色々なIF集   作:超人類DX

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続き

整理しようとしたら間違えて消しちゃいました


レベルを上げて物理で殴れスタイルの始まり

 とある者は秘密裏にイレギュラーの中身を探った。

 

 完全聖遺物と同等の力となる神器を宿す三人の青年は確実に邪魔となる存在。

 だからこそ『こっそり』と調べてみたのだけど、とある者はその時点で匙を投げたくなった。

 

 それは三人の肉体が常人とは明らかに違う強度である事。

 通称変態バカである一誠は自然治癒なんて生易しいものではない回復力――いや、再生力を持っている。

 

 通称ラーメン天然バカであるヴァーリは人間とは少し違う肉体であること。

 

 通称事故率100%バカである神牙は二人と比べたら常人に近い肉体強度であるが、それも二人と比べたらの話であり、彼もまた異常で異質な肉体強度を持っている。

 

 つまるところ、彼等は生身の時点でも化け物であったことが分かってしまったという事であり、始末するのは容易ではないというのがわかっただけであった。

 

 

「…………どうしろと?」

 

 

 暗殺しようにも、死にそうにない。

 かと云って社会的に殺そうにも三人揃って社会的な背景が一切無いので意味が無い。

 

 それはまるで、レベル1の勇者がラスボス魔王を越えた裏ボスキャラに挑む様な果てしなさを感じさせるが如し。

 

 

「10倍・ドラゴン波ァッ!!!」

 

 

 

 とある者は本人達の預かり知らぬ所で、ちょっと折れそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しょっちゅう出没するノイズ達との戦闘と、学生生活の両立はやはり難しいと立花響は身を以て痛感している真っ最中だった。

 

 しかしそれ以上にキツイのは、風鳴翼との関係についてであろう。

 未だに天羽奏の後任者として認められていないので、その距離感は遠い。

 ならば認められるまで頑張れば良いと響自身は思うのだけど、その気合いは空回りばかりであるし、何より驚愕というかショックだったのが、自分より先んじて一誠の友人の一人であるヴァーリが風鳴翼と微妙ながら距離感を縮めていたという点であろう。

 

 

「ら、ラーメンばっかりなヴァーリ君が一体どうやって翼さんと……?」

 

「あの野郎……多分自覚無しで何かやったな? 昔からそうだ。

アイツは女受けが良い……」

 

「え、ええっ!? 翼さんがそんな理由で!?」

 

「微妙に違うとは思うがな……クソっ!」

 

 

 ノイズ退治の際、単独でやろうとしていた翼が最近ヴァーリと共に現場に行く場面が多くなった。

 無論響もその現場に同行するのだが、なんというか――本当の意味で蚊帳の外にされてる気分にさせられる程度にはヴァーリと翼は連携が取れているのだ。

 

 そんな場面を複数回も見せられもすれば響だって落ち込むし、一誠は一誠で自分より女受けするヴァーリにムカムカもする。

 

 

「神牙はよりにもよって女性職員のお姉さんに対してとうとうやりやがったし、なんで俺には無いんだ!?」

 

「さ、さぁ? でもそれ見た一誠くんのせいで一週間は動けなくなっちゃったんだし、許してあげれば……」

 

 

 ちなみに神牙には今のところそんな事は無いみたいだが、つい先日、組織の女性職員さんと事故が発生したらしく、それを聞いた一誠にジャーマンスープレックスをかけられ、全治一週間と診断されたらしい。

 

 

「どうしたら翼さんに認めて貰えるんだろう……」

 

「…………」

 

 

 あまり上手くいかない状況に、響は酷く落ち込む。

 そんな響の姿をここ最近は彼女のフォロー込みでコンビを組んでノイズ退治をする事が多い一誠は、ちょっとだけ響の悩みに共感しつつ、思い付く。

 

 

「要するに風鳴さんに前任者の――あー……っと、誰だっけ?」

 

「天羽奏さん」

 

「そう、その子と同等以上にそのギアってのを使いこなしてる所を見せれば良いんだろう? というか、思うに文句言われないように強くなれば少しは認識も変わると思うぜ?」

 

「そ、そうかなぁ? それだけじゃない気がするけど……」

 

「いや、結局の所、自分の意見を通すにはそれ相応の力が必要だ。

……俺はそうだったぞ」

 

「うーん……」

 

 

 微妙に納得してない様子の響だが、確かに一理はあるとも感じる。

 一誠が最後の方を小さくボソリと言った言葉だけは聞き取れなかったものの、ガングニールを天羽奏の様に自在に扱えれば少しは翼も認めてくれるのかもしれない。

 

 とはいえ、自己流だけではどうにもならない事は多いし、何よりも潜在能力を引き出すにはそれ相応の肉体強度も必要だという説明もされている。

 

 

「一誠くん達の神器と私達のギアって似てるんだっけ?」

 

「すっげー大まかに言っちゃえば多分な? 別に歌は必要ないけど」

 

 

 考えてみた結果、翼に教えて貰えそうもないと思った響は、ここ最近では三バカの中では一番気安く話ができると思っている一誠に大まかに言えば近い性質を持つ神器の所有者として色々と尋ねてみることにした。

 

 

「宿主の想いである程度強くなるってのは大体似てる。

で、意味不明な数のロックが掛かってるってのを神器的な解釈をすれば『経験値が足りない』って所か……」

 

 

 てっきりめんどくさがって断られると響は思ってたが、意外にも真面目にギアを神器的にわざわざ解釈しながら一緒に考察してくれる一誠。

 

 

「うーん、こんな時にアザゼルさんが居れば、そのギアシステムも速攻で解析して的確な方法なんか教えてくれるんだけどなぁ……」

 

「アザゼルさん?」

 

「一応俺達の保護者。

神器なんかも研究してるんだよ」

 

 

 とはいえ、一誠も別に頭が良いわけではなく、完全に感覚的に力を引き出すタイプなので、あまり良い結論はでない。

 

 そのアザゼルなる人物なら理想とする答えをくれそうだけど、見たことも会ったことも無い相手に期待は出来そうも無いと響は肩を落とすが……。

 

 

「まあ、生身を鍛えるしかねーよなこういう時は」

 

「それも大切だとは聞いたけど……」

 

「いや、最後の最後に頼れるのは自分の身体だ。

いくら神器やシンフォギアってのが強くたって、それを扱う者の肉体が貧弱じゃお話にならないだろ?」

 

「確かに……」

 

 

 微妙に納得できてしまう一誠の言葉に響は、早起きして走り込みみたいなトレーニングをしてみようかと思っていると……。

 

 

「良いよ。暫く付き合ってやんよ」

 

「え?」

 

 

 さも当たり前みたいに一誠が基礎トレーニングに付き合うと言い出し、響は目を丸くした。

 

 

「何時までも見下されるのは癪だしよ。

折角だから……なんだっけ? アームドギアなんて無しで無敵少女になっちまえば文句なんて言われりゃしねーだろ、あの堅物ねーちゃんに」

 

「そ、そういう意味で認めて貰いたい訳じゃないんだけど……良いの?」

 

「良いよ。どうせ普段の仕事は施設内の掃除だし、ノイズが出る以外は意外と暇なんだよ……。

…………もう職員で働くお姉さん方にはほぼ全員から拒否られたし」

 

 

 フッと無駄にカッコつけて笑うものの、台詞のせいで普通にダサかった。

 自分の好みではない者には基本的にただの面倒見だけが良い若者でしかないからこその、何の見返りも求めちゃいない態度に、響は内心『こういう所を見せれば良いんじゃないのかなぁ』と思った。

 

 まあ、指摘もしなかったが。

 

 こうして響は一誠監修の生身のトレーニングをすることになったのだけど……。響はまだこの時は知らない。

 

 

「じゃあ早速明日からな。

明け方の3時に迎えに行くから用意しとけよ?」

 

「うぇっ!? さ、3時!?」

 

 

 …………死ぬほどキツイということに。

 

 

 

 

 

 

 

 日も昇らない3時起きになってしまった響は、当然そんな事を誰にも言える訳も無く、一応言われた通り目覚ましは3時にセットしたものの、精神的にはまだまだ一般人の域を脱していない響にしてみれば3時という時間はまだお眠の時間だ。

 

 つまり一瞬は起きたが、寝具の誘惑に負けての二度寝をしようとしてしまった訳だ。

 が……。

 

 

「もう3時なんだけど」

 

「ひょえっ!? い、いい、いっしぇーくん!? ど、どこから――むががっ!?」

 

「しーっ! 声がデカい……! ラーメン女神ちゃん2号の子が起きちゃうだろうが」

 

 

 当たり前の顔して学校の寮に不法侵入し、当たり前の顔して響の寝てる部屋に入り込んで起こしてきた一誠に響は心臓がぶち破れそうな程ビックリしてしまった。

 

 

「ど、どうやってここに? 鍵だって掛かってる筈なのに……」

 

「シュン! って入って、ささっとキミの気配辿って、ピッキングして鍵開けた」

 

「ど、泥棒だよそれじゃあ……」

 

 

 どうやって侵入したかについてはどうやらほぼ泥棒みたいな真似事をしたらしく、聞かされた本人はドン引きだ。

 しかしお陰で完全に目は覚めてしまったので、言われた通りまずは汚れても良いような格好に着替えようとするのだけど……。

 

 

「あ、あの……着替えたいんだけど」

 

「? 着替えりゃ良いじゃん?」

 

 

 一誠が女子寮の響の部屋の中を『ほー? これが年頃の女子部屋ねぇ?』と無遠慮に観察してるせいで着替えるに着替えれない。

 というか相部屋となっている未来が起きないかすさまじく心配でもあるけど、どうやら寝ているらしい……。

 

 

「キミは寝ている、ずーっと寝ている。少なくとも朝の6時まではグッスリ寝ている……」

 

「すーすー……」

 

「未来に何してるの……?」

 

「効くかどうか知らんけど、テレビでやってた催眠療法を試してる。

ほら、やってる間にさっさと着替えな」

 

「…………」

 

 

 そんな寝ている未来に妙ちくりんで胡散臭さ全開の催眠術を使ってる一誠は一応響に背を向けて見てはいないのだが、それでも着替えろと言われたら躊躇う。

 

 

 

「だ、だから着替えるまで外で待っててよ……」

 

「は? 別にキミが全裸になってようが何とも思わないけど、そこまで言うなら待ってるよ。いやほんと別にキミが全裸で踊って様がなんとも思わないけど」

 

「ひ、一言余計――っ!?」

 

「謝るから静かにな?」

 

「う、うぐぐ……」

 

 

 いくらなんでも年の近い男の目の前で着替えられる度胸は無い。

 しかし普段年上の女性に対してなあんなアホ顔晒すのに、今の一誠はその言葉通り響が目の前で何の格好になろうが知ったこっちゃないといった顔だったので、それはそれで腹が立ち、とにかく部屋から追い出した響は、ジャージに着替えると寮の外で待っていた一誠と合流する。

 

 

「………」

 

「あの後色々と探して良い感じのトレーニング場所を見つけたから、まずはそこに―――ってどうしたの?」

 

「なんでもない……」

 

 

 まだ外は真っ暗だし、なんなら空を見上げるとお星様まで輝いている。

 それに対する不満は無いが、あくまでも女子の部屋に入り込んで平然としてる一誠の態度がなんだか気に入らなかった響は、きょとんとした顔の一誠からプイッと顔を背けてやった。

 

 

 とはいえ、トレーニングはしなければならないので、先を響の今の体力のペースに合わせて走ってくれる一誠に付いて行き、たどり着いたのは閉鎖してそこそこの年月が経ったまま放棄された廃工場跡だった。

 

 

「こ、ここって確か幽霊出るって噂の……」

 

「は? そんな噂があんのか? 別にそんな気配なんて無いし、出たらぶっ飛ばせば良いだろ」

 

「ゆ、幽霊はぶっ飛ばせないよ……!」

 

 

 そこは聞いた限りでは、様々な幽霊出没話が噂される心霊スポットだったらしい。

 

 

「良いから行くぞ」

 

「う、ううっ……」

 

 

 が、軽く怯える響を連れて平気な顔して中へと入っていく一誠には関係ない話であり、軽い肌寒さもあってかブルブル震えてる響に、まずは現状の基礎体力を知ろうと様々な事をさせてみる。

 

 

「腹筋が30回未満で、腕立てが15回以下……背筋力も無しね……。まさに貧弱現代っ子だな」

 

「うぅ……」

 

 

 所謂もやし人間だと言われて凹む響。

 ここから翼に認められる程の地力を手に入れるとなると、普通にやっていれば年間コースは間違いない。

 

 が、ここで手を差し伸べるのが一誠のプランだった。

 

 

「短期間で成長する為に、ちょっとした裏技を使う。

前にあまりにも地力が貧弱だった神牙の野郎に施したトレーニング方法だから、キミにも効果はある筈だ」

 

「う、うん……果てしなく不安なんだけど、よろしくお願いします」

 

 

 かつて三バカの中で一番フィジカルが貧弱だった神牙に無理矢理施した特訓メニューとは一体何だろうか? 不安を胸に響はペコリと頭を下げると、一誠は徐にその左腕に真っ赤な装甲――赤龍帝の籠手(ブースデットギア)を纏い、その左腕を響に向けて差し伸べた。

 

 

「俺に触れてみな」

 

「? うん、こう……?」

 

 

 言われた通り一誠の左腕に触れる響。

 その直後一誠の左腕が淡く輝きを放つ。

 

 

「赤龍帝からの贈り物」

 

 

 その言葉と同時に輝きが響へと伝染する。

 

 

「っひ!?」

 

 

 その瞬間、響の身体の中で何かが弾けると共に頭の中に強烈な電流が流れる様な感覚に襲われた。

 

 

「あ……! あ……やっ……! はぅっ!?」

 

「あ、あれ?」

 

 

 それは響にとっても初めての体験であったし、一誠にとっても――――初めて見るリアクションだった。

 

 

「神牙やヴァーリの時はこんなリアクションじゃなかったのに……」

 

 

 びくんびくんと打ち上げられた魚の様に痙攣し、なんというか……あんまり聞いてはいけない様な声を放つ響に寧ろ一誠も戸惑ってしまっている。

 

 

「は……ぁ……! あ! あ! あっ! あっ!! も、もう、ら、らめ……! ああっ~~~!!」

 

「…………………」

 

 

 なんだこの凄まじい罪悪感は……? いっそ大袈裟にしか見えない響のリアクションがピークにでも到達したのか、一際大きく身体を反らしながら痙攣すると、そのままひっくり返りそうになるので、掴んでた手を引っ張ってあげる。

 

 

「はぁ……! はぁ……はぁ……! な、なにこれ……?」

 

「さ、さぁ? 神牙もヴァーリもこんなリアクションしなかったから、俺も驚いてる……」

 

 

 ハイペースのトレーニングに耐えられるだけのパワーを分け与えるだけのつもりだったのに、足に力が入らんとばかりにヘロヘロになって一誠にもたれ掛かる響に答えられない一誠。

 

 

「………。ちょっと休もう」

 

「ご、ごめ……んね……?」

 

「うん、別に。ホントに……うん」

 

 

 一応パワー自体は響の中に届いてる様なので、取り敢えず暫く彼女が回復するまで待つことに。

 

 

「も、もう大丈夫だから。

凄い身体に力がみなぎるって感じもするし」

 

「おう……。まずは短期間で伸ばせるだけのトレーニングに耐えられるパワーを分け与えてからトレーニングをしてみて、慣れてきたら無しのままでも……って思っててよ」

 

「確かに今ならシンフォギア無しでもなんでもできそうだよ……!」

 

 

 上手いこと作戦は成功したらしく、力のみなぎりを主張する響にちょっとホッとする一誠は、早速とばかりに自分流のトレーニングを開始しようとしたのだけど……。

 

 

「あ……」

 

「? どうした?」

 

「ぁ、あの……さ。すぐ戻るから一旦寮に戻って……い、いい?」

 

「は? なんで?」

 

「そ、その……ゴニョゴニョ」

 

「え?」

 

 

 急に下を向いてもじもじし始める響に、あまり時間の浪費はしたくない一誠はそのまま始めたいとその主張に反対しようとするが、もじもじしてるだけで響は動こうしない。

 

 

「どうしたんだよ? キミの学校の授業なんかもあるんだろうし、5時には一旦切り上げたいんだから、寮に戻ってる時間なんて――」

 

「………だから」

 

「は?」

 

「だ、だから…………………だから……」

 

「あんだよ? ハッキリ言えってんだ、さっきから何をゴニョゴニョと―――」

 

「だからっ!! き、着替えたいの!! さ、さっき一誠くんが変な事したせいで変なの!! し、下着がっ! エッチ! すけべ!!!」

 

「―――――――――お、おー……?」

 

 

 恥ずかしさで真っ赤になっている顔をしながら現状を訴える響に、一誠は完全に圧されて頷くしか出来なくなった。

 どうやら同性にはそんな事は無いが、異性に自身とドライグの力をミックスさせて分け与えると、大変な事になるらしい。

 今の今まで異性に自分の力を分け与えた事がなかった一誠はここに来て初めて知り、涙目なって『うー……!』とこっちを睨んでる響に低姿勢になるしかなかったのだという。

 

 

「わ、悪い。本当にそんなつもりじゃなくて……」

 

「わかってるよ。わざわざ私の為にやってくれてるって事も全部……」

 

 

 というか、この事を響の幼馴染の子に知られたら間違いなくぶち殺される――と、一誠は思ったのであった。

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 当初は過酷なトレーニングに耐えられるだけのパワーを分け与えられながらのトレーニングをしていた響だが、短期間でその成果が得られるというだけあり、信じられない速度で成長していった―――生身での戦闘が。

 

 それは響達もまだ知らない一誠自身の精神の力の特性――他人を進化させる特性がそうさせているのかもしれない。

 

 当初は色々あったものの、一誠の力に少しずつ慣れてきた今の響はあの時みたいな失態はしなくなっている。

 ただ……

 

 

「せ、先生……門の前に男の人が居ます」

 

 

 最初の方、ノイズがでない時は基本的にトレーニング漬けと言われた通り、学業が終わった後もトレーニングになる響を律儀に迎えに行く為に、学校の門も前で一誠が迎えに来た時は焦った。

 

 

「あの人、前に見た……」

 

 

 親友の未来が一誠を覚えていたのもあるし、何より問題なのはここは女子高だ。

 つまり一誠が暴走する可能性がある場所ではないかと響はとても不安に感じてしまったのも無理はない。

 

 けど……。

 

 

『………』

 

「…………………」

 

 

 一誠は恐る恐る遠巻きから見ている女子生徒には目もくれず、ひたすら腕を組ながら響を待っていた。

 それが大雨の日だろうが、強風の時であろうが毎日毎日早朝と放課後の時間を……。

 

 

「お待たせ」

 

「ん、今日は小日向さんも一緒か?」

 

「はい。響だけだと不安なので……」

 

 

 結果一誠は名物男子になっていた。

 毎日毎日、同じ時間きっかりに立花響を迎えに来て一緒にどこかへと行く。

 本人達はただ鍛えるトレーニングをしているだけの事なのだが、周りから見たらそんな関係なのかと思われる訳で……。

 

 

「ねぇねぇ? 響はあの男の人と付き合ってるの?」

 

「ここ最近毎日同じ時間になったら門の前で待ってるし、彼氏でもなければありえないでしょ?」

 

「ち、違うよー! 一誠くんはただの――」

 

「一誠くん……だって!」

 

「名前呼びなの!? 呼び合う関係なのっ!?」

 

「だ、だって苗字が――……」

 

 

 違うと言いたいのに誰も聞いてない。

 困った……と思う響に、横で聞いていた幼馴染が言う。

 

 

「でも響の事をなんとも思ってないなら毎日迎えになんて来ないと思う……」

 

「そ、そうかなー……? うーん……」

 

「……………………注意しないと」

 

「へ? なんか言った?」

 

「なんでもないよ響……ふふ」

 

 

 どうやら幼馴染的には今現在の一誠はとても要注意な人物昇格してしまっているらしい。

 だからここ最近は二人に付いていくし、意味があるのかよくわからない妙なトレーニングにも参加すらし始めている。

 

 恐ろしいことに、響パワーか何かが影響しているのか、素で一誠のトレーニングに付いていけている様で……。

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

「あ? なんだまたお前か……」

 

「な、なんだってなんだよ? 最近こっちも暇でやることがねーんだよ。主にお前らのせいで」

 

「平和で良いじゃねーか。

じゃあ、そういう事で……」

 

「ま、待てよ! お、お前最近立花響になんかやってんだろ? 鍛えてやってるっつーか……」

 

「だから? 最近あの子にボコボコにされたのがそんな悔しいか? ふふ、あの子は俺に戦闘スタイルが似てるからなぁ……教えやすくてしょうがないし、もっとあの子は強くなるぜ?」

 

「……………」

 

「ふふ、まさか本当に龍拳まで使えるなんてなー……っと、じゃあな。もう財布は落とすなよー?」

 

 

 

 

 

 

『行くよクリスちゃん!』

 

『クリスちゃんにも認めて欲しい! だから教わったんだ!』

 

『これが私の――龍拳・絶唱だぁぁぁっーーー!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「立花響………ちくしょう……!」

 

 

 終わり




補足

一回面倒を見始めると、律儀な程途中では絶対に投げ出しはしない程度には根っこの部分でお人好し

そういう面をじゃあ年上のお姉さんにも見せてみりゃ良いじゃんと思うけど、ナンパ文句のせいで大体台無し


その2
つまるところ、そういう対象じゃない相手だと面倒見が良い反面割りの図々しくもなる。

響さんの部屋に不法侵入しようが、着替えしようが平気な顔。

その3

で、完全に受け入れた相手となった場合――それが一気に反転して急に思春期入った中学生みたいになる模様


………誰がそうさせるかはわからないけど(棒)

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