビにされても文句は言えねぇ」

 

 

 そう言って近くにあった自動販売機でエヴァンジェリンの分も含めた飲み物を買って一息入れるイッセー。

 

 本来の人生から外され、尚命を狙われ続け、その中で得た親友達をも失った事で到達してしまったこの性質は最早無くなることは無い。

 

 理解して貰いたいとも思っていないし、この先変える気もない。

 

 

「お前も俺に比べたら大分『マシ』なんだし、これ以上付き合う必要はないぜ? もう自由になれたんだしな」

 

「自由の代償は『退屈』だ。

お前を見ているのは飽きないと思う以上は付き合わせるさ。

第一、まだお前は私に貸しが残っているだろう?」

 

「……そうでっか」

 

「私とてお前とそう変わらんし、悪の魔法使いだ。

今日だって、午前中なのに午後の紅茶を飲んだしな……」

 

「……極悪すぎるぜエヴァ」

 

 

 今尚続く進化は、既にイッセーに寿命という概念を失わせている。

 同じく不死の属性を持つエヴァンジェリンに近い領域に人でありながら到達してしまったイッセーがこの先どうなるのか――自由を取り戻したエヴァンジェリンの興味はそれだけだ。

 

 だからこそ、最早因縁のあるナギ・スプリングフィールドには関心も無い。

 

 

「ふ、お互い無駄に時間はあるんだ。

精々付き合わせて貰うぞ?」

 

「………変な奴」

 

「ははは、お前もな?」

 

 

 神をも殴り殺す男がどんな最期を……。

 そんな男の傍に居ることを選んだ自分がどんな末路をたどるのか。

 エヴァンジェリンは皮肉にもこの身となってから辿ってきた運命に感謝を覚えるのだった。

 

 

「俺が何の力も持たないそこら辺の人間だったら、お前は俺に関心なんぞ持たなかったろうに……」

 

「そんな仮定の話をした所で無駄だな。

否定もできんが、力を持ったからこそ、お前は生き延びてこちらの世界に迷い込めたのだから。

それに、逆に私が何の力も持たないそこら辺の小娘だったら、お前とて関心なぞ持たなかっただろう?」

 

「…………。確かに否定はできないな」

 

「そういう事だ。

お前は人でありながら人でなしになってしまった怪物で、私もまた同じだ。

だから、私はお前に自分と似た波長を感じ、お前の面倒を見る気になった。

そしてお前もまた……」

 

「………。どうかな。

そんな小難しい事なんて考えちゃいないが、少なくともお前の言うことをある程度聞く気になってるのは、お前が俺にとって『うるさいけど良い奴』だからなのは確かだ」

 

「ならそれで良いじゃないか。

私も、お前は私にとって『間抜けだけど良い奴』だから面倒を見てるだけだ」

 

 

 笑うエヴァンジェリンに、それまで殺気立っていた一誠は頬を緩める。

 かつての親友の一人に近い性質を持つ者とは中身は全く違うけど、一緒に(ツル)む事に悪い気はしないし、居心地も良い。

 

 

「いっそクビにされて追い出されても、私も付いていってやるから安心しろよ、この寂しがり屋?」

 

「……。ははっ、お前もな? この寂しんぼう」

 

 

 エヴァンジェリンが差し出してきた手を、血に染まった手で握り返す一誠。

 

 偶然に偶然が重なった結果、出会ってしまった人を辞めた者同士の繋がりはそこそこ強いのかもしれない。

 

 

「ふっ、ちなみにお前が見てない間に、午後ティーを午前に飲んだだけではなくて、プッチンプリンをプッチンせずに食べてやったぞ?」

 

「な、なんて奴だ……!」

 

「ふっふっふっ、悪の魔法使いにとってはまさに朝飯前だ」

 

 

終わり




補足

残虐スイッチがオンとなった場合、女子供だろうが八つ裂きにします。

泣いても緩めません、命乞いしてもやめません。

こうなってしまったのは、過去が過去です。

その2
そんなスイッチオン状態を初めて見てしまったからこそ、子供達にはショックが大きかった。


その3
でも、悪の魔法使いさんは気にしない。

それどころか、午後ティーを午前中に飲むし、プッチンプリンをプッチンしないで食べたとドヤ顔しちゃうのだ。

………流石悪の魔法使いだ()

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