色々なIF集   作:超人類DX

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到着早々、副担任は居なくなったとさ。

そして戻ってきたかと思ったら、にっこにこだったとさ。


裏処理な副担任

 紆余曲折の後に京都へと到着した3-A御一行は、カエル騒動を何とか忘れようと、ホテルへのチェックインの前にかの有名な清水寺の観光を行った。

 

 その清水寺では、何故か生徒の一人である綾瀬夕映が観光ガイドよろしくに説明だなんだをしたり、清水寺で有名な『舞台から飛び降りる件』を話したら、楓が実際に飛び降りようとして止められたりと、先のカエル騒動の事は忘れて、実に3-Aらしく賑わった。

 

 そして清水寺の次に訪れた神社は縁結びのご利益があるとか無いとかという事で、意中の相手が居る殆どの生徒達が我先にとその縁結びの条件を満たそうとしたりと、これまた3-Aらしい賑わいだった。

 

 ちなみに、この縁結びは楓と古菲も随分と張り切ったらしい。

 

 そんな感じで『特にハプニングは無いまま』、ホテルへのチェックインまで漕ぎ着けた訳だが……。

 

 

「取り敢えず、それっぽい奴に『お話』してから下水道に叩き落としておいたぜ」

 

 

 それもこれも、京都に着いた途端、ネギに生徒達の事を任せて一人何処へと消えた一誠が、どこかで何かをしていたかららしく、拳に誰かの血がべっとりと付いていて、よく見たら頬にも何者かの返り血を浴びた状態で、実にスッキリとした顔をしながら戻ってきた時は、ネギとアスナとカモは微妙に一誠が怖くなったらしい。

 

 

「そっちは何かあったかいネギ先生?」

 

「い、いえ……途中、落とし穴が仕掛けられていたり、神社の湧き水がお酒になっていたりはしていましたが、事前に察知して対処しておきました」

 

 既に生徒達は各々班分けされた部屋に入っており、ネギと一誠はホテルの休憩室に居る。

 当たり前だが、既に血を洗い流してたし、服も着替えている一誠はネギからの報告をうなずきながら聞いていると、不意にカモが話す。

 

 

「どうもあの刹那ってのが怪しいと思うんですがね。一誠の親分が――えと、お話した奴と裏で繋がってるとか……」

 

 

 この一連の悪戯が、桜咲刹那の仕業ではなかろうかというカモの意見。

 一見すれば荒唐無稽な話だが、これまでの刹那の怪しい様子はネギも否定はできなかった。

 

 

「そ、そうなのかな?」

 

 

 まさかとはネギも思うが、妙に行動が怪しいのも確かだったのでカモの意見に傾きかけるネギ。

 しかし、チビチビと野菜ジュースを飲んでいた一誠は違うだろと言う。

 

 

「桜咲ではないな。

もしネギ先生の親書を奪うのが目的だったら、生徒の立場のしてネギ先生の油断を誘って奪ったほうが楽だし、こんな回りくどい真似こそする意味もないだろうしね」

 

 

「で、ですよね!?」

 

「言われてみればそうかもしれませんが、どうも怪しいというか……」

 

「それは否定しないぜ。

アイツ、新幹線に乗ってた時からずっと近衛の事をチラチラ見てたし」

 

「こ、このかさんをですか?」

 

「おう。まあ、見た感じ、殺意があるって感じでもないから放っておいたけど、アイツ前々から俺が近衛と話してるとやべー目をしながら見てくるんだよな……」

 

「やべー目って……」

 

「もしかしてあの刹那ってのに親分は嫌われてるんですかい?」

 

「元々好かれる性格じゃないって自覚してるし、ガキの頃から嫌われやすい質だったから、あんま気にしちゃいねーけどね」

 

 

 本来の世界において、そういう星の下に『無理矢理』させられてしまった一誠にとって、嫌われる事には慣れっこだったし、一誠としても『親友との廻り合い』と『親友達との』思い出がある今となっては、全く気にしてはいない。

 

 だから、刹那に嫌われてようが平気だ。

 そう言ってから飲み終えた野菜ジュースのスチール缶を片手で握りつぶしてからゴミ箱に投げ入れると、部屋に荷物を置いて来たアスナとエヴァンジェリンがやって来る。

 

 

「京都に着くや否や、勝手にどっか行っちゃったかと思ったら、ヤバイ格好で戻ってきた時は、誤魔化すのに苦労したわよ……」

 

「それで? 殺しはしなかった様だが、この悪戯を仕掛けた連中は潰せたのか?」

 

「何人かはな。

ただ、まだ残ってるっぽいんだよ」

 

「それって関西呪術協会って奴等の仕業なの?」

 

「恐らくは……」

 

 

 またしても巻き込んでしまう形となるアスナに対してちょっと申し訳無さそうに頷くネギ。

 

 

「それで、イッセーがその連中の何人かを――まあ、そのボコボコにしてきた訳と?」

 

「………。神楽坂、お前って成績悪いくせに察しはいいよな?」

 

「成績悪いは余計よ!! こうまで巻き込まれると嫌でも変な勘が冴えちゃうのよ……まったく」

 

 

 普段はバカレンジャーのレッドだなんて呼ばれてる癖に、こういう時は勘も良いし、ちょっと頭良さそうにも見えるアスナはため息を吐く。

 

 

「こうなったら私は手伝うわ。

見てる感じ、ネギだけでは心許ないし、アンタはアンタで極端過ぎるしね」

 

「あ、アスナさん……!」

 

「……? 俺ってそんな極端か? 普通に考えても蝿が周りを飛んでたら、殺虫剤とか撒くべ?」

 

「お前は自覚してないだろうが、京都に来てからのお前はアホみたいに短気になってるぞ?」

 

 基本的に相手の出方に振り回され気味のネギ。

 殺られる前に殺るを地で行く極端なイッセーだけでは、どこかで綻びが起こるだろうと――まあ、そこまで難しくは考えてないが、似たような事を思ったアスナは、自分が間に入ると協力を申し出た。

 

 

「ではお前が坊やのフォローをしろ。

私はこの極端バカが行きすぎないように止めてやる」

 

「ええ、あんな返り血浴びながらニコニコ顔で戻ってきたコイツを見てると、その内本当に一線越えそうだしね。お願いするわエヴァンジェリンちゃん」

「…………」

 

 

 いや、その一線は少なくとも9歳くらいの時点で越えちゃってるんですけど……と言ったら変な空気になりそうだったので、取り敢えず黙っている事にした一誠は、微妙に居心地悪そうに視線を逸らすのであった。

 

 

 

 そんな訳で、エヴァンジェリンというストッパーを取り付けられてしまったイッセーは、露天風呂に入ることになった。

 

 

「うぇーい……露天風呂とか久し振りだぜぇ」

 

『結局、あちこち回って畜生共は居ないとわかったが、一般人ではない人間は居るし、俺たちの世界の京都とやはり似ていたな』

 

 

 このホテルには二種類の露天風呂があるらしく、ネギとは別の風呂に浸かり、自身に宿るドライグとトークを楽しむ。

 

 

「そのせいで、イラッとしやすくなっちまって、エヴァの奴に見抜かれてしまったよ……」

 

『俺から見てもわかりやすいくらいにイラついていたからな。

だからあの吸血小娘も気付く』

 

「こういう所がモテない理由だってのはわかるんだけどよー……」

 

 

 塀の向こうでは、ネギとカモの気持ちよさげな声を耳にしながら、一誠は自分の精神状態がピリついている事にちょっとした自己嫌悪に浸る。

 

 

『しかし、今回のしょうもない悪戯を仕掛けてきたと思われる連中についてだが、一人妙なのが居ただろう?』

 

「ん? ああ、あの白髪のチビか?」

 

『ああ、まるで俺達の力を測る様な動き方をしていた……。

……。それを言う前に、お前はドブ川に叩き落としてしまったが』

 

「色々と鬱陶しかったからなぁ――ん?」

 

 

 昼間八つ裂きにしてからの下水道行きの刑に処してやった者の内の一人の事を気にするドライグと話をしていた一誠は、風呂の脱衣所に続く扉が開く音が聞こえたので、半ばボーッとしていた意識を戻す。

 

 誰か入ってきたらしい。

 なので一旦ドライグとの会話を打ち切ろうとした一誠は――

 

 

「ほら、やはり坊やは隣の露天風呂みたいだぞ? イッセー一人だ」

 

「ほ、ホントか? よ、よーし……」

 

「う……途端にイケナイ事をしてる気分になってきたアル」

 

 

 多分きっと、この世界にだけ言えば一番親しいだろう者トップ3が何でか知らないけど普通に入ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 エヴァンジェリンは偶々見てしまったのだ。

 ネギのイッセーがそれぞれ別の入り口から露天風呂へと続く脱衣場に入ってくのを、こっそり見ていた楓と古菲を。

 

 

「む、ネギ坊主とは違う場所に入ったでござる」

 

「ということはイッセー君は今一人でお風呂アルね……」

 

「…………」

 

 

 何をしとるんだこの小娘達は? エヴァンジェリンに気付かず、イッセーの入っていった露天風呂の入り口をガン見してる娘さん二人に、ただただ呆れながら当初はスルーしてやろうと思ったが……何となく話しかけてしまった。

 

 

「何を見てるんだお前らは?」

 

「のわっ!?」

 

「え、エエエエエ、エヴァンジェリン!? ち、ちちち違うアル! べ、別にイッセーくんがお風呂に入っていったタイミングで、入ってみようかとか思ってないアル!!?」

 

「駄々もれだアホ……」

 

 

 実にわかりやすい小娘達だと、いっそ清々しさみたいなものを感じるエヴァンジェリンは、あたふたと二人して目を泳がせてる楓と古菲が、意外にも思春期の小娘らしい態度にちょっと笑ってしまう。

 

 

「む、何がおかしい?」

 

「くく、いや……お前達みたいな者でも、一応そういう羞恥の精神を持ち合わせているんだと思っただけさ?」

 

「べ、別にそんなんじゃないアル……」

 

 

 エヴァンジェリンに笑われてムッとする楓と古菲。

 悲しいかな、イッセーには欠片も異性としては認識もされていないのにな――と、自分の事を棚に上げて思ったエヴァンジェリンは、ここで今ごろ入浴中のイッセーに突撃させたらどうなるか、ちょっと見たくなったので煽ってやることにした。

 

 

「そうか、まあ私としても何でも良いがな。

さて、私も入るとしようか」

 

「「は?」」

 

「? 何だお前ら? 私がイッセーと風呂を一緒に入るのがそんなに不思議か?」

 

「「………はぁっ!?」」

 

 

 はい簡単に乗った。

 いっそ、笑えるくらいに簡単に煽りに乗ってきた二人に、エヴァンジェリンはニタニタと笑う。

 

 ちなみに、イッセーの名誉の為に言っておくが、エヴァンジェリンとイッセーがこれまで一緒の風呂に入ったという事実はない。

 しかし、イッセーとエヴァンジェリンの仲が怪しいレベルで良いと思っている楓と古菲にとっては効果てきめんだったらしく。

 

 

「そ、そんなにイッセーと進んでいたのかっ!?」

 

「狡いアル! 卑怯アル! フェアじゃないアル!!」

 

「知るか。

アイツに部屋を貸してやってるのだから、そういうことの10や20はあってもおかしくはなかろう?」

 

 

 二人の言葉を軽い調子で受け流し、スタスタと通りすぎていくエヴァンジェリンは、イッセーの入った方の露天風呂の手前まで歩いてから、二人に振り向くと……。

 

 

「そんなに気になるならお前達も来るか? まあ、どっちでも構わんがな……ふっふっふ」

 

「「………」」

 

 

 挑発的に二人に言った。

 そんな訳で、お陰で嘘みたいに挑発に乗ってしまった楓と古菲と共にエヴァンジェリンはポケーッと温泉に浸かっていたイッセーと混浴なんてする事になってしまったのだ。

 

 

「おい、こんなのバレたらクビどころか、社会的に俺が死ぬんですけど?」

 

「放っておいても、この二人はお前が風呂に入っている所を覗いていただろうし、だったら開き直らせた方がお前とて楽だろう?」

 

「楽どころか首が締まってるんだっつーの。

つーか、何でお前まで……?」

 

「私だけ入らんというのも変だからな、流れでそうなった」

 

「なんじゃそら……」

 

「「………」」

 

 

 タオルは巻いてるものの、見事にお子様体型なエヴァンジェリンは然り気無く魔法で露天風呂の温度を下げつつ、無意識にイッセーの隣に浸かる。

 

 そのすぐ横では、あれだけ普段は騒がしい筈の楓と古菲が借りてきた猫みたいに大人しく、浸かっている。

 

 

「そもそもお前らって既に入ったんじゃねーのかよ?」

 

「お前と入りたかったんだろ。察してやれ」

 

「その台詞を、年上ボインのお姉さんに言われたかったよ俺は……」

 

 

 イッセーも異性としての意識がゼロ過ぎたのか、逆に諦めてしまったらしく、そのまま一緒になって浸かりながら、大人しすぎて逆に怖い楓と古菲―――特に楓をじーっと見る。

 

 

「な、なんでござる?」

 

 

 その視線に気付いたのか、びっくりするくらいしおらしく身体を揺らす楓に一誠は口を開く。

 

 

「…………お前、ホントマジさ、何で俺より年上じゃないんだよ?」

 

「へ?」

 

「せめて年が近かったら……くそ、毎日口説いてたぞ」

 

「あぇ……!?」

 

「「………」」

 

 

 どう見てもエヴァンジェリンの真逆の体型だし、古菲よりも実に女性らしい体型をしているのに中学生という現実は、イッセーをして年が近ければと惜しがるものだったらしく、ドストレートに言われた楓は、変な声が出てしまい、真っ赤っかだ。

 

 

「あ、あの……。

は、恥ずかしいからあんまり見ないで欲しいでござる……」

 

「勝手に入ってきながらそりゃねーだろ……まあ、悪いから見ないようにはするけど。

いや、ホントマジ――惜しすぎるだろ」

 

「そ、そんなにハッキリ言われると嬉しい反面、複雑でござる……」

 

 

 今の楓をクラスメートが見たら、熱でもあるのかと思う程度には実にしおらしくなってしまっているが、ちょっと嬉しそうだ。

 

 が、当然横で聞かされていた古菲は面白くないし、エヴァンジェリンも自身の体型を常にイッセーから小バカにされていたので、同じく面白くは無い気分だ。

 

 

「い、イッセーくん、私は?」

 

「え? あー………年相応じゃね? 一応鍛えてるみたいだから、健康的ではあるが―――って、俺ヤバイ状況だよな? 生徒の身体ガン見してこんな事しゃべってるって……」

 

「今更お前の変態さには慣れてるから、大丈夫だろ」

 

「と、年相応……」

 

 

 冷静になればなるほど、今の状況がまずいと思うイッセーだが、エヴァンジェリンのフォローにはならないフォローに一応納得することにしたイッセーに、古菲は楓以上に複雑そうな顔だ。

 

 

(楓みたいに大人の身体じゃないし、エヴァンジェリンよりは仲良くなれてない……。うぅ……)

 

 

 現状、エヴァンジェリンにも楓にも負けていると古菲は一人落ち込んでしまう。

 

 そんな古菲に気づいたのか、イッセーが腕を伸ばし、塞ぎ込む古菲の頭にポンと手を乗せる。

 

 

「前も言ったけど、お前は二年後には多分化けるよ。

だから、変に寄り道なんてしないで、お前らしくしろ。

俺は個人的に、騒がしいお前の方が好きだからな」

 

「い、イッセーくん……!」

 

「って、この状況で言うもんでもないけどな? はは」

 

 

 接し方こそ子供に対するそれだけど、古菲にとってはそれでも嬉しかった。

 やっぱり負けたくは無い……そんな精神(ココロ)の炎を消さない在り方は、イッセーにとっても好ましいのだから。

 

 

 もっとも、そんなほんわか気味になってきた空気も、隣の露天風呂に入ってたネギの叫び声によって現実に戻される事になるわけだが。




補足

嫌な思い出補正により、短気な為に、一々やることが極端になってしまってる。

既に誰かさんが下水道コース突入した模様。


その2
ネギきゅん、知らず知らずに修学旅行編の難易度が下がりまくる。

アスナさん、イッセー相手だと何故か会話の偏差値が上がる模様。


その3
ありがちなイベントが発生した模様。

尚、ニンニンさんが本当に惜しいとイッセーは言っちゃったせいで、ニンニンさんが嘘みたいにしおらしくなっちゃった模様。

それを横で聞かされたエヴァにゃんは、微妙にイラッとする模様。

クーちゃんも寂しい気分になるけど、無事リカバリーした模様。



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