色々なIF集   作:超人類DX

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精々のIFなので色々と反転している。
反転院のように


精々頑張って…………くれ?

 最初にその存在を知ったのは、12になる前だった。

 

 無愛想で、何時もボーッと遠くを見ている様な目をした――と言えば聞こえは良いのかもしれないけど、実際はただ単に腑抜けてるだけの顔をしてるだけの男が、見たこともない形相でその男児をズタズタにしていたのだ。

 

 

『やっぱり居たか。

なるほどね、これが俺だけが生き残った理由って訳かよ――ちくしょう』

 

 

 唯一の親友の血の繋がりなんてない保護者。

 親友とまだ幼い親友の弟を拾って、共に生活をしている青年が初めて見せた感情を目の当たりした当初は戸惑ったし、その感情をぶつけられた挙げ句、物言わないボロキレにされた男児にも戸惑った。

 

 何故ならその男児は親友と自分が通う学校のクラスメートで、しつこいくらいに話しかけてきた奴であったのだ。

 親友も自分も、そんなクラスメートのしつこさに辟易していたし、うざいとすらも思っていた訳だけど、そんなクラスメートを、遊びに行った際に会ってもつまらなそうにテレビを見てるか、仕事に出掛けてしまう親友の保護者が八つ裂きにしているのはとても衝撃的だった訳で……。

 

 

『……? そこで見てる子供は確か―――あー……誰だっけ?』

 

 

 そして一番驚き、後々段々と腹が立ったのは、確実に何度も自分と顔を合わせてる筈なのに、自分の事を全く覚えてないという青年の物覚えの悪さだった。

 

 

『友達? 千冬の……? あー……そういえば何度か家に来たことあったんだっけ? フワッとした記憶しかないもんで……』

 

 

 早い話が無関心だったというオチに腹を立てたのが、恐らくは最初の思い出。

 そしてこの日から非現実的な現実の始まり。

 かつて人でありながら、人でなしとなった青年との……。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 織斑一夏にとって、外の世界の存在は悪夢でしかない。

 これまで複数人とその手の者と出会したのだけど、関わると碌な目に逢わなかったからだ。

 

 流石に父親代わりとしてここまで面倒を見てくれた一誠の様な殺意までは抱かないにしても、一夏的にはそういった手合いの存在は苦手だし、出来る事なら関わりたくは無い。

 

 しかしどういう訳か一夏はそういった手合いと出くわしてしまう。

 しかも出会すだけではなく、ほぼほぼの確率で嫌われている。

 

 何をしたという訳でもないのに、何故か一夏……そして一夏の親友であり幼馴染みでもある箒はそういった手合いに嫌われるのだ。

 

 一誠もかつてそういった手合いに、彼が今も愛し続ける女性共々敵意と殺意を抱かれていたようなので、どうやら連中にとって自分達は目に見えない何かを持っているとみて間違いはない。

 

 だが、そんな不明瞭な理由で殺されてやる気なんて一夏には無い。

 だから一夏は最初の転生者によって精神的な意味も含めた苦痛を与えられた時から、強く在る事を誓った。

 

 その者を容赦無く、確実に、最速で八つ裂きにした一誠の様に。

 自分が大切だと思える人達をせめて守れる強さを……。

 

 それが織斑一夏の精神の支柱。

 

 幼馴染みの箒に寧ろ守られてる感は否めないけど、共に先の先へ進む為に強くなる。

 

 目指すは転生者をはね除ける領域―――等ではなく、遥か彼方の先を孤独に歩く父親代わりとなってくれた彼に近づく為に……。

 

 

 

 

 篠ノ之箒がその昔に一誠と出会った時、一誠の顔は心底驚いたそれであった。

 その時は何も言ってはくれなかったけど、後々になって聞いてみると、どうやら自分の声は一誠が今も愛する悪魔の女性――リアスにそっくりだったから……らしい。

 

 勿論声が似ていたからといって一誠がリアスと箒を重ねているという訳ではなかったし、どうやら自分は一誠の気質に似ている様だった。

 

 なので箒は姉達よりも速く一誠側の領域へと踏み込められた。

 そして何時だったか、一誠はボソッと……

 

 

『俺とリアスちゃんの間にもし子供が居たとするなら、箒みたいな子だったんだろうな……』

 

 

 なんて言われる程度にはどうやら箒は一誠に気質がかなり近かったらしい。

 お陰でそれを聞いてしまった千冬が、当時まだ高校生だったのだけどわんわんと泣くしで大変だった……と箒は今になって思う。

 

 

「予め予習しといて正解だったな箒……こりゃ難しいぜ」

 

「要は動けば問題は無いと思うべきだな。

まあ、授業でも無い限りはISを動かす事も無いだろうし――」

 

 

 

 

 

「なら俺は織斑君を推薦します。

自薦や他薦は問わないと織斑先生もおっしゃってましたよね?」

 

 

 

 

 

 

「―――――奴が余計な真似をしてくれさえしなければ、と言おうとした矢先にこれか……」

 

「ナチュラルに巻き込まれたし、千冬姉でも無理には言えないよな……ハァ」

 

 

 篠ノ之箒は激情家だ。

 一度でもスイッチが切り替われば、敵と見なした全てを許さない。

 

 リアスに狼藉を働こうとした者達を徹底的に潰してきた一誠と同じように……。

 

 

 

 

 

 ひっそりこっそりと卒業までを乗り切ろうとしていた一夏は、早速世界で二番目のIS起動者として入学してきた二人目の男子生徒の一言によって目立ってしまった。

 

 クラス代表という文字通りの役職をクラス内で決めるという話なのだけど、当然ながら一夏にやる気なんてある筈も無いし、それまで極力目立たない為にひっそりと席に座っていたので、他薦もされず、されたのは主にど真ん中の席に座っていた二番目の男子だった。

 

 

「良いだろう。

間宮、オルコット、織斑で総当たりの試合を行い、戦績が一番良かった者をクラス代表とする」

 

 

 今この場では一夏と箒にしか分からないが、千冬はかなり申し訳無さそうな眼差しを一瞬だけ一夏の方に送りながら、ブリュンヒルデらしく振る舞っている。

 

 仕方ない。誰が悪い訳では無いし、要は試合をすれば良いだけの話なのだからと一夏は既に納得したのだけど、箒がそれはそれはスイッチの切り替わった一誠を思わせる露骨な顔で間宮なる男を見据えてるせいで、ある意味こっちを宥める方が大変だと苦笑いだった。

 

 

「じゃあ織斑君、恨みっこ無しだからな?」

 

「あー……うん、お手柔らかに……」

 

「ふんっ!」

 

 

 ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべる間宮とかいう男にたいして、当たり障り無い作り笑いを浮かべて誤魔化す一夏と、何でか知らないけど怒ってる自薦者のセシリア・オルコット。

 

 一夏の目指す道はまだまだ険しい。

 

 

 

 

 

 

 セシリア・オルコットは苛立っている。

 イギリスの代表候補生という積み重ねた努力の果てに掴んだ場所にたいしてどうでも良さげな反応をする間宮という男と、あまり自分達にかかわり合いたくないという消極的な態度の織斑一夏に。

 

 

(あんな男共に負ける筈ありませんわ……!)

 

 

 

 ある理由もあって、男性に対して少なくは無い嫌悪感を抱いているセシリアにとって、高々クラス代表の座を巡っての事ではあるが、負けるわけにはいかない勝負であった。

 

 起動履歴もほぼない様な素人に負けたとなれば、必死に努力して掴み取った代表候補生の座まで奪われてしまうかもしれない。

 そうなれば自分という主軸を失い、祖国で陰口すらも叩かれるかもしれない。

 

 つまり、その自我で誤魔化してるが、負ける事をセシリアは今一番怖れているのだ。

 

 

「間宮、聞くところによると、お前は専用機を既に保持しているらしいが……」

 

「ええ、日本政府にきちんと登録もしてあります」

 

(!)

 

 

 そんなセシリアは明くる日、担任の千冬と間宮の話を聞いて驚いた。

 なんと彼は既に専用機を保持しているという話である。

 

 

「一応入学前に訓練もしました」

 

「………。そうか」

 

 

 しかも短いとはいえ、訓練までしている。

 

 

「織斑なんだが……」

 

「あー……まあ、無いんでしょう? 構いませんよ別に――」

 

「いや、用意するらしいんだそれが………」

 

「………え、でも――」

 

()()に関するカモフラージュとしてだ。

だから私も了承した……受理だけはしといてくれ」

 

「……………わかりました」

 

『?』

 

 

 一夏にまで専用機が与えられる。

 男で珍しいからという理由だけで、限りあるISコアを割く。しかも碌に扱えなさそうな素人なのに。

 

 その特別扱いがセシリアの対抗心に火を点けたのは云うまでもなく、彼女は放課後人知れず訓練にいそしんだ。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

 

 負ける訳にはいかない。

 負けたら終わり。

 

 いつの頃からか、そう思う様になっていたセシリアはオーバーワークとなるトレーニングで疲労を蓄積させていく。

 

 自分を止めてくれるメイドのチェルシーも居ないこの状況ではセシリアは自重することも出来なくなっており、身体が疲労の悲鳴をあげても尚過度なトレーニングを続けた。

 

 

「くっ……ぁ……」

 

 

 日が暮れて……限界を迎えて倒れるまで。

 

 

「………ぅ?」

 

 

 

 どれくらい気を失っていたのだろう。

 セシリアは訓練場で目を覚ますと、ISスーツの姿のまま気を失っていた影響による肌寒さを感じた。

 

 

「…………」

 

 

 ふと壁の時計を見るととっくに消灯の時間となっている。

 流石にまずいと思ったセシリアは手早く備え付けの浴室で身体を洗ってから着替えると、誰にも見つからない事を祈りながら寮へと続く道を歩く。

 

 するとその時だったか……。

 

 

(? 向こうの方から声が……?)

 

 

 

 ふと整備された人工島の道の脇にある人工森林の奥から声が聞こたセシリアは、辺りの暗さと肌寒さも、あって軽く身震いしながら耳をすませてみると……確かに声が聞こえた。

 

 

(ま、まさかお化け……!?)

 

 

 このご時世に幽霊なんて非科学的な存在は認めたくは無いが、こうもはっきりと暗闇の向こうから声が聞こえてくると、ひょっとしてという気持ちが芽生えてしまう。

 

 しかしそれを認めてしまったら、否定してきた全ての存在を認めなければならないと考えたセシリアは、どうせ風の音が声に聞こえただけなのだろうと己に言い聞かせながら、音の聞こえる方へと入っていく。

 

 

 そして彼女が見たものは……。

 

 

『Divide!』

 

 

 白く輝く翼を背に縦横無尽に空を飛ぶ何者かと……。

 

 

 

『Boost!』

 

 

 赤く輝く装甲を左腕に纏いながら地を駆ける何者かがぶつかり合っている姿であった。

 

 

「こ、これは……」

 

 

 輝く赤と白が衝突し、強烈な衝撃波が木々を揺らす。

 セシリアはその衝撃に吹き飛ばされそうになる身体をなんとか踏ん張る事で耐えながら、二つの人影が戦っている光景を見て――

 

 

「どういっくんと箒ちゃん? 一応出来る限りの再現はしてみたんだけど?」

 

「うーん、流石にオリジナルには敵わないですけど、それでもISとしてならオーバーテクノロジーだと思いますね」

 

「一夏に同じく。

しかし良いんですか? 私にまでISを……」

 

「全然構わないよ。

まだまだ試作段階だし、その二機を扱えるのはいっくんと箒ちゃんだけだもん」

 

「それがあれば一夏もコソッとオリジナルを使ってもバレないだろうからな」

 

 

 それが近々自分と試合する織斑一夏と常に一緒に居る篠ノ之箒である事――そして、そんな二人を見ているのが担任の千冬と……どこかで見た気がしてならない女性であることにセシリアは気づいた。

 

 

(な、何故織斑さんや篠ノ之さんが? それに織斑先生と……あの女性はいったい?)

 

 

 予想外の光景に暫くその場に立ち尽くしてしまうセシリア。

 どうやら会話の内容からしてアレが一夏の専用機のようだが、どう見てもISっぽさを感じない。

 

 もしや最新の技術なのかとセシリアは考えながら、暫く偵察しようと物影から様子を伺っていると……。

 

 

「おい」

 

 

 背後から突然声が掛かり、セシリアの思考は一気に現実に引き戻された。

 

 

「ひゃい!?」

 

 

 例えるなら背中に氷か何か入れられたというべきか、その声に物理的な意味でも飛び上がるセシリアは変な声が出てしまい物影から飛び出してしまった。

 

 

『?』

 

(し、しまっ……た……!)

 

 

 一夏達の視線が物陰から飛び出したセシリアに注がれ、セシリアは焦った。

 

 

「あ、あのその……」

 

 

 ま、マズイ、何がどうマズイのかは自分でもわからないけど、とにかくこの光景を見てしまったのがバレるとマズイ気がすると思ったセシリアはこれでもかと目を泳がせながらアタフタとなる。

 

 

「オルコット? どうしておまえがここに? 消灯の時間はとっくに過ぎている筈だが?」

 

「あ、あのっ! じ、自習練習が高じてしまって……! そ、それで戻っている最中に声が聞こえて……その……!」

 

「誰?」

 

「同じクラスのセシリア・オルコットです。今度試合する相手ですよ」

 

「ふーん?」

 

 

 一誠の影響があるのか、少々の校則違反に対して目くじらを立てる気も別に千冬は無く、ただ普通に聞いているつもりなのだが、セシリアには威圧的に聞こえたとだろう、これでもかと慌ててしまっているのを、箒と一夏が初見となる束に誰なのかと教えていると、セシリアの後ろからコンビニ袋を二つ程持った作業着姿の一誠が現れた。

 

 

「買ってきたぞ」

 

「あ、イッセーさん……」

 

「おかえりいーちゃん。流石に速いねー」

 

「まぁね。だが、そこの誰かわからん子に結構な時間見られてたぞ? ちゃんとそういう警戒もしとけ」

 

「試運転に夢中になりすぎちゃってさ……ごめんごめん」

 

「修行が足りないようだ」

 

「だ、誰ですの?」

 

 

 年若そうな青年の声を聞き、背後から声をかけたのは彼だというのはすぐにセシリアも察知したものの、そもそも平気な顔して青年に近寄る束を含めて、誰なんだという疑問しかない。

 しかし作業着姿の青年はそんなセシリアの視線を無視してコンビニで買ってきた飲み物やら食べ物等を皆に渡していく。

 

 

「で、どうなんだ?」

 

「流石にオリジナルには遥かに劣るけど、基礎だけはギリギリってところかな。

まだまだ改良の必要はあるよ」

 

「俺も少し見たけど、あそこまで再現出来てる時点で十分だと思うし、ドライグも驚いてたぜ?」

 

「いーちゃんに褒められるのは素直に嬉しいけど、でもやっぱりまだまだだよ」

 

「…………」

 

 

 セシリアを完全に無視して何やらほのぼのとした空気が展開されていく。

 というか、今気づいたが、あの女性はもしや篠ノ之束ではなかろうか……? 篠ノ之箒もさっきから彼女の事を姉さんと呼んでるし、千冬なんか平気な顔して束と呼んでるし……。

 

 

「で、そこの子は?」

 

「うん、ウチのクラスの生徒でセシリア・オルコットって子。

さっき話した一夏と試合をする相手の一人で――」

 

「だ、誰ですのっ!?!?」

 

 

 千冬に至っては、青年に対して軽く10才くらいは退行しているような口調のせいで、セシリアは別の意味でギョッとしたリアクションになってしまった。

 

 

「ん? どうかしたのオルコットさん?」

 

「ど、どうしたもこうしたもありませんわ!? お、織斑先生が……へ、変になってますわ!」

 

「ぷっ……」

 

「ず、随分ストレートに言うなぁ……」

 

 

 まるで化け物でも見るような顔になってるセシリアの言葉に思わず一誠、束、箒、一夏は吹き出してしまい、千冬は微妙に困った表情で笑う。

 

 

「そ、そんなに怖いかな私って……?」

 

「さぁ?」

 

 

 その仕草や表情は昼間の担任としてやブリュンヒルデとしての張り詰めた雰囲気が嘘の様に穏やかであり、セシリアとしては信じられなかった。

 

 

「だが、生徒にどう思われてるかよくわかるリアクションだな。

無駄に肩肘なんて張ろうとするからそのギャップに驚かれるんだ」

 

「だ、だって……。

嘗められたらいけないと思って……」

 

「ある意味では正解なんだろうけどよ」

 

「あ、貴方に至っては誰なんですかっ!? 部外者なのにどうしてこの学園内に……!」

 

「え? ああ、俺は一応ここで用務員として働いてるものだぞ? ほら、証明書」

 

「えっ……?」

 

 

 そう言われて渡されたID式のカードには確かに顔写真付きの証明書だった。

 学園の用務員として、この学園の学園長の直筆サイン付の証明書が本物か偽物かはわからないが、少なくとも千冬が大丈夫だと言っている時点で侵入者ではないのだろうというのはわかった。

 

 とはいえ、理解はしても納得するかは別の話だ。

 年齢の項目に32と記載されてるせいで胡散臭いのだ。

 

 

 

「私の間違いでなければ、貴女はあの篠ノ之束さんでは?」

 

「そうだけど、それが?」

 

「っ!? な、何故貴女がここに? 見る限り、織斑さんの専用機を手掛けたと見えますが?」

 

「うん、その機能説明の為に来たんだけど、なにか問題でもあるかな?」

 

「…………………」

 

 

 シレッとした顔であっさりと肯定する束にセシリアは言葉が出てこなくなる。

 なんというか、ここまで普通に頷かれるとは思わなかったからだ。

 

 

「心配しなくても説明が終わったらさっさと居なくなるよ。

一応世間的に顔が割れてる身だし、ここに居る暗部家系の子達にバレたら鬱陶しいしね」

 

「……………。私が貴女の事を報告しないと思っているのですか?」

 

「したければすれば良いんじゃない? 鬱陶しいと思うだけで捕まる気は更々ないもん」

 

「…………」

 

 

 自信があるとかではなく、ただの事実として話す束にセシリアはその精神の余裕さを感じた。

 今のセシリアには無いものを……。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 転生者にとって意外なのは、一夏がほぼでしゃばらないという点だ。

 一夏と常に共に居る箒も大人しいし、転生によって性格に差異があるのか――なんて判断していた。

 

 それはつまり、一夏達の目論見が成功しているに他ならない訳で……。

 

 

『あー、降参するわ。

多分これ以上やってもキミには勝てそうもないし』

 

『……降参しますわ』

 

 

 一夏の専用機が『白式』なのも知っていたので、さくっと勝った。セシリアにも勝った。

 後は辞退でもして一夏にクラス代表を押し付けられれば終わりだと思っていたけど、あまりにもさっくりと勝ってしまったせいで、その手が通用しなかった。

 

 だから転生者はそのままクラス代表となって、クラス対抗戦に出ることになったのだけど……。

 

 

「え、専用機持ちはウチのクラスだけ……?」

 

「一応二組に専用機持ちの子が転入したみたいだけど、クラス代表ではないからね」

 

「…………」

 

 

 本来の流れとは違う展開に少し驚く転生者は、二組に転校してきた少女を見てみたが、特にこれといって変わった所は無かった。

 ただ、やはりクラス代表になってはなかったらしい。

 

 

 だから転生者は『それならそれで』と切り替える事にした訳だが……。

 

 

 

「やっ、久しぶりね一夏、箒! それからイッセー兄!」

 

「鈴!」

 

「相変わらず元気だな鈴は」

 

「…………その呼び方をそろそろ止めて欲しいんだが」

 

「えー? だってイッセー兄をオジサンって呼ぶには見た目が詐欺レベルに若すぎるし、呼び慣れちゃったから今更変えられないわよ」

 

「違う。お前が俺をそう呼ぶ度に千冬達が変な顔して俺を見てくるんだよ……」

 

「あー……相変わらずなのね、あの二人……」

 

 

 転生者は知らないのだ。

 ただのセカンド幼馴染みではないということを。

 

 そして圧倒的に勝ったのにセシリアの反応があんまり著しく無い理由も……。

 

 

「お、おほん! そ、そろそろ私も自己紹介させて頂いても?」

 

「は? 何よアンタ?」

 

「初めまして! 私は一夏さん達と仲良くさせて頂いているセシリア・オルコットですわ!! 」

 

「ふーん? 基本的に警戒心が強いイッセー兄や箒が何も言わないってことはそこそこ信用されてるって所かしら? うん、だったらよろしくね?」

 

「ど、どうも……。(い、意外と対応が大人でしたわ……)」

 

 

 彼女もまた『赤き龍の系譜』を持つ者なのだから。

 

 

 

「あの間宮ってのがこの学園の生徒会室に入ってくのを見たわ」

 

「そういや同じクラスの布仏さんだっけ? そんな名前の子と仲良くしてるのを見たことがあったなぁ」

 

「布仏というと、姉さん曰く、どこぞの暗部家系と従者一族らしいぞ」

 

「つまり、その暗部家系の方々が彼のバックボーンという事になる訳でしょうか?」

 

「そうなるでしょうね。

今のところ私たちが昔された様な事をアイツはやってないけど、引き続き警戒した方が良いわ。束さんの事もあるし―――って、あの人の場合はあの人自身もさることながら、最強のボディーガードが居るから問題にもならないでしょうけど」

 

 

 

 そして更に時は流れ……。

 

 

「シャルル・デュノアです」

 

 

 怪しさ満点の三人目の男性起動者の登場で沸き立つクラスの後で。

 

 

「ラウラ、挨拶しないと……」

 

「はっ! え、ええっと、ラウラ・ボーデヴィッヒ……です。

好きな食べ物は嫁が作る物ならなんでも。将来の夢は嫁を完全に私の嫁にできたら良いなぁ…と思ってる」

 

『………』

 

 

 最初から態度が柔らかい少女に驚かされる転生者が居たらしい。

 

 しかしそんな事はどうでも良かったし、この自己紹介のせいで千冬が変な顔してるのもご愛嬌なのだ。

 

 

「一誠! 私の嫁!」

 

「……………………………………………………………………そのフレーズを教えたあの小娘をひっぱたいてやりてぇ」

 

「む、それはいかんぞ! クラリッサはお前にひっぱたかれると逆に悦んでしまうからな! それよりちゃんと食べてるか? 少し痩せては――うむ、無いな!」

 

「………………………」

 

「あ、相変わらずイッセー兄に激しいのねあの子……」

 

「嫁と言うから何事かと思ってましたが、そういう事でしたか……」

 

「私達の年代で唯一姉さん達に真正面から対抗できるからなラウラは……」

 

「それと異様にオカン度が高いんだよ、イチ兄相手だと」

 

 

 用務員室に乗り込むなり、一誠に飛び付いて頭を撫でるわあれこれお世話しようとするわのラウラに何とも言えない眼差しである一夏達。

 当然彼女も一誠がリアス一筋を貫いている事を承知である。

 

 だけどそれでも彼女もまた一夏達と同じ赤き龍の系譜を継ぐ者なのだ。

 

 

「よしよし、ふふ……一誠は変わらないなぁ」

 

「おい、いい加減に――」

 

「もう少し、もう少しだけこうさせてくれ。

リアス・グレモリー以外の女にされたくはないのは私だってわかっているし、敵わないのも百も承知だ。

教官や束博士ですら未だに無理なのだから、私程度では話にもならないのだって理解しているつもりさ。

でも……こうしないとお前がもっと遠くに独りで行ってしまう気がして不安なんだ。

だからきっと追い付いてみせる――お前を独りにさせやしない……私はここに居る」

 

「………………」

 

「その時は、少しだけで良いから肩の力を抜いて頼ってくれても良いんだからな? 誰も弱った一誠を見て笑う奴なんて居やしないし、居たらソイツは私がぶっ飛ばしてやるさ……」

 

 

終了




補足

色々シリーズの変なジンクス

胸囲と母性が反比例してるの巻

ただし、箒さんは除く。


その2
えーっと……ラウラたそー

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