一誠とリアスが知らない世界を生きた者。
その世界には転生者と呼べる者は居なかった。
いや、どれ程に強力な力を神によって与えられて転生した所で、瞬く間に殺されてしまう程の世紀末な世界へと変貌してしまった為、ひょっとしたら居たのかもしれない。
そんな世紀末の世界における一誠は、リアスに対する愛情は皆無だった。
あるのは殺意と憎悪。
己の持つ力を利用してきた赦せぬ存在――それが別世界の一誠がリアスに抱いていた嫌悪の感情。
それ故にその一誠は人以外の存在を嫌悪していた。
人以外の生物は全て死滅すれば良いと至極真面目に言い放ち、実際に彼はリアスを死んだ方がマシだったと思われる程度に徹底的に痛め付け、ただ呼吸するだけの、物も言えぬものへとした。
無論、リアスのみならず、そのリアスの眷属である者達も一誠はその手に掛けた。
その中には白音と呼ばれた少女が居た。
完全に力を取り戻した一誠によって一度は手足を破壊され、顔も破壊され、生きているのが奇跡ともいえるものへと変えられてしまった少女は、そのまま一誠を利用し続けた仲間達と同じ運命を辿る筈であった。
だが白音にはリアスや仲間達には無かった感情を一誠に対して持っていた。
その感情はとても歪で、とてもおぞましい――されどある意味では真っ直ぐでもある感情。
そんな感情が彼女を突き動かした時、彼女は一誠の進む領域への扉を開く事ができた。
そして白音は周囲の悪魔達を全て
孤独であった無限の龍神を傍に、何度も一誠の元へと……。
けれど白音の想いは最後まで一誠に受け入れられる事はなかった。
彼が受け入れるのは悪魔祓いの少女二人。
どれだけ強くなろうとも、どれだけ一誠の邪魔となるだろう連中を喰い殺そうとも一誠は決して受け入れてくれはしなかった。
いや、寧ろ力を増していく毎に一誠は白音を殺そうとした。
『テメーの存在そのものが鬱陶しいんだよ……!』
事実一誠は白音にそう言うだけの事を悪魔の眷属に無理矢理させられた時期にやられていた。
だから決して一誠はどけだけ白音が自分達の領域に近づこうとも赦さなかったし、何度も殺し続けた。
でも白音はそれでも死ぬことは無かった。
覚醒したスキルが白音に異質な成長を促し続け、不死身の生命体へと進化させたのも理由のひとつだったけど、何より白音自身の感情があまりにも一誠に対して強すぎたのだ。
その殺意や嫌悪を以てした暴力すらをも愛情に変換する破綻さ。
自分を殺そうとするその瞬間だけは悪魔祓いの二人を忘れて自分だけを見てくれる。
誤魔化しでもなんでもない、白音自身のその感情は永遠に尽きる事はなく、何度も敗北させられていく内にその力も増大する。
それが繰り返されていく内に、白音の力は遂に星という概念をも超越した。
全てを喰らい、無限に成長し続ける異常。
更には補佐としてしか使わなかった力を、別世界で六道仙人だなんて呼ばれていた老人と邂逅してしまった事で更なる領域へと昇華させた仙術と瞳術。
最早誰も白音を殺すことはできない。
一誠ですら殺すことも不可能な程への危険生物となってしまった白音はそれでも一誠を求め続けた。
いつの日かその身が朽ち果て……意識だけの存在となっても。
いつの日か一誠が完全に消えてしまって絶望しても…。
意識だけが世界を渡り……とある少女にとりついてからも。
その少女が白音目線的にゲスにも満たないくだらない男に熱を上げてしまって別の意味で絶望しても……。
白音の想いは変わらない。
そして白音は取り付いた少女の中から見つけた。
『俺はな、アンタ等のくだらない罪悪感だか自己憐憫に付き合ってやる暇なんぞ無いんだ。
そんなものは俺とは無関係な所でテメー等で処理しろ。一々俺にすり寄るんじゃねぇ』
愛しの青年を。
その瞬間、すがる者を失って精神的に不安定となっていた少女が意識を失ったタイミングで少女の細胞として生きていた白音はその意識を覚醒させた。
リアスを愛していて、そこにブレがまるで無いという点においては全くもって違和感を感じたが、他は殆ど同じだった。
その力も……美味しそうなそれも。
だから白音は意識を失ったオーフィスに声がそっくりな少女の夢の中という形で色々と教える事にした。
その結果、白音という存在が自身の中に宿っていると自覚した少女はまだまだ未熟ながら白音の力の使い方を学習し始めた。
後はどうやって彼に敵ではない―――というか、マイナスに振りきれてる好感度をプラスに変えるかだ。
それにはかつて自分自身がやった真似をさせる訳にはいかない。
そもそも、白音が悪魔祓いの二人を殺めた事が決定的になってしまったのだから、決して同じ徹は踏まない。
どうやら、少女が一時期熱をあげていた――白音にしてみればカスにも劣る男を嫌っているようだから、手始めに目の前でぶちのめしてやれば良い。
まあ、それでも好感度は未だマイナスだし、リアスに優しくしている所を見るとモヤモヤして仕方ない。
どうやらあのリアスは二人の元の世界における自分自身や眷属達に裏切られて深いトラウマを残している様で、白音の知る方のリアスとは色々と違うみたいなので、下手な真似は絶対にしないようにしようと思う。
「自然のエネルギーと身体に宿るエネルギーを上手く混合させるって言うけど、そんな簡単にはいかないんだけど……。
あ、でもオーフィスってドラゴンみたいに変な蛇なら出せるようになったよ?」
『私という存在を自覚した事で、オーフィスの因子が活性化してる証拠だよ。
だからこそ仙術を扱える素養がアナタにはある。
ハッキリ言えば今のアナタはどうしようもなく弱いから、何としてでも仙術をマスターしてもらうよ』
「険しい道だなぁ……」
弱ければ話にもならない。
本当なら細胞もろとも簪の肉体を乗っ取れば話は早いのだが、白音はなんだかんだと簪の事を気に入っていた。
なんというか、一誠からの拒否られっぷりがあまりにも似ていてシンパシーを感じるのだ。
「こんな感じ……? む、頭とお尻に違和感が―――って、これは耳と尻尾?」
『所謂第一形態だよ。
私の細胞と一体化してるから、私の元の種族の素養もあるんだと思う』
「……あ! す、凄い! 仙術モードになると胸が大きくなるんだね!」
『……。リアス部長には劣るけどね』
一誠はリアスしか見ていないが、実の所――多分だからこそなんだろうが、そんな彼に好意を持つ者が居る。
白音の見るところ、宿主の簪の姉である刀奈や、教師の真耶なんかがそう。
(攻撃性はあっちの先輩よりは少ないけど、それでも部長を裏切った一人と見られてるみたいだからなぁ。
まったく、余計な真似をしてくれるよ――カスな私は)
「本音くらい……? いや、もしかしたら本音より……くふふふ♪」
とにかく簪を成長させなければお話にもならない。
白音は簪の細胞に宿る意識として慎重に事を進める決意を固めるのであった。
さて、そんなこんなで織斑春人の顔面を更に破壊した簪は、内に宿る白音からのレッスンによって成長をしていくわけだが、未だ姉との関係はそのままである。
もっとも、先に吹っ切れた刀奈と同じように、ある意味で簪も吹っ切れたので、あまりギクシャクしたものではないのだが。
「で、キミの中にはその白音ってのが居るってのか?」
「…………………」
「おい、聞いてるのか?」
「……………ハッ!? あ、い、いや……は、ハイ! その通り……です」
それに平行して、一誠達との関係は結構複雑なものへとなった。
何せただの更識簪ならば刀奈の妹ってだけで済んだのだが、その中身には神器のように白音――リアスがかつて小猫と名付けた元戦車の意識が存在しているともなると、無視はできないのだ。
『あぅぅ……先輩の声だ。
しかも私の名前まで……ハァ……ぁん……♪』
(ちょ、ちょっと白音ちゃん! あんまりそっちに行かないでってば! 気持ちはわかるけど、今ここでアレしちゃったらドン引きものだって!)
『わかってるけど、やっぱり無理だもん……』
(うぅ……お陰で私だってお腹が熱くてしょうがないってのにぃ……)
だから嫌ではあるものの、簪を用務員室まで連れてきた一誠は、複雑な表情をしているリアスや、困った表情の刀奈達と共に簪から詳しい話を聞こうしているのだが、一誠の質問の度に簪が一々こんな反応をするものだから、中々話が進まないのだ。
実際は簪の細胞に宿る白音の意識が一気に発情期モードに突入してしまったせいで、宿主である簪にもダイレクトに伝染してしまっているという……多分本人が聞いたらドン引きどころじゃない事になってるだけだったりするのだけど。
「…………。先日、アリーナの中でオルコットと凰とボーデヴィッヒが倒れていたのだが、直前にお前を呼び出していたという目撃情報がある。
三人に何かしたのか?」
「え? ああ、例のアレに関して謝れだなんだって五月蝿かったので、しゃくしゃくして黙らせただけですけど?」
「しゃくしゃく……?」
逆に一誠以外が質問すると、普通に受け答え出来るみたいで、どさくさ紛れに用務員室に居た千冬の質問に対して全く悪びれもなく答えている。
「ISで武装して脅しつけてきたので、まあ、怪我なんてしたくもないし、反撃くらいはしようかなって感じで……」
「なっ、そんな事をあの三人はしたのか!? いや、だからなのか? あの三人のISのコアのデータが完全に初期化されていた。
お前が何かをしたからか?」
「まあ、そうなりますね」
少なくとも武装したIS乗り三人を生身で黙らせられる程度になっている様だ。
しれっとした顔の簪にそういった事に関するものを持たない千冬は心底信じられないといった顔をしているのだが、一誠やリアス達は、その白音の存在を語りはじめてからの簪の異様な成長速度に警戒心すら抱く。
「生身でIS搭乗者を無力化するなど……」
「世の中探せば可能な人間くらい五人や六人は居るでしょうよ」
「しかし更識がそんな……」
「取り敢えず今はそうなんだと飲み込んでください――――というか、アンタは何でここに居るんだよ?」
「え……だ、ダメなのか?」
「ダメもなにも、誰もアンタに此処に来てくれなんて頼んでねーよ」
「で、でもあの転生者って者には近付きたくないし……」
「だからなんだよ? それでここに紛れ込む理由にはならねーだろうが」
「………………………ぅ」
「ま、まあまあ……。
そんな仲間はずれみたいにしないであげてくださいよ?」
「今にも泣きそうじゃないの……」
その千冬に対して一誠はかなり冷たい対応をしているが、リアスと真耶に宥められたので渋々引き下がり、何故か内股をモジモジさせてる簪を見据える。
「私のこれまでってなんだったんだろう……?」
「えっと、饅頭食べます?」
「一応お茶もありますよ」
「すいませんが、私は一誠兄さんと同じ考えなので、あまり言えることはありません」
「すまないな一夏とデュノア……。ああ、私もわかってるさ篠ノ之……。
それにしてもあれから束は何もしてこないが……」
「あの程度で引き下がる玉ではないのは、アナタの方が知っているでしょう? アナタを連れ去るとかなんとか言ってましたので、一応はものの次いでで護衛する形にはしておきますよ」
「……………。なにから何まですまない」
そんな千冬に一夏とシャルロットが微妙ながら構い、箒は一誠と同じくらい頑固だった。
「今更正気に戻っても、アナタ達が一夏に向けた事についてが帳消しになる訳ではありません。
私はこんな性格ですからね……アナタ達が過去に一夏にしてきた事を許す気にはなれません」
「…………。わかっている」
「……。まあ、昔の話を蒸し返してネチネチ言うのも嫌ですし、あの姉がまた何かしてくる事に関しては共通して警戒しなかければならないですから」
「そ、そうだな……!」
箒のその言葉に、それまで味を感じなかった一夏とシャルロットに貰ったお茶とお饅頭を美味いと感じる様になった千冬は、ちょっと嬉しそうに顔を綻ばせた。
「アレの肉体が半分ほど使い物にならなくなった今、スペア扱いされてきた一夏に色々と押し付けられる可能性と、どこぞの団体に狙われる可能性もあります。
……まあ、一夏自身、そんな連中に遅れを取る柔な鍛え方はしてませんが、警戒はすべきかと」
「ああ、白式の所有権を一夏に変える話も持ち上がっているくらいだからな」
「えーっ!? 俺そんなの貰っても使わないんだけど。
それに専用機持ちって色々とルールとか守らないといけないんでしょう? ……めんどくさいっすよ」
「ま、まあ、授業とか試合とかになれば使わないといけないな」
「なんだよ……。
アイツが色々とやってたから『精々頑張ってくださいな』なお気楽気分だったのに。
ったく、余計な欲で突っ走って自爆なんてしやがって……ホント何から何まで傍迷惑だぜ」
心底めんどくさそうにお茶を飲んでる一夏に、千冬は『ああ、今までそんな感じで私達を認識してたのか』と、完全に情を振り切ってフラットな状態の言動に複雑な表情だ。
「嫌だよ箒~! 俺めんどくさいよー」
「めんどくさくなったら私に引っ付くのは違うと思うんだが……。別に良いけど」
「ははは、そんな俺のめんどくささを受け止めてくれる箒が大好きだぜ」
「ああ、昔から知ってるよ……よしよし」
「あーらら」
「……………。私って馬鹿だったんだな……」
そして甘える相手が箒である事も千冬的には自業自得だったとはいえやはり複雑だった。
もっとも、千冬は知らないだろうが、リアスが一誠に甘え出すのと全く同じで、完全に影響されてしまっている訳だが。
「つまりその……アナタの中に宿る白音さんが言うには、私達とはまた別の世界を生きたって事?」
「そう白音ちゃんは言ってます。
なんでも、白音ちゃんが知る一誠先輩は、リアス部長を嫌悪してグチャグチャに叩き潰したし、非人間族を嫌悪してたから、先輩が部長をこんなに大切にしているのにビックリだって……」
「…………」
「……。何と無くそっちの私が何をやらかしたのかが想像できてしまうのが嫌ね」
「でも先輩からの嫌われ方はほぼ同じだとも言ってました。
あと、そっちの私みたいなボンクラではないとだけ言っておいて欲しいって……。
絶対に裏切らないし、何なら先輩の邪魔になる輩は全員しゃくしゃくするとも……」
「ず、随分と過激なのね……」
「余計なお世話だ」
場面は戻り、白音を宿している簪がここぞとばかりに一誠に対して敵じゃないですよと売り込んでいる。
色々と話を聞いていく内に、どうも自分達とは別の世界を生きた白音はかなり一誠に対して執着心を持っているのだけはわかった。
向けられてる本人はかなり嫌そうな顔をしているのだけど。
「えーっと、じゃあ簪自身はイッセーさんには何も?」
「うーん、まだわからないかな。
あ、でも声を聞いたら身体が熱くなったり、今みたいに嫌がられてる顔をされるとゾクゾクしたりはするかな……?」
「かんちゃん、それじゃあただの変態さんだよー……」
まさに本音の言う通りなのだけど、簪にショックを受けた様子はない。
「…………」
「ど、どうしましょうイッセーさん?」
「流石にわからん。
単純に厄介なのが増えたとしかな……」
お金を貯めたら田舎に行ってリアスや多分ついてくるんであろう一夏と箒なんかと悠々自適な生活を夢見てただけが、どんどん面倒で厄介な状況に陥っている事に深くため息を吐く一誠なのだった。
終わり
オマケ
その後の最新版
紆余曲折あって元の世界に近い世界に戻った一誠とリアス。
本来の時代より少し年齢のズレなんかもあったけど、一夏達も居たので、さっさと眷属という繋がりを持つ事で、本来眷属だった者達との縁は皆無となった。
「兵士・更識簪」
ヤバイ猫を宿したヤバイ少女も居たけど。ある意味強すぎる味方にはなった。
………発情すると所構わず一誠に襲いかかる以外はだけど。
そんな変わらない繋がりのまま今度こそはと徹底的な先制によって転生者を蹴散らし続けたり、ランキング上位の者をレーティングゲームで兵士のみで全タテしたりとしている内に二人しか居ないリアスの男性眷属の内の一人である一夏は微妙にモテてしまっていた。
「げ、また手紙が……」
「今度はどこからだ?」
「多分どこぞの純血のお嬢さんじゃないか? ……何で俺が?」
「まあ、イッセー兄さんは相変わらずあんなんで、他なんて目もくれない上に刀奈先輩や真耶先輩……それから簪が目を光らせてるからな。
それとは逆に一夏はフリーだと思われてるんだろう」
「うっそだろ? あんな分かりやすく箒とイチャイチャやってるのに? イチャイチャ度が足りないのか?」
「さぁ、それはわからないけど……」
送られてきた手紙を読まずに困った顔をする一夏。
有名になっていくにつれてこんな事ばかりが多くなっていくものだから、一夏としても勘弁して欲しいのだ。
こうなる前は、まだ有名じゃなかった時期にぶちのめした火の鳥一族の娘に迫られてしまったあげく、箒を勝手にライバル視するし。
しかも困った事に人間界で通ってる学校にまで転校してくるし……。
「あ、一夏さん! ………っと、箒さん。
私に内緒で二人で何をしてらっしゃるのですか?」
「いや別に……」
「一夏へのラブレターが冥界から来てな……」
「なんですって!? また有名になった途端騒ぎ立ててるミーハーからですか!? そんなものは燃やしてしまいなさい! いえ、私が今燃やしましたわ!」
「お、おう、ナイス炎……」
金髪で碧眼の少女がぷんすか怒りながら、自身の力で生成した炎で一夏に送られた手紙を燃やすと、満足したかの様ににっこりしながら一夏の腕に密着する。
「さ、こんなミーハー共からの手紙なんて放っておいて、私とデートしましょう?」
「いや、これから箒と修行に……」
「むっ! なら修行で構いませんわ! 今日こそ箒さんに勝ちますから!」
「お手柔らかにな……あははは」
リアスみたいに微妙に箒の方がこの少女の在り方を気に入ってしまっているせいか、微妙にほのぼのとしてる。
ここに来て少しだけリアスの気持ちが箒にはわかってきたらしい。
もっとも、リアスをかつて見捨てた連中達に対しては一誠共々容赦の欠片もなく、その証拠に一度だけ眼鏡をかけた悪魔を筆頭にしたリアスに対してストーカーとしか思えない真似をしていた裏切りおにぎり連合とゲームとなった際は、一誠と並んで大暴れしまくったのだから。
『この怒りが、更に私を強くしていく。
リアス姉さんに対する掌返しをしている貴様達に向ける怒りの強さがいかほどのものなのか――――その身に刻み込め!!』
『俺はイッセーでもドライグでも無い。俺は、テメー等をぶちのめす者だ……!』
歴史的なまでの一方的な蹂躙劇というのはまさにあの時の光景だったと皆が口を揃える程マジになった二人によって裏切りおにぎり連合は捻り潰された。
『神滅――
『ビッグバン――
――ドラゴン波ァァッー!!!!』』
その後彼女達は一切の接触すら許されず、冥界にて後悔しながら生きている様だが、一夏的にはどうでも良いし、寧ろ箒と一誠に賛同している。
「あの、歩きづらいから離れてくれないか?」
「嫌です!」
「嫌ですってそんな……」
「まあ、良いんじゃないか? 害にはなってないんだし……」
「そうは言ってもさ……」
そんな事よりも、何を思ったのかリアスをモノにしようという自殺願望甚だしい事をのたまってゲームを仕掛けてきた火の鳥一族の三男とのゲームの時に、一夏が全タテしたせいで一夏の名もまた冥界には広まっている。
その全タテの際に今めっちゃひっついて来てる少女とも戦ったのだけど、そりゃもう呆気なく伸した筈で、そんな事を思われる謂れは全く無かった筈だった。
なのに何故かめっちゃグイグイ来る。
曰く、差がありすぎて逆に燃えた――とか何とか。
「むっ、箒さんは何時もながら余裕そうですわね……」
「余裕というか、純血とか関係なくそうやって一夏に好意を向けてくれるのが私も嬉しいんだよ」
「私の心を盗んでいった方がこの方だった……それだけの事でしょう?」
「うんうん、やっぱり気が合う」
「………いや、俺はどうなるのさ?」
一誠を見てると苦労の予感しかないだけに、ご遠慮願いたいというのに、一番喧嘩しそうな箒が寧ろ少女を受け入れてるせいで、複雑な気分でしかない。
こうなってくるとやはり……。
「俺、これからどうなるんだろ……?」
「大丈夫だよ元士郎君! リアスお姉ちゃんが言ってたけど、元士郎君を空いてる駒でトレードを成立させるように動いてるって言ってたし」
「色々とやって貰いっぱなしか俺は……はは、情けねぇ」
「そんな事気にしなくて良いよ。
ほら、元気出して……ね?」
「キミの方が後輩なのに……ますます情けない」
落ち込んでる先輩を励ましてる後輩という関係が一番健全に見えて仕方ないと一夏は、シャルロットに手を引かれて歩いてる裏切りおにぎり連合のパシりをさせられていた兵士の少年を見つめてため息を洩らすのであった。
「あ、そういえばウチの母から近々一夏さんと話がしたいと……」
「はぁっ!? な、何だよそれ!?」
「もう少し人となりを知りたいとか……。
あ、ご安心ください、一応箒さんと言う女性が居る上で惚れていると話は通してますので……」
「それ逆問題だらけじゃんか!? お、俺ぶっ殺されるんじゃないのか……?」
「多分大丈夫だろ。
昔刀奈先輩のご両親の元へと挨拶に行くことになったイッセー兄さんみたいに……」
「そ、それはそれで問題じゃないか……。
ど、どうするんだよ? 本当に仮に反対しませんなんて言われたら……」
「少なくともミーハー達からのお手紙は止まるでしょう。
私が大々的に広めますからね……ふふふ♪」
「そ、そんなアホな……。
い、イチ兄はこんな修羅場を潜ったのかよ……」
織斑一夏
零落白夜と夕凪燈夜の能力に近い性質の魔力。
備考・現在冥界最強と噂される二大兵士の片割れ。
以前一瞬で叩きのめした火の鳥一族の娘さんに懐かれてしまい、現在一誠と同じ様な体験をさせられて困り中。
篠ノ之箒
持つことを拒否した筈の紅椿の能力に近い性質の魔力
備考・鬼畜赤龍帝に色々と似ていると思われてる最強騎士。
火の鳥一族の娘さんは、自分や一誠に近いレベルでブレないので、結構気に入ってる。
更識簪
六道・白音モード。
ウロボロス・ドラゴンモード。
完成体白音モード(白音そのものに変身)
融合・簪モード(白音の意識そのものと融合)
備考
何食わぬ顔で加わってきた冥界最強二大兵士の片割れにて超危険生物。
一誠が近くに居たら基本良い子(?)。
姉の刀奈や真耶やリアスと一緒になって一誠に色々やっては逃げられる。
ちょっと変化した未来IF
終了
補足
そこそこ慎重になってるせいで、微妙ながら対処に困る。
そして変わらずちーちゃんは塩対応されて軽く泣きそうになる。
その2
未来IFの設定もここで変わる。
厄介さ的な意味でだけど。
ちなみに、火の鳥さんとのゲームは、一誠くんが本当は全タテという名の絶滅タイムをやろうとしたので、ヤバイと思って一夏くんが一人で頑張りました。
………火の鳥さんの三男はある意味で救われたって訳です。
お陰で火の鳥さんの所の娘さんの件で一夏くん的には大変らしいけど。
ちなみに、ここに来て変なモテ期というか、本来の気質が甦ったというべきか、微妙に癖のある方々にはモテるらしい。
一誠? ……うん、彼は変わらずのリアスさん馬鹿のまんまなのと、周辺が鬼過ぎてモテるもへったくれも無いです。