色々なIF集   作:超人類DX

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整理しようと思いきや削除しちゃったりして大変です。

……という訳で別のパターンを


※彼の場合

 青年の半生は決して平凡なものではなかった。

 

 親を殺され、ただの子供として生き残ってしまった彼は復讐する為だけにどんな事をしてでも生き続けた。

 

 けれど両親の仇となる者はあまりにも強大だった。

 

 どんなに力を付けようとも届かぬ領域に何度も折れそうになった。

 

 しかしそれでも青年は諦めなかった。

 

 彼の中に宿る龍がそんな諦めない青年を支えてきたからなのもそうだろう。

 仇となる者の個人的な動機で陥れられた悪魔の少女との出会いと過ごしていく日々が青年を仇となる存在の領域へと一気に進化できたのも大きい。

 

 その結果、遂に青年は仇となる存在を超越し、両親の仇を討ち取る事が出来た。

 

 しかしその代償はあまりにも大きかった。

 

 あまりにも―――そして皮肉な代償が……。

 

 

 

 

 

 

 その一瞬、地球――いや、世界そのものをも超越する最高峰の領域へと到達した青年は仇となる男を滅ぼした。

 だけどそこに至るまでに青年はそれまで得てきたものを全てを投げ出さなければならかなった。

 

 その命以外の全てを。

 

 残ったものは彼の命そのものと言える龍の力と、そう簡単には死ぬことが許されぬ化け物と揶揄される身体。

 

 両親の仇は確かに取れた。

 けれど失うものがそれ以上に大きすぎた。

 

 

 最後の一撃により仇の男の全てを砕いた青年は、直後発生した眩い光によって、見知らぬ地で意識を覚醒させた。

 

 荒れ果てた大地に荒廃した建物。

 自分が仇を殺す為に戦った場所とは違うというのだけは分かったものの、ここが何なのかまでは青年にはわからないし―――いや、最早どうでも良かった。

 

 近くで悲鳴と怒号と銃声と爆撃の四重奏が青年の耳を絶えず支配するけど、青年はただボーッと……光の無い瞳でボロボロとなっている建物の柱に寄り掛かかり、灰色の雲の隙間から降り注ぐ雨を浴びながら空を見上げている。

 

 奴を殺した。確かに父と母の仇は取れた。その事に関して思うところは何も無い。

 しかし失ってしまった……両親と同じ――いや、もしかしたらそれ以上に大切に思っていた彼女を……。

 

 託すように逝った彼女を――冷たくなっていく彼女の手を握りながら泣き続けた青年は、降り注ぐ冷たい雨に打たれ続けながら、自分も彼女の元へと逝きたいと願った。

 

 いっそ、今すぐ誰かに殺されてしまいたいとも。

 

 

 けれどその願いは叶わない。

 復讐を決めたその時から彼の人格そのものに宿った永遠の進化は生きる意味を失っている青年に死を許さない。

 仇との死闘によって受けた傷から止めどなく溢れる血がどれだけ流れても、青年は死ぬことができない。

 

 ならばどうするか? ……目を閉じるしか今の青年にはできなかった。

 目を閉じ、今の現実から目を逸らし――叶うことならこのまま死を……。

 

 そう思うしか出来ない青年はそのまま目を閉じ、意識を手放した。

 

 

 だけど青年は再び目を開けた。

 

 受けた傷が少しの睡眠だけで完治してしまい、何よりも周囲がやかましすぎた。

 

 どうやら近くで人間同士が殺しあっているらしい……。

 

 イライラしながらも仕方なく立ち上がり、この見知らぬ地を歩き回ってみると、人間の兵隊が銃をやら兵器やらを駆使して闊歩しているのが見えた。

 

 足下を見てみると、殺された人間の半分は白骨化している遺体がそこかしこに転がっている。

 どうやらどこぞの国の戦地らしい……。

 

 しかし青年はどこの国の人間同士が殺し合ってようがどうでも良かった。

 なので暫く瓦礫だらけの荒廃した戦地の中を歩いていると、どっちの国だか知らないゲリラめいた兵士がライフルを構えて何やら怒鳴っているのが見えた。

 

 緊張状態で幻覚でも見てしまっているのだろうか? と、前に聞いた事の無い戦場における兵士の心理状態についてを思い出しながら目を凝らしてみると、どうやら幻覚を見ている訳ではないらしい。

 

 怯えてる子供一人。

 

 どうやらあまり宜しくはない現場に鉢合わせしたらしい。

 あのままだと、下手をしたら殺されるだろう……と青年は思った。

 

 

 

 しかし青年はそんな子供を助けようとはしなかった。

 

 いや、そんな気力を失っていたという方が正しいのか……。

 助けたところで何にもならないし、何のメリットもない。

 

 メリットやデメリットを考慮せず前に進もうとするのが本来の青年の性格だというのに、今の青年は全くそれを感じさせぬ程に覇気を衰えさせてしまっていた。

 だから青年はそのまま元来た道を引き返そうと踵を返した。

 

 しかし……青年の足はそこで止まってしまう。

 

 

 何故なら彼に宿る龍が語りかけるのだ……。今のお前を見たら、アイツ等は何て言うと思う? と……。

 

 確かにそうだ。今の青年の――こんな腑抜けた姿を見たら青年が愛した仲間達は皆怒るだろうし、龍自体も怒っている。

 

 様々な考えが青年の頭の中を巡り続けた結果、青年は再び振り返ると、ゆっくりと今にも発砲しそうな兵士の真横に近付き―――怯える少女の目の前で兵士を殴り飛ばした。

 

 物理的な法則が完全に無視され、乱回転しながら瓦礫の山へと突っ込み、動かなくなる兵士……そして突然現れた青年に困惑する少女。

 

 そんな少女に青年は一瞥だけくれるだけで特に何を言う訳でもなく、そのまま立ち去ろうとする。

 思わず声が出そうになった少女だったが、それよりも先に少女のお腹から空腹を訴える音が可愛らしく鳴り響くと、聞こえていたのか、青年は振り向く。

 

 

 少女はそこで初めて青年の姿を見て息を飲む。

 

 完全に絶望した目。所々が裂けた衣服。

 

 正直言えば今さっき殴り飛ばされた兵隊よりもホラー要素を感じる出で立ちの青年だけど、少女は不思議な程恐怖を青年から感じなかった。

 

 何故なら怒鳴らないし、ポケットに入っていたらしい半分程の板チョコを黙ってくれたのだから……。

 

 

「あ、ありがとう……」

 

「………………」

 

 

 大切な唯一の肉親とはぐれ、兵隊に見つかって死にかけていた少女がたどたどしくお礼を言うも、青年は表情を変える事は無い。

 

 半分に割れた板チョコを手に、少女は暫く食べても良いのかと迷ったけど、食べなければそれはそれで失礼だと思ったし、何より毒が入っているとも思わなかったので、少女はその板チョコをちびちびと食べた。

 

 

「お、おいしい……」

 

「………」

 

 

 久しく口に出来なかった甘いものが、少女の疲弊した小さな身体に活力を蘇えさせる。

 しかしさっきから青年がジーッと見てくるせいで微妙に気まずい……と子供ながらに思ったらしい。

 

 

 それが多分きっと、最初の出会い。

 

 

 『クソみたいに痩せこけた良心を満足させてみただけ』と宣う青年によって死に行く運命を知らず知らずの内に逃れた少女。

 

 

 そして何よりも、愛した悪魔の少女にあまりにも似た声を持つ少女の姉との出会いは青年の精神に再び炎を灯すのか……。

 

 

「中途半端にしかなれないんだったら、それで良い。

キミにそういう役は似合わないってのは最初からわかってたからね。

だからこそ俺がやる。へっ、どうせ俺にはもう何も残っちゃいないし、伊達に世界を一個ぶっ壊しちゃいないぜ――――だから、そこで見てな」

 

 

 非情になりきれない彼女を知ってしまったから。

 何より、死ぬ寸前だった彼女の妹を救ってしまったから。

 

 

「久し振りにやるぞ、ドライグ」

 

『やっとお目覚めか、この寝坊助め……。ふふ、だが待っていたぞ……!』

 

 

 全てを再び失って尚、死ぬことができない青年は再びその力を解き放つ。

 

 

「あー、このキャメラは全世界に中継してんの? へー……? じゃあ、その目に焼き付けて置くんだな! 」

 

『これが赤龍帝(オレタチ)の真の力だ!』

 

 

 

 

 

 

 

「『ファイナル――――

 

 

 

 

 

 

――――――――――ドラゴン波ァァッーーーー!!!!』

 

 

 

 

 

 

 人でありながら、神を超越した最後の赤龍帝の力を。

 

 

 そして――

 

 

 

「こ、これがリアス・グレモリーさん……? へ、へー……? か、勝てる要素が……」

 

「何に? つーか返せよ、唯一の写真のデータなんだから」

 

「は、はい……うぅ……」

 

「? 何落ち込んでたよ……?」

 

「べ、別に? ………うー……!」

 

「??? 今度は泣きに入ってるし、意味わかんねーな……」

 

 

 彼女達の罪を極限まで軽くさせると身の安全を保証させるを条件に、どこぞの組織のパシリになった青年はきっと少しだけ前を向く事が出来たのかもしれない。

 

 

「リアス・グレモリーさんの写真を見てから、お姉ちゃんが落ち込んじゃって……」

 

「いや知るかよ。

見たいって言うから見せただけじゃん」

 

「それはそうなんだけど……。

はぁ、鬼門にも程がある……」

 

「は?」

 

 

 死に行く筈の一人の少女を知らずに救い、結果結構懐かれ、他と違って砕けた口調で話す成長した彼女とののほほんとしたお茶もまた前を向く為に良いのかもしれない……。

 

 

「やっぱり今でも彼女の事が好き……?」

 

「へ、チビ娘だったのに、そういう事に興味が出てきたのか?」

 

「茶化さないでよ。きっとお姉ちゃんは……」

 

「あー、ヤメロヤメロ。

前にも言ったろ? 俺は確かにあの子の声をリアスちゃんと重ねた事はあったが、中身は別物だ。

重ねること自体、あの子とリアスちゃんに失礼だしな……」

 

「…………」

 

 

 赤い悪魔との忘れない思い出を胸に……。

 

 

「み、見てホラ! い、良い服だなと彼女の写真を見て思ったから着てみたわ!」

 

「……………………………………」

 

「ど、どう? 感想なんかあったら聞いてあげても――」

 

「……………………………。えっと、怪しいビデオに出てくる女優みたいに無理してる感が強いと思っ――いでぇっ!?」

 

「む、無理してるつもりなんて無いのに……ひ、酷いわ……! ぐすっ……!」

 

「す、脛を蹴りやがって……。だ、だってそう思ったんだからしょうがねぇだろ? つーか、やっぱこうして見ると――」

 

「な、なによ?」

 

「リアスちゃんと違って壊滅的に似合ってない―――ぶべらっ!?」

 

「わーーーん!!! ばかぁっ!!」

 

 

 

 かつて悪魔の少女が着ていた学生服を、何をトチ狂ったのか、完コピして着用して見せてきた女性にたいして正直に言い過ぎてビンタされる日常もきっと、前を向き始めた証拠なのかもしれない。

 

 

 

「感想を言えと言ってきたから言ったのに、なんでこんな目に合わなきゃならないんだ……」

 

「言い方がまずいと思う」

 

「思ってても黙ってる事も大切デス」

 

「じゃあ褒めろってのか? …………………―……………………ダメだ、リアスちゃんなら100は誉め言葉も出てくるが、アイツの場合はひねり出しても精々一個くらいしか出ねぇ」

 

「じゃあそれを言えば……。ちなみにどういう言葉なの?」

 

「え? あぁ……『見てくれは良いんじゃねーの?』――みたいな?」

 

「「「…………」」」

 

「お、おう? 急に視線が冷たいなオイ……」

 

 

終了




補足

単に中の人が同じだからみたいな話。

同じなのは、基本どこ行ってもパシリ要因であることと、リアスさん達関連以外はあまり地雷はない。

あるとするなら、ある意味リアスさんがラスボスだった。


その2
駒王学園の女子制服を完コピして着た21歳さんのお姿はご想像にお任せします。

ホントに……。


その3

続かない。
あるとしても二期目スタートになるか……? いや、ならない。

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