色々なIF集   作:超人類DX

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番外その6の別視点。


……的な?


番外6-2

 現代利器の存在が当たり前の時代に生まれ育った俺にしてみれば、この世界は例えちょっと不思議で、美人指数が高めだったとしても、退屈だし帰りたいのだ。

 

 

 けれど、夢に出てきやがった褌一丁の変態マッチョ野郎のせいで、俺達は無理矢理にでも元の時代に戻る方法となる『力』の大半を失っている。

 

 それはあの変態マッチョが勝手に押し付けてきた条件を確実に俺達に対して呑ませる為なのかもしれない。

 だとするなら、あの変態マッチョ野郎は、姿こそ吐き気すら覚えるくらい気色悪いし、口調もカマっぽさ全開イロモノ野郎だが、その力はヤバイのかもしれない。

 

 俺達の力の大半を無効化する何かを持っているという意味ではな。

 

 だから俺達は渋々変態野郎の条件とやらを聞く他が無いわけで、まだ会ったことすら無い、変態野郎曰くの『ご主人様』とやらの力になる為に、現代利器なんてありもしないつまんねー滅茶苦茶な過去世界に留まってる訳だけど、完全に力を取り戻した暁には、絶対にあの変態マッチョは九分殺しの刑にしてやる。

 

 勝手に夢に現れて、勝手に俺達をこんな場所に飛ばしたのだから――それ相応の返しは必ずしなければ、俺の虫がおさまりゃしねぇ。

 

 その為には、その例のご主人様とやらを探してさっさと手助けとやらをすべきなんだけど……。

 

 まさかパラレルワールドの神牙のご先祖様なんぞに取っ捕まるとはな……。

 

 ちんまい女の子だし、髪の色とか顔立ちとかどう見ても東洋系から剥離してるし。

 てか、聞いてた三国時代に生きた者達が間違いなく女だっつーのはどういうこった。

 

 いや、それでその人物達がメロンをお持ちなお姉さん系なら俺だってこんな帰りたい気分にはならんけど……何で出会う連中の殆どがうっさいだとか、ぺたんこだったりとかって―――俺の理想からかけ離れてるのばっかなんだ。

 

 これじゃあやる気なんて出ねーってんだ。

 

 

 それなのに、あのまな板娘――つまり神牙のご先祖様の女の子バージョンである曹操は俺にしょうもない事ばっかやらせようとするんだ。

 ちくしょう……ある程度自由にやれてる神牙やヴァーリが羨ましくてしょうがないぜ……。

 

 

 ああ、アレがボインでマイナスイオンを常時放ってそうな、ほんわかお姉さん系だったら……寧ろなんでもしてあげたくなるってのに……。

 

 我は無駄に強いは、まな板だわ………ハァ。

 

 

 ホント俺って……ハァ。

 

 

 

 

 

 

 天の遣いを発見したかと思ったら、天の遣いではなく、その天の遣いを補佐する為に天ではなく遥か先の未来から無理矢理飛ばされてきたと自称する三人組の男だった。

 

 完全なハズレだったと、当初はこの時代の曹操――真名を華琳は落胆すらしていたのだけど、この三人組は自身の配下である夏侯惇――つまり春蘭と同じくらい馬鹿というか……下手したら春蘭よりある意味酷いのだけど、その戦闘力だけは驚かされるものであった。

 

 神をも殺す武具を宿し、その名に違わぬ力を持っている。

 曰く、本来の半分以下まで力が出せなくなっているとのことだが、それでもその力は一人一人が一騎当千ものであり、こんな三人が今頃風の噂で兵を集いながら各地を放浪しているらしい天の遣いの一派に渡られたら、華琳が描くこの先の道の障害になるのは間違いない。

 

 だから華琳はそれらしいことを言って三人を自軍に引き入れ、決して天の遣いには渡さない様にと考えた。

 

 程好く三人がアホの子だったので、自分の尤もらしい言葉に納得はしてくれたし、個の戦力の高さもあって、巷をうろつく賊の類を殲滅するのには大いに役に立ってはいる。

 後は天の遣いの下へと渡る事さえなくなれば、華琳の目指す道は大きく開かれる。

 

 だから華琳は三人を其々、手綱が握れそうな配下の下に配置させれば身勝手には動けない筈………なんて考えた結果、三人の中では間違いなく身勝手に動き回りそうだし、何より自分に対して平気な顔してアレコレ言ってきたりする一誠を直の配下にしてやったのだけど……。

 

 

「神牙に警備隊のひとつを任せて正解だったわね。

彼等の担当する地域の治安はかなりよくなったもの」

 

「俺はムカつくけどな」

 

「あら、どうして?」

 

「アイツ、その警備隊に配属してる結構可愛い女の子にやらかしまくってるから。

ちくしょう、綺麗なお姉さんとそんな一時を送りてぇってのに、気付けばただのチビ娘のお守りなんて……」

 

「確実な手を考えた結果、アナタは私が直接面倒を見ないと、勝手な真似をされると判断したまでよ。

というか、未だに文句を言っているなんて、器が知れるわよ?」

 

「自分の器のしょうもなさなんぞ、とっくに自覚しとるわ。

あーぁ、ヴァーリもそこそこ楽しそうだしよー……あー……早く帰りてぇ」

 

「…………」

 

 

 一誠は華琳が色々とハズレなせいか、それはもう、毎日なように華琳に直接文句ばっかりだ。

 口を開けば、年上の女性が良いとうるさいし、華琳に対してまな板娘と、斬首ものな無礼な言葉しか言わないし、目を離すと華琳が治めてる領土に住む胸が大きい妙齢の女性に鼻の下を伸ばしながら、口説こうとするし……。

 

 主に曹洪辺りに教育を任せてあるヴァーリや、一個小隊を組織させた神牙は紛いなりも大人しくしているというのに、この男だけはどこまでも自分勝手で無礼だった。

 そんな一誠に激怒した春蘭達辺りが、一度一誠の性根を叩き直してやろうとしたこともあったが、今のところその成果はまったくない。

 

 

「あら、こんな所にお店があるわ。

何のお店かしら?」

 

「知らね、中に入りゃ良いじゃん」

 

 

 一度戦闘となれば腑抜けた顔も少しはまともなものへとなるし、神牙やヴァーリ相手に訓練する時は互いに笑いながら殴りあってる程度には強いのに、まったくもって華琳に対する忠誠度が無さすぎた。

 

 

「ふむ、結構良い物がありそうね……」

 

「んだよ、単なる服屋かよ……。

ほら、わかったんなら早く行こーぜ? お店の人が萎縮してんじゃん」

 

 

 一応、こうして治めてる町の様子を見に行く際は付いては来るし、言えば嫌々ながら聞いてはくれる。

 そんな一誠の立場を春蘭といった華琳に絶対なる心酔をしている者達はほぼ嫉妬で羨んでるけど、本人からしてみたら、是非とも替わって欲しいと思うだけである。

 

 

「これなんてどうかしら?」

 

「わー、似合ってる似合ってるー(棒)」

「…………」

 

 

 そんなこんなで、只今華琳は御忍び状態でどう見ても現代のコスプレにも通じそうなデザインの衣服を取り揃えてある店に入り、せっかくだからアレコレと手に取っては、既に褒める気零の一誠に訊ねる。

 

 そのあんまりな態度に、華琳もムッとなりながらムキになって繰り返していくのだけど……。

 

 

「おほっ!? おー……似合ってる似合ってるー……うへへ」

 

「え……?」

 

 

 何故あるのかは誰も知らないけど、それは駒王学園の女子制服にかなり酷似した衣装を手に取って訊ねた時だった。

 それまでは冷めた目の棒読み加減だった一誠の声色が変わったのだ。

 

 これにはむきになっていた華琳もちょっと驚いたのだけど、ここでそんな反応をしたら一誠に嘗められると思い、あくまでも華琳らしく『嫌味混じり』に何か言ってやろう―――と、思って一誠を見てみると……。

 

 

「良いな、あのお姉さん。

いくつかな? ナイスなスタイルしてるし……でへへへ」

 

 

 一誠は華琳なんて途中から一切見ていなく、店の外の通りを横切る民を眺めていた。

 そして、ちょうど妙齢の――それこそ一誠が好みそうな外見の女性が通るのを心底だらしない顔で眺めていたのだ。

 つまり、今の声は華琳にではなく、偶々そこを通り掛かった単なる民に向けられたものだったのだ。

 

 

「…………」

 

「うーん、顔は覚えたぞ。

後で探してナンパして……上手くいったらその日の内に――へっへっへっ!」

 

 

 一誠の好みの女については、うんざりするくらい華琳も知っていたので、今更感はある。

 何せ三人を配下に加えてから四季が一周程回っているのだから。

 

 なので華琳も今更このしょうもない事に腹を立てはしない。

 しないが、今だけは無性に腹が立ったので、華琳はあらぬ方向を向いてデレデレしている一誠の向こう脛を思い切り蹴ってやった。

 

 

「いでぇ!? な、なにすんだよ!?」

 

「そのブ男にブ男が合わさったような顔に腹がっただけよ? それが?」

 

 

 まさに弁慶の泣き所を蹴られて涙目になってる一誠に、華琳はツンとした態度で一蹴した。

 そんな華琳の態度を受けた一誠は、既に店主がハラハラとした表情になっているのもなんのその…………ここで戦いのゴングがどこからともなく鳴らすと……。

 

 

「うるっせー! チビ! まな板!」

 

 

 そのまま華琳と店の中で取っ組み合いの喧嘩を開始した。

 

 

「品位に欠ける顔をするなと常々言ってるのに、全く直そうとしないアナタが悪いんでしょう!?」

 

「品位なんぞ知るか! つーかオメーの指図なんぞ受けるかァ!!」

 

 

 店の物を破壊しながら、取っ組み合い、互いの頬をつねり合う様は子供の喧嘩そのものであり、華琳もいつの間にか最近はこんな子供じみた喧嘩を一誠を相手にのみするようになっていた。

 

 

「や、やめてください! み、店が壊れますから!」

 

 

 店主もこの喧嘩には止めようと必死だが、ヒートアップしている二人には聞こえていない。

 御忍びで来店してきた領主がこんな子供っぽいことをするとはと思う暇すらもない。

 

 その結果、騒ぎを聞き付けた神牙の隊の者に取り押さえられて二人仲良く連行された挙げ句、華琳は配下の者達にお説教までされてしまうという。

 

 

「私は謝らないし、悪くないわ」

 

「ええ、華琳様は悪くありません。

一誠、だからさっさと華琳様に謝れ」

 

「嫌だ」

 

 

 互いに頬が真っ赤な状態で連行された二人は、屋敷に居た華琳の側近達の殆どに呆れられていた。

 その中でも華琳に心酔する者は、今にも一誠を斬り殺さん形相で睨んでいるのだけど、どっちも悪い気がすると判断する、春蘭の妹辺りの者達は、取り敢えず一誠が嘘でも華琳に謝れば収まると思って言うのだが、反省の色の欠片も見当たらない様子の一誠に頭が痛い。

 

 

「いくらお前の好みじゃない女だったにせよ、ここまでむきになった事なんて無かったじゃないか?」

 

「知らんよそんなの」

 

「………。ダメだ。すまん秋蘭、一誠も完全に拗ねてしまってるから謝らせるのは難しいぞ」

 

「みたいだな。

これまで何度か華琳様直属から外そうという話は挙がっていたのだが、華琳様自身がこのままで良いと言ってきたからなぁ……」

 

 

 フンとそっぽ向いてしまった一誠の態度に、一応宥めようとしていたヴァーリも匙を投げたように、春蘭の妹で秋蘭と呼ばれた女性――つまり夏侯淵もやれやれと、威嚇する犬みたいに唸って一誠を睨んでる姉や荀彧といった、華琳信者を宥めるのに苦労もしそうだとため息だ。

 

 

「やはりコイツだけは斬首すべきだ! 華琳様に傷を負わせるなど、殺してでも足りん! そうですよね華琳様!?」

 

「そうよ! こんな変態男、死んだ方が世の為よ! どうか許可を華琳様!」

 

 

 頬を水で冷やした手拭いで冷やしてる華琳はそっぽ向いてしまってる一誠を見つめながら、春蘭や荀彧の言葉を聞き流している。

 確かにここまでされて斬り殺しても文句なんて無いのだけど、華琳にはその気は無かった。

 

 

「構わないわ――って言うつもりは無いけど、死罪にするつもりは無いわ」

 

「な、何故です!?」

 

「もう何度も華琳様に無礼を働いているのですよ!?」

 

「そうかもしれないけど、今もしこの場で一誠に死罪を命じたら、一誠が大人しく首を差し出すと思う? 確実に私たちに牙を剥くわ。

そして牙を剥いたら神牙とヴァーリは間違いなく一誠に付く。

そうなったら誰が止められるの?」

「「………」」

 

 

 ある意味で正しい言葉に春蘭と荀彧は、一誠が以前一人でとある賊の大軍を手から放った赤く輝く妖術で消し飛ばしたのを見ていた為、言葉につまった。

 

 そう、ふざけてはいるが、一度『敵』と認識した相手には冷酷なまでに容赦が無い。

 それはつまり、敵と認識はしていないからこそ、華琳と取っ組み合っても華琳を殺すことはせず、頬をつねったりする程度に留めているに他ならないのだ。

 

 

「一誠達を御しきれなければ、私が目指す場所へは到達できないし、私という器はその程度で止まってしまう。

一誠も、ヴァーリも神牙も今は確かに私に対して忠誠なんて誓ってもいないし、私の事は所詮本物の天の遣いと会うまで利用しているだけとしてか見ていないでしょう」

 

「……………」

 

「…………」

 

「……」

 

 

 華琳の言葉に、三馬鹿達は特に何も言わない。

 それは肯定を意味するからなのか――それは三人にしかまだわからない。

 

 

「だったら私がこの三人が認めるだけの器になれば良い。

三人の言葉を借りるのなら、今の私から更に先の私へ進化してみせる……。それを諦めて逃げる事だけはしたくないのよ」

 

『…………』

 

 

 パラレルワールドとはいえ、神牙に匹敵する覇気を纏いながら宣言する華琳に誰も言葉を放つことは出来ない。

 

 それは宣言であり、覚悟であり……決意なのだから。

 

 そして華琳はそっぽを向いている一誠に強い眼差しを向け――

 

 

「だから、まな板って言ったことについては謝りなさいよ」

 

 

 実は言われ過ぎてそこそこコンプレックスになってしまった箇所に言及したことを謝れと一誠に言った。

 

 その瞬間、神牙やヴァーリを含め、華琳の話を聞いていた者達はガクンと足の力が抜ける気分にさせられた。

 

 

「そもそも、まな板なんて言われる程無い訳じゃないし? ねぇ、春蘭と桂花はわかるでしょう?」

 

「え!? ………あ、も、勿論です! そうだぞ一誠! 華琳様は大変お美しいのだ! だからそんなまな板なんぞではないぞ!?」

 

「アンタみたいな下劣な男には華琳様の美しさはわからないでしょうね」

 

 

 春蘭と真名を桂花と呼ぶ荀彧を味方につける華琳。

 華琳自体はあまり自覚をしていないのだけど、一誠とこんなやり取りを繰り返している内に、少しずつながら子供じみてきている。

 

 

(取り敢えずここだけは謝っといてくれよ?)

 

(そうすれば今回の事は上手く収まる筈だからな)

 

「……ハァ」

 

 

 だから、まな板娘と呼ぶのだけは嫌だし、取り敢えず謝らせたくて仕方ない訳で、一誠は一誠で秋蘭やヴァーリ達に『ここは嘘でも謝れ』と耳打ちされたので、仕方なく華琳の方へ近づき……。

 

 

「わかったよ……」

 

 

 渋々とした顔のまま華琳と向かい合い、背丈の関係でちょっとだけ屈んで華琳と目を合わせる。

 

 

「………」

 

 

 そして嫌そうな表情からちょっと真剣な表情となって華琳を見つめた一誠は、軽く驚いてる彼女を他所に――

 

 

「ごめん、まな板娘は言い過ぎたから、今度からはド貧乳金髪娘と呼ぶよ……………ケケケッ!」

 

 

 まな板娘より更にストレートにディスってるとしか思えない言葉を、謝罪ついでにぶちまけてしまった。

 その真剣な表情が嘘みたいに、ニタニタと小バカにした顔で。

 

 

「………………」

 

 

 その瞬間、華琳の黄金の右ストレートが一誠の顔面に突き刺さった。

 

 

「あら嫌だわ。

しょうもない顔をした男が目の前に居たからついやってしまったわ……」

 

 

 その見事過ぎる右ストレートは、下手をしたらボクサーでチャンピオンも狙えそうなくらいの鋭い威力であり、軽く仰け反った一誠は――

 

 

「ラウンド……ツ~――ファァァイッ!!」

 

 

 そのまままたしても華琳に飛び掛かるのだった。

 

 

「ド貧乳とはなによっ!? 少なくとも桂花よりはあるわ!!」

 

「どっちもどっちだろうが!! 貧乳に貧乳と言って何が悪い! オメーだって散々ブサイク呼ばわりする癖によォ!!」

 

「言われて欲しくないのなら、まずはアナタなその言動を改めないよ!!」

 

「オメーが先に直せ!!」

 

『……………………』

 

 

 まるで低次元過ぎる喧嘩に、誰もが流石に呆れて止める気にもなれなかった。

 

 

「う、うーむ……止めるべきなんだよな?」

 

「び、微妙に迷ってしまうわ……」

 

 

 春蘭と桂花ですら微妙に困っている中、互いが互いをボロクソに言い合いながらの取っ組み合いは止まらなかった。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 筋肉モリモリ・マッチョマンの変態に飛ばされてからそこそこ長いこと掛かった。

 だけどやっと三馬鹿は天の御使いと呼ばれた青年と邂逅することに成功した。

 

 ご主人様と周囲の美女や美少女達に呼ばれてる青年を、一誠が地味に羨ましがったりもしたけど、とにかくこの青年に手助けとやらをすれば元の時代へと帰れる筈………。

 

 しかしそうは問屋は下ろさなかった。

 

 何せこの世界は一応群雄割拠な時代な為、そもそもその天の御使いの青年の仲間達から三馬鹿達は警戒されてまともに近づけず、神牙の隊のスパイでもそう簡単には近づけなかった。

 

 だから遠回しに彼等の助けになるように立ち回ろうとするけど、そうすると結果的に得を一番するのが華琳達だったので、寧ろ自動的に敵対関係となってしまう。

 

 結果、三馬鹿達は間違いなく天の遣いとその仲間達――つまり、蜀の面々達から敵扱いをされるのであった。

 

 

「彼等の障害になりそうな連中をこっそり排除した筈が、気付けば懐かない野良犬みたいに警戒されてしまったぞ……」

 

「彼等の兵にスパイとして潜り込ませた部下が言うには、俺達は化け物呼ばわりされているらしい」

 

「まあ……その解釈は当たりではあるな」

 

 

 手助けどころか完全に敵対意思を持たれて軽く凹む三馬鹿。

 

 なのでこうなったら、自力で力を完全に取り戻して無理矢理この世界から抜け出すという方向に舵を切る事になったのだけど、この世界の修正力がそうさせているのか、三馬鹿の力は戻らないし、逆に天の遣いの青年はこの世界に愛されてるのかと思うくらい事が上手く運んでいる。

 

 そして遂に、完全敵対をすることになってしまったまま赤壁の合戦を迎える事になってしまう。

 

 

「……。今更私が言う資格なんてないけど、本当に良いの? もしこの戦いで私たちに付いたら、もう元の世界には帰れないかもしれないのよ?」

 

「マジで今更言ってんじゃねーよ」

 

「………ごめんなさい。

私がアナタ達を――一誠を手離したくは無いなんて思ったばかりに……」

 

「謝んなよ。

お前に謝られると、背中が痒くなる」

 

 

 二度と元の時代には戻れないかもしれない。

 その現実を知っても尚、三馬鹿は覚悟する。

 

 

「史実がどうだったとか、俺達の未来でこの戦いの結果がどうだったとか……もうどうでも良い。

お前みたいな負けず嫌いが、負けてしょぼくれる姿なんぞ俺が見たくない――だからお前と戦う事にしたんだよ。

それでもし帰れなくなったとしても……俺達はもう覚悟はしてる。

だから気にするな……お前はお前らしく何時も通りで居ろ――それがお前だろう? 華琳」

 

 

 ただ帰る為に利用するだけの関係と言うには、深く繋がり過ぎてしまった者達の為に……。

 

 

「聞こえてんだろう連合共ォ!! 俺は曹孟徳の……えーっと、あー……ま、まぁ何でも良いけど、アイツの友達みたいなもんだ!!

だから、アンタ等を今から全員ぶちのめす!!

そして俺が勝ったら、お色気たっぷりなお姉さん系の女性とお茶する権利を頂くぜ―――イダダダダ!?!? か、華琳コラお前!? 背中をつねんじゃねーよ!?」

 

「ここまで来て他の女に鼻の下を伸ばすのだけは許さないわよ私は?」

 

「か、軽いお茶目だってくらいわかってくれよ……」

 

 

 

 でもやっぱりどこか締まらず。

 

 

「さぁて、久しぶりの必殺技だ……!

喰らいやがれ、ビッグバン―――

 

 

 

 

 

―――――ドラゴン波ァァァッーーーー!!!!」

 

 

 曹操としてではなく、ただの華琳の為にその力を解放するのだ。

 

 

 そして……。

 

 

 

「…………」

 

「………。何か言いなさいよ?」

 

「……。正直、なにも覚えてない」

 

「……。でしょうね、間違えてお酒飲んだアナタはかなり泥酔していたし」

 

「……。それでその、俺はお前にどこまでしでかしたんだ? 互いの今の姿からして――アレだけど」

 

「ではアナタの想像通りよ。つまり、最後まで」

 

「………………………。ほ、本当に?」

 

「本当よ。

私の感想はとしては、一誠ってやっぱり結構優しいのね?」

 

「あ、あぁそうなんだ………………ご、ごめん」

 

「ふふっ、初めて素直に謝ったわね? けど許さないわよ? この私と床を共にしておきながら、この先無関係でいられるとは思わないことね?」

 

 

 大事故が発生し……。

 

 

「て、てか普通に拒めよ? 春蘭とか桂花達と宜しくしてんのに……」

 

「だって仕方ないじゃない……。

唐突だったしお酒のせいだったとはいえ、アナタにああも求められたら断れる訳が無いわ」

 

「え、えぇ? そ、そんな感じだったのかよ俺……?」

 

「ええ……それと、胸の大きさがどうとか常々煩いくらい言ってたから、何度か確認したわよ? そうしたら一誠は『もう関係無い。胸の大きさがどうよりもお前だから良い』……なんて言って――」

 

「は、恥ずかしいんだけど!? 本当かよ!?」

 

「ここまで来て嘘なんて言わないわよ。

それに、その言葉に偽りなんて感じないくらい、あの時の一誠は凄く優しかったし……。逆に私が聞きたいくらいよ……どうしてくれるのよ―――ばか」

 

「…………」

 

 

 別の意味でこの日からちょっとギクシャクするようになったとかならないとか。

 

 

「まな板娘呼ばわりしてたけど、そのまな板と表した私の胸をずーっと一誠は赤子みたいに――」

 

「や、やめろって! 本当に恥ずかしいから!」

 

 

 この日もきっと平和だった。

 

 

 

嘘ですし、終わり




補足

とにかく帰りたい思いが多分一番強い。

だけど嘘みたいに上手くいかないから、華琳様といっつも痴話喧嘩ばっかする。


その2
まあ、嘘なんで嘘のまんまなんですが、結局三馬鹿は身内認識をしたら一気にその者達の為に全力状態になるし、例えそれが間違えであったとしても関係ねぇとなる。

つまり――三馬鹿出撃状態となったらもうヤバイ。


その3

これも嘘だけど……まー……遅かれ早かれこうなりそうじゃない? ……ならない?

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