色々なIF集   作:超人類DX

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今現在だったらなの適当な未来IF

多分余計徹底さが増して鉄壁化しちゃったね


※適当な最新未来IF

 一度繋がれば、それは呪いの様に切れる事は無くなる。

 

 昔、そう言われた事があったと俺は――いや、俺達は思い出した。

 

 死ぬまで……いや、死んでも切れる事の無い繋がりというのは、逆を返せば誰であろうと壊す事のできない最強の結束力なのだ。

 その繋がりを教えてくれたのが、俺と幼馴染みを鍛えてくれた兄と姉代わりだった二人。

 

 何があろうと、どんな事があろうと、裏切らないし裏切られる事の無い繋がりがあったからこそ、俺は今を生きることが出来る。

 

 それは何時までも変わらない。

 どこに居ようと、何が起こっても……。

 

 俺達は最高のチームなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 肉親よりも共に過ごした時間が長かった二人の故郷ともいえる世界に、何の因果か生誕するという形で再臨する事となった少年達。

 

 元の世界においては只のお伽噺でしかない生物達が跳梁跋扈しているというのは、既に話にだけは聞いていたのと、実際二人の内の一人が生粋の悪魔であった為に驚く気はなかったし、実際に自分達もとある手段で悪魔となっても、特に変わった感も無い。

 

 そもそも少年達にとって必要なのは、自分達に知らない世界を教えてくれた二人とこれからも共に在るという一点のみでしかないのだ。

 それ以外については最初からどうだって良いのだから。

 

 だからこそ、二度も同じ過ちは繰り返さないと、徹底的になった。

 少年の人生がある意味変わることになった原因である転生者なる存在はまさに『殺られる前に殺れ』の精神で潰しまくったし、かつて自分達にとっては姉代わりとも言える悪魔の女性を裏切った者達が記憶を持った状態で、面の皮が厚いも甚だしく現れた時も徹底的に潰した――――特に少年の幼馴染みの少女と、その少女がそういう性格になった理由となるであろう赤き龍を宿す青年によって。

 

 だから今の少年達にちょっかいを掛けてくる者は居ない。

 しかし気は決して緩めない。

 これからも共に在る為に……。

 

 

 つまり、織斑一夏と篠ノ之箒の二人は、自分達に世界を教えてくれたリアス・グレモリーと兵藤一誠の二人の素養を半分ずつ受け継いでいるといえる者達なのだ。

 

 そして織斑一夏は、かつて転生者によって本来辿る筈であった道筋から外れる事で、元の世界において女性とは特に立つこともなく幼馴染みの箒と仲良くやっていたのだが、生きる世界が変わった事で転生者による補正妨害が消えた影響なのか、はたまた素だからなのか……。

 

 一誠が妙に癖のある女性から、本人はリアス一筋なのに『好意』を持たれちゃった様に、一夏はこの世界でリアスの兵士の一人としてそこそこの活躍をしていく内に、好意を抱かれたりしていた。

 もっとも、一夏もまた幼馴染みの箒にしかそういう事は抱かない性質なので、全くもって喜ばしくなんてない話なのだけど。

 

 

「ふー、こんな所か……」

 

 

 一誠とリアスが生まれた世界……とは少しだけ違う世界で再び織斑一夏として生きる事になって約16年。

 わざわざ自分達を探しに来てくれた一誠やリアスと当たり前のように共に生きる為に、リアスの眷属になってからは10年経った。

 

 その間、一夏達は様々な厄介事に遭遇した。

 

 もう二度と見たくも会いたくもない転生者が現れては、この世界に存在しない筈の自分達を見て一々騒ぐから、一誠が忠告零でこの世から消し飛ばしたり。

 

 かつてリアスを裏切り、自分達のように過去の記憶を持つ元の眷属達が、正気に戻ったからと宣ってリアスにまた仲間に戻せと喧しすぎたので、マジギレする一誠よりもマジギレした箒や自分達で徹底的に叩きのめしてやったり。

 

 よりにもよってリアスにちょっかいを出してきた、貴族の三男に対して、一誠がやっぱり全力のドラゴン波で消し飛ばそうとするので、それを宥めつつレーティングゲームで一夏一人が全タテして黙らせてやったり。

 

 まあ、他にも色々とあるわけだけど、とにもかくにもかつて一誠とリアスが自分達の為に色々としてくれたその恩を返す為に、この世界では一夏達がよく行動していた。

 

 お陰で一夏達はリアスの一応故郷となる冥界ではちょっとした有名人になってしまい、しょっちゅう冥界のテレビ出演なんかを依頼される。

 

 無論、全部断るし、正直云ってしまえば冥界に蔓延る悪魔達に誉められても全く嬉しくも無い。

 何せリアスにとって冥界は故郷とは呼びたくはない場所なのだから。

 

 だからこうして人間界に住み着いて学生なんかをやっていて、なるべく冥界との繋がりを薄くしているし、一夏達は元々人間なので、やはり冥界よりは人間界の方が居心地も良い。

 

 そんな理由で一夏達はかつてリアスが卒業することが出来なかった人間界の高校である駒王学園の一年生として、IS学園とは違ってごく普通の学生生活をのんびり送っている。

 

 

「一夏、そろそろ時間だぞ」

 

 

 誰に何かをされるでもない普通の学生生活は一夏にとって、決して退屈なんて思わない素敵な事である。

 普通に通い、普通に授業を受け、放課後になったら友人達と遊ぶ。

 

 なんやかんやでIS学園では出来なかった事が出来るというのは一夏にとって良いことでしかないし、そこに苦楽を共にした親友達も居るのだから、文句なんてある筈もないのだ。

 

 

「おう」

 

 

 今も昔も変わらずの幼馴染みである箒に声をかけられ、一夏は半分まで教室で終わらせた宿題をする手を止め、教科書等を鞄にしまう。

 ()()程前から少子化の影響で共学化した駒王学園は、どういう訳か未だに全体的な男子の数がかなり少ない。

 

 そのせい……という訳では無いのだろうが、元々顔立ちがハンサムである一夏は入学当初からクラスの女子達から黄色い視線を寄越される事が少なくは無く、何度か下駄箱にラブレターなんかを仕込まれた経験もある。

 

 もっとも、本人にしてみればありがた迷惑でしかなく、やはり箒といった苦楽を共にしてきた者達が一番なのだ。

 

 

「そういえば、隣のクラスと三年生の人から一夏に渡してくれと言われたぞ、ほれ」

 

「……………………またか」

 

 

 箒と共に教室を後にした一夏は、ある場所へと向かう為に廊下を歩いていると、徐に箒が便箋に入った二通の手紙を一夏に渡してきた。

 それを受け取った一夏は、露骨に嫌そうな表情だった。

 

 

「本来だったらもとの世界でもこんな調子だったんだろうな? ふふ、モテモテじゃあないか?」

 

「やめてくれよ。

というか、嫉妬とかしてくれないのかよ?」

 

「一夏にその気が無いって知ってるから特には無いな? ははは、ちょっと傲慢な考えかもしれないけど」

 

「ちぇ……ちょっとくらいそういう感じで来てくれても俺は全然良いのになぁ」

 

 

 本来ならば恐らくはこの手の話になるだけで感情を爆発させているだろう箒は、実に柔らかい笑みを浮かべているだけで、決して一夏に手を出そうとはしない。

 

 というか、これまで箒は一度たりとも一夏に暴力を振るった事すら無い。

 逆に一夏へ悪意を向ける輩に対する容赦の無さ度が、徹底的に鍛え上げてくれた兄と呼ぶ一誠に似てしまってる程度にすさまじいが。

 

 

「えーっと……あー、はいはい……」

 

「どんな内容なんだ?」

 

「どっちも同じ様な事だな。

付き合ってください――みたいな」

 

「ほーぅ? やはりモテモテだな一夏?」

 

「勘弁してくれよ……」

 

 

 ニヤニヤしながら一夏の背中を軽く叩いてくる箒に、一夏は『こんなん書かれても断り一択でしかないんだけど』とうんざりしながら適当に手紙を鞄に押し込む。

 

 

「あれ、どうしたの一夏? 箒が面白そうに笑ってるけど?」

 

「何か面白い事でもあったー?」

 

 

 そんな二人の後ろから、金髪の紫眼の少女と袖が余った制服を着たタレ目ぎみの少女がやって来て話し掛けてくる。

 

 名を布仏本音とシャルロット。

 

 二人もまた一夏と箒の二人と世界を生きた者であり、一誠とリアスの領域に立つ者である。

 

 

「ふふ、一夏がまたラブレターを貰ってな?」

 

「え、また? 凄いね、これで何度目だっけ?」

 

「モテモテだー!」

 

「いやマジで勘弁してってば? 俺がどういう性格なのかなんて皆知ってるだろ? 正味困るだけだぜこういうのは」

 

 

 シャルロットと本音にまで茶化され、肩を落とす一夏達は、一緒に廊下を歩く。

 

 

「まるで前の時の一誠さんみたいだね?」

 

「イチ兄の場合はちょっと特殊だったろ……」

 

「まぁ確かに。

今は周りが封殺しちゃってるのと、リアスお姉ちゃん一筋を貫きっぱなしなのと、怖いイメージが付いちゃってたから、あんまりそういう事は無いけど」

 

「リアス姉さんの方が認めてるせいで、余計困ってるからな、一誠兄さんは……」

 

 

 一夏達にとっては先輩に当たる者達の果てしなき攻防について語りながら廊下を進んでいる内に目的地へと到着する。

 

 そこは駒王学園の生徒会室であり、ドアを開けるとそこには空色の髪をした二人の女子と本音とよく似た髪をした眼鏡をかけた女子生徒が居る。

 

 

「ん、全員集まったわね」

 

 

 一夏達が入室すると、窓際を背にしている席に座っている空色の跳ねっ毛の女子生徒が微笑む。

 そんな女子生徒に軽く挨拶を済ませた一夏達は、それぞれ用意されている席に座る。

 

 そう、一夏達は駒王学園の生徒会なのだ。

 

 

「さてと……集まった所で正直やることなんて特に無かったりするのよね」

 

「先代生徒会が放置していた件も先日なんとか終わらせられましたしね」

 

「だったら家に帰った方が良いと思う。

じゃないと一誠先輩の貞操が真耶先輩に奪われるし」

 

「余程の事がなければ、一誠さんがすることもされることも無いわよ……。

どこまでもリアス先生なんだから……」

 

 

 腕に会長と記された腕章を身に付けている空色の跳ねっ毛女子の名は更識刀奈。

 同じ色ながら大人しめの雰囲気を醸し出しておきながら、言ってることがどこか肉食めいている女子が刀奈の妹で一夏達と同学年の更識簪。

 そしてそんな二人のやり取りを軽く笑みを浮かべて見ているのが、本音の姉である布仏虚。

 

 以上が駒王学園の現生徒会。

 

 

「はぐれ悪魔も最近出ないし、つい最近侵入してきた神器狙いの堕天使を蹴散らしのが最後かしら?」

 

「いえ、二名の悪魔祓いが面会を申し込んできたのがあります」

 

「あ、そうだったわ。

………まあ、例によって先生のストーカーしてる悪魔達のお仲間だったから、追い返したのよね」

 

「イチ兄があの時傍に居たら、バラバラ死体に早変わりしてたと思うと、追い返して正解でしたよ」

 

「そうでなくても箒と簪がキレて危なかったし……」

 

「そういうシャルーも、元ちゃん先輩の件で怒ってたじゃん?」

 

 

 徹底的に『敵』となる者への対処をした結果、異様な程裏側の治安が良くなってしまった功労者。

 

 

「そういえば匙君は連れてこなかったの? 彼だけはストーカーさん達のパシりにされていただけだったから、引き続き学校に通えるようにってした筈だけど……」

 

 

 生徒会長・更識刀奈

 

 

「『自分が情けなさ過ぎて合わす顔も無い』って僕達に言ってました。

僕達はそんなの気にしなくても良いって言ったのですけど……」

 

 

 書記・シャルロット

 

 

「アレでしょ? 先生のストーカー達に散々裏切り者だなんだって罵倒までされてたよね? 聞くに絶えなかったら一人ずつぶっとばしちゃったけど」

 

 

 書記2・更識簪

 

 

「あの時程かんちゃんの判断に拍手を送った事はなかったねー」

 

 

 会計1・布仏本音

 

 

「そうね。

今更戻りたいなんて……私達が許しません」

 

 

 会計2・布仏虚

 

 

「ていうか、イチ兄が追加攻撃で全員の歯をへし折っちまったしな」

 

 

 庶務・織斑一夏

 

 

「それに匙先輩を脅してリアス姉を盗撮させていたからな……」

 

 

 副会長・篠ノ之箒

 

 

 先代生徒会があまりにも何もせず、リアスのストーカーしかせず、あげくの果てに『自分達からリアスを奪った』と一夏達に喚き散らした事で、再選挙の末に就任した現生徒会。

 

 それが彼女達の今であり――

 

 

「今頃連中って何してんだ? 箒とイチ兄が徹底的に……周りがドン引きする程のワンサイドゲームで潰したけど」

 

 

 織斑一夏・リアス眷属 『兵士』

 

 

「さぁ? 別世界の自分とは思えないくらいクソ不味かったって白音ちゃんは言ってた程度だし、一応シャクシャクもしたから何もできないんじゃないの?」

 

 

 更識簪・リアス眷属 『兵士』

 

 

「二度と近づくなってあのゲームでの勝利の際誓わせましたし、聞くところによると実家から外に出られずに監視されている様ですよ」

 

 

 布仏虚・リアス眷属 『僧侶』

 

 

「リアス先生に毎日ぎゅってして貰ってるって自慢したら本気で殺しに来た程度には執着してたからね。

そのまま出てこなければ良いよねー?」

 

 

 布仏本音・リアス眷属 『僧侶』

 

 

「ああ、もっと徹底的にすればよかったと一誠兄さんと後悔すらしている程だ」

 

 

 篠ノ之箒・リアス眷属 『騎士』

 

 

「後は元士郎君の事をなんとかしてあげられれば良いんだけど……」

 

 

 シャルロット・リアス眷属 『騎士』

 

 

「その件については先生とも話し合ったわ。

余っている兵士の駒を相手方とのトレードを成立させて匙君をこちら側で保護するってね。

大丈夫よ、シャルちゃんのお気に入りの子だって皆知ってるしね♪」

 

 

 更識刀奈…………リアス眷属 『女王』

 

 

「お、お気に入りとかじゃなくて、何だか放っておけないんですよ。

境遇もあまり恵まれている訳じゃ無かったみたいですから……」

 

「ふーん、わざわざ匙君の家にまで行ってご飯までつくってあげてるのに?」

 

「そ、それはその……」

 

「その元士郎先輩は、シャルに世話になりっぱなしな自分が情けないって落ち込んでましたけどね」

 

 

 リアスの眷属である。

 

 

 これに先んじて卒業して現在自宅に居る『王』のリアス。

 一緒に家事や悪魔稼業の在宅ワークをしている『戦車』の山田真耶。

 

 ………そして、どこまでもリアス一筋を未だ貫きっぱなしの『戦車』の兵藤一誠を含めれば、冥界最上位のチームが完成する。

 

 

「とにかく任せなさい。

連中が今まで匙君に強制させていた事を盾にすれば、トレードも成立させられるわ」

 

「そうで無くても、横に殺る気満々に指をバキバキ鳴らしてるイチ兄が居たら頷く他ねーだろ。

相当イチ兄と箒がトラウマになっちまってるみたいだから」

 

「ある貴族さん達曰く『逆に笑ってしまうくらい一方的だった』って程度には暴れちゃったもんねぇ……?」

 

 

 誰であろうと邪魔をすることを許さぬ最強のチーム。

 それが今の一夏達なのだ。

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 オマケ・要らないモテ期突入。

 

 

 きっと恐らく、かつて一誠がそうだったように、一夏はこの世界で生きる様になってから、妙にモテ始めていた。

 

 一般人だったり、最近では冥界の悪魔達のファンまで出来たり。

 そうなった理由は、とある貴族の三男がよりにもよって――それこそ本当に何を考えてたのか、ゲームに勝ったらリアスと婚約させてくれと宣って行われたレーティングゲームが起点だろう。

 

 最初はどうも過去にも同じような理由でリアスを追い回してた男だったらしく、一誠がゲームを待たずしてその三男どころか一族全員を皆殺しにしようとするのを全員で必死に止め、真耶と刀奈と簪とリアスが殺意丸出しの一誠を囲んで胸でサンドして止めてる間に、一夏が速攻で相手眷属を全タテしたのだ。

 

 そのあまりの早さと当時の年齢にそぐわぬ強さ。

 何より扱う魔力の――使い方によっては純血悪魔よりも強力な性質の魔力の質が多くの悪魔達の目に止まった事で、一夏の名前は冥界悪魔達の間に広まり、ついには同兵士の簪と並んで二大最強兵士だなんて呼ばれる様になった。

 

 ――もっとも、簪の方は超危険生物というもう一つの渾名もあるが。

 

 そんな理由でハンサムな出で立ちもあってか、一夏は冥界の女性悪魔にしょっちゅう逆ナンされる様になった。

 

 無論、一誠とリアスを見て育ってきた箒大好き少年の一夏は当たり前に断った。

 が、そんな断りをしまくっても全く聞いちゃい無いタイプが中には居る訳で……。

 

 

「それでさー、リアス姉がイチ兄の顔に胸を押し付けながら抱き着いて止まった瞬間、刀奈先輩や真耶先輩や簪が一斉に飛び付いてそのまま押し倒してよー。

偶々見ちゃってた俺も、これはお邪魔だわと、何度も俺の名前を叫ぶイチ兄に手を合わせながら撤退したって訳」

 

「リアス姉さんだけだったら一誠兄さんも何の文句も無かったのだろうな。

それにしても、三人も強くなったものだ……」

 

 

 同学年のシャルロットと簪と本音とはクラスが別だが、箒とは同じクラスである一夏は、席替えで隣同士となってる席で今朝見てしまった光景を箒にも教えてあげながら談笑していると、そんな二人の席にツカツカと一人の生徒がやって来る。

 

 

「い・ち・か…………さーん!!!」

 

 

 そして箒を見ていて気づいていない一夏を机をひっくり返す勢いで飛び付く。

 

 

「ぐべっ!?」

 

 

 凄まじい衝撃と物が散らかる爆音に他の生徒達はびっくりしてひっくり返った机のある場所を見るが、何が起こったのかを全員が察したのだろう……『ああ、何時もの事か』と十秒後には何事もなかったかの様に普段の休み時間に戻った。

 

 

「い、いててて……な、なにすんだよ!?」

 

 

 かなりの衝撃でひっくり返った一夏は、自分の身体を圧迫する元凶に、チカチカと星が舞ってる視界のまま睨むと、金髪で碧眼という――正直言うとあんまり一夏的には良いイメージが無い外見をして美少女が、退く気も無く一夏に密着したまま、声を出す。

 

 

「何って……ずっと箒さんとばかりお喋りしてたので、こうして私の存在をアピールしないとと思いまして」

 

「アピールの方法が過激過ぎるんだよ!? もっと普通に話しかけてくれないかな!?」

 

 

 せっせと箒が倒れた一夏の机や、散らばった持ち物を片付けてる横で、退く気の無い金髪碧眼少女を無理矢理退かしながら立ち上がる一夏も片付ける。

 

 

「ごめん箒、後は俺がやるから……」

 

「別に良いよ。

それよりちゃんと構ってやれ」

 

「いや、今十分構ったし……」

 

「あ、私も手伝いますわ」

 

 

 そして三人して片付けるという、何だかシュールにも見えてくる光景が数分続いた後、漸く片付いた一夏は椅子に座り直して、こちらをじーっと見てくる少女にため息を吐く。

 

 

「あのさ……キミの意図については流石に何度もされてきたから解るけど、出来れば他を当たって欲しいんだよね?」

 

 

 この金髪少女は悪魔だ。

 しかも純血。加えて以前全タテした貴族の三男の妹で、当時その三男の僧侶として戦った相手だ。

 

 そんな彼女がなぜ人間界の学校に通っているのかについては、言ってしまえばあの全タテ以降、彼女が一夏に燃えてるからというだけの話である。

 

 早い話が、惚れたらしい。

 

 

「見ての通り、俺って箒が大好きなんだ……知ってると思うけど。

それと転生悪魔だから純血でもなんでもないんだ……知ってると思うけど」

 

「はあ」

 

「だからさ、非常に困るっていうか……」

 

「そうですか。わかりましたわ……」

 

「! そ、そうか……! いやいや、何だか悪い――」

 

「ではデートに行きましょう?」

 

「―――――――わかってねーじゃん!?」

 

 

 ハッキリ断ってるし、何なら迷惑とまで言っている。

 それにも関わらずこの少女は全く聞いてないというか、箒をライバル視してアプローチをやめないというガチっぷりだった。

 

 それはもう、かつて一誠が刀奈にそうされていたみたいに。

 

 

「一夏さんが箒さんしか見てないのなんてとっくに存じてますわよ?」

 

「だ、だったら何で……?」

 

「だって仕方ありませんわ。そんなアナタにこの心を盗まれたのですから」

 

 

 しかも、人目だらけの教室であろうがなんだろうが、平気な顔して惚れた腫れたと言ってくる。

 この辺りは、実は初心な刀奈と違うのだけど、決して諦める気がないのが同じ過ぎた。

 

 

「今はちっぽけですが、早く箒さんに追い付いてみせます。

そして絶対にアナタを振り向かせてみせますわ!」

 

「ふふ、そういう考え方は私は嫌いじゃないぞ?」

 

「ほ、箒ィ……!」

 

 

 しかも困った事に、この考え方と行動力は一応恋敵にされてる箒的には好印象だったらしく、怒るどころか一夏にここまで好意を持ってくれるのかと、寧ろ嬉しそうだった。

 

 それこそ、リアスが刀奈達に抱いてるそれみたいに。

 

 

「手紙だなんだでお前に好意を伝えるのは居るが、こんなに直接――それも断られても尚諦めないのはこのレイヴェルくらいだろう? 私は寧ろ嬉しいよ。一夏に好意を向けてくれてるってな」

 

「そ、そんな言われてもよ……」

 

「手紙!? また例のラブレターとやらでしょうか!? 今回はどこからですか!?」

 

「えっと、学園の生徒から四通と、向こうからは五通くらいだな」

 

「ふん! 直接伝えられない輩には負けませんわよ! というより、その手紙はこちらで処理しておきますわ!」

 

「お、おう……」

 

 

 箒が呼んだ、レイヴェルという名の少女に出せと言われて一夏は、今回送られてきた手紙を全部出すと、レイヴェルは全部回収する。

 恐らく後で誰も見てない所で燃やす気なのが見てとれる。

 

 

「まったく、向こうの者達は一夏さんが有名になった途端にミーハーみたいに……」

 

「キミも同じようなもんじゃ……」

 

「失礼なっ! 私はアナタに完敗したその瞬間でしたわ!」

 

「あ、あっそう……」

 

「あの当時はまだリアス姉さんと一誠兄さんと真耶先輩が学生だったからな。

となると、三年程前だから――うん、確かに名が広まる前だな」

 

 

 本来の時空軸と年齢や出来事がズレたりしているせいで、実の所、出会いに関してはこのレイヴェルとは三年程前になる。

 当時まだ中学生になる前だった年齢で成熟した貴族悪魔の三男やら眷属達を全タテし、同い年だったレイヴェルはそんな一夏に負けてからというもの、手紙やら何やらなんて回りくどい真似はせず、全部直接やって来ては火の鳥一族らしく熱く愛の告白をしてきた。

 

 いくら素っ気なく断っても、一切ブレることなく。

 

 

「リアスお姉様にストーカーという下品な真似をしていたシトリーの次女を完膚なきまでに赤龍帝様と共に叩き潰した時はますます惚れ直しましたわ」

 

「いや……アレはほぼイチ兄と箒がやった訳で俺は別に……」

 

「謙遜することはありません。

という訳で惚れ直した証です」

 

 

 その真っ直ぐさにちょっと圧され気味の一夏が困った様に目を逸らしたその瞬間、レイヴェルがまるで前菜感覚でささっと一夏にキスをしたのだ。

 教室で……しかも普通に唇に。

 

 

「ばっ!? な、なにしてんの!?」

 

 

 一瞬気を抜いた瞬間を狙われて、完全にやってしまった一夏は、可愛らしく頬を染めながら離れたレイヴェルにギョッとしつつ、彼女のファンだと思われる同じクラスの男子数人から血涙でも流さんばかりの形相による視線を感じて、余計居たたまれない。

 

 そして箒は………何故か満足そうにうなずいていた。

 

 

「何って、キスですけど? 好きな男性なのですから当たり前でしょう?」

 

「だから俺は箒を……!」

 

「言われなくても承知してますわ。

何度も言ってるでしょう? 例えアナタが箒さんしか見ていなくても、私は絶対に諦めませんと……」

 

「………」

 

「はっはっはっ! 良いぞレイヴェル、お前の考え方は私は好きだ!」

 

 

 修羅場になるどころか、箒の方が逆にレイヴェルを気に入ってるせいで、ほのぼのな空気が二人の間に展開されている。

 

 ただひとり、一夏だけはかつての一誠の苦労が分かって頭を抱えていたが。

 

 

オマケ1 終了

 

 

 

 

オマケ・パシりだった匙元士郎

 

 

 

 匙元士郎の人生は決して良いものではなかった。

 

 両親には死なれ、残された弟や妹を養う為に身体を張り。

 保護をする条件と惚れたという理由でその悪魔の眷属になったら、待っていたのはパシりと、その悪魔や眷属達がある悪魔に対するストーカーで、そのストーカーの片棒まで担がされていたという現実。

 

 百年どころか、一生の恋なんて一瞬で消し飛ばされてしまった元士郎は、情けなさと運の無さに心をへし折りかけていた。

 

 そんな時だった。

 そのストーカー相手の悪魔の眷属達と出会ったのは。

 

 自分達の所とは違って楽しそうな眷属達。

 年上の戦車の青年が、王であるリアスと相思相愛である事にちょっとした羨ましさを感じたりもしたけど、自分には縁の無い話だと、パシりをさせられていた元士郎の運命が変わったのは、自分よりも学生的には後輩となるリアス眷属の者達と出会いだろう。

 

 当初はパシりとしてリアスを隠れて盗撮させられていたのもあったので、彼等と関わる訳にはいかないと距離を取ろうとした。

 けれど後輩達はそんな自分を――多分パシりに使われている事を不憫に思ったのか、仲間に入れてくれたり、色々としてくれた。

 

 特にシャルロットという聞けばフランス人の後輩は、自分が食べるものがスーパーのタイムセールで買った賞味期限ギリギリの半額弁当ばかりだと知ってからは、しょっちゅうご飯を作ってくれたり、何なら家にまで来て弟や妹にまで料理を振る舞ってくれた。

 

 盗撮の片棒を担いでる元士郎は、その時点でそれに抗えない自分への情けなさと、相手に対する罪悪感でますます塞ぎこむ様になっていくのだけど、そんな時でも後輩は元士郎を元気付けてくれた。

 

 今にして思えば、リアスの盗撮をさせられている事を見抜いていたのだろう。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……! ほ、本当に強いな……!」

 

「だ、大丈夫元士郎くん? 少し休む?」

 

「ま、まだ大丈夫だ。続けてくれ……!」

 

 

 結局、何から何まで世話になりっぱなしだった元士郎は、リアス達がストーカー達を直接叩き潰した事でパシりから解放された。

 そして今度はトレードのシステムを使って自分をリアスの眷属にする様に手まで回してくれている。

 

 どうしてそこまで自分なんかの為にしてくれるのか、元士郎にはわからなかった。

 放ってはおけなかった……そう後輩のシャルロットは言っていたけど、だからこそ元士郎は今のままでは駄目なんだと思い、後輩に修行に付き合ってもらった。

 

 その修行でも後輩達との差は大きく、特に同じクラスの女王である更識刀奈と腕試しをした時は触れる事もできずに負けた。

 

 だから元士郎は強くなることを目指す。

 

 お荷物にならない為に。

 なにより、オロオロと自分を心配するお節介な後輩にこれ以上情けない所は見せたくないから。

 

 

「ぜ、絶対に倒れない……! これ以上ダサい姿を見せてたまるかァ!!!」

 

 

 背に両刃の剣を背負い、両手に修行用のゴム弾を放つ拳銃を持つシャルロットに自身の持てる力を捻り出しながら飛びかかる。

 

 

「元士郎君……うん、わかったよ」

 

 

 その意思の強さに、シャルロットもまた応えなければならないと元士郎の振り下ろした拳を避けると、素早く眉間に銃口を突き付け………。

 

 

大当たり(jackpot)

 

 

 母国語ではなく英語で呟き、元士郎の額にゴム弾を直撃させて吹き飛ばし、元士郎は力尽きるのだった。

 

 

「ぅ……」

 

 

 結局気を失ってしまった元士郎が意識を取り戻した時、まず視界に映ったのは……心配そうに自分を見ているシャルロットの顔だった。

 

 

「あ、だ、大丈夫だった? このままだと風邪ひいちゃうと思って……」

 

「……………」

 

 

 どうやら意識を失ってた自分をどこからか持ってきたのだろう薄い毛布でくるんでくれたらしい。

 それは良いのだが、何故かシャルロットも一緒になって同じ毛布にくるまってるせいで、意味不明な程に密着度が凄い――――と、元士郎が気づくまで三十秒はかかった。

 

 

「いて……! ちょ、ちょっと待て……! こ、これは何のつもりだ?」

 

「えっと、リアスお姉ちゃんとイッセーお兄ちゃんが、よくやってるのを参考にしたんだけど……。ほら、ここ寒いし……」

 

 

 と言いながらテンパってる元士郎の背中に腕を回して身体で暖めようとしてくるシャルロットに、元士郎は声が完全に上ずった。

 

 

「そ、それはアレだろ!? 親密度が高い場合のみ許されるやつだろ!? て、てかお前女なんだから、野郎にしちゃ駄目だろ!?」

 

「え……あ、そ、そっか。

でも元士郎君とは知らない仲じゃないし……」

 

(ひょえっ!? な、なんか柔っこいのが! 柔っこいのがっ!!?)

 

 

 匙元士郎は運に恵まれていない。

 

 ただ、今の状況に関してはそうでもないのかもしれない。

 

 離れる気配もないどころか、心配そうに抱き締めてくるシャルロットに別の意味で理性が変になりそうなのを必死こいで我慢しながら、元士郎は悶々とするのであった。

 

 

 

終わり




補足

一誠とリアスの年齢が本来とズレてます。

裏切りマンキーコング連合のリーダーのシトリーさんが今現在の虚さんと同い年で高校三年。
そしてやまやんが今年卒業した18歳一誠がその一個先輩の19、リーアたんはさらに一個上の20って感じです。

なっちゃんは現在二年生で元ちゃんと同じクラス。

一夏くん達が一年生です。


裏切りマンキーコング連合の年齢は時系列と同じです。


その2
現在裏切りマンキーコング連合は退学処分+実家に閉じ込められてる模様。

理由は―――お察し


その3
火の鳥の三男さんは、一夏に負けただけで無事です。

ただし、一夏に火の鳥性質を完コピされた挙げ句、夕凪パワーで…………。

その妹が一夏に懐いたのが複雑でしかたないらしい。


その4
火の鳥の娘さんは突撃ストロングスタイルなもんだから誰が見てようが関係なくアタックするし、隙あらばチューまで噛ませるメンタルの強さよ。

しかも諦める気もゼロ


その5
デュノアの姓は名乗らないシャルさんは、元ちゃんを見てると放ってはおけないらしく、めっちゃあれこれお世話してます。

お陰で、異性同士としての境界線がおかしくなってる。

……まあ、それもこれも一誠とリアスのせいなんだけどね。


そして戦闘スタイルが、何故か某ダンテさん

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