色々なIF集   作:超人類DX

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やらかしてる具合はリアス一筋イッセーよりもでかいのだ


白き龍皇と……

 歴代最後で最高峰の白龍皇の半生もまた奇妙なものである。

 

 人と魔の血を持ち、白き龍を宿した特異性が後押しするような才を持っていた彼の道は決して楽なものではなかった。

 

 しかし彼はそんな運命を受け入れた上で昇華する心を持っていた。

 そしてそんな彼の才能は父親代わりとなった墜ちた天使によって知る事になった彼と同族の男――そしてそんな同族の男を愛してしまった天使によって更なる飛躍をしていった。

 

 師となった墜ちた天使。

 

 そんな男と自分を見守る父親代わりの男と天使の女。

 

 肉親には捨てられた彼だったが、間違いなく彼は幸福な時間だった。

 

 師が殺されるあの日までは……。

 

 

 

 

 その佇まいで誤解されがちだった師が殺された。

 師の強さを知っている者達からには信じられない話であったし、彼も当初は信じたくなんてなかった。

 

 しかしその亡骸を……血に染まった死の亡骸と、泣きながら抱き抱える天使の姿は現実であり、受け入れられぬ真実だった。

 

 彼は師の後を継いで師となった天使や父親代わりとなってくれた男と共に復讐を決意した。

 ただ今日よりも明日はもっと強くなる事を目標に生きていただけの師をほぼ不意討ち同然に、ただ過ぎた力を振りかざすだけの存在が殺めた事への報復を。

 

 師を愛した天使が、覚悟と共に燻らせていた才を完全に覚醒させ、神の理をも超越することで永遠に堕ちぬ天使へと進化していった様に、彼もまた師の仇を討つ為に、歴代の白龍皇達の至った領域とは全く違う方向へと進化し続けた。

 

 それでも届かぬ領域に居る仇の存在に少しでも近づく為に……。

 

 同じように大切な者を殺められた復讐の為に、人でありながら自分と同等の領域へと昇華していた宿敵である龍の帝王と、彼が守る悪魔の少女と出会い、全ての清算を行うその日を迎えるまで……。

 

 そして……。

 

 

『見ろよ、お前等さえ居なけりゃってツラしてるぜ、あのクソ野郎は?』

 

『ああ、やっと少しだけ溜飲が下がった思いだ』

 

『ふふ、けど、あんなツラだけじゃあ全く足りないだろ?』

 

『当たり前だ。奴だけはこの手で殺らなければ、俺達に明日は来ないのだからな。

それに何より……お前と一緒で見れば見るほど奴の顔が気に食わん』

 

『ははは! だろ? やっぱりリアスちゃんの次に気が合うぜ。

だったら、ひとつあの振りかざしてるだけの勘違いクソ野郎に教えてやろうぜ? なぁ…………ヴァーリ!』

 

『フッ…………………当たり前だ!! 遅れるなよ一誠!』

 

 

 最後の龍帝と龍皇は肩を並べながら飛翔する。

 お互いに歴代の宿主達とは全く違う進化を果たし、気に食わない相手をぶん殴ってやる為に。

 

 世界そのものを破壊する規模の復讐を果たす為に。

 

 

 それが同じく歴代最強最後となる白龍皇――ヴァーリ・ルシファーの生き様である。

 その後の彼がどうなったのかは誰にもわからない。

 

 親友でもありライバルにもなった一誠に最後の一撃を託して力尽きた後、世界の破壊と共に放った一誠の一撃と運命を共にしたと思われていた彼がパラレルワールドで生きていた事も、傷だらけで倒れていた所をとある家族によって救われた事も。

 

 まだ誰も……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 立花響、そして親友である小日向未来のまだ短い人生における軸――いや、核となるものは、奇妙な青年だった。

 

 普通の人間とは違う青年。

 どこか超然とした雰囲気を感じさせる青年。

 でも確かな暖かさをもった青年。

 

 傷だらけで倒れていた所を偶然発見し、保護した事で出会った青年は当初困惑していたし、まるで自分がこの世界の存在ではないみたいな――言ってしまえばちょっとおかしな人と思ってしまう様な事を言っていたけど、彼の見せる不可思議な力や知識は本当にこの世にはありえないものであったせいで、結構早い段階で信じる様になっていた。

 

 そんな青年ことヴァーリは行く宛が無いということで暫く立花家に居候させる事となった訳だが、その間幼かった響やその親友となる未来は彼から様々な事を教えられてきた。

 

 彼の持つ不思議な力の源。

 彼が家族同然に慕っていた師や親友達のこと。

 

 特に親友でありライバルでもあったらしい青年や、彼の師や師を愛した女性を語る時の彼はとても優しげであり、その時の表情に幼い少女二人は惹かれていった。

 

 だから二人は、当初傷が完全に癒えた時点で去るつもりだったヴァーリに対して、大泣きしながら抗議して引き留めたりもしたし、その容姿のせいでそこら辺の女性達に逆ナンされそうになっている所に子供の立場を最大限に利用して割って入ったりと、別にヴァーリ自身にそんな事への興味は皆無ではあるが、所謂彼へのフラグを折りまくっていた。

 

 困った事に、時が経つにつれてマセていく二人の少女の間でなら彼を共有しよう的な、言葉にするでもなく自然と結んだ約束みたいなものが結成されながら。

 

 

 しかしちょうど一年半程前か……彼は大人へと成長しようとする時期に差し掛かった二人の前から去った。

 

『どうやらまだ俺にはやることが残っている……』

 

 何時までも変わらない姿のまま、そう二人に言い残して。

 

 

 それはヴァーリは割りと天然で色々とやるタイプ故に気付かなかったが、響と未来にとっては絶望の日々だった。

 今まで当たり前だと思っていたヴァーリが存在しない日々。

 お互いにヴァーリを共有できる者同士が居なければとっくに心が折れていたであろう日々を強制させられる苦痛は二人を……困った事に余計彼への重い想いを蓄積させていく事になっていく。

 

 そして本来の――というか、完全なるイレギュラーとなるヴァーリが存在しない世界なら、立花響はガングニールというシンフォギアを紆余曲折あって宿してしまい、戦いへと赴く日常に進み、未来は当初それを知らないまま色々と悶々としていくみたいな事になっていくのだけど、ヴァーリという存在が二人を余計に強すぎる繋がりを持たせたせいで、普通に響が未来に打ち明けてしまっていて、未来もまたそれを普通に受け入れている。

 

 何故なら二人はシンフォギアなんかよりももっと強い共有する繋がりがあるから。

 

 ヴァーリやヴァーリの師と親友達と同じ精神の力という繋がり。

 ……………そして、お守り代わりとして分け与えられたヴァーリの宿す白き龍のほんの小さな力。

 

 

 とどのつまり、かつて堕天使コカビエルと天使ガブリエルがヴァーリの師であったように、ヴァーリが立花響と小日向未来と師のようなものなのだ。

 

 ノイズなる特定災害生物から身を守る為の自衛手段―――にしては少々行きすぎな気がする程度に教えられたのだ……。

 

 そして現在。

 

 立花響は既に会えなくなって一年半が経ち、そんな鬱憤を晴らすかの如くやって来た色々な騒動をぶちのめしまくってきて、また新しい騒動が勃発した矢先に出会した青年との邂逅にヴァーリの行方の手懸かりと――もっと深くヴァーリを知る機会に恵まれた。

 

 ヴァーリが言っていた親友にてライバル――そして何もなければ宿敵として殺しあっていたであろう運命を持っていた赤い龍の宿主。

 

 その青年はどうやら日本人らしく、名前もまんま日本人のそれであった。

 世界征服をするとか嘯いていて、響が所属している災害二課の者達はそんな青年の放つ力を目の当たりにしたせいで、第一級レベルの危険生物扱いをしている様だけど、響には何の関係の無い事だし、ヴァーリの言っていた通り、話してみればそこら辺にいそうな普通の人と変わらない……むしろちょっとフランクな青年だった。

 

 

 ヴァーリの事を訊ねてみれば、どうやら彼もヴァーリがよもや生存していたとは気づけなかったらしく、大層驚いていたし、事情を話せば、当初向けられた警戒心も解いてくれ、こっそりながら一緒に探してくれることを約束してくれた。

 

 ………何故かヴァーリについて語っていたら、その青年――つまりイッセーからドン引きされた顔をされたのが解せなかったけど。

 

 無論親友の未来にも話したし、一緒に会う事にもなったし、今日がまさにその日だった。

 

 

「せ、先生……門に怪しい――男の人が中を校舎を覗いてます」

 

「警察でも呼んだ方が――」

 

「ま、待ってください! あの人は私の知り合いです! ね、未来!」

 

「はい……! 間違いありません……!」

 

 

 寮住まいだと教えたら、不審者よろしくに正門前でウロウロしてたせいで危うくポリスを召喚されかけた焦ったりもしたけど、漸く掴めたヴァーリを捕まえる最大の協力者を失うわけにはいかない響と未来は周囲の不安そうな眼差しを押して、ウロウロと学院の正門前を歩いてるイッセーのもとへと走るのだ。

 

 

 

 

 

 

 危うくポリスメンに通報されかけていた事なんて知りもしないイッセーはといえば、マリア達には内緒にこっそりとアジト的な場所から抜け出すと、先日知り合ったヴァーリの事を知る少女二人と待ち合わせをし、彼女達の案内で近くのひっそりと経営している小さな喫茶店に来ていた。

 

 

「ふーん、キミもヴァーリを…」

 

「はい。それでその……ヴァーリ君の事をもっと教えて欲しいのですが」

 

「あ、うん……」

 

 

 小日向未来という黒髪の大人しそうな少女に……大人しそうな見た目が嘘みたいにグイグイとヴァーリについて教えろと言われて、この子もか……と、ヴァーリは一体この少女達に何をやらかしたのやらと思いながらも、二人が知り合う前のヴァーリについて教えてあげた。

 

 主に女性関連について。

 

 

「いや、アイツは不能をアイツの義理の親父さんにめちゃんこ心配される程度には興味を示してなかったから、まず無いぞ」

 

「そ、それは本当に本当なんですよねっ!?」

 

「昔からよく知らない女性に声を掛けられてましたけど……」

 

「まあ、アイツはああいう女受けしそうな見た目だからなぁ。

昔もよくあったりはしたけど、悉くスルーだったぜ?」

 

「よ、よかった……」

 

「兵藤さんみたいに、既に好きな女性が居たなんて知ったら色々と立ち直れませんでした……」

 

「そ、そうか……」

 

 

 相当二人はヴァーリに懐いていたらしいのが丸わかりなリアクションにイッセーもなんとも言えない苦笑いしかできない。

 というか、この物静かな喫茶店内で自分と二人の少女達が座る席の少し離れた席で、確か響きの同僚で適合者である少女達がこちらを警戒した様子でバレバレの尾行をしていることについてもどうリアクションしていいのか微妙にわからない。

 

 

「あの、キミのお仲間が……」

 

「あ、大丈夫です。

兵藤さんが私たちに何かしないかって心配してくれているだけですから」

 

「それよりさっきヴァーリ君が女性には興味なさそうだけど、女性のとある部位には割りと興味がありそうだったという話について教えて欲しいです」

 

「え? あ、あぁうん……」

 

 

 仮にも一応立場的には敵となる少女達からの疑われてる視線に、微妙な居心地の悪さを感じながらも、グイグイと質問をしてくる響と未来に答えるイッセー。

 

 

「アイツはなぁ……えーっと、尻がどうとかって言ってたぞ――今もそうなのかは知らないけど」

 

「お尻……?」

 

「あ、そう言えば昔公園で一緒に遊んでた時に、子連れのお母さんの事をジーっと見てた事があったわ。

今思えばアレはその人のお尻を見てたのかも……」

 

「師のガブリエルさんタイプが理想かもしれない……って本人は言ってたな。

ま、俺はリアスちゃん以外なんてどーでも良い――」

 

「安産型かな!? どうかな未来!?」

 

「やっぱりここは直接ヴァーリ君に鑑定して貰わないと。

触って貰ったりとか」

 

「それ良い! 賛成だよ未来!」

 

「……………………――これが若者にスルーされるオッサンの感じる物悲しさって奴なのか」

 

 

 本人の許可無く性癖まで教えちゃうイッセーは、立ち上がりながら互いに尻の形について確認し合ってる年頃の筈の娘さん達のスルースキルに、三十路の物悲しさを今さらになって痛感しながら、ちょっと冷めた紅茶を飲む。

 

 

「あのさ、キミ達はヴァーリに―――なんかその……そういう感じなのはわかったけど、ヴァーリは一人なんだぜ? えーっと……喧嘩とかになんないの? 所謂修羅場というかさ……」

 

「あ、大丈夫です。6歳の時点で未来とは話し合って決めてますから!」

 

「ヴァーリ君は二人で共有するって」

 

「……………えぇ?」

 

「だからお風呂に入る時も一緒でしたし、寝る時もどっちかがではなくてどっちも一緒でした!」

 

「頬にキスした時も同時でしたよ? ヴァーリ君はきょとんって顔してましたけど……ふふっ!」

 

「そ、そうなんだ……へー?」

 

 

 

 いくら自分達と少女二人の知り合いのみの店内とはいえ、ぶちまけられてる事が事だし、なによりさっきからそこら辺の耐性が乏しいのか、監視している知り合いの少女達がアワアワと赤面しているのが見えてしまう。

 

 

(早くなんとかしないと、マジで知らねーからなヴァーリ……)

 

 

 ある意味覚悟がガン決まりしてる二人の少女を置いて何処へ雲隠れしてしまった親友に、イッセーはただただ対処をミスるなよとしか思えなかったのであった。

 

 

「中学に進学するお祝いって事でヴァーリ君におでこにキスして貰った時は幸せだったなぁ……」

 

「困った事に、ヴァーリ君は特に深い意味もなくやってくれただけなんだけどね。

後はどうやってそう見て貰えるかだったのに……一人でどこかに行っちゃって……」

 

「うん、だから必ず捕まえないとね!」

 

(…………お前、ひょっとしてこの子達に騙されてねーか?)

 

『奴は戦い以外は殊更鈍いからな……』

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんて事……。

そこまで意外な程進んでいたなんて……。なにこの微妙な敗北感は?」

 

「し、知らねーよ……」

 

 

 終わり




補足

リアスさん一筋なのと、流石に三十路なんでそこまでやらかしたりはしてない。

寧ろ白い方のがやべー


その2
軽く誘導されてもホイホイと聞いてるせいで余計そうなった。

仕方ない戦闘バカで不能疑惑まで心配されてるんだもの。


その3

しかもイッセーよりもある意味色々と叩き込んでしまってるせいで、未来さんまでもこっち側というね。

まさに……俺しーらね

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