色々なIF集   作:超人類DX

650 / 1034
単なる補足みたいな話です


そんな気持ち

 『やっぱりワイハー(ハワイ)が良いんじゃない?』

 

 

 という一誠の意見は普通にスルーされ、結局修学旅行の行き先は京都になってしまった。

 

 これはこのクラスに所属する生徒がそこそこに留学生も多いし、担任のネギも外国人な為、日本文化を学ぶ為に京都にしよう――と、ショタコン疑惑のあるクラス委員長の雪広あやかが提案し、全員もそれに同意したからに他ならない。

 

 

 ネギにしてみれば、日本文化を学べる意味もあるので寧ろ嬉しいのだが、日本人だし、そもそも『京都』という地域に対して嫌な思い出を持っている一誠は――

 

 

「当日はこっちに火の粉が降りかかるような問題さえ起こさなければ好きにすれば良いよー………あー、でもやっぱ行きたくねぇ」

 

『…………』

 

 

 もう見るからにやる気が無かった。

 わざわざハワイ行きを選択させようと、ここ数日は無駄にアロハシャツを着ながら授業していたのに、それが全部徒労に終わったのもあるせいか、全てが投げやりだった。

 

 

「ワイハーのギャルと遊びたった……」

 

 

 この時代の京都には何の因縁も無いのだけど、やはりハワイの方が楽しそうと思えてならない一誠はそれ以降もやる気ゼロな態度であり、ネギに色々と押し付けてしまう始末。

 

 

『この世界には虫けら共なぞ存在しないのだから、そこまで腑抜ける事もないだろうに』

 

「いやー、それ関係なくワイハーの方が絶対に楽しいとしか思えないからよ……」

 

『どーせ、脈にもならん女が目的なんだから、京都に行っても同じだろ……』

 

 

 ワイハーワイハーとまだ煩い宿主に対して、ドライグは呆れた声だ。

 そもそも、その京都に蔓延ってた畜生共に関しては、とっくの昔に破滅させたので、一々今更思い出すものでは無いのだ。

 

 それに、少なくとも先日の件で封印から抜け出したエヴァンジェリンなんかは10数年振りの外出を割りと楽しみにしているようだし、一誠に懐いている者達もまた、副担任として共に行く一誠との修学旅行を楽しみにしている。

 

 ……一誠本人は気づいちゃいないみたいだが。

 

 

 

 

 京都へ修学旅行――――――は、さて置き、古菲はここ最近でほぼ隠す事なく一誠と一緒に居るエヴァンジェリンへの対抗心をメラメラと燃やしまくっていた。

 

 

「しかしお前は我が儘な男だな。

折角昨日の夜は『お前好みの姿』になってやったというのに、嫌そうな顔までしながら戻れなんぞと言いおって」

 

「だってアレって所謂そう見える魔法であって、本当の姿じゃねーんだろ? どうもお前はそのちんちくりんの姿じゃないと落ち着かなくてさー」

 

「だったら一々まな板だなんだと私をバカにするのはやめろ」

 

「だって事実じゃんよ?」

 

 

 

 目まぐるしいまでの新事実を知った古菲と楓は、担任のネギが魔法使いだとか、エヴァンジェリンが悪の魔法使いで吸血鬼だったとかは二の次であり、問題なのはそのエヴァンジェリンの肩を一誠が常に持っているという話なのだ。

 

 元々妙な怪しさを二人の間には感じていたが、今回の事で思っていた以上にエヴァンジェリンと一誠の距離感が近いのは、特に古菲にとっては由々しき事態なのだ。

 

 

「ぐ、ぐぬぬ……! 放課後になると前より露骨に二人で喋るようになったアル」

 

「どうも互いにそういった感情は無いというのはわかるが、そのせいで変な距離感の近さを感じるでござるな」

 

 

 クラスのほぼ半数はエキセントリックな言動や行動ばかりの一誠を苦手と思っているので、そういう意味では今のところ安心だ。

 しかし、そのエキセントリックな皮の中身を知られたらその半数の内の何人かは一誠に懐く可能性の方も高いという予想を二人はしているらしいのだが、それ以上にエヴァンジェリンはすべてにおいて一誠に一番近い。

 

 

「ああ、夕飯の時に詳しく言うが、明日の休日は空けておけ」

 

「え、何で?」

 

「やっと自由の身に戻れた記念に、買い物にでも行こうと思ってな。

お前の衣服を買わなきゃいけないし、付き合え」

 

「えー? まあ良いけど」

 

 

 見た目は一誠がエヴァンジェリンの保護者のように見えるが、実際は一誠の生活の面倒をエヴァンジェリンが一任しているという真逆の立場もあってか、古菲が羨ましがる事も平気で行える。

 

 

「買い物か……。

それはつまりデートとも言えなくもないのか……?」

 

「う、うぬぬ……!」

 

 

 だからこそ、現状維持のままでは確実にエヴァンジェリンには勝てないと悟った古菲は、取り敢えず一旦エヴァンジェリンと別れて廊下を歩いていた一誠に楓と共に突撃する。

 

 

「イッセーくん!」

 

 

 何時もの調子で後ろから思いきり飛び付き、おんぶされてる様な体勢になる。

 割りと勢いよく飛び付いた古菲だが、一誠は動じる事もなく飛び付いた古菲を背負う。

 

 

「なんだお前らか……どした?」

 

「エヴァンジェリンと最近露骨に仲が良さそうでモヤモヤするから来たアル」

 

「は? 何のこっちゃ?」

 

「少なくとも拙者と古菲には例の夜以降からのイッセーとエヴァンジェリンの距離感が更に近くなったと感じるでござる」

 

「ふーん?」

 

 

 スリスリと懐いた犬みたいにイッセーの首元に顔を埋めてる古菲と……ついでに自分の思った事を話す楓に、イッセーは自覚をしてないのか、首を傾げる。

 

 

「明日も二人でデートのようだしな?」

 

「デート……って、俺とアイツが? ははは、無い無い。

茶々丸も一緒だし、精々ガキと保護者の買い物だよ」

 

 

 エヴァンジェリンとデートと指摘されて笑い飛ばす一誠もどうやらエヴァンジェリンに対しては友人という認識のみらしい。

 しかし、だとするならばと楓は提案してみる。

 

 

「ふむ、ならば明日の買い物とやらに拙者と古菲が同行しても問題は無いのでござるな?」

 

「んふふー……イッセーくん、優しい匂いアル~♪」

 

「え……? いや、別に付いてくるだけなら良いけど、欲しいものがあっても俺は買ってやれないぞ……? 今の全財産は4800円だし……」

 

「事情を知ってるのだからそんな事は言わんでござる。

……しかし、本当にエヴァンジェリンに財布を握られてるのだな?」

 

「アイツに元から借りてるものもあるし、寝床と食い物の面倒も引き続き見て貰ってる身としては、仕方ないとは思ってるけど、せめて小遣いを月5万にして欲しいぜ……」

 

 

 全額持たせたら、如何わしいお店に入り浸って2日で使いきってしまったという前科がある以上、エヴァンジェリンの金銭管理体制には逆らえず、肩を落としながら年下の中学生に対して微妙に情けない事を話す。

 

 

「いくらか貸せるが……?」

 

「あ、私も貸せるアル」

 

「気持ちだけはありがたく受けとるよ。

年下の女の子に金借りるなんてそれこそ情けないし」

 

 

 しかしそれでも絶対に借金だけはしない。

 金が無さすぎて、この前もよりにもよって学生バイトをしているアスナに自販機の缶ジュースを奢って貰ってしまったのは秘密だし、後日ちゃんと返したのも秘密だ。

 

 

「それに金が無いんじゃなくて、自由に使える金が少ないだけなんだよ。

エヴァ曰く、先月の時点で俺の貯金は200万くらいになったらしいし」

 

「貯金までして貰ってるのか? ……本当に母親みたいでござるな?」

 

「ね、ねぇ、イッセーくんはエヴァンジェリンの事をどう思ってるアル?」

 

 

 エヴァンジェリンの金銭管理のお陰で、実はそこそこ貯金だけはあったりするし、最早息子の浪費癖を心配してる母親みたいな立ち位置になりつつあるなと楓が思う中、背中にしがみつく古菲が思いきって訊ねてみる。

 

 

「アイツをどう……ね。

それってこの前も聞かれたんだけど、俺にとっちゃアイツは良い奴だな。

普通、死にかけの行き倒れの男に飯を食わせたり寝床貸してくれるなんてしないのに、アイツは貸してくれたしね。

まあ、アイツにとってメリットがあったからなんだろうけどさ?」

 

「じゃあ……つまりエヴァンジェリンの事は好きなのか?」

 

「好きか嫌いかで言ったら、俺はアイツの事かなり好きだぜ?

そうでなけりゃあ、アイツが自由に戻れる手伝いなんてしなかったしよ。

まあ、ちょっと小うるさい所もあるけど――そういう所も含めて結構好きだ」

 

「「…………」」

 

 

 異性とかではなく、ただ単純に好意を持っていると軽く言い切る一誠の表情と声に、古菲と楓はリアクションを忘れて見惚れてしまう。

 

 

「な、なるほど……。

本当に敵わんでござるなぁ」

 

「う、うー……良いなぁ、エヴァンジェリン……。ますます羨ましいアル」

 

 

 今はまだ信頼できる友人で止まっているが、二人にしてみればそう思われてるエヴァンジェリンがやはり羨ましい。

 

 だからまだ二人も――そしてエヴァンジェリンも知らない。

 一誠の持つ、完全に心を許した者への果てしなき愛情と献身。

 

 その者の為なら、世界そのものを破壊できるという覚悟の精神を。

 

 

「アイツが『素』で長瀬くらいの体型だったらなぁ……と思う時はあるけどな? はっはっは!」

 

「あ……ぅ……! きゅ、急に恥ずかしいことを言うなでござる……!」

 

「むっ……イッセーくん、私は?」

 

「お前は二年後って所だな」

 

「むー! 納得できないアル!」

 

 

 人の理から外れ、今も尚果てしなき進化をし続ける青年に惹かれた少女達の苦労は多分きっと多いのかもしれない。 

 

 

 

 

 

 

 

 修学旅行は予想してたよりはちょっと多めな騒動だった。

 エクソシスト的な集団がゴチャゴチャとやかましいので――

 

 

「ドラゴン波ァ!! …………って、待てエヴァ!? それは俺の八ツ橋だぞ!?」

 

「はて? 急に私に渡したから、食って良いのかと思っただけだが?」

 

 

 ドラゴン波でぶっ飛ばし。

 

 

「あ、あれぇ!? さっきの京都美人さんは!?」

 

「イッセーくんの視線がスケベで嫌だからって、行っちゃったアル」

 

「あと、エヴァンジェリンと手なんて繋いでたものだから、ロリコンだと思われたようでござる」

 

「ろりっ!?」

 

「………何故だかムカつくのだが」

 

 

 ナンパはやっぱり失敗するし。

 

 

「龍拳・爆撃ィ!!」

 

「なっ!?」

 

 

 また変なのが絡んで来たので、龍拳の餌食にしてやったり。

 

 

「わぁ……! イッセーくんが凄い事しとるよ?」

 

「敵の方を同情するわ……」

 

 

 一々容赦なく叩きのめす光景を見られちゃったり。

 変な式神的なものを寄越されたので……。

 

 

「別にこのままでもテメー等全員皆殺しにはできるが、折角だしサンドバッグになって貰うぜ? 俺と――ドライグのな!」

 

 

 オーバーキルモードになってしまったり。

 

 

『光栄に思うがいい。

俺と一誠のこの姿を見せるのは、貴様等が最初で最後だ!!』

 

 

 人と龍が到達した姿へと変化した最後の赤龍帝は。

 

 

「『さぁ、始めようかァ……!!」』

 

 

 止まることなき進化の力を解放するのだ。

 

 そして……。

 

 

 

 

 

「俺かネギ先生とキスしたら勝つゲームって……なにそれ?」

 

「いや……朝倉が言い出したものでつい」

 

「殆どがネギ坊主の方に行っちゃったから、チャンスだと思ったアル」

 

「朝倉が……? 何か裏がありそうでならねーんだが、まあ好きにすりゃ良いだろ。

で、お前らはネギ先生とキッスすんの?」

 

「しないし、こうしてイッセーの所に来たのだから、少しは察して欲しいものでござるよ……」

 

「わかってて言ってるのなら、イッセーくんは意地悪アル」

 

 

 修学旅行にありがちなイベントなんかもネギ先生がモテモテな故に特に巻き込まれもせず、イッセーは部屋に乗り込んできた楓や古菲、そして茶々丸と一緒になって何故かイッセーの世話焼き中のエヴァンジェリンとのんびりまったりしていた。

 

 

「そういえば、ネギ坊主が言っていた仮契約ってのはイッセーくんとは出来ないアルか?」

 

「コイツは魔法使いでは無いから無理だ」

 

「むぅ、もしかしたら合法的にイッセーとキスが可能だったのに、残念でござるな」

 

 

 魔法使いではないイッセーと仮契約的な事はできないと知り、残念がる古菲と楓は最早イッセーに対する好意を隠す気も無いらしい。

 

 

「でも折角だからキスしようよイッセーくん?」

 

「なにが折角なんだよ……。

したら俺はその場でポリスに捕まってからの懲戒免職確定じゃねーか」

 

「合意の上でなら問題なんて無いでござる」

 

「俺が合意しない時点で成立しねーよ」

 

「キスのひとつやふたつ、したいと言うのならしてやれば良いだろうに? まったく、これだら童貞は……」

 

「ど、童貞で悪いかよ。

ち、近い内に人妻で卒業予定だから関係ねーし……」

 

 

 普段の仕返しとばかりにエヴァンジェリンがニタニタしながらからかわれたり、それによりイッセーが未経験者と知って、古菲と楓が別の意味でニヤニヤと嬉しそうな顔して見てきたりと……。

 

 

「そんなに拗ねるな。

ほれ、詫びに膝でも貸してやろう」

 

「それ詫びになってねーよ」

 

「良いから、ほら!」

 

「な、なんだよもう…」

 

「「あ!」」

 

「最近のマスターは妙にイッセー様に対するお世話を焼く事がお気に入りの様なのです」

 

「だ、だからってあんな……ずるいアル」

 

「しかしエヴァンジェリンってあんな顔もするのでだな……。

あれではまるで母親のようでござる」

 

 

 そこそこ平和だった。

 

 

「本当に図体だけはデカい子供だよお前は……ふふん」

 

「何故か微妙に納得できねぇ……」

 

 

終わり




補足

もしも、かつての親友達と同じ好意をイッセーから持たれた場合、何をしてでもその者を守ろうとするし、傷つけた場合はその傷つけた相手を地獄の果てまで追いかけて殺そうとする程度の、リアルターミネーターになります。

その2
つまり、色々と重くてめんどくさい乳龍帝なのだ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。