色々なIF集   作:超人類DX

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これにて終わりです。

無理矢理だけどね……


その後への道

 『織斑一夏』

 

 

 私が知っている彼は、どこまでも他人の介入を拒む男だ。

 そして誰よりも一誠を慕っていた。

 

 親を知らなかった彼を親代わりとして面倒を見てきたから――――そして、一誠を見る世界を教え込まれたから。

 

 少なくとも私の知る織斑一夏は、一誠と実の姉である教官――即ち織斑千冬以外の全てをただの他人と認識し、篠ノ之束以上に排他的な態度を常にしていた。

 

 一誠を他人と認識する者達に奪われる事を姉と同じく何よりも恐怖し、一誠を侮辱する者は誰であろうが絶対に許さない。

 

 厄介だったのは、その態度を取り続けるだけの力を保持していた事。

 教官と並び、最も一誠の領域に近づけた正真正銘の異常者。

 

 それが私の知る織斑一夏という男の気質だ。

 

 

 だから、一誠と全く関わる事無く『普通』に育った織斑一夏と教官を其々初めて見た時は、驚いた。

 

 教官はこの時代でも教官をしたし、その当時から世界最強のブリュンヒルデと呼ばれていたのだけど、あまりにも『普通』だった。

 

 そして織斑一夏はもっと――あの『おっちゃんと千冬姉以外の全人類が死滅しようが、知ったことではない』と当たり前の様に吐き捨てていた程に排他的だった彼は、特殊な出生を抜かせばあまりにも普通だった。

 

 少々異性からの好意に鈍いが、とても社交的だった事は、私にしてみれば違和感がありすぎて逆に不気味に思ったぐらいだ。

 

 しかし、そんな『普通』に育ち、他人への優しさを持つ事で、逆に彼は外敵から身を守る術が無い。

 

 一誠から教えられる事の全てが『無かった事になっている』この時代の彼は――あまりにも弱いのだ。

 

 決して見下している等では無い。

 

 しかし、そう思う程にこの時代の織斑一夏は見ていてハラハラするのだ。

 先の暴走ISの迎撃任務でもそうだ。

 

 一誠とドライグの力を可能な限り再現する様に調整された専用機――『紅椿』ではない、ただの第四世代のISとなる『紅椿』を与えられた篠ノ之箒が、少々慢心した事で一度は離脱する事になってしまったのも、もしあの織斑一夏なら周囲の者と連携する等クソ喰らえとばかりに、単独で破壊できた。

 

 そうでなくても私の記憶では、この暴走した軍用ISに関しては、『とある二人組』が現れ、そして破壊したのだ。

 

 漆黒の狼の鎧をその身に纏う――一誠と同じ世界を生きた青年と、その青年に拾われて行動を共にしていた教官と瓜二つの少女によって……。

 

 だから、紆余曲折あって周囲の者達と協力して何とか暴走した軍用ISを撃破することが出来た織斑一夏を見ていると違和感を感じて仕方ないし、あまつさえ礼を言われた時は違和感以上に背中に氷でも入れられたような寒気を覚えてしまう訳で……。

 

 つまり私はどちらにせよ織斑一夏が嫌いでは無いのだが苦手なようだ。

 

 逆に不思議な事に、篠ノ之博士の事はそんなに苦手じゃないのだけど。 

 

 

 

 

 

 私の弟――つまり、一夏がISを起動した事で世間が騒ぎとなって直ぐに現れた二番目の男性起動者。

 

 兵藤一誠という名の男子は、奇しくも一夏と同い年だ。

 しかし、ISの操縦はお世辞にも上手くはなかった。

 

 それこそ、まだまだひよっこの一夏がそれなりの成長をしているのとは逆に、兵藤は全く成長する兆を見せない。

 

 それは彼に専用機が与えられていないから――というのではなく、根本的にISに乗ることに向いていないのだ。

 それはある意味不幸なのかもしれない。

 

 ISを操るセンスが無いのに、ISを起動できてしまう事が。

 

 案の定兵藤は男で起動できる存在としては、一夏よりも価値が薄く、何ならスペア扱いとされて政府から放置され始めているという、早い話が実験動物としての扱いだ。

 しかしそんなセンスを感じない兵藤自身の授業態度は入学した時から真面目だし、一夏達と違って騒ぎを起こすことはしないという意味でなら、担任としても好印象だし、その証拠に座学に関しては一夏よりも成績は上だ。

 

 

 だから私は驚いている。

 

 まず、彼が私が以前教官をしていたドイツのさる部隊に所属していた少女――ラウラと既に親しい様なやり取りをしている事に。

 そしてラウラも彼に好意を持って接している事に。

 

 普段は物静かで、影も薄い兵藤も、ラウラと接している時は騒がしく、師匠と呼びながら犬の様にラウラの後についていく。

 

 その時の様子からして、恐らくはアレが兵藤の素なのだろう。

 

 一体ラウラとは何時知り合ったのだろうか……?

 

 そしてもう一つ……先日現れた時、束は一切兵藤の事には触れなかった。

 ある意味で一夏以上に謎のある兵藤に対して、そこそこ絡むと思っただけに、一切触れもしなかった束に私はある種の違和感を覚えたのだけど、果たしてこれは気のせいなのか……。

 

 そして――過去に一度だけ見た事のある、何時付いたのか教えてはくれなかった束の腕の傷跡と、全く同じ箇所に兵藤の腕にもある傷跡は単なる偶然なのだろうか。

 

 流石にただの偶然なのだろうけど、何故か私は気になっている。

 

 

『ねぇちーちゃん、今の世界って楽しい?』

 

『何だその質問は? まあ、そこそこといった所だが……お前はどうなんだ?』

 

『私は楽しいよ?』

 

『ほう、その理由は?』

 

『遠すぎて、何をしても届かなかった領域(ばしょ)にやっと追い付けたから』

 

『………場所?』

 

『うん。大嫌いで、ムカつく―――でも私だけが理解できる領域(ばしょ)にやっと手が届いたんだ。

もっとも、この世界自体がこの先どうなろうが知ったことじゃないんだけどさっ♪』

 

『…………』

 

 

 束は昔から、肉親でも実の妹でも、私達姉弟でもない『ナニか』を見ている気がするのだから。

 

 

 

 

 

 嵐がやみ、天の川の輝く夜の海辺で、ちょうど誕生日であった箒が一夏から貰った新しいリボンを身に付け、暴走ISとの戦いを経て少しだけ縮まった距離で少し良い雰囲気になりかけたのを、セシリアや鈴音やらシャルロットの妨害によって、やっぱり大騒ぎになっていた頃、別の場所では……。

 

 

「及第点だね。

いっくんは今回の経験で白式を第二形態移行させられたみたいだし」

 

「しかし、それだけでは外敵から身を守れるという訳では無いのでは?」

 

「まーね、あくまでもいっくんもちーちゃんも普通(ノーマル)である以上、限界はあるよ。

そもそも、ソイツが教えてきた身を守る技術自体がこの世界にとってのオーバーキルだし、イレギュラーなのさ。

つまり、これがありのままのいっくんとちーちゃんって訳」

 

「つまり、今後もこちら側については一切教えないと……?」

 

「当然でしょ。コイツの技術(アブノーマル)を知るのは私とキミで十分だしね」

 

「………」

 

 

 帰還したラウラと一誠でこっそり夜の海岸をお散歩していたら当たり前のように現れて、手を繋いでいた二人の間を切るように露骨に妨害する束との逢い引き中であった。

 

 

「それについては私も同じ意見ですが……」

 

「でしょう? 特に例の暗部の姉妹小娘には気を付けてよ? まあ、向こうはコイツに関心なんて無いだろうけど」

 

「何故そう言い切れるのですか?」

 

「関心をすべていっくんに向ける様にこの束さんが仕込んでおいたからさ。

世間的にも二番目の起動者は『あー、そんなの居たっけ?』程度の認識になるようにわざといっくんを目立たせてきたし、その証拠にコイツに専用機を与えるって話は一切無いでしょう?」

 

 

 意外な程にラウラと束は冷静に話をしている様に見えるが、さっきから一誠と手を繋ごうとするラウラを束が妨害しているという、無言の戦いが行われており、一誠は微妙に小さくなっている。

 

 

「……博士、いい加減妨害はやめて頂きたいのですが?」

 

「何が? 一々手を繋いでないといけないって訳じゃあるまいし」

 

 

 しかし、互いに不穏なオーラ……というか、赤いオーラを微かに放出させ始めたとなれば一誠とて小さくなってる訳にはいかないので、止めに入る。

 

 

「こんな所でやり合ったら目立つ上に、誰かに知られちゃうかもしれないからやめようぜ?」

 

「む……そうだな。すまん」

 

「………ふん」

 

 

 例えるなら、素直な黒兎とツンツンしてる白兎といったところなのか。

 一誠に言われ、二人共オーラを引っ込めたものの、その態度はまるで逆方向のものだった。

 

 

「それで博士? 一番身軽である一誠に学園に入学させ、教官と弟を見守らせている訳でですが、今後はどうするつもりですか?」

 

「どうするも何も無い。

ソイツの唯一の『お友だち』とそのお供がこの時代に存在しないのが確定した今、コイツがフラフラと身勝手に消えるといった事がかなり薄れたんだし、そのままいっくんが『こっち側』を知らないまま独り立ちするまではなるべく近くに居て貰うよ」

 

「……………。一誠を嫌っているわりには信頼はしているのですね」

 

「は? 信頼してる訳ないじゃん? 気色悪いこと言わないで欲しいな」

 

「……。俺が悪いのはわかってるけど、そこまで言われる割りと傷つくんだけどな……はは」

 

 

 露骨に嫌そうな顔をしながら、ラウラの言葉を否定する束に、一誠は苦笑いを浮かべながら軽く肩を落とし、そんな一誠の背中を優しくラウラが撫でる。

 

 

「イチ坊達は楽しくおいかけっこしてるし……アイツってどんなイチ坊でも本当にモテるよなぁ」

 

 

 500メートル程離れた海岸で、なにやら数機のISが一機の白いISを追いかけ回しているような光景が見えるが、向こうの方がまだ楽しそうだなとまともに育った一夏のモテモテっぷりを羨ましがる。

 

 そんな一誠の言葉に、真っ先に反応し……そしてムッとした顔をするのが束である。

 

 

「相変わらず思考と下半身が直結してるねアンタって? 第一、アンタ確か悪魔だかなんだかに追いかけ回されてたんじゃないの? 『正気に戻ったからヨリを戻したい』とかなんとかって?」

 

「確かに。前に私も聞いたぞ」

 

「え? ああ、そんな話束ちゃまや師匠にしたっけか?

まあ、そういう考え方をすれば一応はそうなるかもしれないけど、死んでも嫌だよそんなの。

正気に戻ったなんて言われても信じられる訳もないし、第一だぜ? 人間でもない畜生共に欲情はしないもの」

 

 

 以前聞いた事のある、一誠本来の世界での少しの期間だけあった繋がりについて指摘する束に、一誠は真面目に嫌そうな顔でそこそこ辛辣に否定する。

 

 正気じゃなかったと言われて、手足を消し飛ばされてきたり、何度も殺されかけた時点で、その者達に対する感情は単なる殺意にしかならないし、それは恐らく『こことは別の時代を生きているだろう親友』も同じ事を思っている。

 

 

「元士郎も絶対同じ事を言うよ。

ったく、俺と元士郎にとっちゃあ、あの時の事は完全に黒歴史だぜ……」

 

 

 同じく裏切られ、見捨てられ、そして這い戻った親友の事を思い返しながら呟く一誠にラウラは頷き、束もそれ以上茶化すことはせずにじっと一誠を見ている。

 

 

「あの二人は元気なんだろうか?」

 

「大丈夫さ。

アイツは強いし……良い嫁さん貰ってるし―――あぁ、羨ましい」

 

「その嫁さんとやらはこの時代では相当擦れちゃってるみたいだけど?」

 

「それに関しては俺はノータッチのつもりだよ。

悪いけど、この時代では元士郎の嫁さんではないからね」

 

 

 そう言いながら星明かりの照らす海を眺める一誠。

 良くも悪くも一誠はこれまでの人生があったせいか、『極端な判断』を下すのだ。

 

 

「必要なんてないと思う。

けど、もしラウラ師匠と束ちゃまに誰かが変なちょっかいをかけてくるってんなら―――俺は間違いなくそいつを殺すよ……ふふ」

 

「「………」」

 

 

 そう、間違いなく織斑一夏の保護者と呼べるだろう考え方をするのが一誠なのだ。

 ただし、あの一夏よりは遥かに理性的だが。

 

 

「それならもっと私も精進しなければな……! 一誠一人にそんな業を背負わせないために」

 

「っ! も、もうラウラ師匠め! だから好きなんだよ俺は!」

 

「…………」

 

 

 そうさせない為にもラウラは決して一誠を独りにはさせない覚悟をしている。

 そんな覚悟を知っているからこそ、一誠はラウラを好いている。

 

 そんな二人を見てるからこそ、束はちょっとムカムカしてくるのだ。

 

 そのままラウラに抱きつこうとする一誠の服の後ろ襟を掴んで阻止もするし、取り敢えず腹立つから後ろももを蹴りまくるし、足も踏んでやる。

 

 

「その内、その子を無理矢理犯しそうで心配だよ束さんは?」

 

「し、しないっつーの! 俺は意外とプラトニック派なんだよ!」

 

「別に私は襲われても構いませんが? それに博士は知らないでしょうけど、一誠は色々と優しいですよ?」

 

「………あ? 何そのアンタより一誠の事を知ってますよ? みたいな顔は?」

 

「別にしてませんが? そう見えるという事は、やはりアナタも一誠が……」

 

「逆だっつーの。コイツが土下座してこの束さんにヤらせてくれって言えば、死ぬほど嫌だけどヤらせてやっても良いってだけ。

じゃないと所構わず女を襲うかもしれないでしょ?

さっきからずっと束さんの胸ばっか見るし」

 

「み、見てねーやい!」

 

 

 慌てて否定しようとしている一誠だが、普段が普段のせいであまり説得力は無かったのはご愛敬である。

 

 

 

 

 

 無理矢理アイツの領域に踏み込んだ初めての時、私はアイツの過去を知った。

 そして、途方もない領域に君臨しても尚止まらぬ成長を。

 

 アイツの事は大嫌いだ。

 けれど、アイツの強さだけは認めざるを得ない。

 

 強大な復讐心を糧に到達した遥かな領域を。

 

 それは今でも変わらないし、アイツは今でも進化をし続けている。

 

 

「起きなドライグ。運動の時間だぜ……!」

 

 

 全てを遥か空の上から押し潰してくるかの様な力は、これまで何度挑んでも崩す事はできなかった。

 アイツは私に対して殺したくなるくらいに気を遣おうとする癖に、こうしてぶつかり合う時だけは―――加減なんてしない。

 

 

「オラオラオラオラァ!! どうしたよ束ちゃま!」

 

「ぐっ! こ、この脳筋め……!!」

 

 

 せっかくだからと、私はコイツに戦いを挑んだのだけど、その差は広がらないにせよ近づける事は無く、コイツの領域に近づけている私でも防戦を強いられる。

 

 私の拳がアイツを叩いても、アイツは心底楽しそうに笑いながら受けきり、まるでダメージなんて無いとばかりに重くて速い拳を叩き込んでくる。

 

 

「良いぞ! 師匠と同じく、この前より進化してる」

 

「それなのにアンタとの差が縮まらないんだから世話なんて無いよ、この変態め……!」

 

「そういう星の下に生まれちまったからな……! さぁ、もう一度だ……!!」

 

 

 ムカつく……ムカつく……! ムカつく……!!

 

 昔からそうだ。どれだけ走ってもコイツは全く追い付かせてくれやしない。

 領域という意味では私もラウラって子もまだ追い付けてはいない。

 

 

「ダァッ!!」

 

「ぐぎっ!?」

 

 

 気を抜けば体を砕かれそうな程の一撃を防いでも、衝撃までは防げずに空へと吹き飛ばされた私を、アイツは笑いながら追撃せんと地を蹴って空へと跳ぶ。

 

 

「っ……のっ!!」

 

 

 上空へと投げ出された私も何とか反撃しようと上空で停止し、迫ってきたアイツに蹴りを入れるけど、アイツはそんな私の足を抱えるように掴む。

 

 

「うっ……!?」

 

「束ちゃまなら耐えられると思ってるぜ?」

 

 

 私の脚を抱えてニヤリと笑うアイツに、私は背筋が凍る暇も無く思いきり地面へと投げつけられた。

 

 

「ぐっ……! と、止まらなっ―――っ!?」

 

 

 自由が利かずにそのまま砂浜へと叩きつけられることを覚悟した私だけど、その刹那……アイツは地面に叩きつけられ寸前の私の真横に立っていた。

 

 

「ぐはっ!?」

 

 

 そして私をそのまま地面に叩きつける事無く再び上空へと蹴り上げ――

 

 

「ビッグバン―――」

 

 

 またしても先回りしていたアイツが左手に赤く輝くエネルギーを集束させていて……。

 

 

「キャノン!!」

 

 

 本当に容赦なく私に向かってぶっぱなしてきた。

 赤い閃光が私を包み、焼け付くような痛みと共に今度こそ砂浜に叩きつけられた私は……腹が立つ程にアイツに弄ばれたんだ……。

 

 

「ふっ……」

 

「ごほ……げほっ……!」

 

「流石にやるな一誠。

このコンボに耐えきる博士もすさまじいが……」

 

 

 服は擦りきれ、全身はボロボロでどこもかしこも痛い。

 それでもなんとか膝をつきながらなんとか身体を起こせば、アイツは楽しそうな顔で私を見下ろしている。

 

 

「ちゃんとやらないと束ちゃまに失礼だしな。

それに、この子はこの程度でくたばるほど弱くなんてないし」

 

 

 ああ、ムカつく。

 私が見下したい相手から見下されてるのが。

 

 余裕そうな顔で私に手を差し出してくるのもムカつく。

 私の思い通りにならないコイツが……! 追い付けない自分が……!!

 

 

「……自分で立てる。

余計な施しなんて要らない」

 

「ん、そうかい」

 

「戦闘については訓練だろうが一切妥協しないし、少し休んだ方が宜しいかと」

 

「1分もあれば復活できるよ。第一、束さんは参ったなんて言ってないし……」

 

 

 まだ足りない。

 コイツを私の思い通りにさせるにはまだ力が足りない。

 アイツを取り巻いてた邪魔者は、このラウラって子を除けば皆無となった今、時間はまだある。

 

 だから何時かきっと私はコイツを……。

 

 

「で、降参しない束さんをアンタは何で追撃しないわけ?」

 

「運動はするけど、キミと殺し合いをしてるつもりはないからさ」

 

「殺し合いじゃないにせよ、降参をしてないんだよ。

アンタならそのしてない相手を追撃するでしょう? ほら、今なら動けないし、服もこんなボロボロだ」

 

「う……うん?」

 

「あーあ! 動けなくなっちゃっなー? これからナニされるのかなー!? ボロボロの束さんはこれから変態男に無理矢理押し倒されるんだろうなー?」

 

「……。いや、そんな事する訳――」

 

「困ったなー! こんな奴に無理矢理ヤられるなんて泣きたくなるくらい辛いなー? どうせ犬みたいに後ろから孕むまでヤられるんだろうなー? やめてって言っても、悪人顔でニヤニヤしながらやめずにさー? でも言っておくけど、アンタに身体を汚されても、心までは穢されないからねっ!!?」

 

「………………………」

 

「いや、困った顔して私の方を見てもな……。

博士は昔からこんな感じなのは知ってるだろう? というか、博士の願望みたいなもので――」

 

「違うけど? コイツがこの完璧美女の束さんにエロい目を向けてるだけだし、仕方ないからヤらせてやるってだけだけど? 履き違えるのはやめてもらいたいね?」

 

「……だ、そうだ一誠?」

 

「怖くて俺にそんな事をする勇気なんて無いよ……」

 

 

 絶対にコイツだけは……()()()()

 

 ふふふ……♪

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 結局相も変わらず束は束ちゃまのまま、臨海学校は厳かに終わって夏休みに突入した。

 

 織斑一夏は友人達と楽しい夏休みを送る事になっている中、一誠もラウラと楽しく夏休みの予定だったのだが……。

 

 

「よし、ダミー人形も100体は世界中にバラ撒いておいたし、これで心置きなく束さんもいっくんとちーちゃんを密かにサポートできるぜ☆」

 

 

 二人でさっさと夏休みの課題を終わらせ、一誠がラウラを後ろから抱くような形で座りながらテレビを見ていた時に、束が普通に寮の部屋に入り込んだかと思えば、住み着く宣言をしてきたではないか。

 

 

「また急ですね……」

 

「大丈夫なのかよ? この学園の生徒にバレたら大騒ぎになるんじゃ……」

 

「バレるようなヘマをする束さんじゃないぜ。

だから今すぐ、そのイラッとする体勢をやめて貰おうか?」

 

 

 そして通称『あすなろ抱き』状態であった一誠とラウラを当たり前の顔で引き離す束は、平気な顔をして一誠が使用していたベッドを奪い取るのだが……。

 

 

「別に使いたければ使っても良いよ。

どうせ殆どラウラ師匠と同じベッドで寝てるし」

 

「は?」

 

 

 一誠も一誠で一々束の癪に触る事ばかりを、自覚せずに言っちゃうものだから、変な方向に話は拗れていき……。

 

 

「せ、狭いんだけど……!?」

 

「博士は向こうのベッドを使うと言ってた筈なのに……」

 

「う……うっさいな! そこの性欲龍帝が何時爆発してキミを襲うかわからないから、釘を刺してるだけだよ!」

 

 

 気づいたら一誠は二人に挟まれる形で寝る事を強いられるようになっていた。

 

 

「っ!? ちょっとこのスケベ……! 束さんのおっぱいを然り気無くさわらないでよ……!」

 

「ち、ちげーよ!? 事故だ事故!」

 

「じゃあ私が一誠を抱きながら眠れば、その事故もないだろ。ほら、ぎゅってしてやるぞ一誠?」

 

 

 こうして不可思議な共同生活の夏が始まるのだった。

 

 

 そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレが一誠の言っていた『悪魔』か……」

 

「見た目は人間とあんまり変わらないけど、連中の技術力はこの時代の人間達より上らしいね」

 

「絶対に関わるなよ? いや、俺が絶対に関わらせない。

あんな連中に目を付けられるぐらいなら、よくわからんテロ組織に入った方が遥かにマシだぜ」

 

 

 到達し、追い付いたラウラ師匠と束ちゃまは一誠の故郷へと渡る事になる。

 その世界を生きる人ならざる者達を見て多少の興味を持ったものの、一誠が信じられないくらいに頑なに関わることを止める。

 

 だから悪魔達の住む街ではない街に住むし、学校なんて通ってすらいない。

 

 

「けど向こうはそうではないようだぞ?」

 

「興味本位で調べたところによると、どうやら赤龍帝を探してるみたいだね、あの連中は。

もっといえば、アンタと同じ特徴の男を探してるとか……」

 

「なんだって? それってつまり……」

 

「まあ、そういう事になるな。

恐らく奴等は『お前自身』を知っている者だろう」

 

 

 けれど、鬱陶しい運命は皮肉にも関わらないという選択を許さなかったらしい。

 

 

「相変わらず殺したくなる面ばっかりだな? 愛しの王子様はどうしたんだ? おっと、俺が二度と復活できねーように魂もろとも粉々にしてやったんだっけ? 悪いね、忘れてたわー」

 

「い、イッセー……? やっぱりアナタはあのイッセーなのね?」

 

「だから? この時代では俺とアンタ等の間には何の関わりはねーだろ? 確かアンタ等は『正気に戻ったから』とかどうとか最後にほざいてた様だが、それならお互いに何の関わりもなく平和に生きようじゃねーか?」

 

 

 見た事がない程に、冷淡な一誠のその者達への態度に束とラウラは『一誠にここまで言われる辺り、もう終ってるなコイツ等は』と思いつつその隣に居る。

 

 

「……。その二人は誰なの?」

 

「俺の命よりも大事な子達だが……アンタ等には関係無い事だな」

 

 

 そんな連中にとって、命よりも大事だと言われた束とラウラの存在はどうやらショックが大きかったらしく、嫉妬混じりの視線を向けられる。

 

 しかしそれを無視して一誠達は去っていき、完璧に関わりを絶つ。

 

 

 そして……。

 

 

「久しぶりだな一誠。

やっぱお前も奴等に絡まれたクチだな?」

 

「ラウラと束博士が一緒に付いてきたのか? どっちにせよウチの組織に入れば少なくとも連中に絡まれたりはしなくなるから安心してもいいよ?」

 

 

 親友とその嫁さんと再会し……。

 

 

「あ!? い、イッセーだと!? い、いや気質こそ同じだが少し違う……?」

 

「見知らぬ女二人と一緒だし……」

 

 

 何故か居る――三馬鹿呼ばわりされる世界の二人が居るし。

 

 

「俺たちの知っているイッセーなら、外史とかいう不思議な過去世界から共に来た女呂布と一緒になったぞ?」

 

「は? 外史? 女呂布……?」

 

「恋という真名なのだが、これが写真だ」

 

「む、確かにイッセーそっくりの男と、赤髪の女が仲よさそうに写っているぞ」

 

「抱える子供は二人の子供だね……」

 

「嘘だろ、俺なのに結婚して子持ちって……」

 

 

 別世界の自分がリア充で軽く凹んだり……。

 

 

「あの匙とマドカにも子供は居るぞ?」

 

「なぬっ!?」

 

「ああ、それを知ったソーナ・シトリーと取り巻き共が勝手に嫉妬して、マドカと子供に襲い掛かったものだから、キレた匙がシトリーそのものを物理的に捻り潰したんだ」

 

「へ、へー……」

 

 

 自分だけ遅れてる状況にますます凹んだり。

 

 微妙にヤバイ戦力で構成された小さな組織は色々とシュールだった。

 

 

 

終了




補足

束ちゃまが『別の何か』を常にみている事には周りも気づいてはいるけど、それが何なのかはわからない。


その2
そしてこの後は白黒兎対決が常に始まるのだとさ……。

一誠? オロオロしながら小さくなるよ。


その3
少数精鋭組織。

目的は単に楽しくその日を生きる。

邪魔する奴は全潰し。

構成員。

一応リーダーの匙きゅん。

副リーダー兼嫁のまどっち

構成員

曹操(神牙)―三馬鹿シリーズ

ヴァーリ―同じく三馬鹿シリーズ

……強い

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