色々なIF集   作:超人類DX

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続き。
ガードが固すぎる問題


平和な校外学習

 あの人の意識は常に過去に向いている。

 

 兵藤一誠が兵藤一誠であれた頃の過去。

 

 常に全力で居られた過去。

 肩を並べて先の先へと進む仲間と共だった過去。

 

 世界という概念そのものに反逆する為に駆け上がり続けられた過去。

 

 ………心底惚れた悪魔と過ごした、決して楽では無かったけど楽しかった過去。

 

 

 未来を生きる為に反逆をした代償に、その過去を失い、生き残ってしまったあの人は今でもずっと過去だけを見ている。

 

 今である私達に生きる術を教えてくれていても、あの人の意識は常にリアス・グレモリー達に向けられている。

 

 英雄(ヒーロー)である事を否定するあの人は、確かに一般的な感覚だと狂人(アクニン)なのかもしれない。

 

 他を殺して成り上がるしか能が無いと自嘲していた通りなのかもしれない。

 けれどそんな狂人が居たから今の私達が在る。

 

 永遠に忘れることはしない過去を夢見て、今である私達とは本当の意味では向かい合ってくれないし、肩を並べて歩んではくれないとしても……。

 

 だからこそ私達は、言葉にした事なんて無いけど決めている不文律がある。

 

 

『この先何が起ころうが、生きてはいける程度の術は教えてやる。

だが、これだけは覚えておけ。………絶対に俺の様にはなるな』

 

 

 あの人は決して自分の真似だけはするなって言った。

 事実、普通の人のように自然と老いて死ぬことすら出来なくなる程の自己進化をしてしまったあの人は、死にたいと思っても死ねない今を――過去へ還れない今を『地獄』と思っているから、私達にそう言ったのだと思う。

 でも、それでも―――いや、だからこそ私達は見えない程の先を歩き続けるあの人に追い付きたいと思った。

 例えあの人がそれを望んでないとしても。

 

 何時も寂しそうに遠くを見ているあの人を見続けて来たのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 信じられない程に何事も無いままな学生生活の日々が過ぎ去り、あっという間に夏が到来してしまった。

 

 ある筈だった騒動も無く、ただただ平和なまま訪れたのは臨海学校であった。

 転生者にとってはただの臨海学校では無く、ISの開発者が襲来したり、軍用ISの暴走鎮圧といった騒動を知識で知っているのだけど、これまでの事があったせいでそれが本当に訪れるのか疑問だった。

 

 いや、ISの開発者である篠ノ之束が妹の箒の誕生日プレゼントと表して専用機となる紅椿を渡しに来る確率は高いだろうとは踏んでいる。

 

 問題は、箒があまりにも理性的で一夏を巡って他の女子達と小競り合いをしているといった様子が無くて、寧ろ普通に仲良くやっているという、暴力さがまるで無いし、専用機を持たない自分に対する劣等感に苛まれてる様子も無くて、姉を頼っているとは思えない所だが。

 

 今だって一夏や鈴音やラウラ……それからいつの間にか普通に輪に加わっていたセシリアといった者達とトランプで遊んでいるし。

 

 一体どうしてこうまで差異が発生してしまっているのか……転生者である男にはわからないまま、臨海学校の舞台へと到着するのであった。

 

 

 一日目となる海遊びは特に何事も無かった。

 女子に話しかけられたり、小さい頃からの仲である本音や、最近親しくなったシャルロット等と普通に遊んだ。

 一夏の方も、本当に仲良さげに親しい者達と過ごしていて、喧嘩するという事も無い。

 本来ならこの時期になると周りと違って専用機を持たない箒が自らの無力感で様子を変える筈なのに、やはりそれも無い。

 本当に篠ノ之束が来るのかすら分からなくなる程、彼等の仲は安定していたのだ。

 

 

 とはいえ、考えた所でどうにかなる訳では無いので、男は思考を切り替える事にして、今現在の課題である更識簪についてあれこれ動く事にした。

 

 もっとも、その更識簪を本音達と探しても見つからなかったのだが……。

 

 

 

 

 

 『有給を消化してください』

 

 

 なんて真の方の学園長に言われたので、特に何をするでも無いけど有給消化の為に仕事を休んだ一誠は、子供達が課外学習で居ないというのもあって、久々に一人きりになっていた――筈だった。

 

 結論から言うと、一誠は只今一夏達が臨海学校一日目と目玉となる海遊びをしている現場から少し離れた海岸に居た。

 その理由は一夏達が心配だから――――という訳ではなく、寧ろ部屋に綴じ込もって寝てようとしていた程度には、リアスが居ない今は休日の使い方が下手くそになってしまっていた一誠を訪ねてきた者が半分駄々をこねる形で連れてこられたからに他ならない。

 

 

「うんうん、箒ちゃん達が楽しそうで何よりだし、私達も楽しもうよ?」

 

「そこそこ楽しんでるつもりだぞ?」

 

 

 曰く、不思議の国のアリスをイメージしてみた……らしい服装の篠ノ之束が、数百メートル向こうに見える団体を双眼鏡で観察している横で、一誠はボーッとした眼差しで波に揺れる海を眺めていた。

 

 

「昔、たった一回だけどリアスちゃん達とこうして海に来たことがあるんだけど、ここはその時に来た場所にちょっと似てんな……」

 

「ふーん……? 楽しかったの?」

 

「状況が状況だったから、あんまりはしゃげなかったけど、楽しかったよ。

今でもリアスちゃんの水着姿は鮮明に覚えてるしな……ふふん」

 

 

 どうやら今居る場所が過去の思い出のひとつとなっている場所に似ていたらしく、一誠の表情は少し柔らかい。

 逆に束は多分もう千回は聞かされた名であるリアスの事についてをまた一誠が口にするものだから、ちょっと不機嫌だ。

 

 

「別にやめて欲しいとかじゃないんだけど、あんまり昔の事ばっかり聞かされると、今が全然楽しくない様に聞こえていい気分がしないんだけど?」

 

「ん……? おう、悪い悪い。ついな……」

 

「良いけどさー……」

 

 

 一誠の精神の支えであり、不変の核であるリアス・グレモリーとは当然ながら束達は会った事がない。

 一誠唯一の過去からの所持品である、この世界と時代においても何世代も先を行く性能を持つ携帯端末のデータに、彼女や仲間達と共に写っている写真を見せて貰った事はある。

 

 暗い銀髪の一誠と同い年くらいの少年。

 二十代後半くらいの男性。

 ビックリする程美人の緩いウェーブのかかった金髪の女性。

 その女性に寄り添われて軽く戸惑った顔をしている黒髪の――ハッキリ言って相当な悪人顔の男性。

 

 中性的な容姿の赤い髪の幼い子供と、その隣に其々手を繋ぎながら微笑む赤い髪の青年と、紅白衣装を着た白髪の――美人というよりは美少女に見える少女。

 

 そして、子供のように笑っている一誠と、その一誠と腕を組ながら微笑む赤髪の少女――リアス。

 

 

「うーん、釣り道具でも持って来れば良かったかな……」

 

「………」

 

 

 未だに一誠の精神の中心に君臨し続ける彼等には未だ到底追い付く事は出来ていない。

 確かに一誠は自分達に『身を守れる術』を教えてくれたし、面倒だって見てくれた。

 

 けど自分達が慕えば慕うほど解るのは、一誠が今も昔も『過去』を見続けている事。

 それが酷く寂しい。

 

 過去に囚われるななんて言う気は全く無い。

 でも少しでも良い……ほんの一瞬だけでも良いから今である自分達を見て欲しい。

 

 

「ふーんだ、スタイルなら負けてないし……」

 

「あ? 何の話――――って、ああ、そういう……」

 

 

 歩くことを辞める事が出来なくなった彼に追い付きたい束達にとっての夢であり、願い。

 

 不貞腐れた子供みたいにリアスに対する対抗心を口にする束に一誠は苦笑いを浮かべるけど、その表情は大人が子供に向けるそれでしかない。

 

 そうじゃない。

 束……そして千冬が望むものはそうではない。

 かつて一誠がリアスに――否、今も示し続ける感情が欲しい。

 

 

「ふん、疑うならご覧あれだよ!」

 

「…………」

 

 

 子供から大人へと成長していくに連れて抱いてしまったこの感情を捨てる事ができない束は抱いたその時から想い続ける願いと共に、着ていた服を一気に脱ぎ捨てると、中に着込んでいた水着を披露する。

 

 

「考えた結果、下手な攻めは通用しないと思ったから、ど真ん中に走ってみたんだけど……」

 

「あ、うん……」

 

「………。何さ? 言いたいことがあるなら言って――」

 

「……………。エロビデオ辺りに出てきそうな女優みたいな感が――――あ、嘘だ嘘! まさか学生か何かが着そうな奴だとは思わなかっただけだから! 似合ってないことは無いと思うぞ? ……胸がキツそうだけど」

 

「……正直過ぎて悲しくなってきた」

 

 

 試行錯誤しても無駄なのは知ってたので、所謂スク水タイプにしてみたけど、微妙な顔されたので失敗だったと慌ててフォローになってはないフォローをしようと束の背中をポンポン叩く一誠にがっくりと肩を落とすのであった。

 

 

「良いよ別に……って言いたいけど、これがもしリアス・グレモリーさんだったら?」

 

「そりゃもう押し倒しすね! 間違いない!!」

 

「…………」

 

 

 最大の壁となるリアス・グレモリーは強すぎるなぁ……そんな事を想いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 どうせまた無理矢理本音辺りと引き合わされるんだろうと予想していた為に、到着と同時に旅館内に隠れた更識簪は、夕飯の時間と同時にしれっと戻ってきたクラスメート達に合流し、全クラス合同での夕食を食べていた。

 

 

「簪、昼間はどこに居たんだよ? 探したのに……」

 

「バス酔いが酷かったから部屋で寝てただけ」

 

「………。それなら良いけど、今は大丈夫なのか?」

 

「別に。

それより向こうからアナタのお友だちが見てくるし、さっさと戻ったら?」

 

「…………」

 

 

 案の定、自分の姿を見つけるなり、間宮玲二という姉の婚約者らしい男がやって来て話しかけてきたのだけど、話しかけられる度に本音やらシャルロット達にジロジロ見られるので、それを含めて嫌がった簪は素っ気なく追い返す。

 

 間宮玲二本人は何かまだ言いたげだったけど、言われた通り本音達の所へと戻っていくのを見て、簪はため息を溢す。

 

 

(勘弁してくれないかな……。どうせまた本音や姉さんの件で話しかけてきただけなんだろうけど)

 

 

 間宮玲二や本音の視界から外れた位置に食事をずらしてから再び食べ始める簪にとって、この臨海学校はとても退屈な校外学習でしかなかった。

 何故なら特に友人と呼べる者がクラスにも居なかったりするので、誰かとお喋りするでもないし、何より彼に教えを請いに行けないのだ。

 

 

(イメージトレーニングが良いって事はわかったけど、やっぱり先生から直接教わった方が遥かに良いんだよなぁ……)

 

 

 以前までは姉との絶望的な才能の差もあって、自分の限界を早々に悟って諦めてしまった簪だが、『別領域』という存在を知ってからは、その方向に向かう事への憧れを持っていた。

 

 

(自分を知る……か)

 

 

 その別領域の最先端に君臨する用務員のイッセーからはまだ『そこまで』教えられて無い。

 だけどイッセーとの会話の日々から、簪は独自ながらもその条件となるものを端的ながら掴み始めていた。

 

 後はその掴むまでの方法さえ解れば……。

 

 チビチビと料理を口にしながら簪はふと楽しげに話ながら食べているグループ……一夏達を見る。

 

 

(先生が直接――それも本腰を入れて教えていた人達。

織斑先生もそうだけど、羨ましいな……)

 

 

 楽しげに笑い合う一夏、箒、鈴音、ラウラ……それから最近しょっちゅう一夏達と一緒に居るセシリアを見ながら簪は眩しさを感じる。

 

 端的にその領域を知ったからこそ解る。

 セシリアは違うにしても、あの四人と千冬―――そして恐らくは箒の姉である篠ノ之束は間違いなくこの世界においては一番一誠の領域に近い。

 

 

「……………」

 

 

 

 この前初めて話しをする事が出来たものの、あれからは一度も話しては無い。

 切っ掛けが無いからといえばそれまでだが、本音達の視線が気になるからというのが大きい。

 勿論切っ掛けがあればもう少し話をしてみたいとは思っている。

 

 一誠に直接叩き込まれた者達とのコミュニケーションは恐らく自分にとって良い刺激になる筈だから……と。

 

 そんな事を思いながら食べ終えてしまった簪は一足早く部屋に戻ろうと大広間をひっそり出ていこうとして………。

 

 

(織斑先生……?)

 

 

 一瞬だけまだ多くの生徒達が居る大広間の方を振り向いた簪の目に、一人だけ別の場所から大広間を抜け出そうとして居る千冬に気付いた。

 

 まだ夕飯の時間は残っているのに、どうしたのだろうか? と普段なら別に疑問にも思わない筈の千冬の行動がこの時だけは何故か気になってしまった簪は、キョロキョロと携帯電話を片手に辺りの様子を窺いながら旅館の廊下を歩いている千冬の後を……本当に何となく付けてみた。

 

 彼女もまた一誠の領域という名の系譜を継ぐ一人だからという理由もあったのかもしれないし、旅館の外にいそいそと出る怪しさも理由のひとつだった。

 

 気付かれてる可能性も考えながらも、簪は千冬に続いて旅館の外へと出ると、昼間生徒達が遊んでいた海岸に向かっているのを追う。

 

 

(誰かと待ち合わせでもしてるのかな?)

 

 

 千冬の交遊関係は知らないけど、ひょっとしたらこの地域に学生時代か何かの友人が住んでいて、その人と待ち合わせでもしているのかもしれない……なんて結論に達した簪は、気付かれてる怒られる前に戻ろうかと考えて引き返そうとしたのだが………。

 

 

 その足が動くことは無かった。

 

 

 

「束から自慢気な連絡があったから来てみたけど、本当に来てたんだ……」

 

「有給を消化しろって言われた所に束に引っ張られてな……」

 

「ふっふーん! 有意義なデートだったぜちーちゃん?」

 

 

 

 

 何故ならそこには写真で見たことのある篠ノ之束が居たから――ではなく、そんな篠ノ束のとなりに立つ先生………つまりイッセーが軽装姿で様子が違う千冬と話をしていたからだったからだ。

 

 

(せ、先生……!)

 

 

 学園に居るだろうと思っていたイッセーを見て動揺してしまう簪は本能的に近くにあった木の陰に隠れた。

 そして隠れた同時に何故かドキドキしていた。

 

 直前までイッセーの事を考えていたから……なのもあるが、まさか考えていた矢先に自分の為ではないにせよここに来たから――という、なんというか思春期の少女らしい事をついつい考えてしまっていたからだ。

 

 もっとも、イッセーはそんな甘いタイプ等では無いし……。

 

 

「何度も言うが、背後には気を付けろって言ったよな? また尾けられやがって」

 

「ご、ごめん……近くに居るって聞いてから頭の中がそれで一杯になっちゃって……」

 

「どうするの? 記憶シェイク?」

 

 

 

(ふ、普通にバレてるし……)

 

 

 一誠の目は真っ直ぐ木の陰に隠れていた簪に向けられていた。

 この時点で詰みを悟った簪は、観念した様に両手を上げながら姿を晒す。

 

 

「す、すいません……!

織斑先生が変な様子で出ていくのを見ちゃったから……」

 

 

 実際そうとしか言えないので、正直に言いながら姿を晒したのが簪。

 すると、簪を知らない束は訝しげな顔になり、別クラスの生徒としか知らない千冬はどうしようと一誠を何度も窺う様に見て、一誠は……。

 

 

「キミか……」

 

 

 束と千冬の肩に『一応大丈夫だ』という意味を込めて手を置くと、小さくため息を吐いた。

 

 

「この子は誰なのいーちゃん?」

 

「学園の生徒」

 

「そんなのはちーちゃん共々解ってるよ。

聞きたいのは、その子の顔を見て、知り合いみたいな反応した理由なんだけど?」

 

「そりゃあお前、一応知らない子ではないからな。

一夏達とは別クラスで、偶々仕事中に出会してな……まあ、そっからだな」

 

「え、私知らないんだけど……」

 

「そりゃそうだ。だって今言ったからな……。

一夏達もこの前知ったぞ」

 

 

 どうしようかとその場に立ち尽くす簪について二人に教える一誠は、そのまま仕方ないとばかりに簪に手招きする。

 

 

「別に悪巧みする為にここに集まった訳じゃなくて、暇だから居るだけなんだが………キミはどうする? このまま帰っても―――」

 

「あ、い、居ます!」

 

「だ、そうだ……」

 

「「…………」」

 

 

 よくはわからないが、こんなチャンスは滅多に無いと感じた簪は食い気味に駆け寄る。

 その瞬間、千冬と束が子供みたいな膨れっ面になっていたのを簪は見てしまったが、一誠は平然としている。

 

 

「ん? ちょっと待ってよいーちゃん。この子と髪と目の色で気付いたけど、ひょっとしてこの子、例の暗部の子じゃないの?」

 

「正確には、その暗部の所の身内みたいなものだ。

本人はその暗部関連から脱落したらしいが……」

 

「でも奴と繋がっていないって保証は……」

 

「まあ無いわな。

けど春先にこの子と出会したが、今まで奴等に俺の存在がバレてないということは、つまりそういう事なんだろう?」

 

「そんなアバウトな……」

 

「随分と優しいね、更識に?」

 

 

 ジトーっとした目で睨んでくる二人の視線をスルーする一誠。

 束の事はよく知らないが、千冬がかなり子供っぽくなっているのがかなり新鮮で簪も驚いてしまう。

 

 

「ジュースやるから機嫌直せ。

何でそんなに機嫌悪いのか知らんけど」

 

「「………」」

 

(スルースキルが凄いや……)

 

 

 そんな二人に近くに置いてあったクーラーボックスから飲み物を取り出して渡してから簪にもオレンジジュースを渡すと、そのクーラーボックスの隣にあった巨大なビニール袋から結構多めの花火セットを取り出した。

 

 

「花火……?」

 

「束がやりたいって言ってね。

せっかくだから千冬も呼んでみたんだけど、まさかキミに気付かれるとはな。

ったく、修行不足だぞ千冬?」

 

「ほいほいと女の子と仲良くなる一誠さんなんか知らない……!」

 

「あぁ? ………何怒ってんだよ?」

 

「あまりにリアス・グレモリーさん関連以外で無欲過ぎたのが仇になってるって事。

まったく、ドイツの子といい……」

 

「お、織斑先生って結構子供っぽいんだね……」

 

「ん? ああ、この千冬が素だからな。

普段キミ等が見る様な千冬は、嘗められない為に作ってるだけだし」

 

 

 バケツに水を汲み、花火の入った袋を取り出した一誠は、早速とばかりに一人火を付ける。

 

 

「お、ついたついた!

なんだろ、いくつになってもこの瞬間がテンション上がるぜ……!」

 

「えっと、私もやっても良いかな先生?」

 

「おう! 好きなもん取ってやりな! おら、千冬と束もやろーぜ!」

 

 

 花火の炎を見ていてテンションが上がってるのか、ちょっとだけ昔の一誠に戻っている。

 

 

「おおっ!? この花火の勢いやべーな! わはははは!」

 

 

 良い年したおっさんが両手に花火を持ってはしゃいでるのは見てて痛いというのが大半の感想だろう。

 しかし見ているのはそんな一誠の関わりのある者達だったので、すっかり毒気が抜かれてしまった束と千冬もその内一緒になって花火を――勿論ゴミを出さないように楽しみ……。

 

 

「……………」

 

 

 そんな一誠の姿を見ていた簪は、やっぱりラウラの気持ちが何となくわかる気がする――と、満たされる様な暖かさを胸の中に灯しながら、小さな花火の放つ炎を眺めるのだった。

 

 

「……ちーちゃん、まだ何とも言えないけど、多分あの子、ドイツの子と同じタイプかも」

 

「むむ……どっちにせよまた一人そうなる可能性があるって訳か……」

 

「リアス・グレモリーさんしか見てないというのはある意味で安心できるけど、同時に彼女しか見なさすぎて無欲になっちゃってるから、一度惹かれたらとことん惹かれちゃうからね。

現に私とちーちゃんがそうだし」

 

 

 

 

「先生、こっちの花火は落ち着いていて良いよ?」

 

「おう、サンキュー」

 

「…………ふふ♪」

 

 

 

終わり

 

 

 




補足

スク水束さんは―――ご想像に。


その2
一応今もちゃんと見てはいますが、どうしても過去の事は忘れられないんです。


その3
リアスさんも居る通常世界ならまずこんな対応なんてされてる訳もないかんちゃん。

逆にたっちゃん達に関しては互いに関心すら無いというね……反転世界やししゃーないよね。

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