色々なIF集   作:超人類DX

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これも消す。

ただひたすら仲良くやってるだけやし


※赤き龍の系譜

 一応は世界で二番目のIS男性起動者なのが一誠。

 

 そして一応起動してしまったので、織斑一夏と同じくIS学園に入学する形となった。

 

 しかし、一夏と違って後に現れたというのと、ISに対する適正ランクがギリギリのCという事もあり、政府側の認識は織斑一夏に何かあった場合のスペアという扱いだった。

 

 だから専用機も与えられてはいないのだが、逆を返せばスペアだからこそ、一夏には出来ない事を一誠には可能だという考えを持つ輩は少なくはない。

 

 例えば、何故男でありながらISを起動できるのか――という理由を知るために解体して調べてもスペアなので問題はないだろう……等。

 

 もっとも、仮に調べたらISを起動できるメカニズムよりもヤバイ事実を知ることになるのは間違いないだろう。

 人の限界を越え、今尚進化し続ける存在という正体が彼なのだから。

 

 

 

 

 織斑一夏や友人達――それからクラスメート達から見た兵藤一誠は、『時折居るのすら忘れる程に影が薄い人』だった。

 自分から喋るでも無く、休み時間も誰かとお喋りするでもなく、教本を読んだりするだけだし、話しかけても当たり障りのない返答しか返さず、全く話が膨らまない。

 

 つまり、一夏に比べたら実につまらないタイプの男子というのが学園生徒による兵藤一誠の評価であり、本人もあまり話しかけられたくは無い様子を見せるものだから、何時しか一誠は放置されるようになった。

 

 そもそも一夏に比べると、別に顔立ちが悪い訳ではないが、別に良いとは思わないという評価だし、専用機も持ってないし、実技の授業だと何時も訓練機をちぐはぐに動かしてばかりなので、どうしても一夏と比べると見劣りする部分が大きい。

 

 一夏も最初こそは唯一の同性ということで話しかけたり、一緒に昼食を食べようと誘ったりしたのだが、何時だって一誠は自分から何かを話す事はせず、黙って黙々と食べてはすぐに席を立って去ってしまうので、誘うことはしなくなった。

 

 だからこそだ。

 

 ラウラがクラスに転校した日から、それまでの性格なんて全部嘘だぜと云わんばかりに一誠のテンションが常に明るくなった時は一夏達も驚いたし、ラウラを師匠と呼んでは飼い犬みたいにその後を付いていくその関係性は何なんだと思うわけで……。

 

 

「最初と比べたら大分マシになったとはいえ、本当にお前はISを動かすのが下手だな……」

 

「意識して動かしてるつもりなんだけど、すればするほど変な挙動になっちゃうんだよね……」

 

「やはり訓練機ではお前の反応速度に付いていけないのだろう。

……まあ、専用機なんてそうそう与えられるものではないし、我慢するしかないだろ」

 

「与えられても逆に困るし……」

 

 

 先日のタッグトーナメントに出場せず、観戦していたラウラが、その身に専用機であるシュヴァルツェア・レーゲンを纏い、学園に配備されている訓練機である打鉄に搭乗する一誠の訓練の指導をしている。

 

 その訓練場の別の場所では一夏達がそれぞれ持っている専用機に搭乗して、軽い小競り合いを交えながら訓練をしているのだが、その視線はちぐはぐに動き回っている一誠と、一誠に対して文字通り手取り足取り動きかたの指導をしているラウラに向いていた。

 

 

「毎日の様に一緒ですわね、あのお二人」

 

「朝偶々見ちゃったんだけど、手繋ぎながら廊下を歩いてたわよ?」

 

「ああ、教室でも当たり前のようにやってるぞ」

 

「クラスメートが聞いたんだけど、なんでも師匠と弟子の関係らしいぜ?」

 

 

 うっかり真横にすっ飛びそうになっている一誠の手をきちんと掴んで、姿勢制御を手伝うラウラと一誠のクラスでの様子を思い返す様に話す一夏達。

 

 

「居るのか居ないのかわかんないくらいに影が薄かったのに、あの子が転校してからはすごく目立つようになったわよね、そーいえば」

 

「そりゃあ、ラウラ師匠! なんて呼びながら忠犬みたいに付いていく姿を見せられりゃあな……」

 

 

 手を繋ぎながら訓練場内をゆっくり旋回しているのを眺める一夏達は、ラウラが転校してからの一誠の変わりっぷりを思い返す。

 

 巷では、二人はデキてるんじゃなかろうかという噂が立っているのだけど、ああも楽しそうにしてるのを見てると、あながちデタラメでも無い気がする。

 

 

(しかし、その内私もああやって一夏さんと……)

 

(私だって絶対にああして一夏と……)

 

(コイツ等には負けんぞ……)

 

(僕も一夏と二人で訓練したいなぁ……)

 

(確かボーデヴィッヒって千冬姉の教え子なんだっけ? 今度話してみようかな……)

 

 

 だからこそ一夏に想いを寄せる少女は別の意味で気合いが入り……悲しいかな、寄せられてる一夏は別の事を考えているのだった。

 

 

 

 

 

 そもそも一誠がISを何故起動できるのかというと、ISの開発者である彼女の仕込みも確かな事なのだが、一誠自身の肉体がこの世界の人間から逸脱したレベルにまで到達してしまっているからのその――所謂エラーが理由だ。

 

 だから適正ランクも低いし、操縦も何時まで経ってもちぐはぐのままで中々上達をしない。

 しかしながら、逆を返せば、一誠の反応速度に100%対応できる機体さえあれば、そこそこ問題なく扱えるともいえる。

 もっとも、本人はISに乗るよりも生身で戦った方がはるかに制約も無く力を解放できるので、あまり意味の無い話だったりするのだが。

 

 そして、生身で向かい合う時、ラウラと一誠の師弟関係は逆転するのだ。

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

 本来の歴史から外れた事で、永遠に目覚める筈の無かった気質に目覚め、独自の進化を遂げた赤龍帝と、その赤龍帝の力の一部を宿し、独自の力へと昇華させし少女。

 

 ISの訓練とは違う訓練は、ラウラが一誠に挑むというものだった。

 

 

「あの時のドライグの極一部だった力をそこまで昇華させるなんてね……!!」

 

 

 赤きオーラを纏いながら突貫するラウラの攻撃を捌きながら、同じ色の赤き龍の籠左腕全体に纏っている一誠は楽しそうに笑う。

 

 

「更に倍加……!」

 

 

 力を倍加させる。

 それがラウラの中に宿り続ける力であり、時間と共にラウラのパワーはスピードと共に増していき、攻撃の手数も暴風のような激しさをましていく。

 

 

「っ……!」

 

 

 その力を捌いていた一誠の腕に鈍い衝撃が走り、僅かに表情が変わる。

 ラウラの力が一誠に届き始めたのだ。

 

 その証拠に、ラウラの攻撃は徐々に受け止めていた一誠の手を弾き飛ばし始め……。

 

 

「うっ……!?」

 

 

 鋭い蹴りを両腕を交差させながら防いだ時、衝撃までは防げず、両腕が真上へと弾かれ、ボディを晒してしまった。

 

 

「だぁっ!!」

 

 

 その隙を突いたラウラが渾身の突きを一誠の腹部に突き刺し、一誠は僅かに苦悶の表情と共に吹き飛ばされ、大きめの木に背中をしこたまぶつける。

 

 

「げほっ!? や、やるじゃん……流石ラウラ師匠」

 

 

 軽く両手を下げた状態で構えて此方を見据えるラウラに、久しくなかった『鈍い痛み』を腹部に感じながら、一誠は立ち上がる。

 

 偶発的にドライグの力の一部がラウラに宿った時から、ラウラはその力を独自に発展させていったのを見てきた。

 

 

『俺と一誠の力の一部をここまで独自に発展させるとはな………。

あの小娘といい、この世界の小娘は強いな……』

 

(ああ、まったくだぜ……)

 

 

 ラウラの力は一誠に届いた。

 それが一誠にとって――嬉しい。

 

 確かな自分の師であるラウラが自分と同じ所に居てくれる。

 それがとても……嬉しい。

 

 

「まだまだだ……。

お前の領域――いや、お前よりも更に一歩先の領域に立つのが私の目標だ」

 

 

 ラウラ自身はここまで発展させた自分の力を、まだまだ発展途上だと断言する。

 師であるからこそ、一誠よりも一歩先に。

 

 

「お前の師匠だからな……! こちら側でもお前の先に居なければ師ではない!」

 

 

 それが師である自分の生きる意味だとラウラは強い目で言う。

 

 

『だ、そうだぞ一誠? 本当に、この世界の小娘共の根性は大したものだ。

どこぞの悪魔共なんぞ目ではないくらいだ』

 

「そんなのはとっくに知ってるよ。

くく……! 本当に、だから好きになっちまう……!」

 

 

 そんなラウラの覚悟が一誠には嬉しいし、大好きだ。

 

 傷だらけの醜い身体を見ても嫌悪はしなかった。

 血塗れの過去を知られても、変わらずに接してくれた。

 そして、決して独りにはしないと人を辞める覚悟を当然の様にしてくれた。

 

 かつて一回りはラウラよりも年上であった頃も、もし同年代だったら毎日口説いてたくらいに……。

 

「行くぜラウラ! 今度は俺の番だァッ!!」

 

「来い……一誠!!!!!」

 

 

 ならば加減なんて失礼な事はしない。

 今持てる力をラウラに……。

 

 

 赤き龍の系譜達の密かで静かな晩餐は続くのだ。

 

 

終わり

 

 

 

 

 オマケ…ただの日常風景

 

 

 普通――というべきなのかは疑問が残るが、それでもきっと普通に成長した一夏………そして千冬を見ていると、やはり自分の教えた技術は余計なものでしかなかったと、二人を見て一誠は思った。

 

 

「え、なんだって?」

 

「な、なんでもないですわっ!!」

 

「な、なんで聞いてないんだお前は!!」

 

「そ、そんな事言われても……」

 

 

 そして普通に育った一夏はやはりモテていたのだけど、ちと鈍い――いや、鈍すぎると一誠は見ていて思う。

 もっとも、一夏に想いを寄せる少女達も我が強いというか、鈍い一夏につい手が出てしまう面が多々ある様で、大丈夫なのかとちょっと心配になることもある。

 まあ、食いちぎったおっさんの肉片を、自分で付けた傷口に埋め込んで強引に扉を開いた女性に比べたら可愛いものなのだが。

 

 

「ねぇ兵藤くん?」

 

「え、なに……?」

 

 

 そんな一夏と一夏に想いを寄せる少女達による牽制合戦を外様かららラウラと一緒になって眺めていると、クラスメートの女子から久々に話しかけられた。

 

 

「えーっと、ボーデヴィッヒさんと何時もそうやって一緒に居るけどさ……もしかして付き合ってるの?」

 

「はい?」

 

「なんだ唐突に?」

 

 

 どうやら、常にラウラの傍に懐いた飼い犬みたいな居るせいで、そんな関係なのかと思われていたらしく、あまりどころか今初めて話しをしたかもしれないクラスメートの女子からの質問に、一誠もラウラもキョトンとしてしまう。

 

 

「だって、ボーデヴィッヒさんが転校してから人が変わったみたいに兵藤くって明るくなったと思ってさ? 見た感じ、前からの知り合いっぽいし……」

 

「そりゃあ……」

 

「間違いなく昔からの知り合いだな」

 

 

 年頃の娘さん的には自分達の関係が気になっていたらしく、気づいたらその質問をしてきたクラスメートに便乗するかのごとく、何人かの女子達が一誠とラウラを見ている。

 

 

「んー……付き合ってはないと思うよ」

 

「うむ、付き合ってはないな」

 

『えー……?』

 

 

 別に答えても良い質問だったので、取り敢えず答えた一誠とラウラだが、質問してきた女子達のリアクションは、嘘吐きでも見るようなそれだった。

 

 

「あのさ……付き合ってないのになんで手を繋ぐのよ? 今もだけど」

 

 

 クラスメートの女子が言った通り、つい先日席替えの結果、隣同士となった一誠とラウラは、休み時間になると決まってどこに行かずとも手を繋いでいるし、今も当たり前な顔をして繋いでる。

 

 それは最早端から見たらただのバカップルのそれであり、それでも付き合ってないと言うのは些か無理があった。

 

 

「手を繋いでるのは理由が……」

 

 

 しかし実際一誠とラウラが手を繋いでいる理由は別にある。

 それは、互いの力をこうして繋ぐ事で精神的な意味での鍛練になるからやっているだけなのだ。

 

 もっとも、繋いでると心が安らぐからやっているという理由もあるのだが。

 

 

「…………。じゃあ質問を変えるけど、お互いにどう思ってるの?」

 

「俺はラウラ師匠の事好きだぜ?」

 

「私も好きだぞ?」

 

『…………』

 

 

 別の女子がストレートに訊ねれば、平気な顔をして互いに好きだとのたまう。

 なのに付き合ってはいないと言うのだから、聞いていた女子達は、一夏達とは別ベクトルにややこしいと思うも無理はなかった。

 

 

「寮も同じお部屋なんでしょう? まさかとは思うけど……」

 

「いや、それは本当に無い――」

 

「寝るときは一緒のベッドだが? それは私がそうしたいからだ」

 

『わお……』

 

 

 思ってる以上に距離感が近い二人に、思春期の女子達はちょっとドキドキしていた。

 

 

「こ、今後の参考にしたいから聞きたいんだけど、ど、どうやって寝るの?」

 

「こんな感じだな」

 

「ちょっ!? ここで実演するのはレベル高いってば!?」

 

 

 しかもどうやって寝ているのかをわざわざ実演交じりに教えられた時は、思わずクラス中が湧いた。

 

 何せ、ラウラが一誠の頭を自分の胸元で抱きながらと……最早朝チュンみたいなシチュエーションなのだから。

 

 

「ほ、本当にそれで付き合ってないの!?」

 

「最早それって恋人って関係を通り越してるよ!?」

 

「そ、そうなのか? まあ私も一誠に想われるのは嬉しいと思うし、こうして寝るとよく眠れると思ってやってあげてるつもりだったんだが……」

 

「だって見て! 兵藤くんが完全に大人しくなってるもん!」

 

「心底幸せそうな顔だもの!」

 

 

 キャーキャーとはしゃぐ女子達はこうして、一誠とラウラの関係を固定させると同時に、今後の参考にしようと心に誓うのだった。

 

 

「なにを騒いで――る?」

 

「あ、教官…」

 

「その……ラウラ。

お前が兵藤に対してそんな感じなのはわかったから、教室内ではやめような?」

 

「あ、はい……失礼しました。すまんな一誠、付き合わせてしまって」

 

「いや全然……。

ごめん師匠……やっぱ好きだわ」

 

(……。何故か知らないが、兵藤に対しては私も見たことがない程にラウラの顔が優しくなるものだから、あまり強く言えなかったぞ……)

 

 

終わり




補足

相変わらずISの操縦はド下手です。

それでも一応そこそこ動けるようにはなりましたが。


その2
ずーっとノーマル一夏の後ろ辺りでイチャイチャやってるだけ。





ラウラたそー

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